第7次エネルギー基本計画とは|2040年度エネルギーミックスとS+3Eをわかりやすく解説

2026.06.21
国内規制

2050年カーボンニュートラルへ向け、日本のエネルギーをどう転換していくのか。その国の方針を示すのが「エネルギー基本計画」です。2025年2月に閣議決定された第7次計画は、2040年を見据えた新しいエネルギーミックスを描き、大きな注目を集めました。

本記事では、第7次エネルギー基本計画とは何かという基本から、S+3Eの原則、2040年度の電源構成、計画の3本柱、そして脱炭素目標やGX2040との関係までを、できるだけわかりやすく整理します。

この記事の目次

第7次エネルギー基本計画とは

エネルギー基本計画は、日本のエネルギー政策の中長期的な方向性を定める、国の最上位の方針文書です。その7回目の改定が、第7次エネルギー基本計画にあたります。

エネルギー基本計画とは

この計画は、エネルギー政策基本法に基づいて政府が策定するもので、おおむね3年ごとに見直されます。電源構成の見通しや、再エネ・原子力・火力といった各電源の方向性、省エネや脱炭素の方針までを幅広く示す、いわばエネルギー政策の「羅針盤」です。

国の予算や規制、企業の投資判断にも影響する重要な文書のため、改定のたびに大きな議論を呼びます。とりわけ第7次計画は、2040年という新たな時間軸を据えた点で大きな注目を集めた計画です。

2025年2月に閣議決定・GX2040と一体

第7次エネルギー基本計画は、2025年2月18日に閣議決定されました(資源エネルギー庁 エネルギー基本計画)。特徴的なのは、同じ日に閣議決定された「GX2040ビジョン」と一体的に策定された点です。

エネルギー政策(基本計画)と、産業・経済の脱炭素戦略(GX2040)を歩調を合わせて打ち出すことで、脱炭素と経済成長、エネルギーの安定供給を一体で進める意図がうかがえます。GX2040の全体像はGX2040ビジョンとはもあわせてご覧ください。

S+3Eという基本原則

第7次計画を理解するうえで欠かせないのが、「S+3E」という基本原則です。日本のエネルギー政策が、長年この考え方を土台にしてきました。

S+3E|エネルギー政策の基本原則

安全性を大前提に、3つのEを同時達成

S

Safety
安全性

すべての大前提

E

Energy Security
安定供給

エネルギーを安定して確保

E

Economic Efficiency
経済効率性

コストを抑える

E

Environment
環境適合

脱炭素・環境配慮

3つのEは時に対立する。そのバランス調整こそがエネルギー政策の核心です。

出典:資源エネルギー庁・経済産業省の公開情報をもとにgreenote作成

S+3Eの4要素

S+3Eとは、4つの要素の頭文字を表します。まず大前提となるのがS=Safety(安全性)です。そのうえで、3つのE——Energy Security(安定供給)、Economic Efficiency(経済効率性)、Environment(環境適合)——の同時達成をめざします。

安全を最優先に、エネルギーを安定して供給し、コストを抑え、環境にも配慮する。この4つをバランスよく満たすことが、日本のエネルギー政策の基本方針となっています。

同時達成という難しさ

ただし、この4要素はしばしば対立します。たとえば、再エネを急拡大すれば環境適合は進みますが、コストや安定供給に課題が生じることもあります。原子力は安定供給と脱炭素に寄与する一方、安全性や社会的合意が問われます。

S+3Eの本質は、これらのトレードオフをどう調整するかにあります。第7次計画も、この難しいバランスのうえに描かれているのです。脱炭素の全体像はカーボンニュートラルとはもあわせてご覧ください。

2040年度のエネルギーミックス

第7次計画で最も注目されたのが、2040年度の電源構成(エネルギーミックス)の見通しです。日本の電気を、将来どの電源でまかなうのかを示す数字になります。

2040年度のエネルギーミックス

再生可能エネルギーを主力電源に

再エネ 40〜50%
原子力 2割程度
火力(脱炭素化)

再エネ 40〜50%

太陽光23〜29%・風力4〜8%+水力・地熱・バイオマス

原子力 2割程度

安全最優先で活用

火力

CCS・水素/アンモニアで脱炭素化しつつ活用

脱炭素電源を最大限に活用する方向性が示されました。

出典:資源エネルギー庁・経済産業省の公開情報をもとにgreenote作成(割合は計画上の見通し)

