「再エネで事業を動かしている」と示したい。でも、自社で発電設備を持つのは難しい——。そんなとき使えるのが、再エネ電気の環境価値だけを証書にして売買するグリーン電力証書です。非化石証書と似ていますが、こちらは民間の第三者認証という、別の生い立ちを持つ仕組み。本記事では、その仕組みと、非化石証書・J-クレジットとの違いを、JQAなどの一次情報をもとに、わかりやすく解説します。
電気の環境価値を国の制度で扱う仕組みは非化石価値取引市場とは、企業の再エネ目標はRE100とはもあわせてご覧ください。
≡この記事の目次
- 1グリーン電力証書とは
- ►グリーン電力証書をひとことで言うと
- ►非化石証書との一番の違い――民間か、国の制度か
- 2仕組み――第三者認証で環境価値を証書にする
- ►第三者認証機関(JQA)が発電量を認証する
- ►購入すると、実質的に再エネを使ったとみなせる
- 3何が対象になるのか――電気と熱、そしてFITの扱い
- ►グリーン電力と、グリーン熱証書
- ►FIT電気が対象外になる理由
- 4非化石証書・J-クレジットとの違い
- ►認証主体・対象・買える人・有効期限の違い
- ►目的に合わせた使い分け
- 5何に使えるのか――RE100やカーボンオフセット
- ►CO2削減・RE100の報告に使う
- ►カーボンオフセットやイベントの再エネ利用
- 6メリットと課題
- ►個人も参加できる柔軟さと追加性
- ►価格・流通量という課題
- 7グリーン電力証書をどう捉えるか
- 8出典・参考(一次情報)
グリーン電力証書とは
まず、グリーン電力証書をひとことで整理します。「再エネ電気の環境価値を、民間の第三者認証で証書にしたもの」という発想から入りましょう。
グリーン電力証書をひとことで言うと
グリーン電力証書とは、太陽光や風力などの再エネで発電された電気が持つ「環境価値」を、電気そのものと切り離して証書にしたものです。環境価値とは、「CO2を出さずに発電された」という価値のこと。これを証書化し、企業や自治体、個人が買えるようにした仕組みです。
ポイントは、非化石証書と同じく、電気と環境価値を切り離せること。物理的に再エネ電気を引いてこなくても、証書を買えば、その分を実質的に再エネで賄ったとみなせます。発電設備を持たない企業でも、再エネの価値を手に入れられる——。これが、証書という仕組みの強みです。
非化石証書との一番の違い――民間か、国の制度か
ここで、よく似た非化石証書との最大の違いを押さえておきましょう。それは、誰が認証しているかです。グリーン電力証書は、民間の第三者認証機関である一般財団法人日本品質保証機構(JQA)の認証にもとづく、民間の仕組み。
一方、非化石証書は、資源エネルギー庁が関わる国の制度で、非化石価値取引市場で取引されます。グリーン電力証書のほうが歴史は古く、2000年代初頭から始まりました。「民間が育ててきた証書」と「国が制度化した証書」——。この出発点の違いが、対象や取引方法の違いにつながっています。
仕組み――第三者認証で環境価値を証書にする
グリーン電力証書は、どのように生まれ、どう使われるのでしょうか。認証から購入までの流れを見ていきます。
第三者認証で、環境価値を証書にする
1 再エネで発電
証書発行事業者が太陽光や風力などで発電
2 第三者が認証
JQAが発電量と環境価値を認証
3 証書を発行
契約量に応じて購入者へ発行
4 企業などが購入
その分を実質再エネで使ったとみなせる
電気そのものは動かさず、環境価値だけを切り離して取引する。
出典:日本品質保証機構(JQA)の公開情報をもとにgreenote作成
第三者認証機関(JQA)が発電量を認証する
グリーン電力証書の中心にあるのが、第三者による認証です。まず、証書発行事業者が、再エネの発電設備について認定を受けます。そのうえで、実際に発電した電力量を、第三者認証機関である日本品質保証機構(JQA)に申請し、認証を受ける。第三者が客観的にチェックすることで、証書の信頼性が担保されるわけです。
認証された電力量は、契約量に応じて購入者へ配分され、グリーン電力証書として発行されます。「確かに再エネで、これだけ発電された」という事実を、独立した機関が裏づける——。この第三者認証の仕組みが、グリーン電力証書の土台になっています。
