「先月より電気を使っていないのに、料金が上がっている」――そんな経験を持つ調達担当者は多いはずです。その原因の多くは、使用量とは別に毎月変動する燃料費調整額や、年度ごとに改定される再エネ賦課金にあります。電気料金は、基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金という4つの要素の合計で決まります。本記事では、この内訳の一つひとつを、燃料価格を映す仕組みや2026年度の賦課金単価といった具体的な数字とともに、公的機関の情報をもとに整理します。料金の中身を理解することは、調達先を正しく比較する第一歩になります。
≡この記事の目次
電気料金は4つの要素でできている(おさらい)
まず、毎月の電気料金がどのような要素の合計なのか、全体像から整理しましょう。
電気料金は4つの要素の合計
使っていないのに料金が動く原因は、燃料費調整額と再エネ賦課金にある。
出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金
一般的な電気料金は、「基本料金(または最低料金)+電力量料金+燃料費調整額(±)+再生可能エネルギー発電促進賦課金」で構成されます。基本料金は使用量に関係なく毎月かかる固定的な部分、電力量料金は使った電気の量(kWh)に応じた従量部分です。
基本料金の決まり方は契約区分で異なります。低圧(家庭)では契約アンペアや契約容量で決まり、高圧(法人)では高圧・特別高圧の需要契約とデマンド管理とはで解説したとおり、最大需要電力(デマンド)で決まります。そして、この基本料金・電力量料金に加えて毎月上乗せされるのが、燃料費調整額と再エネ賦課金です。
事業者で変わる部分と、変わらない部分
4つの要素は、電力会社を切り替えたときに「変わる部分」と「変わらない部分」に分けて理解すると、調達の視点が明確になります。基本料金と電力量料金の単価は、事業者やプランによって自由に設定されるため、比較の中心になる部分です。
燃料費調整額は、燃料価格を反映するという考え方こそ共通ですが、算定の基準や上限の有無が事業者によって異なる場合があります。一方、再エネ賦課金は国が全国一律で決めるため、どの事業者と契約しても同じです。次の章から、この変動要素である燃料費調整額と再エネ賦課金を詳しく見ていきます。
燃料費調整額とは――燃料価格を映す変動要素
毎月変動する燃料費調整額は、火力発電の燃料価格を電気料金に反映させる仕組みです。
燃料価格を電気料金に自動反映
→ プラス調整
(料金に加算)
→ マイナス調整
(料金から減算)
原油・LNG・石炭の輸入価格を為替込みで反映し、数か月後の電気料金に反映される。
出典:資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」をもとにgreenote作成
3か月の平均燃料価格を数か月後に反映する仕組み
燃料費調整制度とは、火力発電の燃料である原油・LNG(液化天然ガス)・石炭の輸入価格の変動を、為替を反映した円建ての価格で電気料金に自動的に反映する制度です。資源エネルギー庁の解説によれば、料金設定時の「基準燃料価格」と、貿易統計に基づく「実績燃料価格」の差を単価に換算して、毎月の電気料金に反映します。
具体的には、3か月分の平均燃料価格をもとに算定され、数か月後の電気料金に反映されます。たとえば、ある期間の燃料価格が数か月後の料金に効いてくるため、燃料価格の変動が料金に現れるまでにはタイムラグがある点が特徴です。
プラス調整とマイナス調整
燃料費調整は、一方通行ではありません。実績燃料価格が基準燃料価格を上回れば料金に加算(プラス調整)され、下回れば料金から減算(マイナス調整)されます。燃料価格が安い時期には、電気料金がその分下がる仕組みです。
この制度の目的は、燃料価格という電力会社ではコントロールできない外部要因を、電力会社の経営安定と料金の透明性の両面から扱うことにあります。燃料価格の上昇局面では料金が上がるため負担増として意識されがちですが、本来は上下双方向に働く、燃料コストを需要家と分かち合う仕組みだといえます。
燃料費調整の「上限撤廃」と電力危機
