「再エネ100%の電気に切り替えたいが、契約はそのままにしたい」「Scope2を削減したいが、何を買えばよいのか分からない」。脱炭素の実務でまず突き当たるのが、環境価値という考え方です。環境価値とは、再エネなどの電気が持つ「CO2を出さない」という価値を、電気そのものから切り離して取引できるようにしたものを指します。
この記事では、環境価値の基本から、非化石証書・グリーン電力証書・Jクレジットという3類型の違い、制度ごとの使い分け、最新の価格相場と買い方までを、企業の実務担当者向けに整理します。
※価格・制度は時点により変わります。本記事は公表情報(2026年8月時点)に基づく解説です。
この記事の目次
- 1環境価値とは|電気の価値を分解するとわかる
- 電気が持つ4つの価値
- 非化石証書が持つ3つの価値
- 2なぜ企業に環境価値が必要なのか
- Scope2・RE100・CDP対応の「共通通貨」
- 電気を替えずに「価値だけ」調達できる
- 3環境価値の3類型|非化石証書・グリーン電力証書・Jクレジット
- 非化石証書|最も安く量も豊富な主力
- グリーン電力証書|民間認証の老舗
- Jクレジット|CO2削減量ベースで使途が広い
- 4非化石証書を深掘り|2つの市場と最新の約定価格
- 再エネ価値取引市場と高度化法義務達成市場
- 最新の約定価格|FITは0.4円、非FITは上限張り付き
- トラッキング情報と需要家の直接購入
- 5環境価値制度の変遷|2018年の市場創設から現在まで
- 6用途別の使い分け|どの制度で何が使えるか
- 温対法(SHK制度)・省エネ法の報告での扱い
- RE100の15年ルール|「追加性」という新しい壁
- 7環境価値の買い方と費用感
- 4つの調達ルート
- 費用感のシミュレーション
- 8環境価値を調達する実務ステップ5つ
- 9つまずきやすいポイントと対策
- 10国際動向|海外の証書制度とGHGプロトコル改定
- 海外の環境価値証書(REC・GO・I-REC)
- アワリーマッチング|「いつの電気か」が問われる時代へ
- 11まとめ|環境価値は「使う制度」から逆算して選ぶ
- 12よくある質問(FAQ)
環境価値とは|電気の価値を分解するとわかる
環境価値を理解する近道は、「電気の価値はひとつではない」と捉えることです。コンセントから届く電気は同じでも、その裏側では複数の価値が別々に取引されています。
電気が持つ4つの価値
電力の世界では、電気の価値はおおむね次の4つに分解されます。それぞれに対応する市場や取引の仕組みが存在します。
ポイントは、④の環境価値だけは電気と切り離して単独で売買できることです。再エネの電気を物理的に受け取らなくても、証書を買えば「再エネを使った」と主張できる。この仕組みが、企業の脱炭素の実務を大きく柔軟にしています。
非化石証書が持つ3つの価値
環境価値の代表格である非化石証書は、制度上さらに3つの価値に分けて整理されています。どの価値を何に使えるかが、後述する「使い分け」の土台になります。
| 価値の名称 | 意味 | 主な使い道 |
|---|---|---|
| 非化石価値 | 化石燃料を使っていないという価値 | 高度化法(小売電気事業者の非化石電源比率の算定) |
| ゼロエミ価値 | CO2排出係数がゼロという価値 | 温対法のCO2排出係数の調整(報告値の低減) |
| 環境表示価値 | 「再エネ由来」と対外的に主張できる価値 | 「実質再エネ100%」などの表示・広告・RE100報告 |
たとえば小売電気事業者の「CO2フリーメニュー」は、通常の電気に非化石証書のゼロエミ価値と環境表示価値を組み合わせて販売する商品です。需要家から見える料金メニューの裏では、この価値の組み合わせが動いています。
なぜ企業に環境価値が必要なのか
環境価値が企業の実務に登場する場面は、大きく「対外的な報告・目標への対応」と「調達の柔軟性の確保」の2つに分けられます。
Scope2・RE100・CDP対応の「共通通貨」
