中東・アフリカの電力事情とは|産油国の再エネ転換とアフリカの電力を解説

再生可能エネルギー

最終更新日:2026年8月4日

世界有数の産油国が集まる中東と、電力アクセスの拡大が課題のアフリカ。一見対照的なこの地域は、いま大きく動いています。湾岸諸国は世界最安級の太陽光や原子力に投資し、南アフリカは石炭依存からの転換を迫られ、ケニアは地熱でクリーンな電力を実現しています。

この記事は、世界の電力事情を地域別にみるシリーズの一編(中東・アフリカ編)です。北米の電力事情欧州の電力事情東アジア・オーストラリアの電力事情南アジア・東南アジアの電力事情南米の電力事情に続き、UAE・サウジ・南アフリカ・エジプト・ケニアなどの電源構成、各国の数値、電力の自由取引、外資の参入、日本との制度の違いまでを整理します。

※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。電源構成の数値や市場制度・政策は年・統計・情勢によって変わるため、最新・確定の内容は各公式情報をご確認ください。特定の国・企業への投資を推奨するものではありません。

中東・アフリカの電力事情|3つの特徴
産油国の再エネ転換湾岸諸国が、化石燃料に加え世界最安級の太陽光や原子力に大規模投資
石炭とアクセスの課題南アフリカは石炭依存と電力危機、多くのアフリカ諸国は電力アクセス不足
地熱・水力の潜在力ケニアの地熱やアフリカの水力など、クリーンな資源も豊富

この記事の目次

中東・アフリカの電力事情とは|産油国の転換とアフリカの現実

産油国の再エネ転換

中東の湾岸諸国は、世界有数の産油・産ガス国です。発電はいまも天然ガス・石油が中心ですが、近年は方向転換が進んでいます。豊富な日射を生かした太陽光の大型入札で世界最安値を更新し、UAEは原子力(バラカ)も導入。石油収入に頼る経済からの多角化と、脱炭素を同時に進めようとしています。

アフリカの多様な電力

一方アフリカは、国によって事情が大きく異なります。南アフリカは石炭に依存し電力危機を抱え、多くのサハラ以南の国では電力アクセスの不足が課題です。他方、ケニアの地熱やエチオピアの水力のように、クリーンな電力を持つ国もあります(IEA「Electricity 2026」)。

電源構成|化石燃料中心と再エネ・地熱

国ごとの3つのタイプ

この地域の電源構成は、国によって大きく異なります。大きく3つのタイプに整理できます。

中東・アフリカの電源|3つのタイプ
産油国の転換

UAE・サウジアラビア

石油・ガスが柱だが、世界最安級の太陽光や原子力(UAEバラカ)に大規模投資。水素輸出も視野。

石炭大国

南アフリカ

電源の大半が石炭。老朽化と電力危機(計画停電)を抱え、国際支援JET-Pで脱石炭を模索。

地熱・水力

ケニア・東アフリカ

ケニアは地熱が電源の柱でクリーン。水力も豊富。一方、電力アクセスの拡大が課題。

湾岸の産油国はガス・石油中心ながら太陽光・原子力に投資、南アフリカは石炭大国、ケニアなど東アフリカは地熱・水力でクリーン——といった違いがあります。資源と経済段階の差が、電源構成に色濃く表れています。

各国の電源構成を数値でみる|火力・原子力・太陽光・地熱ほか

主要国の電源構成

各国の電源構成を、数値で見てみましょう。下のグラフは、発電量に占める電源別のおおよその割合です。数値は年や統計により変わるため、あくまで概数としてご覧ください。

主要国の電源構成(発電量に占める割合・概数)
火力原子力風力太陽光水力地熱ほか
UAE
サウジアラビア
南アフリカ
エジプト
ケニア

概数(年により変動)。「地熱ほか」はバイオマス等も含む。出典:Ember・IEA等の公開データをもとにgreenote作成

中東・アフリカ全体の電源構成の推移を概観します(産油国・アフリカ諸国の合計イメージ)。石油・ガスを中心とする火力が大半ですが、太陽光を中心に再エネが立ち上がりつつあります。