2022〜2023年の燃料価格高騰は、燃料費調整の上限をめぐる大きな見直しを引き起こしました。
上限に張り付いた燃料費調整
赤い点線=上限(基準燃料価格の1.5倍)/橙の線=燃料価格。
上限を超えた分は電力会社が負担(逆ざや)
規制料金には上限があるが、自由料金では上限を撤廃したプランが多い。
出典:資源エネルギー庁「電気料金の改定について」をもとにgreenote作成
規制料金の上限と逆ざや問題
規制料金の燃料費調整には、基準燃料価格の1.5倍という上限が設けられています(下限はありません)。この上限は、燃料価格が急騰しても需要家の負担が青天井にならないよう保護する仕組みです。
ところが、2021〜2022年のウクライナ侵攻などによる燃料価格の高騰と円安が重なり、輸入価格が急騰しました。その結果、規制料金では燃料費調整が上限に張り付き、上限を超えた分のコストを大手電力が自ら負担する「逆ざや」が発生しました。電気を売れば売るほど赤字になる、という異常な状況です。
自由料金で広がった上限撤廃
この逆ざや問題を受けて、資源エネルギー庁の資料でも整理されているとおり、自由料金プランでは2022〜2023年にかけて燃料費調整の上限を撤廃する動きが各電力会社に広がりました。上限を撤廃すれば、燃料価格が高騰した局面では需要家の負担が大きくなる一方、電力会社の逆ざやは解消されます。
これは調達実務にとって重要な論点です。同じ「燃料費調整あり」のプランでも、上限があるプランと上限のないプランでは、燃料価格高騰時の負担が大きく変わります。安い時期の単価だけを見て契約すると、価格高騰局面で想定外の負担が発生する可能性があるため、上限の有無は必ず確認すべきポイントです。
再エネ賦課金とは――全需要家で支える再エネの費用
電気を使うすべての人が負担する再エネ賦課金は、FIT・FIP制度を支える仕組みです。
再エネ賦課金の単価推移
(円/kWh・主要年度)
▲ 2023年度は回避可能費用の増大で一時低下(1.40円)
単価は毎年度、経済産業大臣が決定。2026年度は4.18円/kWhで過去最高・全国一律。
出典:経済産業省・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
FIT・FIPの買取費用を使用量に応じて負担
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)とは、FIP制度とはなどで解説したFIT(固定価格買取制度)・FIP制度に基づく再エネ電気の買取費用を、電気の使用量(kWh)に応じて全需要家が広く負担する仕組みです。再エネの普及を社会全体で支えるための費用を、電気を使う人みなで分担する考え方です。
賦課金の単価(円/kWh)は、再エネの導入状況や卸電力市場価格などを踏まえて年度ごとに経済産業大臣が決定します。適用期間は毎年5月検針分から翌年4月検針分までで、全国一律です。事業者による差はありません。
2026年度は4.18円/kWh――単価の推移
再エネ賦課金の単価は、制度が始まった2012年度の0.22円/kWhから、再エネの導入拡大に伴っておおむね上昇を続けてきました。2022年度は3.45円/kWhでしたが、2023年度は1.40円/kWhへ一時的に大きく低下しています。これは、燃料価格高騰で卸電力市場価格が上昇し、賦課金の算定で差し引かれる「回避可能費用」が大きくなったためです。
その後は反動で上昇に転じ、2024年度3.49円/kWh、2025年度3.98円/kWhと推移しました。経済産業省が2026年3月19日に公表した2026年度の単価は4.18円/kWh(2026年5月〜2027年4月適用)で、過去最高を更新しています。経済産業省の示す月間使用量400kWhの標準的な需要家モデルでは、月額1,672円が目安とされます。法人の大口需要家では、この単価が使用量に比例して積み上がるため、賦課金の負担は決して小さくありません。
調達担当者が電気料金の内訳で見るべきポイント
