Scope3カテゴリ4(輸送・配送<上流>)の算定方法|トンキロを使う距離ベース法と計算ステップを実務目線で解説

2026.07.02
Scope3

原材料や部品を運ぶトラック、船、鉄道——。モノを運べば、必ずCO2が出ます。この物流に伴う排出を計上するのが、Scope3カテゴリ4「輸送・配送(上流)」です。比較的とっつきやすく、削減策(モーダルシフトなど)に直結するカテゴリでもある。本記事では、Scope3カテゴリ1カテゴリ11に続き、カテゴリ4の3つの算定方法と、主流の距離ベース法(トンキロ)の計算ステップを、環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォームやGHGプロトコルの一次情報をもとに、実務目線で解説します。

この記事の目次

Scope3カテゴリ4(輸送・配送<上流>)とは

まず、カテゴリ4が何を対象とするのかを整理します。「自社が費用を負担する、上流の物流」という発想から入りましょう。

カテゴリ4に含まれるもの

カテゴリ4「輸送・配送(上流)」とは、報告年に企業が購入した輸送・配送サービス(自社が費用を負担する物流)や、一次サプライヤーと自社の間の物流などに伴う排出のことです。たとえば、原材料や部品を自社の工場へ運ぶトラック輸送、購入した倉庫・配送サービスなどが典型例です。モノを運ぶために消費される燃料から出るCO2を計上します。

ポイントは、これが上流(サプライチェーンのさかのぼった側)の物流だという点です。Scope3とは15カテゴリのうち、カテゴリ1(購入した製品・サービス)が「買ったモノそのもの」の排出なら、カテゴリ4は「そのモノを運ぶ」排出にあたります。両者は関係が深く、あわせて把握すると調達全体の排出像が見えてきます。

カテゴリ9(下流の輸送・配送)との違い

よく迷うのが、カテゴリ9「輸送・配送(下流)」との線引きです。実務上のシンプルな目安は、「その輸送費を、自社が負担しているか」です。自社が費用を払う物流——調達物流や、自社が手配する出荷——は、上流のカテゴリ4に入ります。

一方、販売した後の輸送で、自社が費用を負担しないもの(たとえば、買い手が手配・負担する配送)は、下流のカテゴリ9に区分されます。同じ「輸送」でも、費用負担と、サプライチェーン上の位置で分かれる、というわけです。まずは自社が費用を負担する物流=カテゴリ4から押さえると、整理しやすいでしょう。

3つの算定方法(燃料ベース・距離ベース・支出ベース)

カテゴリ4の算定には、3つの方法がある。まず全体像をつかみましょう。

カテゴリ4の3つの算定方法

燃料ベース法

輸送に使った燃料の量に排出係数を掛ける。燃料使用量が分かる場合に正確。

実務で主流

距離ベース法

輸送した重量と距離(トンキロ)に、輸送モード別の原単位を掛ける。

支出ベース法

輸送にかかった費用に金額あたり原単位を掛ける。まず概算したい場合。

精度と入手しやすいデータのバランスで選ぶ。実務では距離ベース法が最も広く使われる。

出典:GHGプロトコル・環境省の公開情報をもとにgreenote作成

燃料ベース・距離ベース・支出ベース

GHGプロトコルは、カテゴリ4の算定方法を大きく3つに整理している。第一が燃料ベース法。輸送に使った燃料の量(軽油やガソリンなど)に、排出係数を掛ける方法です。燃料使用量が把握できる場合には、正確な算定ができます。第二が距離ベース法。輸送した重量と距離(トンキロ)に、輸送モード別の排出原単位を掛ける方法です。

第三が支出ベース法。輸送にかかった費用に、金額あたりの排出原単位を掛ける方法で、カテゴリ1の支出ベース法と同じ考え方です。まず概算で全体像をつかみたいときに使う。3つは、手に入るデータと求める精度のバランスで使い分けます。