中東・アフリカ全体の電源別シェアの推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)|地域全体のイメージ(凡例の%は近年の値)
0%20%40%60%80%201020152020近年
火力 80%原子力 2%風力 4%太陽光 6%水力 6%地熱ほか 2%

地域全体の概数(年・国により変動/各年の合計はおおむね100%)。出典:Ember等の公開データをもとにgreenote作成

サウジアラビアやエジプト、UAEは火力(石油・ガス)が大半を占めます。南アフリカは石炭が突出。対照的に、ケニアは地熱・水力・風力が中心で、クリーンな電力を実現しているのが際立ちます。UAEは原子力が2割程度を占める点も特徴です。

南アフリカの推移

次に、時間の経過とともに構成がどう変わってきたかを見てみます。ここでは、脱石炭が課題の南アフリカについて、石炭と風力・太陽光の推移を示します。

南アフリカの発電:石炭と風力・太陽光の推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)の変化
3%85%
7%82%
12%78%
2015年ごろ2020年ごろ近年
風力+太陽光石炭

概数(年により変動)。出典:Ember等の公開データをもとにgreenote作成

南アフリカは、石炭が依然として圧倒的な柱で、その割合は高止まりしています。一方、風力・太陽光は着実に伸びてきました。電力危機のなかで再エネ拡大が急がれていますが、石炭からの転換には時間がかかることが読み取れます(いずれも概数)。

国別の推移

国ごとに推移を見ると、伸び方はさまざまです。下のグラフは、主要国の発電に占める「風力+太陽光」の割合の推移です。

主要国の「風力+太陽光」比率の推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)
0%5%10%15%201020152020近年12%10%7%3%
南アフリカエジプトUAEサウジアラビア

概数(年により変動)。出典:Ember等の公開データをもとにgreenote作成

南アフリカ・エジプトが緩やかに伸び、UAEも太陽光で追い上げています。サウジアラビアは出発が遅かったものの、大型計画で立ち上がりつつあります(いずれも概数)。

各国の特徴|湾岸・南アフリカ・東アフリカ

中東(UAE・サウジ)|産油国の太陽光・原子力

UAEとサウジアラビアは、化石燃料に依存しつつも、脱炭素と経済多角化を旗印に大きく動いています。UAEはアブダビの大規模太陽光で世界最安級の入札価格を記録し、原子力発電所(バラカ)も稼働させました。サウジアラビアも「ビジョン2030」のもと、大型の太陽光・風力計画やスマートシティ「NEOM」でグリーン水素の製造・輸出を掲げています。産油国が、次の時代のエネルギー輸出国をめざす動きです。

南アフリカ|石炭大国と電力危機

南アフリカは、電源の大半を石炭に頼るアフリカ最大級の電力市場です。国営電力会社エスコム(Eskom)の発電所の老朽化などから、計画停電(ロードシェディング)が長く続いてきました。この状況を変えるべく、先進国が資金を支援する「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JET-P)」の対象国となり、雇用に配慮しながら脱石炭と再エネ拡大を進めようとしています。

東アフリカ|ケニアの地熱

ケニアは、アフリカのなかでもクリーンな電力を持つ国として知られます。大地溝帯(グレートリフトバレー)の地熱資源を生かし、電源の多くを地熱でまかない、水力・風力も加わります。一方、多くのアフリカ諸国では、そもそも電気を使えない人々が多く、電力アクセスの拡大が最優先の課題です。オフグリッドの太陽光やミニグリッドが、その解決策として広がっています。

電力の自由取引|国営とIPP・入札

各国の市場のかたち

この地域の電力は、国営の関与が強く、そこに独立系発電事業者(IPP)の競争入札を組み合わせる形が主流です。

  • UAE・サウジアラビア:国が主導しつつ、発電はIPPの国際競争入札で調達。太陽光で世界最安値を更新してきた。
  • 南アフリカ:国営エスコムが中心だが、再エネ独立発電事業者調達プログラム(REIPPPP)で民間・外資の発電が拡大。
  • アフリカ諸国:多くが国営電力会社中心。IPPや国際機関の支援で発電を増やす国が多い。
  • 日本JEPX(日本卸電力取引所)が卸取引を担い、広域機関(OCCTO)が全国の需給を調整する。

