「電気代が上がった」と感じるのは気のせいではありません。日本の電気料金は、東日本大震災後と2022年前後の2度の大きな上昇を経て、家庭用でこの15年に約5割、産業用で約8割上がった水準にあるとされます。
この記事では、家庭用・産業用の電気料金の長期推移をグラフで確認し、単価を押し上げてきた3つの要因(燃料費・再エネ賦課金・託送料金)、主要国との国際比較、そして企業・家庭それぞれの対策までを、データでわかりやすく整理します。
※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく解説です。単価は平均値の推計であり、契約条件・地域により異なります。最新・確定の数値は資源エネルギー庁等の公式情報をご確認ください。
この記事の目次
電気料金の推移|15年をグラフで見る
家庭用・産業用の単価推移(2010〜2024年度)
まず全体像です。下のグラフは、家庭用(電灯)と産業用(電力)の平均単価の推移を示したものです(各種公表データからの推計値・円/kWh)。
2010年度の水準は家庭用が約19〜20円/kWh、産業用が約13円/kWh。それが2022年度には家庭用約31円、産業用約23円まで上昇したとされます。その後はやや落ち着いたものの、2010年度比では家庭用で約5割、産業用で約8割高い水準が続いています。
2つの上昇局面(震災後・2022年前後)
推移を見ると、上昇は2つの局面に分かれます。1度目は東日本大震災後(2011〜2014年度)。原子力発電所の停止で火力発電の割合が高まり、燃料費の増加が単価を押し上げました。2016年度前後には原油安でいったん低下しています。
2度目は2021〜2023年度です。世界的なLNG・石炭価格の高騰にロシアのウクライナ侵攻と円安が重なり、2022年度は家庭用・産業用とも過去最高水準に達したとされます。とくに市場価格に連動する契約や新電力の一部では、値上げや事業撤退が相次ぎました。
なぜ上がるのか|単価を動かす3つの要因
①燃料費(LNG・石炭と為替)
日本は発電の多くを火力に頼り、その燃料(LNG・石炭・石油)はほぼ輸入です。燃料の国際価格と為替(円安)が、燃料費調整額を通じて毎月の電気代に反映されます。2022年の高騰の主因はこれで、電気料金が「エネルギーの安全保障」と直結していることを示しました。
②再エネ賦課金(2026年度は4円台に)
再エネの固定価格買取(FIT)を支える再エネ賦課金は、使用量に応じて全員が負担する仕組みです。単価は制度開始の2012年度0.22円/kWhから上昇を続け、2026年度は4円台と過去最高を更新したとされます(2023年度のみ市場価格高騰の反動で1.40円に低下)。
③託送料金と政府補助
送配電網の利用料である託送料金も、系統増強や設備の更新費用を反映して見直されていきます。一方で2023年以降は、政府の激変緩和措置(電気・ガス料金の補助)が断続的に実施され、家計・企業の負担を一時的に抑えてきました。補助は恒久的ではないため、「補助が切れると上がって見える」変動も起きています。
国際比較|日本の電気料金は高いのか
「日本の電気代は世界一高い」と言われることがありますが、直近のデータでは正確ではありません。IEA等のデータにもとづく比較では、おおむね次の構図とされています。
| 国 | 家庭用電気料金の水準(日本比・目安) |
|---|---|
| ドイツ | 日本より約5〜6割高い(主要国で最高水準。税・賦課金が重い) |
| 英国 | 日本よりやや高い〜同水準 |
| 日本・フランス | 中位グループでほぼ同水準 |
| 米国 | 日本の半分程度(国産の安価なガス・電源が豊富) |
| 韓国 | 日本より大幅に安い(政策的に低く抑制) |
つまり日本は「最高ではないが、安くもない」中位です。ただし産業用では、エネルギーを輸入に頼る構造上、米国などとの差が製造業のコスト競争力に効いてくる——という文脈で語られることが多く、エネルギー基本計画でも電力コストは主要論点になっています。欧州各国の背景はドイツ・フランスの電力事情の記事で詳しく解説しています。
今後の見通し
断定はできませんが、押さえておきたい構造要因は次のとおりです。
- 上げ方向:再エネ賦課金の高止まり/送配電網の増強・更新による託送料金/脱炭素投資のコスト(カーボンプライシングの本格化)/データセンター等による電力需要の増加。
- 下げ方向:燃料価格の落ち着き/再エネ・原子力など燃料費のかからない電源の拡大/FIT買取期間の順次終了による賦課金のピークアウト(2030年代とされる)。
- 変動要因:為替と国際情勢。輸入燃料に頼る限り、地政学リスクは常に電気代に直結します。
企業・家庭ができる対策
- 契約の見直し:調達先の比較と契約形態(固定型・市場連動型)の選択。切替え手続き自体は申込み1回で完結します。
- 省エネ・需要の最適化:省エネ法対応と一体で、使用量そのものと使う時間帯を見直す。
- 自家消費・長期固定:屋根置き太陽光やコーポレートPPAで、市場価格に左右されない電源を長期に確保する(電気代高騰への実質的なヘッジ)。
- 環境価値との一体設計:どうせ見直すなら、非化石証書や再エネメニューを組み合わせ、コスト対策と脱炭素・RE100対応を同時に進める。
まとめ
- 電気料金は震災後と2022年前後の2度の局面で大きく上昇。2010年度比で家庭用約5割・産業用約8割高い水準とされる。
- 単価を動かすのは燃料費(為替含む)・再エネ賦課金・託送料金の3要素+政府補助。
- 賦課金は2012年度0.22円→2026年度4円台と過去最高を更新。ピークアウトは2030年代と見込まれる。
- 国際的にはドイツ・英国より安く、米国・韓国より高い中位。産業競争力の文脈で論点に。
- 対策は契約見直し×省エネ×自家消費・PPA。コスト対策と脱炭素は一体で設計するのが得策。
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出典・参考資料(一次情報)
リンク先は2026年時点で確認した公的機関等の公開情報です(エネ庁サイトは自動アクセス制限があるためブラウザでご覧ください)。数値は推計を含み、最新は公式情報をご確認ください。
資源エネルギー庁・関連機関: エネルギー白書(電気料金の推移)/ エネ庁|電気料金の国際比較(3E+S)/ エネ庁|再エネ賦課金単価/ JEPX(日本卸電力取引所)
よくある質問(FAQ)
Q. 電気料金はこの15年でどれくらい上がりましたか?
A. 平均単価の推計では、家庭用は2010年度の約19〜20円/kWhから2022年度に約31円まで上昇し、その後も2010年度比で約5割高い水準とされます。産業用は約13円から約23円前後へと、約8割高い水準です。
Q. なぜ2022年に電気代が急騰したのですか?
A. 世界的なLNG・石炭価格の高騰に、ロシアのウクライナ侵攻と円安が重なったためです。輸入燃料のコストが燃料費調整額を通じて電気料金に反映され、家庭用・産業用とも過去最高水準に達したとされます。
Q. 日本の電気料金は世界一高いのですか?
A. いいえ。IEA等のデータにもとづく比較では、ドイツ(日本より5〜6割高い)や英国の方が高く、日本はフランスと並ぶ中位グループです。一方、米国は日本の半分程度、韓国はさらに安い水準とされます。
Q. 再エネ賦課金は今後も上がり続けますか?
A. 2026年度は4円台と過去最高を更新しましたが、FIT(固定価格買取)の買取期間が順次終了していくため、2030年代にはピークアウトすると見込まれています。確定した単価は毎年3月頃に国が公表します。
最終更新日:2026年8月27日
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ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。