購入すると、実質的に再エネを使ったとみなせる
では、買った側はどうなるのか。企業や自治体が証書を購入すると、その電力量分を、実質的に再エネで使ったとみなせるようになります。たとえば、ふだんは火力中心の電気を使っていても、使用量に見合うグリーン電力証書を買えば、その分を「再エネ由来」として扱える。
取引は、主に相対取引(売り手と買い手が個別に契約する形)で行われます。非化石証書のように市場で入札するのではなく、発行事業者や仲介事業者と直接やり取りするのが一般的です。証書の価格は、こうした相対の交渉や需給によって決まります。
何が対象になるのか――電気と熱、そしてFITの扱い
グリーン電力証書の対象は、再エネの電気だけではありません。また、FITで買い取られた電気の扱いには、重要なポイントがあります。
対象になるもの、ならないもの
対象になる
グリーン電力
太陽光・風力・水力・バイオマスなど、再エネ電気の環境価値。
グリーン熱
太陽熱やバイオマス熱などの熱の環境価値。あわせてグリーンエネルギー証書と呼ぶ。
対象にならない
FITで買い取られた電気
FITの費用は再エネ賦課金として国民が負担するため、環境価値は国民に帰属する。FIT非化石証書として国の制度で扱われ、二重計上を避けるためグリーン電力証書にはできない。
出典:日本品質保証機構(JQA)・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
グリーン電力と、グリーン熱証書
グリーン電力証書の対象は、まず再エネの電気(グリーン電力)です。太陽光・風力・水力・バイオマスなど、CO2を出さずに発電された電気の環境価値が、証書になります。
さらに、2009年4月からは、電気だけでなく熱も対象になりました。太陽熱やバイオマス熱などの環境価値を証書化したものが、グリーン熱証書です。電気と熱をあわせて、グリーンエネルギー証書と呼ばれます。再エネといえば電気が注目されがちですが、熱の脱炭素も扱える点は、グリーン電力証書の幅広さを示しています。
FIT電気が対象外になる理由
ここで、見落とされがちな重要なポイントがあります。それは、FIT(固定価格買取制度)で買い取られた電気は、原則グリーン電力証書にできないということです。なぜでしょうか。
理由は、FITの費用が、再エネ賦課金として国民全体で負担されているからです。みんなで費用を支えている以上、その環境価値は国民に帰属すると整理される。この価値は、国の制度であるFIT非化石証書として扱われます。同じ電気の環境価値を、グリーン電力証書としても発行すれば、二重計上になってしまう。だからグリーン電力証書は、FITに頼らない自家発電や自営の再エネ設備などの環境価値が中心になるのです。
非化石証書・J-クレジットとの違い
環境価値の証書には、グリーン電力証書のほかに非化石証書とJ-クレジットがあります。3つの違いを整理しましょう。
3つの環境価値証書、何が違う
グリーン電力証書
認証民間の第三者認証(JQA)
対象再エネの電気と熱
買える人企業・自治体・個人
取引主に相対取引
非化石証書
認証国の制度(資源エネルギー庁)
対象再エネと原子力など非化石電源
取引非化石価値取引市場の入札
期限有効期限あり
J-クレジット
認証国の制度
対象省エネや森林吸収などCO2削減全般
買える人一般企業も購入・転売できる
認証主体・対象・取引方法・買える人が異なる。目的に合わせて選ぶ。
出典:日本品質保証機構(JQA)・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
認証主体・対象・買える人・有効期限の違い
3つの証書は、いくつかの軸で違います。まず認証主体。グリーン電力証書は民間の第三者認証(JQA)ですが、非化石証書とJ-クレジットは国の制度です。次に対象。グリーン電力証書は再エネの電気と熱のみ。非化石証書は原子力など非化石電源も含み、J-クレジットは省エネや森林吸収などCO2削減全般まで広い。
買える人や取引方法も異なります。グリーン電力証書は企業・自治体・個人が相対取引で購入し、非化石証書は市場での入札を通じて取引され有効期限があります。J-クレジット(カーボンクレジット)は一般企業も購入・転売できる。同じ「環境価値の証書」でも、性格はかなり違うのです。