再エネ40〜50%・原子力・火力の構成

第7次計画は、2040年度のエネルギーミックスとして、再生可能エネルギーを電源構成の40〜50%にまで高める方針を示しました。内訳では、太陽光が23〜29%、風力が4〜8%とされています。再エネを「主力電源」と明確に位置づけた点が、大きな前進です。

原子力は2割程度を見込み、火力は脱炭素化を進めながら残りを担うとされています。再エネ・原子力・脱炭素化した火力を組み合わせ、脱炭素電源を最大限に活用する——これが2040年度の基本的な姿です。再生可能エネルギーの基礎は再生可能エネルギーとはもあわせてご覧ください。

電力需要の増加という前提

注目したいのは、この計画が「電力需要の増加」を前提に置いている点です。これまで日本の電力需要は減少傾向にありましたが、データセンターや半導体工場の拡大により、増加に転じる見通しです。

脱炭素のために電化を進めれば、電力需要はさらに増えます。増える需要を、いかに脱炭素電源でまかなうか。第7次計画は、この新しい現実に向き合った計画でもあるのです。

計画の3本柱

2040年度のミックスを実現するため、電源ごとに方向性が示されました。再エネ・原子力・火力の「3本柱」として整理できます。

第7次計画の3本柱

電源ごとの方向性

再エネの主力電源化

最大限導入。次世代太陽電池(ペロブスカイト)や洋上風力を推進。系統整備が鍵。

原子力の活用

安全最優先で再稼働。建て替えや次世代革新炉の開発も視野に。

火力の脱炭素化

CCSや水素・アンモニア混焼で排出を抑えつつ、調整力として活用。

再エネ・原子力・脱炭素火力を組み合わせ、脱炭素電源を最大限活用します。

出典:資源エネルギー庁・経済産業省の公開情報をもとにgreenote作成

再エネの主力電源化

第一の柱が、再生可能エネルギーの主力電源化です。太陽光や風力を最大限に導入する方針で、軽くて曲がる次世代太陽電池「ペロブスカイト」や、洋上風力への期待が大きい状況です。

ただし、再エネは天候で出力が変動します。大量に導入するには、送電網(系統)の整備や蓄電池、需給調整の仕組みが欠かせません。再エネの拡大は、それを支えるインフラの整備とセットで進める必要があります。

原子力の活用と火力の脱炭素化

第二の柱が、原子力の活用です。第7次計画では、安全最優先を前提に再稼働を進め、廃炉を決めた原発の建て替えや、次世代革新炉の開発も視野に入れている点が特徴です。これは、東日本大震災後の「可能な限り依存度を低減する」という従来の表現からの転換点といえます。

第三の柱が、火力の脱炭素化です。火力をゼロにするのではなく、CCS(CO2回収・貯留)や水素・アンモニアの活用で排出を抑えつつ、調整力として使い続けます。火力の脱炭素化の手段はCCS(CO2回収・貯留)とはグリーン水素とはもあわせてご覧ください。

脱炭素目標とGX2040との関係

エネルギー基本計画は、単独で存在するわけではありません。日本の脱炭素目標やGX戦略と、密接に連動しています。

2040年度GHG73%削減と2050年カーボンニュートラル

第7次計画が描く2040年度のミックスは、日本の温室効果ガス削減目標と整合するように設計されています。日本は2040年度に温室効果ガスを2013年度比で73%削減し、2050年にカーボンニュートラルを実現する目標を掲げる方針です。

エネルギー由来のCO2は、日本の温室効果ガス排出の大半を占めます。だからこそ、電源構成をどう脱炭素化するかが、削減目標の達成を直接左右するのです。

GX2040ビジョンとの一体性

前述のとおり、第7次計画はGX2040ビジョンと同日に、一体的に閣議決定されました。エネルギーの「供給」側の方針(基本計画)と、産業・需要側の脱炭素・成長戦略(GX2040)を、両輪で進める構図です。

脱炭素を、コストやエネルギー安定供給と切り離さずに進める。この一体的なアプローチに、日本のエネルギー・産業政策の方向性が表れています。GX-ETSなどカーボンプライシングの動きは排出量取引(GX-ETS)とはもあわせてご覧ください。

