GHGプロトコル改定の最新状況|スケジュール延長と主な論点(Scope2・3)をわかりやすく解説

2026.08.06
Scope3

最終更新日:2026年8月4日

「GHGプロトコルの改定はいつ確定するのか」——温室効果ガス算定の国際標準であるGHGプロトコルの見直しが進むなか、そのスケジュールが当初より後ろ倒しになっていると報じられ、実務担当者の関心を集めています。

GHGプロトコルは現在、企業向けの基準群(コーポレート基準・Scope2ガイダンス・Scope3基準など)を全面的に見直しています。検討範囲が広く論点も多いことから当初の想定より長引き、主要な基準の最終版は2027年ごろとされています。

本記事では、何が・なぜ改定されているのか、スケジュールの現状(延長)、Scope2・Scope3の主な論点、そして企業への影響と備えを、中立的に整理します。

※改定は検討中で、日程・内容は今後変わります。本記事はGHG Protocol等の公表情報(2026年時点)に基づく解説です。確定情報ではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。

GHGプロトコル改定の対象(企業向け基準群)
① コーポレート基準
算定全体の土台(2004年版)
② Scope2ガイダンス
電力等の間接排出(2015年版)
③ Scope3基準
サプライチェーン排出
④ アクションと市場性商品
クレジット・証書の扱い
TWG(作業部会)+パブコメを経て、最終版は2027年ごろ見込み

この記事の目次

GHGプロトコル改定とは|なぜ今、見直されているのか

GHGプロトコルは、企業が温室効果ガス排出量を算定・報告するための世界標準です。その企業向け基準群を、より厳密で比較可能なものにするための大規模な見直し(改定)が進められています。

改定の対象となる4つの領域

見直しは、上図のとおり大きく4つの領域で進んでいます。とくに影響が大きいとされるのが、電力などの間接排出を扱うScope2ガイダンスと、サプライチェーン全体を扱うScope3基準です。

なぜ改定するのか(背景)

現行のコーポレート基準は2004年、Scope2ガイダンスは2015年に策定されました。その後、ネットゼロや再エネ調達の広がり、SBTiなどの目標設定、データの精緻化が進み、算定の厳密さと比較可能性を高める必要が指摘されてきました。2026年からはISO(国際標準化機構)の専門家も作業部会に加わり、国際的な整合を図る動きが進んでいます。

改定スケジュールと「延長」の状況

改定は、技術作業部会(TWG)での検討 → パブリックコンサルテーション(意見公募)→ 最終化、という流れで進みます。検討範囲の広さや論点の難しさから複数回の意見公募が必要となり、当初の想定より全体に後ろ倒しになっています。

改定スケジュールの目安(2026年時点・変動あり)
領域別の改定スケジュール
領域直近の意見公募(パブコメ)最終化の見込み
第1回パブコメ2025年10月〜2026年1月(結果は2026年7月29日公表)
第2回(統合)パブコメ2027年第2四半期の予定
統合コーポレート基準2028年第4四半期に公表予定(発効・段階適用の時期は未定)

2026年7月29日の発表で、スケジュールは当初想定から約1年後ろ倒しとなり、最終公表は2028年第4四半期の予定に改められました。日程は今後の議論により変わり得ます。

【2026年7月発表】ISOとの統合へ|単一の国際標準に

2026年7月29日、大きな方針が発表されました。GHGプロトコルとISO(国際標準化機構)が、企業のGHG算定基準を単一の共同標準に統合していくというものです。これまで別々に存在したGHGプロトコルのコーポレート基準群とISO 14064-1を、一つのブランドの下でまとめていく方向とされます(正式名称は未定)。

実務者にとっては朗報です。「GHGプロトコルとISOのどちらに合わせるか」「発行時期のズレをどう扱うか」という二重対応の悩みが、将来的には解消に向かうためです。統合に伴い、統合版のパブリックコンサルテーションが2027年第2四半期、最終公表が2028年第4四半期という新スケジュールも示されました。また、Scope2の報告方法については賛否が大きく割れたことを受け、単一の案ではなく複数の報告アプローチを検討することも表明されています。

第1回パブコメの結果|世界と日本の反応

同日、第1回パブリックコンサルテーション(2025年10月〜2026年1月)に寄せられた意見の生データも公開されました。回答は世界56カ国から1,072件。ただし国別に傾向を語れる規模(30件以上)があるのは米・英・日・独・中・蘭・仏の7カ国で、実質的にはこの7カ国の意見が中心です。日本からは約80件で、需要家企業が最多でした。

ポイントは、Scope2厳格化の3論点への賛否です。アワリーマッチング(時間帯マッチング)とデリバラビリティ(供給可能性)には世界的に反対が優勢(アワリーは欧州で6割強、欧州以外では75%超が反対)。一方、賦課金等に支えられた電源の環境価値主張を制限する標準供給サービス(SSS)は、世界では賛成優勢なのに日本では反対優勢という逆転が見られました。改定案の中で日本のFITがSSSの該当例として挙げられているためとみられます。日本の反対理由は「効果がない」ではなく「自国の市場・制度と整合せず実現が難しい」が中心という特徴もありました。