目的に合わせた使い分け
では、どう使い分けるのか。鍵は、自社の目的です。「再エネ100%(RE100)を示したい」なら、再エネ由来であることが明確な証書を選ぶ。「幅広くCO2を相殺したい」なら、削減プロジェクトまで対象とするJ-クレジットが向く場合もある。「国の義務達成」が目的の小売事業者なら、非化石証書を使う。
グリーン電力証書は、個人や小規模な主体でも参加しやすく、特定の再エネ設備の価値を顔の見える形で買える点が強みです。どれが優れているという話ではなく、目的と相手に合わせて選ぶ——。それぞれの証書の性格を理解することが、賢い活用の第一歩になります。
何に使えるのか――RE100やカーボンオフセット
グリーン電力証書は、企業や自治体の脱炭素の取り組みで、さまざまに使われています。主な使い道を見ていきます。
グリーン電力証書は、こう使う
CO2削減・RE100の報告
使う電気を実質再エネにして、温室効果ガスの排出量を抑える。要件を満たせばRE100やCDPの報告にも。
カーボンオフセット
自社の活動で出るCO2を、再エネの環境価値で埋め合わせる。
イベントや製品の再エネ利用
イベントの電力や製品づくりを再エネで賄ったと示し、価値を伝える。
発電設備を持たなくても、再エネの価値を活用して脱炭素を進められる。
出典:日本品質保証機構(JQA)・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
CO2削減・RE100の報告に使う
グリーン電力証書の代表的な使い道が、CO2削減とRE100の報告です。証書を使えば、使用する電気を実質的に再エネにでき、温室効果ガスの排出量の計算を抑えられます。要件を満たせば、RE100やCDPといった国際的な枠組みでの報告にも活用できる。
発電設備を持たない企業でも、証書を通じて脱炭素の実績を積み上げられるのが利点です。とくに、特定の発電所と結びついた証書を選べば、「どの再エネを応援しているか」を、取引先や消費者に具体的に示せる。環境への取り組みを、見える形でアピールできるわけです。
カーボンオフセットやイベントの再エネ利用
もう一つの使い道が、カーボンオフセットです。自社の事業活動で避けられないCO2排出を、再エネの環境価値で埋め合わせる。製品やサービスのライフサイクルで出る排出を、グリーン電力証書で相殺する取り組みも広がっています。
また、イベントや製品の再エネ利用を示すのにも使われます。「このイベントの電力は再エネで賄いました」「この製品は再エネでつくりました」——。グリーン電力証書を使えば、こうした表明が可能になる。発電設備の有無にかかわらず、再エネの価値を活用して、脱炭素のメッセージを発信できるのです。
メリットと課題
民間の仕組みならではの強みがある一方、グリーン電力証書には課題も残ります。両面から整理します。
強みと、これからの課題
メリット
民間の柔軟な仕組みで、企業だけでなく自治体や個人も参加しやすい。特定の再エネ設備の価値を顔の見える形で買える。新しい再エネを応援することにつながりやすい。
課題
主に相対取引のため価格がわかりにくく、流通量も限られる。市場で取引される非化石証書と比べて割高になる場合もある。認知度を高めることも課題。
強みと課題の両方を理解して、目的に合うかを見極めることが大切。
出典:日本品質保証機構(JQA)・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
個人も参加できる柔軟さと追加性
グリーン電力証書の強みは、民間ならではの柔軟さです。企業だけでなく、自治体や個人も参加しやすい。少量から購入でき、特定の発電所と結びついた証書を選べば、「この再エネを応援している」という実感も得やすい。顔の見える再エネ支援ができる点は、市場で大量取引される非化石証書にはない魅力です。
また、追加性の面でも意味があります。証書の購入が、新しい再エネ設備への投資や運営を後押しすることにつながりやすい。「再エネを使う」だけでなく、「再エネを増やす」ことに貢献できる可能性がある——。これは、環境価値の証書を選ぶうえで、重視されつつある視点です。
価格・流通量という課題