実務では距離ベース法が主流

この3つのなかで、実務でもっとも広く使われるのが距離ベース法です。CDPに開示された算定方法を見ても、カテゴリ4では距離ベース法が突出して多く、燃料ベース法やハイブリッドがこれに続きます。理由は、「何を、どれだけ、どこまで運んだか」という情報が、比較的とらえやすいからです。

燃料ベース法は正確ですが、輸送を外部委託していると燃料使用量まで把握するのが難しいことが多い。支出ベース法は手軽な一方、精度は粗くなる。その点、距離ベース法は、重量と距離という扱いやすいデータで、モードの違いも反映できる。バランスのよさが、主流である理由です。

距離ベース法(トンキロ)の計算ステップ

実務でもっとも使われるのが、距離ベース法です。トンキロを使った計算の手順を見ていきます。

距離ベース法:トンキロで計算する

輸送重量(トン) × 輸送距離(km) トンキロ × 輸送モード別の排出原単位 輸送の排出量

同じトンキロでも、輸送モードで排出量は大きく変わる(イメージ)

航空
トラック
鉄道
船舶

鉄道や船舶へ切り替えるモーダルシフトが、カテゴリ4の代表的な削減策になる。

出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成(棒の長さは大小関係のイメージ)

輸送重量×距離×モード別原単位

距離ベース法の基本式は、「トンキロ」という考え方が軸になる。まず、輸送した貨物の重量(トン)に、輸送距離(キロメートル)を掛ける。これがトンキロ(トン・キロメートル)です。「10トンの貨物を100km運べば1,000トンキロ」というように、運んだ量と距離をまとめて表す指標です。

そのトンキロに、輸送モード別の排出原単位を掛ければ、排出量が求まる。式にすると、輸送重量(トン)× 輸送距離(km)× 輸送モード別の排出原単位 = 輸送の排出量。日本では、こうしたトンキロにもとづく算定(トンキロ法)が、物流の分野で広く使われてきました。運んだ実態を、素直に数字に落とせる方法です。

輸送モードで原単位が大きく変わる

距離ベース法で決定的に重要なのが、輸送モード(輸送手段)によって、原単位が大きく変わるという点です。同じ1トンキロを運ぶのでも、航空機はトラックよりはるかに多くのCO2を出し、鉄道や船舶は逆に少なくなる。一般に、排出量の大小は「航空 > トラック > 鉄道 ・ 船舶」の順とされます。

この違いは、削減策に直結します。トラックや航空に頼っていた輸送を、鉄道や船舶へ切り替える「モーダルシフト」は、カテゴリ4を減らす代表的な手立てです。だからこそ、算定の際はモードごとにトンキロを分けて、それぞれの原単位を掛けることが大切になります。モードを区別せずに計算すると、削減の効果も見えなくなってしまいます。

燃料ベース法・支出ベース法という選択肢

距離ベース法以外の2つの方法も、状況に応じて有効です。それぞれの使いどころを整理します。

もう2つの方法の使いどころ

燃料ベース法

自社便など、輸送に使った燃料の量が分かる場合に有効。燃料使用量に排出係数を掛ける。精度は高い。

支出ベース法

詳しいデータがまだない段階で、まず概算したい場合に有効。輸送費に金額あたり原単位を掛ける。手軽だが粗い。

自社で運ぶなら燃料ベース、まず全体像なら支出ベース。データの入手状況に応じて距離ベース法と使い分ける

出典:GHGプロトコル・環境省の公開情報をもとにgreenote作成

燃料ベース法(燃料使用量が分かる場合)

燃料ベース法は、輸送に使った燃料の量が把握できる場合に有効です。自社のトラックで運ぶ(自社便)など、燃料使用量のデータが手元にあるケースが典型です。その燃料量に、燃料ごとの排出係数を掛けて排出量を求める。実際に燃やした燃料にもとづくため、精度が高いのが長所です。

一方で、輸送を外部の物流業者に委託していると、自社ではその燃料使用量まで分かりません。この場合は、業者から燃料や輸送量のデータをもらう必要があり、把握のハードルが上がる。そのため、委託輸送が多い企業では、次に見る距離ベース法や、業者からのトンキロ提供が現実的になります。

支出ベース法(まず概算したい場合)