注意すべき点が2つあります。第一に、GHGプロトコルは「パブコメは投票ではない」と明言しており、反対多数でも方向性がそのまま覆るわけではありません。アワリーマッチングの国際標準を推進するEnergyTagも、厳格化の方向自体は変わらないとの見方を示したとされます。第二に、既存契約を保護するレガシー条項などの緩和措置(7〜9割が支持)は、アワリーマッチングとデリバラビリティのみが対象で、SSS該当性には適用されないとされる点です。FIT電気を使った「実質再エネ」メニューに依存している企業は、扱いの変化に備える必要があります。

あわせて押さえたいのがSBTiとの接続です。SBTiの企業ネットゼロ基準V2では、電力消費の大きい企業(カテゴリーA)に時間別データにもとづく報告・第三者保証を求める方向が示されており、GHGプロトコルの改定を待たずに時間別(アワリー)の電力データ基盤づくりは始めておいて損のない投資になっています。証書の調達コーポレートPPAの設計も、この前提で見直すのが実務的です。

Scope2の主な論点|時間単位・地理的マッチング

最も注目される論点の一つがScope2(購入した電力などの間接排出)です。現行は、年間ベースでグリーン電力証書などの証書を割り当てる「マーケット基準」が中心です。

改定案では、電力を使った時間帯と発電のタイミングを合わせる「時間単位マッチング(アワリーマッチング)」や、送電網の地理的なつながり(デリバラビリティ=供給可能性)を求める方向が議論されています。実現すれば、再生可能エネルギーの調達戦略や証書の使い方に大きな影響が及ぶ可能性があります。ただし、まだ確定ではなく、今後の意見公募を経て決まります。

Scope2算定:現行と改定案の方向

現行(マーケット基準)

  • 年間ベースでグリーン電力証書などを割り当てて算定

改定案で議論される方向

  • 電力を使う時間と発電のタイミングを合わせる時間単位マッチング
  • 送電網の地理的つながり(デリバラビリティ)を求める

まだ確定ではなく、意見公募を経て決まります。実現すれば再エネの調達戦略や証書の使い方に大きな影響が及ぶ可能性があります。

Scope3・コーポレート基準の主な論点

Scope3とコーポレート基準についても、次のような見直しが議論されています。

  • インベントリ(算定対象)の境界の設定と、データ品質に関する要件の強化。
  • 投資に伴う排出(ファイナンスド・エミッション)の扱いの整理。
  • カテゴリ1〜15に収まらない活動を扱う新しいカテゴリの追加。
  • 削減貢献量(Scope4)など、バリューチェーン外の「回避された排出」の位置づけの整理。
  • コーポレート基準(第3版)全体の現代化と、他基準との整合。

いずれも方向性の議論段階で、最終的な要件は今後のパブリックコンサルテーションを経て固まります。

企業への影響と今できる備え

改定は確定前ですが、全体としては「厳格化・精緻化」の方向とされます。発効までは現行基準が有効なので慌てる必要はありませんが、方向性を見据えた準備は有効です。

  • 再エネ調達の点検:時間単位・地理的マッチングが導入された場合に備え、再生可能エネルギー電力や証書の調達方針を確認する。
  • Scope3データの強化Scope3のデータ収集・排出係数の管理体制を整え、要件強化に備える。
  • 関連基準の動向とあわせて注視:SBTiやISSBなど、GHGプロトコルと連動する基準の動きも確認する。
  • 意見公募への関与:必要に応じてパブリックコンサルテーションに意見を提出することもできる。

まとめ|「厳格化」の方向を見据えて備える

GHGプロトコルは、コーポレート基準・Scope2・Scope3などの企業向け基準群を全面的に見直しています。検討範囲の広さと論点の難しさからスケジュールは後ろ倒しになり、主要な基準の最終版は2027年ごろとされています。

とくにScope2の時間単位・地理的マッチングは、再エネ調達の実務に大きく関わる論点です。改定は確定前ですが、方向性は厳格化・精緻化にあります。現行基準での算定を続けながら、再エネ調達やScope3データの整備を点検し、最新の公式情報を継続的に確認することが、これからの脱炭素経営の備えになります。

よくある質問(FAQ)

Q. GHGプロトコルの改定はいつ確定しますか?

2026年時点では、主要な基準の最終版は2027年ごろとされています。Scope2ガイダンス・コーポレート基準・Scope3基準ごとに2025〜2026年に意見公募が行われており、当初の想定より検討が長引いています。日程は変わりうるため、最新情報の確認が必要です。

Q. なぜスケジュールが延びているのですか?

見直しの範囲が広く、Scope2の時間単位マッチングなど技術的で意見が分かれる論点が多いためとされます。複数回の意見公募やISOとの連携もあり、慎重に進められています。

Q. Scope2は何が変わりそうですか?

現行の年間ベースの証書中心から、電力の使用時間と発電を合わせる時間単位マッチングや、地理的な供給可能性(デリバラビリティ)を求める方向が議論されています。ただし確定しておらず、最終案は今後の意見公募を経て決まります。

Q. 改定は今の算定にすぐ影響しますか?

すぐには影響しません。改定版が最終化・発効するまでは現行の基準が有効で、従来どおりの算定が続きます。ただし方向性を見据えた準備は有効です。

Q. 企業は今、何をすべきですか?

再エネ調達(時間・地理)やScope3のデータ整備を点検し、SBTiなど関連基準の動向とあわせて注視することです。必要に応じて意見公募に参加することもできます。

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出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。改定は検討中のため、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月6日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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