企業の温室効果ガス排出量のうち、購入した電気に由来する部分がScope2です。GHGプロトコルのマーケット基準では、契約や証書に基づいて自社の電気の排出係数を主張できるため、環境価値を調達すればScope2の報告値を下げられます。
RE100への加盟企業や、CDP質問書への回答企業、SBT認定の取得企業にとっても、再エネ調達の実績を証明する手段は最終的に証書・クレジットの形に行き着きます。つまり環境価値は、複数の報告制度をまたいで使える「共通通貨」のような役割を果たしています。
取引先からの要請も無視できません。大手企業がサプライヤーに再エネ利用を求める動きが広がっており、「再エネ電気の利用実績」を問われた中堅・中小企業が、環境価値の調達で対応するケースが増えているとされています。
電気を替えずに「価値だけ」調達できる
環境価値の実務上の最大の利点は、電力契約を変えずに再エネ化を進められることです。再エネの電気そのものに切り替える方法(再エネメニューへの変更やPPA)は、契約変更や設備投資に時間がかかります。一方、証書の購入だけなら、既存の電力契約はそのままに、必要な量だけ環境価値を上乗せできます。
特に、複数拠点で別々の電力会社と契約している企業や、テナント入居でそもそも電力契約を選べない企業にとって、価値だけを切り離して調達できる仕組みは現実的な選択肢になります。まずは証書で「実質再エネ」を達成し、並行してPPAなど電気そのものの切り替えを進める、という二段構えも一般的です。
「実質再エネ」を主張
環境価値の3類型|非化石証書・グリーン電力証書・Jクレジット
日本で企業が調達できる環境価値は、実務上、次の3類型に整理できます。まず全体像を比較表で押さえましょう。
| 項目 | 非化石証書 | グリーン電力証書 | Jクレジット |
|---|---|---|---|
| 発行・認証 | 国の制度(JEPXで取引) | 民間の発行事業者(JQAが認証) | 国の制度(J-クレジット制度) |
| 単位 | kWh(電力量) | kWh(電力量) | t-CO2(削減量) |
| 価格の目安 | FITで0.4円/kWh前後 | 相対取引(数円/kWh程度とされる) | 再エネ電力由来で5,000〜6,000円/t-CO2前後 |
| 量の豊富さ | 圧倒的に多い(年間約80TWh規模) | 限られる | 限られる(価格は上昇傾向) |
| 主な用途 | RE100・CDP・温対法・実質再エネメニュー | RE100・CDP・温対法・イベントの再エネ化 | 温対法・カーボンオフセット(再エネ電力由来はRE100にも) |
非化石証書|最も安く量も豊富な主力
非化石証書は、太陽光・風力・水力・原子力など非化石電源で発電された電気の環境価値を、国の制度として証書化したものです。日本卸電力取引所(JEPX)の非化石価値取引市場で、年4回のオークションにより取引されます。
証書はFIT電源由来の「FIT非化石証書」、FIT認定を受けていない再エネ由来の「非FIT(再エネ指定あり)」、原子力などを含む「非FIT(再エネ指定なし)」の3種類に分かれます。再エネとして主張できるのはFITと非FIT再エネ指定の2つで、「再エネ指定なし」はCO2ゼロエミの主張には使えても再エネの主張には使えません。詳しくは非化石証書の解説記事をご覧ください。
価格が安く(後述のとおりFITで1kWhあたり0.4円前後)、量も豊富なため、現在の企業の再エネ調達では主力の手段になっています。
グリーン電力証書|民間認証の老舗
グリーン電力証書は、2000年代から続く民間ベースの証書制度です。発行事業者が再エネ発電の環境価値を証書化し、一般財団法人日本品質保証機構(JQA)が第三者認証を行います。
非化石証書と違って相対取引が基本のため、発電所の種類や場所を指定した「顔の見える」調達がしやすいのが特徴です。単価は非化石証書より高い水準(1kWhあたり数円程度)とされますが、イベントや特定商品の再エネ化など、ストーリー性を重視する用途で選ばれています。仕組みの詳細はグリーン電力証書の解説記事で整理しています。
