「再エネ100%を対外的にうたいたい」「CDPやRE100の報告で再エネ調達を示したい」——そんなとき、電力契約を変えずに再エネの環境価値だけを調達できるのが証書(非化石証書・グリーン電力証書・J-クレジット)です。ただ、種類ごとに買い方も、使える報告先も異なるため、最初の選択を間違えると「買ったのに目的に使えない」ことが起こりえます。
この記事では、3種類の証書の違いと使い分け、それぞれの具体的な購入手順(どこで・いつ・どうやって買うか)、価格の目安、そして購入後に報告へ反映するまでの実務を、ステップ形式でわかりやすく解説します。
※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。市場のスケジュール・価格・制度上の扱いは変わります。最新・確定の内容は各公式情報をご確認ください。
この記事の目次
証書とは|「電気」と「環境価値」を分けて買う
再エネの電気には、「電気そのもの」と「CO2を出さずに作られたという環境価値」の2つの価値があります。証書は、この環境価値だけを切り出して取引できるようにした仕組みです。
証書を購入して自社の電力使用量に充当すれば、いまの電力契約を変えずに「再エネを使用した」と扱うことができます(GHG算定ではマーケット基準のScope2削減)。コーポレートPPAや再エネメニュー切替えに比べて、すぐ・少量から始められるのが証書の特徴です。一方で「新しい再エネ設備を増やす効果(追加性)」は限定的とされるため、調達戦略全体の中での位置づけを意識することが大切です。
3種類の証書の比較|どれを買うべきか
比較表(買い方・価格帯・使える報告先)
| 項目 | 非化石証書(FIT・トラッキング付) | グリーン電力証書 | J-クレジット(再エネ電力由来) |
|---|---|---|---|
| 買う場所 | JEPXのオークション(直接/仲介/小売経由) | 発行事業者と相対契約 | 入札販売・仲介事業者・相対 |
| 価格の目安 | 1kWhあたり1円未満の水準とされる(最低価格あり) | 相対価格(数円/kWh程度とされる) | 入札で変動(トン単位・種類で差) |
| 単位 | kWh | kWh | t-CO2 |
| 主な用途 | RE100・CDP・SHK(温対法)報告 | RE100・CDP・自主的なPR | SHK報告・カーボンオフセット(再エネ由来はRE100にも) |
| 向いている企業 | 量を安く確保したい | 発電所を指定してPRしたい | t-CO2単位でオフセットしたい |
それぞれの仕組みの詳細は、非化石価値取引市場・グリーン電力証書・カーボンクレジットの各記事で解説しています。
用途からの逆引き(RE100・CDP・温対法)
- RE100に使いたい → 再エネ由来かつ属性情報が分かるもの。実務ではトラッキング付きFIT非化石証書が主流とされ、グリーン電力証書・再エネ由来Jクレジットも使えるとされます。
- CDP・SBTの報告 → 上記と同様、再エネ属性が確認できる証書でマーケット基準Scope2を低減。
- 温対法(SHK制度)の報告 → 非化石証書・Jクレジット等を調整後排出量に反映可能とされます(種類ごとの扱いは制度の最新ルールを確認)。
- 製品・イベントのPR → 発電所を指定できるグリーン電力証書が向く場面が多いとされます。
非化石証書の買い方|JEPXオークション
3つの購入ルート(直接・仲介・小売メニュー)
直接購入の手順(会員登録から約定まで)
JEPX会員登録
(再エネ価値取引会員)
必要量の算定
(対象拠点のkWh)
オークション入札
(年4回程度)
約定・支払い
トラッキング割当
報告に反映
証憑を保存
ポイントは3つです。第一に、需要家が直接買えるのはFIT非化石証書(再エネ価値取引市場)で、オークションは年4回程度開かれるとされます(スケジュールはJEPXが公表)。第二に、RE100等に使うならトラッキング(発電所情報の割当)付きを選ぶこと。第三に、証書は年度をまたぐ繰り越しに制約があるとされるため、対象年度の使用量に合わせて計画的に購入することです。
グリーン電力証書の買い方|発行事業者との契約
グリーン電力証書は、証書発行事業者(日本自然エネルギーなど複数社)と相対で契約して購入します。第三者認証(一般財団法人日本品質保証機構=JQAの認証制度)により、発電設備・電力量の実在性が担保される仕組みです。
