IEA「Electricity 2026」の要点|世界の電力需要の急拡大と再エネが石炭を追い抜く転換を解説

2026.08.06
再生可能エネルギー

最終更新日:2026年8月4日

世界の電力はいま、歴史的な転換期にあります。国際エネルギー機関(IEA)が公表した最新の年次報告「Electricity 2026」は、電力需要がかつてない速さで伸び、再生可能エネルギーが石炭を追い抜く局面に入ったことを示しました。

この記事では、Electricity 2026の要点を、数字を交えてわかりやすく整理します。電力需要の伸び、電源構成の変化、需要を押し上げる要因、そして系統(送電網)の課題まで、企業や実務担当者が押さえるべきポイントを中立的に解説します。あわせて、より広い見通しはWorld Energy Outlook 2025の要点もご覧ください。

※本記事はIEA「Electricity 2026」等の公表情報(2026年時点)に基づく要約・解説です。数値は前提や改定により変わります。正確な内容は必ずIEAの原典をご確認ください。特定の投資を推奨するものではありません。

Electricity 2026 の主なポイント(2026年時点)
年3.6%世界の電力需要の伸び
(2026〜2030年の平均)
約2.5倍エネルギー全体より
速い電力需要の伸び
50%2030年に再エネ+原子力
が占める発電比率
電力需要は急拡大し、再エネが石炭を追い抜く局面へ

この記事の目次

IEA「Electricity 2026」とは|世界の電力の最新見通し

「Electricity 2026」は、IEA(国際エネルギー機関)が毎年公表している電力分野の年次報告です。世界の電力需要と供給の実績、そして数年先までの見通しを、データにもとづいて示すものです。

IEAはエネルギー分野で国際的に参照される中立的な機関で、その見通しは各国の政策や企業の戦略の前提として広く使われています。今回の報告は、電力が脱炭素の主役になる「電化の時代」を数字で裏づける内容となっています。

電力需要の急拡大|年3.6%成長という速さ

報告の最大のメッセージは、世界の電力需要が急速に伸びていることです。2026年から2030年にかけて、世界の電力需要は年平均3.6%で伸びる見通しとされます。これは過去10年の平均を大きく上回るペースです。

特徴的なのは、電力需要がエネルギー需要全体よりずっと速く伸びる点です。2030年まで、電力はエネルギー全体の少なくとも約2.5倍の速さで伸びるとされています。社会の脱炭素が「電気で動かす」方向へ進んでいることの表れといえます。

再エネが石炭を追い抜く|2030年に再エネ+原子力で50%

供給側の最大の転換点は、再生可能エネルギーが石炭を追い抜こうとしていることです。2025年に世界の再エネ発電は石炭とほぼ並び、今後は追い抜いていく見通しです。

電源別の動向(IEA Electricity 2026より・要約)
電源別の動向の要約
電源Electricity 2026が示す動向
再生可能エネルギー2025年に石炭とほぼ並び、今後追い抜く見通し。太陽光は2025年に発電量が約600TWh増加=単一の電源として史上最大の単年増。
原子力再エネとともに拡大。2030年には再エネと合わせて世界の発電の50%(足元は約42%)。
天然ガス需要増の一部を補完する役割。
石炭今後はわずかに減少する見通し。需要増は主に再エネ・ガス・原子力で対応。

とくに太陽光の伸びは著しく、2025年の発電量の増加分は約600TWhと、単一の電源による単年の増加としては史上最大とされます。2030年には、再エネと原子力を合わせて世界の発電の50%(足元の約42%から上昇)を占める見通しです。

需要を押し上げる3つの要因|データセンター・電化・冷房

電力需要の急拡大を支えているのは、主に次の要因です。

  • データセンター・AI:AIの普及で電力消費が急増。世界のデータセンターの電力問題向け電力は2025年の約485TWhから、2030年には約950TWhへとほぼ倍増する見通しとされます。米国では今後の電力需要増の約半分がデータセンター起因とされます。
  • 電化(電化:産業・輸送・暖房などで、化石燃料から電気への切り替えが進む。
  • 冷房需要:気温上昇にともなうエアコン利用の増加も、需要を押し上げる要因とされます。