課題と企業・実務への影響

野心的な計画である一方、その実現には多くの課題が伴います。企業活動への影響も小さくありません。

コスト・立地・系統という課題

最大の論点はコストです。再エネや原子力、脱炭素火力には、いずれも巨額の投資が必要です。電力料金への影響をどう抑えるかが問われます。加えて、再エネ適地と需要地が離れている日本では、送電網(系統)の増強や、発電所の立地確保も大きな課題です。

これらは一朝一夕には解決しません。計画の数字を絵に描いた餅にしないためには、インフラ投資と制度設計を着実に進める必要があるでしょう。

企業が備えるべきこと

企業にとって、この計画は「電力をめぐる環境変化」の予告でもあるのです。再エネ調達の機会が広がる一方、電力コストや調達の不確実性は高まる可能性があるのも事実です。脱炭素電源の確保は、事業継続やESGの観点でも重要になっていくでしょう。

自社の電力をどう脱炭素化し、コスト変動にどう備えるか。第7次計画が示す方向性を踏まえ、再エネ調達やエネルギー効率化を計画的に進めることが、これからの企業に求められます。

第7次エネルギー基本計画の課題と対応

課題

コスト・立地・系統。再エネ・原子力・脱炭素火力に巨額投資が要り、適地と需要地が離れる日本では系統増強や立地確保も課題。

対応・ポイント

インフラ投資と制度設計を着実に進め、電力料金への影響を抑える。

課題

企業側の電力コスト・調達の不確実性の高まり。

対応・ポイント

第7次計画の方向性を踏まえ、再エネ調達やエネルギー効率化を計画的に進め、脱炭素電源を確保する。

計画の数字を絵に描いた餅にしないため、インフラ投資と制度設計を着実に進めることが問われます。

あわせて読みたい:エネルギー管理・定期報告を義務づける制度の全体像 → 省エネ法とは|対象事業者・定期報告と2023年改正をわかりやすく解説

あわせて読みたい:なぜ電気代は上がったのか、15年のデータで確認 → 電気料金の推移|高騰の理由と国際比較をデータで解説

まとめ|2040年を見据えたエネルギーの羅針盤

第7次エネルギー基本計画は、2025年2月にGX2040ビジョンと一体で閣議決定された、日本のエネルギー政策の羅針盤です。S+3Eの原則のもと、2040年度に再エネを主力電源(40〜50%)とし、原子力を活用し、火力を脱炭素化する方向性を示しました。

背景には、2040年度GHG73%削減・2050年カーボンニュートラルという目標と、データセンター等による電力需要の増加があります。コストや系統、立地といった課題は重いものの、この計画は2040年に向けた日本のエネルギーの進路を示すものです。企業も、電力をめぐる変化を見据えた備えが求められます。脱炭素の全体像はカーボンニュートラルとはもあわせてご覧ください。

最終更新日:2026年6月21日

この記事の著者

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よくある質問(FAQ)

Q. 第7次エネルギー基本計画はいつ決まったものですか?

A. 2025年(令和7年)2月18日に閣議決定されました。エネルギー基本計画はエネルギー政策基本法にもとづく政府の基本方針で、おおむね3年ごとに見直されます。同じ日にGX2040ビジョンと地球温暖化対策計画も決定されており、この3つはセットで読むと全体像がつかめます。

Q. S+3Eとは何ですか?

A. 日本のエネルギー政策の基本原則で、安全性(Safety)を前提としたうえで、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)の3つを同時に満たすという考え方です。3つはしばしば互いに衝突するため、「どれかを立てればどれかが崩れる」という緊張関係のなかで政策が決まっていきます。

Q. 企業の実務には何が影響しますか?

A. 最も直接的なのは電力調達です。電源構成の見通しが変われば、再エネ電力の調達可能量、電気料金の前提、そして自社のScope2排出量の見通しが変わります。加えて、系統整備や原子力の稼働状況は地域ごとの電力事情に影響するため、拠点の立地判断にも関わってきます。

Q. GX2040ビジョンとはどう違うのですか?

A. エネルギー基本計画が「エネルギーをどう供給するか」を扱うのに対し、GX2040ビジョンは「産業をどこに立地し、何に投資するか」という産業政策側を扱います。両者は同時期に決定され、一体で議論されました。企業側から見ると、前者は調達条件、後者は投資判断や補助制度に効いてきます。

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