域内連系(GCC・アフリカ)

国境を越えた連系も進んでいます。湾岸協力会議(GCC)の各国は送電網で結ばれ、電力を融通できます。アフリカでも、南部アフリカ電力プール(SAPP)や東アフリカの連系など、地域ごとに電力を共有する枠組みが育っています。島国の日本とは異なる、域内連系の広がりです。

外資の参入状況|市場の開放度と日本企業

再エネIPPは国際入札で開放

この地域では、再エネの発電事業(IPP)が国際的な競争入札で開かれ、外資が活発に参入しています。とくに湾岸の太陽光入札には、欧州・中国・韓国・日本などの企業が競い合い、世界最安級の価格を生み出してきました。南アフリカのREIPPPPにも、多くの外資が参加しています。

一方で、送配電などの基幹インフラは国営が担う国が多く、外資の関与は発電が中心です。国によっては政情・治安・為替のリスクもあり、案件ごとの見極めが欠かせません。

外資にとっての参入機会と留意点

参入機会

  • 再エネIPPの国際入札で参入余地が大きい
  • 世界最安級の太陽光(湾岸)
  • 水素・アンモニアなど輸出向けの新分野

留意点

  • 政情・治安・為替のリスク(国による)
  • 国営の関与が強く送配電は限定的
  • 電力アクセス・支払い・水リスク

開放度や規制は国・年により変わります。最新・確定の内容は各国の公式情報でご確認ください。

日本企業(商社・電力)の動き

日本の総合商社(丸紅・住友商事・三菱商事など)やJERA・電力会社は、中東の発電・海水淡水化を組み合わせたIPPに古くから関与してきました。近年は、湾岸の太陽光や、グリーン水素アンモニア(燃料・水素キャリア)の輸出プロジェクトへの参画も進んでいます。資源と再エネの供給元として、この地域の重要性は高まっています。なお各社の個別戦略は変化するため、最新は各社の開示をご確認ください。

日本との制度比較|市場・自由化・国際連系の違い

この地域の主要国と日本を、制度面で並べてみましょう。

中東・アフリカの主要国と日本|電力制度の比較
観点UAEサウジアラビア南アフリカ日本
市場の形態国主導+IPP(競争入札)国営中心+IPP国営Eskom中心+IPP拡大
小売の自由化限定的限定的限定的(改革の議論中)
主力電源ガス+原子力石油・ガス石炭
国際連系湾岸(GCC)で連系GCCで連系南部アフリカ電力プール(SAPP)
再エネの勢い太陽光が急拡大(入札で最安値)大型計画が始動拡大途上(電力危機が壁)

国営の関与が強い点や、小売自由化が限定的な点は、全面自由化した日本と異なります。一方、湾岸のGCCやアフリカの電力プールのように、島国の日本にはない域内連系がある点は、欧州の電力事情南米の電力事情とも共通する特徴です。

この地域が抱える課題|電力アクセス・水・系統

多様なこの地域には、いくつかの大きな課題があります。

中東・アフリカの電力が抱える課題

課題

電力アクセスの不足。サハラ以南アフリカを中心に、電気を使えない人々がなお多い。

論点

送電網に加え、オフグリッド太陽光やミニグリッドで電化を広げる。

課題

石炭依存と電力危機。南アフリカは老朽石炭に依存し、計画停電が続いてきた。

論点

JET-Pなど国際支援を活用し、雇用に配慮しながら脱石炭と再エネ拡大を進める。

課題

水と系統の制約。乾燥地では発電・冷却の水確保が難しく、系統整備も途上。

論点

海水淡水化との連携や、系統・連系の増強を進める。

最大の課題の一つが、電力アクセスの不足です。サハラ以南アフリカでは、いまも電気を使えない人々が多く、送電網とオフグリッド(分散型)の両面で電化を広げる必要があります。南アフリカの石炭依存と電力危機、乾燥地での水の制約も重い課題です。豊富な太陽光・地熱を、いかに人々の生活と産業に届けるかが問われています。