支出ベース法は、輸送にかかった費用に、金額あたりの排出原単位を掛ける方法です。カテゴリ1の支出ベース法と同じ発想で、会計データさえあれば概算できる手軽さが魅力です。まだ輸送量の詳しいデータが整っていない段階で、まず全体像をつかみたいときに向いている。

ただし、精度は粗くなります。運賃は輸送距離やモードだけでなく、燃料価格や需給でも変動するため、費用が必ずしも排出量に比例しないからです。そのため、支出ベース法は入り口と位置づけ、排出の大きい輸送から距離ベース法へ切り替えて精度を上げるのが定石です。3つの方法は、対立するものではなく、段階的に使い分けるものと捉えましょう。

データはどこから取るのか

カテゴリ4の算定に使う、輸送量や排出係数などのデータの入手先を整理します。

使うデータはどこから

一次データに近い

輸送業者からの活動量データ

委託先の物流業者から、トンキロ・輸送モード・燃料使用量などの実績を入手する。

自社が持つ

自社の物流・調達データ

出荷・入荷の重量、輸送距離、輸送費など、自社が持つデータ。

公的な係数

輸送モード別の排出原単位

トラック・鉄道・船舶・航空などモード別の係数。環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームなど。

活動量は業者や自社データ、原単位は公的な根拠を使い分ける。使ったデータと版は必ず記録する。

出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成

輸送業者からのトンキロ・活動量データ

カテゴリ4のデータで鍵になるのが、活動量——つまり「何を、どれだけ、どのモードで、どこまで運んだか」です。輸送を委託している場合、この活動量は物流業者が握っていることが多い。近年は、荷主の求めに応じて、トンキロや輸送モード、CO2排出量のレポートを提供する物流業者も増えています。業者との連携が、精度を左右します。

自社が持つデータも活用します。出荷・入荷の重量、主要な輸送ルートの距離、輸送費など、調達・物流の記録から、活動量を組み立てられる。距離は、拠点間の実距離や、地図・ルート情報から推計します。自社データと業者データを組み合わせて、トンキロを積み上げていくのが実務の姿です。

輸送モード別の排出原単位

活動量(トンキロ)に掛ける、輸送モード別の排出原単位は、公的なデータベースから入手します。日本では、環境省がグリーン・バリューチェーンプラットフォームで公開する排出原単位データベースに、トラック・鉄道・船舶・航空といったモード別の原単位が示されています。海外分は、各国や国際機関の公表値を用います。

ここでも、どの原単位を、いつの版で使ったかを記録することが欠かせません。原単位は改定されるため、年度によって値が変わります。方法論そのものは、GHGプロトコルのScope 3 Standardに沿って進めます。活動量は業者・自社データ、原単位は公的な根拠、と使い分けるのが基本です。

CDP回答・開示での実務ポイント

算定結果を、CDPなどでどう開示するか。カテゴリ4の押さえどころを整理します。

カテゴリ4の開示で押さえること

1

算定方法を選ぶ

燃料ベース法・距離ベース法・支出ベース法などから、使った方法を選択する

2

活動量と原単位を説明する

トンキロなどの活動量、使った輸送モード別の原単位とその出典・版を説明欄に書く

3

上流・下流の区分を明確に

カテゴリ4(上流)とカテゴリ9(下流)を、費用負担などの基準で切り分けて開示する

どの方法で、どんな活動量と原単位を使ったかを説明できることが信頼性につながる。

出典:CDP・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成

算定方法と活動量・原単位の記載

カテゴリ4をCDPとはなどで開示する際は、他のカテゴリと同様に、評価ステータス・排出量・算定方法(燃料ベース・距離ベース・支出ベースなど)を記します。カテゴリ4でとくに説明したいのが、活動量と原単位です。どれだけのトンキロを、どの輸送モードで運び、どのモード別原単位(出典・版つき)を掛けたかを、説明欄に記載する。