Jクレジット|CO2削減量ベースで使途が広い
Jクレジットは、省エネ設備の導入や再エネ発電、森林管理などによるCO2削減・吸収量を国が認証する制度です。単位が電力量(kWh)ではなく削減量(t-CO2)である点が、証書2種との大きな違いです。
再エネ電力由来のJクレジットは、温対法の報告だけでなくRE100やCDPでも再エネ調達として使えるとされており、環境価値の一角を占めます。価格は上昇傾向が続いており、再エネ電力由来で1t-CO2あたり5,000〜6,000円前後が相場とされています(2026年5月時点)。制度の全体像はカーボンクレジットの解説記事をご覧ください。
非化石証書を深掘り|2つの市場と最新の約定価格
3類型のうち、実務で最も出番が多い非化石証書について、市場の仕組みと最新価格を深掘りします。
再エネ価値取引市場と高度化法義務達成市場
非化石証書の取引市場は、2021年11月の制度見直しで2つに再編されました。この再編で、需要家(一般企業)が証書を直接買えるようになったことが大きな転換点です。
買える人:小売電気事業者に加え、需要家・仲介事業者も直接参加可能
価格:最低0.4円〜最高4円/kWh
企業の再エネ調達の主戦場
買える人:小売電気事業者のみ
価格:0.6円〜1.3円/kWh
小売事業者が高度化法の目標達成のために購入
名前のとおり、高度化法義務達成市場は、小売電気事業者がエネルギー供給構造高度化法(2030年度に非化石電源比率44%以上という目標)を達成するための市場です。一般企業が直接買えるのはFIT証書のみで、非FIT証書は小売電気事業者のメニューを通じて間接的に調達する形になります。
最新の約定価格|FITは0.4円、非FITは上限張り付き
直近のオークション結果を見ると、FITと非FITで対照的な状況になっています。
| 証書の種類 | 価格レンジ(税抜) | 直近の約定状況(2026年時点) |
|---|---|---|
| FIT | 0.4円〜4円/kWh | 加重平均はほぼ下限の0.4円前後(2026年5月約定分は0.44円) |
| 非FIT(再エネ指定) | 0.6円〜1.3円/kWh | 直近は上限1.3円に張り付き(需要が供給を大きく超過) |
| 非FIT(指定なし) | 0.6円〜1.3円/kWh | 上限付近での約定が目立つ |
FIT証書は供給量が需要を上回っており、加重平均価格はほぼ下限の0.4円で推移しています。一方で買い手は着実に増えており、約定量は年々拡大して市場全体の年間約定量はおよそ80TWh(2025年度)と過去最高を更新したと報じられています。
対照的に、非FIT再エネ指定の証書は需要超過が続き、直近のオークションでは上限価格1.3円/kWhでの約定が連続しています。背景には、後述するRE100の15年ルールへの対応などで、FIT以外の再エネ価値を求める動きが強まっていることが指摘されています。
トラッキング情報と需要家の直接購入
証書がどの発電所に由来するかを特定する情報をトラッキングと呼びます。FIT非化石証書には現在、発電所の所在地や電源種を特定できるトラッキング情報が原則として付与されており、RE100の報告でも利用できる形になっています。
需要家が直接購入する場合は、JEPXの取引会員として登録して年4回のオークションに参加します。最低取引単位や実務負担があるため、仲介事業者を通じてまとめて調達する企業も少なくありません。具体的な手順は再エネ証書の買い方の解説記事で、口座開設から約定までを整理しています。
環境価値制度の変遷|2018年の市場創設から現在まで
環境価値の制度は、この数年で急速に「企業が使いやすい形」へ進化してきました。変遷を知っておくと、証書の種類や市場が2つある理由がすっきり理解できます。
流れを一言でまとめると、「小売事業者の義務履行の道具」から「需要家が自ら調達する脱炭素の道具」へという変化です。価格の低下と参加者の拡大が同時に進み、いまや環境価値は大企業だけのものではなくなっています。