一方で、課題もあります。最大のものが、価格と流通量です。グリーン電力証書は主に相対取引のため、市場価格のように価格が見えにくい。発行量も、市場で大量に取引される非化石証書に比べると限られます。場合によっては、非化石証書より割高になることもある。
さらに、認知度の課題もあります。環境価値の証書は種類が多く、違いがわかりにくい。「どれを、どう使えばよいか」が伝わりきっていない面は否めません。とはいえ、脱炭素への関心が高まるなか、顔の見える再エネ支援という強みは、改めて注目されています。価格や流通の課題を乗り越えつつ、どう活用の裾野を広げるかが、これからの鍵です。
グリーン電力証書をどう捉えるか
グリーン電力証書は、再エネで発電された電気(と熱)の環境価値を、民間の第三者認証(JQA)のもとで証書にして取引する仕組みです。国の制度である非化石証書やJ-クレジットとは、認証主体や対象、取引方法が異なります。FIT電気は環境価値が国民に帰属するため対象外で、FITに頼らない再エネの価値が中心。RE100やカーボンオフセットなど、企業や自治体の脱炭素に幅広く使えます。
大切なのは、グリーン電力証書を「数ある証書の一つ」と流すのではなく、「顔の見える形で再エネを応援し、その価値を自社の脱炭素に活かせる仕組み」として捉えることでしょう。価格や流通量の課題はあるものの、個人や小規模な主体まで参加できる柔軟さは、ほかの証書にはない持ち味です。非化石証書やJ-クレジットとあわせて性格を理解すれば、自社に合った環境価値の選び方が見えてきます。ESGの全体像はESG完全ガイドもご覧ください。
再エネの環境価値を、切り離し、認証し、届ける。グリーン電力証書は、民間の力で再エネ利用の裾野を広げてきた、息の長い仕組みなのです。なお本記事は制度を中立に整理したものであり、最新の内容は日本品質保証機構(JQA)や資源エネルギー庁の公表資料でご確認ください。
あわせて読みたい:証書はどこで・どうやって買う?手順と使い分け → 再エネ証書の買い方|非化石証書・グリーン電力証書・J-クレジットの取得手順
よくある質問(FAQ)
Q. グリーン電力証書とは何ですか?
A. 太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電された電気が持つ『環境価値(CO2を出さないなどの価値)』を、電気そのものと切り離して証書にし、取引できるようにした民間の仕組みです。証書発行事業者が、第三者認証機関である日本品質保証機構(JQA)の認証を経て発行します。企業や自治体、個人が証書を購入すると、その分の電気を実質的に再エネで使ったとみなせます。
Q. グリーン電力証書と非化石証書は何が違うのですか?
A. 最大の違いは、認証する主体です。グリーン電力証書は民間の第三者認証(JQA)による仕組みで、非化石証書は国の制度(資源エネルギー庁・非化石価値取引市場)です。対象も異なり、グリーン電力証書は再エネの電気と熱のみですが、非化石証書は原子力など再エネ以外の非化石電源も含みます。また、グリーン電力証書は主に相対取引で、非化石証書は市場での入札を通じて取引されます。
Q. FITで買い取られた再エネ電気も、グリーン電力証書にできますか?
A. 原則できません。FIT(固定価格買取制度)で買い取られた電気は、その費用を再エネ賦課金として国民が広く負担しているため、環境価値は国民に帰属すると整理されています。この価値は国の制度であるFIT非化石証書として扱われるため、二重計上を避ける観点から、同じ電気をグリーン電力証書にはできません。グリーン電力証書は、FITに頼らない再エネ設備などの環境価値が中心です。
→ 環境価値とは|非化石証書・グリーン電力証書・Jクレジットの違いと買い方
出典・参考(一次情報)
- 一般財団法人日本品質保証機構(JQA)グリーンエネルギー認証「グリーン電力証書ガイドライン」
- 一般財団法人日本品質保証機構(JQA)「グリーン電力証書の概要について(PDF)」
- 日本自然エネルギー株式会社「グリーン電力証書システムとは」
- 資源エネルギー庁「電力・ガス(再生可能エネルギー・制度)」
最終更新日:2026年7月12日
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。