電気料金は、基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金の4要素で構成されます。このうち再エネ賦課金は国が全国一律で決めるため(2026年度は4.18円/kWh)、電力会社を切り替えても変わりません。一方、燃料費調整額は燃料価格を反映する点は共通でも、基準燃料価格や上限の有無が事業者によって異なり、特に自由料金では2022〜2023年に上限撤廃が広がりました。
切り替えても変わる部分・変わらない部分
変わらない
再エネ賦課金(全国一律・国が決定)
2026年度は4.18円/kWh
事業者で変わる=比較点
基本料金の単価
電力量料金の単価
燃料費調整の算定方法・上限の有無
目先の単価だけでなく燃料費調整の上限の有無まで見て比較する。
出典:各種公開情報をもとにgreenote作成
調達担当者が料金プランを比較する際の要点は、変わらない再エネ賦課金に惑わされず、事業者ごとに差が出る「基本料金・電力量料金の単価」と「燃料費調整の算定方法・上限の有無」で比べることです。とりわけ燃料費調整の上限の有無は、価格高騰局面での負担を大きく左右するため、目先の単価の安さだけで判断すると想定外のコストを抱えるリスクがあります。料金の内訳を正しく読み解く力は、次回解説する電力調達の契約形態を理解する土台にもなります。
なお本記事は、資源エネルギー庁・経済産業省などの公開情報をもとに整理したものです。燃料費調整の算定方法や上限の有無は事業者・プランによって異なり、再エネ賦課金の単価は年度ごとに改定されるため、実際の契約にあたっては最新の一次情報と各社の料金表をご確認ください。
あわせて読みたい:なぜ電気代は上がったのか、15年のデータで確認 → 電気料金の推移|高騰の理由と国際比較をデータで解説
よくある質問(FAQ)
Q. 燃料費調整額は電力会社を切り替えると変わりますか?
A. 燃料価格を反映するという基本的な考え方はどの事業者も共通ですが、算定の基準となる基準燃料価格や算定式、そして上限の有無は事業者やプランによって異なる場合があります。特に、規制料金には燃料費調整に上限(基準燃料価格の1.5倍)がある一方、自由料金プランでは2022〜2023年にかけて上限を撤廃したプランが多く、燃料価格が高騰した局面では負担が大きく変わる可能性があります。調達で比較する際は、燃料費調整の算定方法と上限の有無を確認することが重要です。
Q. 再エネ賦課金は電力会社によって違いますか?
A. いいえ、再エネ賦課金の単価は経済産業大臣が全国一律で決定するため、どの電力会社と契約しても同じです。2026年度(2026年5月〜2027年4月適用)は1kWhあたり4.18円で、電気の使用量に応じて負担します。電力会社を切り替えても再エネ賦課金の単価は変わらないため、料金プランの比較では、基本料金・電力量料金の単価や燃料費調整の条件で比べることになります。
Q. 再エネ賦課金はなぜ2023年度だけ下がったのですか?
A. 再エネ賦課金の単価は、再エネの買取に必要な費用から「回避可能費用」(電力会社が再エネを買い取る代わりに市場などから電気を調達したとみなす費用)を差し引いて決まります。2022〜2023年は燃料価格の高騰で卸電力市場価格も上昇し、この回避可能費用が大きくなったため、差し引き後の賦課金原資が圧縮され、2022年度の3.45円/kWhから2023年度は1.40円/kWhへ一時的に大きく下がりました。その後、燃料価格が落ち着くと反動で上昇し、2024年度3.49円、2025年度3.98円、2026年度4.18円と推移しています。
→ 電気代は今後どうなる?|確定している値上げ要因と中小企業の電力調達の考え方
出典・参考(一次情報)
- 資源エネルギー庁「電気料金の仕組みについて」
- 資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」
- 経済産業省「FIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」
- 資源エネルギー庁「電気料金の改定について(2023年6月実施)」
最終更新日:2026年7月8日
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greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。