用途別の使い分け|どの制度で何が使えるか
環境価値の実務で最も重要なのが、「どの制度で、どの証書・クレジットが使えるか」の対応関係です。ここを誤ると、せっかく調達した価値が目的の報告に使えない事態になります。
| 使いたい制度・場面 | 非化石証書 (FIT/非FIT再エネ) | 非化石証書 (再エネ指定なし) | グリーン電力証書 | Jクレジット (再エネ電力由来) |
|---|---|---|---|---|
| RE100・再エネ100%の主張 | ○(トラッキング付き) | × | ○ | ○ |
| 温対法(SHK制度)の係数調整 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| CDP・SBT(Scope2マーケット基準) | ○ | △(再エネ主張は不可) | ○ | ○ |
| 高度化法(小売電気事業者) | ○ | ○ | × | × |
※制度の細則・最新要件により扱いが変わる場合があります。実際の報告前に各制度の最新ガイダンスをご確認ください。
温対法(SHK制度)・省エネ法の報告での扱い
一定規模以上の事業者は、温対法の算定・報告・公表制度(SHK制度)で温室効果ガス排出量を国に報告します。この報告では、非化石証書やJクレジットなどの環境価値を反映して、調整後排出量を減らすことができます。電気の排出係数を、証書を充当した分だけ低く計上できる仕組みです。
省エネ法の非化石エネルギー転換の目標設定でも、再エネ電気の利用は評価対象になっており、環境価値の調達が制度対応と直結する場面が増えています。報告実務では、証書の使用量・年度・使途を記録し、どの報告にどの価値を充当したかを整理しておくことが欠かせません。
RE100の15年ルール|「追加性」という新しい壁
環境価値の調達で近年最大の変化が、RE100の技術要件の改定です。2024年1月1日以降に始まる報告期間から、RE100で認められる再エネは原則として「運転開始(またはリパワリング完了)から15年以内」の発電設備に限定されました。いわゆる15年ルールです。
古い水力や、FIT開始初期の太陽光の証書は、この要件から外れていく可能性があります。背景にあるのは「追加性」の考え方です。既存の発電所の証書を買うだけでは新しい再エネは増えないため、新しい設備からの調達を促す狙いがあるとされています。なお、調達量の15%までは15年超の設備も認める例外(15%ルール)や、自家発電の扱いなどの経過措置も設けられています。
実務への示唆は明確です。RE100目線で長期の調達計画を立てるなら、証書の価格だけでなく「電源の運転開始年」も確認項目に加える必要があります。非FIT再エネ指定証書の需要が急増し上限価格に張り付いている一因も、この要件対応にあると指摘されています。
環境価値の買い方と費用感
4つの調達ルート
企業が環境価値を手に入れるルートは、実務上4つに整理できます。
電力会社の実質再エネプランに切替。手間最小
証書・クレジットを必要量だけ購入。柔軟
JEPX会員登録してFIT証書を入札。最安
電気と環境価値をセットで長期確保
①は電力契約の変更だけで済むため最も手軽ですが、単価には小売事業者の手数料が乗ります。③の直接購入は最も安い一方、会員登録・入札・システム対応の実務負担があります。②の仲介はその中間で、複数年・複数種類の価値をまとめて調達したい企業に向いています。④のPPAは環境価値と電気を長期に固定でき、15年ルールにも対応しやすい半面、契約期間が長く意思決定の難度が上がります。
費用感のシミュレーション
年間100万kWh(中規模オフィスビルや中小工場の規模感)を「実質再エネ化」する場合の費用を、概算で比べてみます。
| 手段 | 概算の追加費用(年間) | 前提 |
|---|---|---|
| FIT非化石証書を直接購入 | 約40万円〜 | 0.4円/kWh×100万kWh+手数料(0.001円/kWh) |
| グリーン電力証書 | 数百万円規模 | 数円/kWhの相対価格を想定 |