日本企業への示唆|中東・アフリカでの電力事業

中東・アフリカは、日本企業にとって、発電事業の投資先であり、将来のエネルギー・重要鉱物の供給元でもあります。湾岸の太陽光・水素、アフリカの再エネや鉱物は、脱炭素とサプライチェーンの両面で重要性を増しています。

再エネIPPの国際入札は、日本勢にとって参入の機会が大きい分野です。一方、政情・為替・電力アクセスといった固有のリスクもあります。グリーン水素アンモニア(燃料・水素キャリア)の輸入元としての可能性も含め、機会とリスクを見極めた長期の関与が求められます。

まとめ|化石燃料からの転換と電力アクセス

中東・アフリカは、産油国の再エネ転換、南アフリカの脱石炭、アフリカの電力アクセス拡大という、性格の異なる動きが同時に進む地域です。世界最安級の太陽光やケニアの地熱など、クリーンな潜在力も大きく、外資も活発に参入しています。

化石燃料からの転換と、すべての人への電力アクセス——この二つをどう両立させるかが、地域の未来を左右します。世界の電力事情シリーズは、北米の電力事情欧州の電力事情東アジア・オーストラリアの電力事情南アジア・東南アジアの電力事情南米の電力事情とあわせてご覧ください(World Energy Outlook 2025)。

よくある質問(FAQ)

Q. 中東・アフリカの電力事情の特徴は何ですか?

産油国の再エネ転換、南アフリカの石炭依存と電力危機、多くのアフリカ諸国の電力アクセス不足という、性格の異なる動きが同時に進むのが特徴です。湾岸の世界最安級の太陽光やケニアの地熱など、クリーンな潜在力も大きい地域です。

Q. 湾岸の産油国はなぜ再エネに投資するのですか?

豊富な日射で太陽光を安く発電でき、石油を輸出に回せること、脱炭素と経済多角化を同時に進められることが背景です。UAEは原子力(バラカ)も導入し、サウジは大型の太陽光・風力計画や水素輸出構想を掲げています。

Q. 南アフリカの電力危機とは何ですか?

電源の大半を占める石炭火力発電所(国営エスコム)の老朽化などから、電力供給が需要に追いつかず、計画停電(ロードシェディング)が長く続いてきた問題です。先進国が支援するJET-Pのもと、脱石炭と再エネ拡大が模索されています。

Q. ケニアの電力がクリーンなのはなぜですか?

大地溝帯(グレートリフトバレー)の豊富な地熱資源を生かし、電源の多くを地熱でまかなっているためです。水力・風力も加わり、アフリカのなかでもクリーンな電力構成を持つ国として知られます。

Q. この地域の電力取引はどうなっていますか?

国営の関与が強く、発電を独立系発電事業者(IPP)の国際競争入札で調達する形が主流です。湾岸の太陽光入札は世界最安値を更新し、南アフリカはREIPPPPで民間・外資の発電を拡大してきました。GCCや南部アフリカ電力プールなど域内連系も進んでいます。

Q. 外資はどのくらい参入していますか?

再エネの発電事業(IPP)に、欧州・中国・韓国・日本などの企業が国際入札で活発に参入しています。一方、送配電など基幹インフラは国営が担う国が多く、外資の関与は発電が中心です。政情・為替リスクもあり案件ごとの見極めが必要です。

Q. この地域の電力が抱える課題は何ですか?

サハラ以南アフリカを中心とする電力アクセスの不足、南アフリカの石炭依存と電力危機、乾燥地での水と系統の制約が主な課題です。送電網とオフグリッドの両面で電化を広げることが求められています。

Q. 日本企業は中東・アフリカとどう関わっていますか?

日本の商社やJERA・電力会社が、中東の発電・海水淡水化IPPに古くから関与し、近年は湾岸の太陽光や水素・アンモニアの輸出プロジェクトにも参画しています。将来のエネルギー・重要鉱物の供給元としても重要性が高まっています。

出典・参考資料(一次情報)

※ 本記事は上記の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した一般的な解説です。電源構成・市場制度・政策は年・統計・情勢で変わるため、最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月14日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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