課題|系統と「柔軟性」への投資

需要と再エネが同時に急拡大するなかで、IEAが強く指摘するのが系統(送電網)と柔軟性への投資の必要性です。太陽光や風力は天候で出力が変わるため、需要と供給を時々刻々合わせる仕組みが欠かせません。

具体的には、系統増強や地域をまたぐ送電、蓄電池、需要側の調整(デマンドレスポンス)といった「柔軟性」を担う投資が追いつかないと、再エネの出力抑制や系統接続の遅れが起きかねません。データセンターの急増も、送電網の計画や許認可に負荷をかけているとされます。

電力システムの課題と対応

課題

再エネの変動。太陽光・風力は天候で出力が変わり、需要と供給を時々刻々合わせる仕組みが要る。

対応・動向

系統増強・地域間送電・蓄電池・デマンドレスポンスなど「柔軟性」への投資。

課題

投資が追いつかないリスク。データセンター急増も送電網の計画・許認可に負荷。出力抑制や接続遅れの恐れ。

対応・動向

系統計画と柔軟性への投資を前倒しで進める。

日本・企業への示唆

この潮流は、日本の企業にとっても他人事ではありません。次のような視点が重要になります。

  • 電力コストと調達:電力需要の拡大は価格や調達環境に影響しうる。再生可能エネルギー電力の確保やPPAなど、調達戦略の点検が重要。
  • 再エネ・洋上風力の拡大:供給側の主役が再エネへ移るなか、国内でも導入拡大と系統整備が課題。
  • ネットゼロとの整合:電力の脱炭素は自社のScope2削減に直結する。電源構成の変化を前提に目標を見直す。
  • 原子力の位置づけ次世代原子力(SMR)を含め、安定供給と脱炭素の両立をどう図るかの議論が続く。

まとめ|「電化の時代」を裏づける最新データ

IEA「Electricity 2026」は、世界の電力需要が年3.6%という速さで拡大し、再生可能エネルギーが石炭を追い抜く歴史的な局面に入ったことを示しました。2030年には再エネと原子力で世界の発電の半分を占める見通しです。

一方で、需要と再エネの急拡大に系統と柔軟性への投資が追いつくかが最大の課題です。データセンターや電化が需要を押し上げるなか、電力をどう賢く・クリーンに供給するかが、これからの脱炭素の焦点になります。企業は、電力コスト・調達・目標設定を、この最新データを前提に点検しておくことが求められます。

よくある質問(FAQ)

Q. IEA「Electricity 2026」とは何ですか?

IEA(国際エネルギー機関)が毎年公表している、世界の電力分野の年次報告です。電力需要・供給の実績と数年先までの見通しをデータで示し、各国の政策や企業戦略の前提として広く参照されます。

Q. 世界の電力需要はどれくらい伸びるのですか?

報告では、2026年から2030年にかけて世界の電力需要は年平均3.6%で伸びる見通しとされています。これはエネルギー需要全体の少なくとも約2.5倍の速さで、過去10年の平均を大きく上回るペースです。

Q. 再エネは本当に石炭を追い抜くのですか?

2025年に世界の再エネ発電は石炭とほぼ並び、今後は追い抜いていく見通しとされます。とくに太陽光の伸びが大きく、2030年には再エネと原子力を合わせて世界の発電の約50%を占めると見込まれています。

Q. なぜ電力需要が急に増えているのですか?

主な要因は、AI・データセンターの拡大、産業や輸送・暖房の電化、そして気温上昇による冷房需要の増加です。とくにデータセンター向け電力は2030年にかけてほぼ倍増する見通しとされます。

Q. 企業は何に注意すべきですか?

電力コストや調達環境の変化に備え、再エネ電力の確保や調達戦略を点検することです。電源構成の変化は自社のScope2排出にも直結するため、ネットゼロ目標の前提としても最新の見通しを踏まえることが重要です。

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出典・参考(一次情報)

※ 本記事はIEAの公表情報をもとにgreenote編集部が整理した要約・解説です。数値は改定されることがあります。正確・最新の内容は各公式サイトでご確認ください(IEAのサイトは環境により表示が制限される場合があります)。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月6日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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