| Jクレジット(再エネ電力由来) | 200万円台〜の計算 | 排出係数を0.4kg-CO2/kWh台とすると約400t-CO2分×5,000〜6,000円/t |
同じ「100万kWh分の環境価値」でも、手段によって費用は桁が変わります。単価だけならFIT非化石証書が圧倒的に安いのが現状です。ただし前述のとおり、使える制度・トラッキングの有無・15年ルールへの適合性が異なるため、価格だけで選ぶと目的に合わない調達になりかねません。電気料金全体の水準感は電気料金の推移の解説記事もあわせてご覧ください。
なお、FIT非化石証書には費用面以外の意味もあります。FIT証書の売却収入は、再エネ賦課金(FIT制度の買取費用に充てるため電気料金に上乗せされている負担金)の軽減に充当される仕組みになっています。つまりFIT証書を買うことは、めぐりめぐって電気料金の国民負担を軽くすることにもつながるとされています。社内やステークホルダーへの説明で添えられる、知っておいて損のない論点です。
環境価値を調達する実務ステップ5つ
初めて環境価値を調達する企業向けに、実務の流れを5ステップで整理します。
RE100か、温対法の報告か、取引先への回答か。使う制度が決まれば、選べる証書の種類が絞られます。
対象拠点の年間電力使用量(kWh)を集計します。排出係数を掛ければCO2換算量も出せます。
量が多く継続的なら直接購入や仲介、少量・単発なら再エネメニューや証書の小口購入が現実的です。
トラッキングの有無、電源の運転開始年(15年ルール)、証書の対象年度を確認してから約定します。
証書番号・量・充当先を台帳化し、温対法・CDP・社内開示など各報告へ二重計上なく反映します。
つまずきやすいポイントと対策
環境価値の実務でよくあるつまずきを、対策とあわせて挙げます。
■ ダブルカウント(価値の二重主張)
同じ環境価値を複数の主体・報告で重複して主張することは認められません。たとえば再エネメニューで小売事業者がすでに証書を充当している電気に、自社でさらに証書を重ねても再エネ率は上がりません。誰がどの価値を主張しているかを契約書とメニュー内容で確認することが第一歩です。
■ 使途と証書のミスマッチ
「再エネ指定なし」の非化石証書はCO2ゼロエミの主張には使えますが、再エネの主張には使えません。RE100目的で買ってしまうと目的を果たせないため、購入前に使途を確定させておく必要があります。
■ 年度(対象期間)のずれ
証書には発電された年度・期間があり、報告対象期間との対応が求められます。期末になって「必要な年度の証書が市場にない」と慌てるケースがあるため、年4回のオークション日程から逆算した調達計画が有効です。
■ 「安いから」で選んで15年ルールに抵触
FIT証書は安価ですが、RE100の15年ルールの下では電源の運転開始年の確認が必要になりました。長期の再エネ戦略では、証書調達とあわせてPPAなど新設電源からの調達を組み合わせる企業が増えているとされています。
国際動向|海外の証書制度とGHGプロトコル改定
海外の環境価値証書(REC・GO・I-REC)
環境価値を証書化する仕組みは世界共通で、総称してEACs(エネルギー属性証書)と呼ばれます。北米のREC、欧州のGO(発電源証明)、その他の地域で広がるI-RECが代表格です。日本の非化石証書もEACsの一種と位置づけられます。
重要なのは、証書は「発電された市場(国・地域)」でしか使えないのが原則という点です。海外拠点の再エネ化には現地のEACsが必要で、日本の非化石証書を海外拠点に充当することはできません。グローバル企業は国・地域ごとに調達戦略を立てることになります。
アワリーマッチング|「いつの電気か」が問われる時代へ
現在の証書は「年間の総量」で電力使用量と突き合わせるのが基本です。これに対し、時間帯単位で再エネと使用量を一致させるアワリーマッチング(24/7カーボンフリー)の考え方が国際的に議論されています。GHGプロトコルのScope2ガイダンス改定でも主要論点のひとつです。