発行事業者に見積依頼
(量・発電種・期間)
契約・支払い
証書の発行
(発電所・期間が明記)
報告・PRに活用
価格は相対のため公表水準はありませんが、非化石証書より高い数円/kWh程度とされることが多いです。その分、「どの発電所の電気か」を指定でき、イベントの再エネ化や製品のPRなど、ストーリー性が必要な場面に向いています。
J-クレジット(再エネ由来)の買い方
J-クレジットは、国が認証する削減・吸収量のクレジットです(単位はkWhでなくt-CO2)。購入ルートは、①事務局が実施する入札販売、②仲介事業者(プロバイダー)からの購入、③創出者との相対取引の3つが基本です。
注意したいのは種類です。J-クレジットのうち「再生可能エネルギー(電力)由来」のクレジットだけがRE100・CDPの再エネ調達に使えるとされ、省エネ由来・森林由来は用途が異なります。温対法(SHK制度)の調整後排出量への反映やカーボンオフセットには幅広く使えるため、「t-CO2でのオフセットならJ-クレジット、kWhでの再エネ化なら証書」と覚えると整理しやすいです。
購入後の実務|報告への反映と証拠の保存
- 年度と量の対応づけ:証書のkWhを、対象年度・対象拠点の電力使用量と対応させる(超過分は原則翌年度に使えないとされる)。
- Scope2(マーケット基準)への反映:GHG算定で、証書分の排出係数をゼロ(または調整後係数)として計算。
- 証憑の保存:約定通知・トラッキング情報・証書PDFは、CDP回答や第三者検証で求められるため必ず保管。
- 開示での表現:「再エネ100%」等の表現は、対象範囲(拠点・期間)を明確に。誇張はグリーンウォッシュと受け取られるリスクがあります。
まとめ
- 証書は「電気はそのまま・環境価値だけを調達」する手段。すぐ・少量から始められる。
- 量を安くなら非化石証書(JEPX・年4回程度のオークション/トラッキング付きを)、発電所指定のPRならグリーン電力証書、t-CO2のオフセットならJ-クレジット。
- 購入ルートは直接・仲介・小売メニューの3つ。初回は仲介や小売経由が始めやすい。
- 購入後は年度対応・Scope2反映・証憑保存までが実務。用途に使えない証書を買わないよう、目的から逆引きで選ぶ。
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→ 環境価値とは|非化石証書・グリーン電力証書・Jクレジットの違いと買い方
出典・参考資料(一次情報)
リンク先は2026年時点で確認した各機関の公開情報です(政府系サイトは自動アクセス制限がありブラウザでご覧ください)。制度・スケジュールは変わるため、最新は各公式情報をご確認ください。
JEPX(日本卸電力取引所)|非化石価値取引/ 資源エネルギー庁|FIT制度・非化石価値関連/ JQA|グリーンエネルギー認証/ J-クレジット制度(事務局)
よくある質問(FAQ)
Q. 非化石証書は企業(需要家)が直接買えますか?
A. 買えます。FIT非化石証書は、JEPXの再エネ価値取引市場に需要家として会員登録すれば、年4回程度のオークションで直接購入できるとされます。少量の場合や初回は、仲介事業者や小売電気事業者の再エネメニュー経由が始めやすい選択肢です。
Q. RE100に使えるのはどの証書ですか?
A. 再エネ由来で属性情報が確認できるものが対象とされ、実務ではトラッキング付きFIT非化石証書が主流です。グリーン電力証書や、J-クレジットのうち再生可能エネルギー(電力)由来のものも使えるとされます。省エネ由来・森林由来のJ-クレジットは対象外です。
Q. 証書の価格はどれくらいですか?
A. 目安として、FIT非化石証書は1kWhあたり1円未満の水準(最低価格あり)、グリーン電力証書は相対で数円/kWh程度、J-クレジットは入札等で変動(t-CO2単位)とされます。時期・種類で変わるため、最新の約定結果や見積での確認が必要です。
Q. 買った証書はいつの排出量に使えますか?
A. 原則として対象年度の電力使用量に対応させる必要があり、年度をまたぐ繰り越しには制約があるとされます。使用量の見込みに合わせて年度内のオークションで計画的に調達し、約定通知やトラッキング情報を証憑として保存してください。
最終更新日:2026年8月27日
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