あわせて意識したいのが、上流と下流の区分です。カテゴリ4(上流)とカテゴリ9(下流)を、前述の費用負担などの基準で明確に切り分け、二重計上や漏れがないようにします。「どこまでをカテゴリ4に含めたか」を説明できるようにしておくことが、開示の質を高めます。

実務で多い方法と現実的な進め方

CDPに開示された算定方法を見ると、カテゴリ4では距離ベース法が中心で、燃料ベース法やハイブリッドを組み合わせる例も見られます。一次データ(業者からのトンキロなど)を一定程度使えている企業もあり、カテゴリ1カテゴリ11に比べると、活動量をとらえやすいカテゴリだといえます。

現実的な進め方は、まず主要な輸送ルート・モードから距離ベース法で算定し、全体像をつかむことです。そのうえで、物流業者との連携を深めて活動量の精度を上げ、対象を広げていく。カテゴリ4は、モーダルシフトや積載率の改善といった削減策と直結するため、算定がそのまま責任ある調達や物流の効率化にもつながります。

カテゴリ4の算定をどう進めるか

Scope3カテゴリ4(輸送・配送<上流>)は、自社が費用を負担する上流の物流に伴う排出を計上するもので、算定方法は燃料ベース法・距離ベース法・支出ベース法の3つ。実務では、輸送重量と距離(トンキロ)に輸送モード別の原単位を掛ける距離ベース法が主流です。活動量は物流業者や自社データ、モード別原単位は環境省などの公的な根拠を使い分けます。

大切なのは、輸送モードを区別して算定することです。航空・トラック・鉄道・船舶で原単位が大きく異なるため、モードを分けてはじめて、モーダルシフトなどの削減効果が見えてきます。まず主要ルートから距離ベース法で全体像をつかみ、業者連携で精度を高めていく——この段階的な進め方が現実的です。Scope3の全体像はScope3とは、関連の深い上流カテゴリはカテゴリ1(購入した製品・サービス)もあわせてご覧ください。ESGの全体像はESG完全ガイドもどうぞ。

モノを運ぶ一つひとつの物流に、CO2は宿っています。カテゴリ4の算定は、サプライチェーンの「動脈」である物流を、脱炭素の視点で見直す出発点です。なお本記事は、環境省・GHGプロトコルなどの公開情報をもとに算定の考え方を整理したものであり、特定のツールや製品を推奨するものではありません。係数や制度は変わりうるため、算定時は最新の一次情報をご確認ください。

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よくある質問(FAQ)

Q. Scope3カテゴリ4(輸送・配送<上流>)には何が含まれますか?

A. 報告年に企業が購入した輸送・配送サービス(自社が費用を負担する物流)や、一次サプライヤーと自社の間の物流など、上流側の輸送に伴う排出が対象です。原材料や部品を自社の工場へ運ぶ物流、購入した輸送・倉庫サービスなどが典型例です。販売後の輸送で自社が費用を負担しないものは、カテゴリ9(下流の輸送・配送)に区分されます。

Q. カテゴリ4はどうやって計算しますか?

A. 主に3つの方法があります。(1)輸送に使った燃料量に排出係数を掛ける『燃料ベース法』、(2)輸送した重量と距離を掛けたトンキロに輸送モード別の原単位を掛ける『距離ベース法』、(3)輸送費に金額あたり原単位を掛ける『支出ベース法』です。実務では距離ベース法が最も多く使われます。基本式は『輸送重量×輸送距離(トンキロ)×輸送モード別の排出原単位』で、トラック・鉄道・船舶・航空といった輸送モードで原単位が大きく変わります。

Q. 輸送モードによって排出量はどのくらい変わりますか?

A. 同じトンキロでも、輸送モードによって単位あたりの排出量は大きく異なります。一般に、航空輸送が最も大きく、トラック、鉄道、船舶の順に小さくなる傾向があります。そのため、鉄道や船舶へ切り替える『モーダルシフト』は、カテゴリ4の削減策として有効とされます。使うモード別原単位は、環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームなどの公表値を用い、出典と版を記録しておくことが大切です。本記事は特定のツールや製品を推奨するものではありません。

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出典・参考(一次情報)

最終更新日:2026年7月2日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

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