時間帯マッチングが標準になれば、夜間の電力を太陽光由来の証書でカバーするような調達は評価が下がる可能性があります。議論の行方と日本企業への影響は、アワリーマッチングとデリバラビリティの解説記事で詳しく整理しています。
まとめ|環境価値は「使う制度」から逆算して選ぶ
環境価値とは、電気から切り離して取引できる「CO2を出さない」価値のことです。日本では非化石証書・グリーン電力証書・Jクレジットの3類型があり、価格・量・使える制度がそれぞれ異なります。
実務の要点はシンプルで、「どの制度・報告に使うか」を先に決め、そこから使える証書と調達ルートを逆算することに尽きます。単価の安さではFIT非化石証書(0.4円/kWh前後)が主力ですが、RE100の15年ルールやアワリーマッチングの議論など、要件は年々厳しくなる方向にあります。価格だけでなく「将来も使い続けられる価値か」という視点を持って、調達計画を立てていきましょう。
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→ GHGプロトコル改定に企業はどう備える?|影響度チェックと今やるべき5つの準備
→ バーチャルPPAとは|仕組み・フィジカルPPAとの違い・会計処理と国内事例をわかりやすく解説
出典・参考資料(一次情報)
リンク先は2026年8月時点で確認した各機関の公開情報です。最新は各公式情報をご確認ください。
市場・制度: 日本卸電力取引所(JEPX)「非化石価値取引 市場情報」/ 環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度(SHK制度)」/ J-クレジット制度事務局/ 日本品質保証機構(JQA)「グリーンエネルギー証書制度」
国際イニシアティブ: RE100 Technical Guidance/ 自然エネルギー財団「自然エネルギーの電力は新設か運転開始15年以内に(RE100技術要件改定)」
よくある質問(FAQ)
Q. 環境価値と再エネ電気は何が違うのですか?
A. 再エネ電気は電気そのもの、環境価値は「CO2を出さない」という属性だけを切り離したものです。通常の電気に環境価値(証書)を組み合わせれば「実質再エネ」として扱われ、Scope2の報告などに使えます。
Q. 一番安く「実質再エネ100%」を達成する方法は?
A. 現状ではFIT非化石証書の活用が最安で、直近の約定価格は1kWhあたり0.4円前後です。JEPXでの直接購入は会員登録が必要なため、量が少ない場合は仲介事業者や小売電気事業者の実質再エネメニューを使うのが現実的です。
Q. 非化石証書はどの企業でも買えますか?
A. FIT非化石証書は、JEPXの再エネ価値取引市場に会員登録すれば一般企業(需要家)でも直接購入できます。一方、非FIT非化石証書を扱う高度化法義務達成市場は小売電気事業者のみが参加でき、一般企業は小売メニュー経由で間接的に調達します。
Q. RE100の15年ルールで、いま持っている証書は使えなくなりますか?
A. 2024年1月1日以降に始まる報告期間から、運転開始(またはリパワリング完了)から15年を超える電源の再エネは原則RE100の対象外になりました。ただし調達量の15%までは15年超の電源も認められるなどの例外があります。証書のトラッキング情報で電源の運転開始年を確認し、調達先の構成を見直すことをおすすめします。
Q. 証書を買えばカーボンニュートラルを名乗れますか?
A. 電気由来の排出(Scope2)は証書でゼロに近づけられますが、燃料の使用(Scope1)やサプライチェーン(Scope3)は対象外です。また表示にあたっては、根拠の明示など誤認を招かない説明が求められます。全体像はScope1〜3の整理とあわせて検討しましょう。
証書の買い方・PPA・料金の見直しまで、まとめて読む → 電力調達実務ガイド
最終更新日:2026年8月29日
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。