電力調達の見直しを検討するとき、「切替えの手続きが煩雑なのではないか」「今の電力会社への解約連絡が面倒そう」といった不安から二の足を踏む担当者は少なくありません。しかし実際のスイッチングは、想像よりずっとシンプルに設計されています。電力の切替え(スイッチング)とは、契約する電力会社(小売電気事業者)を変更する手続きのことで、新しい電力会社への申込み1回で、旧電力の解約まで完結するのが基本です。本記事では、その手続きの流れと、裏側で切替えを支える仕組み、そして調達担当者が押さえておきたい実務上の注意点を、公的機関の情報をもとに整理します。
≡この記事の目次
- 1電力の切替え(スイッチング)とは(おさらい)
- ►スイッチング=契約する電力会社を変更すること
- ►旧電力の解約は新電力が代行する「ワンストップ」
- 2切替えを支える「スイッチング支援システム」
- ►OCCTOが2016年から運用する情報連携基盤
- ►供給契約と託送契約――2つの契約の切替え
- 3切替えに必要なもの――供給地点特定番号とスマートメーター
- ►22桁の「供給地点特定番号」は検針票で確認
- ►スマートメーターへの交換と費用負担
- 4申込みから切替え完了までの流れと期間
- 5調達担当者が押さえておきたい切替え時の注意点
- ►解約金・違約金が発生する契約
- ►高圧一括受電マンションでは個別に切り替えられない
- 6切替えても電気の品質・停電リスクは変わらない
- 7スイッチングを実務でどう捉えるか
- 8出典・参考(一次情報)
電力の切替え(スイッチング)とは(おさらい)
まず、スイッチングという言葉が何を指すのか、なぜ手続きがシンプルなのかから整理しましょう。
申込みは新しい電力会社に1回だけ
(企業・家庭)
申込み
需要家の手続きは新電力への申込み1回で完結するワンストップ。
出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
スイッチング=契約する電力会社を変更すること
スイッチングとは、電気の契約先である小売電気事業者を、別の事業者に切り替えることを指します。新電力(PPS)とはで解説したとおり、2016年の電力小売全面自由化以降、需要家は数百社の登録小売電気事業者の中から契約先を自由に選べるようになりました。このとき行う「契約先の乗り換え」がスイッチングです。
家庭でも法人でも基本的な仕組みは同じで、より条件の良い料金プランや、再生可能エネルギー比率の高いプランへの切替えなど、目的に応じて事業者を選び直せます。
旧電力の解約は新電力が代行する「ワンストップ」
スイッチングで多くの人が意外に感じるのが、現在契約している電力会社への解約連絡が原則として不要な点です。資源エネルギー庁の説明によれば、旧電力会社との解約手続きは、契約者の同意に基づいて切替え先の新しい電力会社が行います。
つまり、需要家がすべきことは新しい電力会社に申し込むこと1回のみです。この「ワンストップ」の手続きが成り立つのは、後述する事業者間の情報連携の仕組みが整備されているためです。ただし、旧契約に解約金の定めがある場合は別途支払いが必要になる点には注意が必要です。
切替えを支える「スイッチング支援システム」
需要家が1回の申込みで済むのは、裏側でOCCTOのシステムが事業者間の情報連携を担っているからです。
切替えに関わる2つの契約
① 供給契約
(新電力等)
② 託送契約
(送配電網)
OCCTOのシステムが事業者間の連携を担い、需要家の手間を1回に集約する。
出典:OCCTO・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
OCCTOが2016年から運用する情報連携基盤
切替えの裏側を支えているのが、OCCTO(電力広域的運営推進機関)とはで解説した中立機関が運用する「スイッチング支援システム」です。OCCTOによれば、このシステムは2016年3月1日から運用が開始され、全国の膨大な需要家契約の切替えを効率的に処理する基盤となっています。
小売電気事業者は、このシステムを通じて、契約前に現在の契約電力・自動検針の可否・次回検針日といった設備情報を照会したり、契約時に旧電力との契約廃止を取り次ぐ「廃止取次」を行ったりします。この事業者間の連携が自動化されているからこそ、需要家は申込み1回で済むのです。
供給契約と託送契約――2つの契約の切替え
電力の切替えには、実は2つの契約の変更が関わっています。1つは、需要家と小売電気事業者の間で結ぶ「供給契約」。もう1つは、小売電気事業者と一般送配電事業者(送配電網の運用者)の間で結ぶ「託送契約」です。
需要家が意識するのは前者の供給契約ですが、電気を実際に届けるためには後者の託送契約の切替えも欠かせません。スイッチング支援システムは、主にこの託送契約の切替業務を事業者間で支援する役割を担っています。需要家からは見えないこの連携が、スムーズな切替えの土台になっています。
切替えに必要なもの――供給地点特定番号とスマートメーター
申込みの際に必要になる情報と、切替えに伴って交換される計器について整理します。
切替えに必要な22桁の番号
(電気ご使用量のお知らせ)
(契約内容画面)
電力会社や利用者が変わっても原則として番号は変わらない。
出典:一般送配電事業者の公開情報をもとにgreenote作成
22桁の「供給地点特定番号」は検針票で確認
切替えを申し込む際に必要になるのが、供給地点特定番号です。北海道電力の説明によれば、これは供給地点ごとに地域の一般送配電事業者が発行する22桁の番号で、小売電気事業者を変更する場合に必要となります。
この番号は、毎月の検針票(電気ご使用量のお知らせ)や、現在契約している電力会社のオンラインのマイページで確認できます。電力会社や利用者が変わっても、原則として供給地点特定番号そのものは変わりません。申込みの前に手元の検針票を確認しておくと、手続きがスムーズです。
スマートメーターへの交換と費用負担
切替えにあたっては、旧来の電力量計から通信機能付きのスマートメーター(次世代電力量計)への交換が行われることがあります。スマートメーターは30分ごとの使用量計測や遠隔検針を可能にし、検針員による訪問が不要になります。使用量の見える化が進むため、後のダイナミックプライシングとはで解説するような時間帯別料金プランの活用にもつながります。
費用について、北陸電力送配電の説明では、スマートメーターへの取替は一般送配電事業者が行うこととなっており、その際に需要家の費用負担は原則として発生しないとされています。ただし、計器の取付位置を変更するような付随工事が必要な場合には、個別に費用が生じる可能性があります。
申込みから切替え完了までの流れと期間
実際に申し込んでから電気の供給元が切り替わるまで、どのくらいの期間がかかるのかを見ていきます。
申込みから切替え完了までの流れ
交換が必要ならおよそ2週間、不要なら数日が目安。実際の切替は次回の検針日に行われる。
出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成
スイッチングの流れは、大きく4つのステップに整理できます。まず検針票などで供給地点特定番号を確認し、次に新しい電力会社に申し込みます。その後、必要に応じてスマートメーターへの交換が行われ、最後に次回の検針日(計量日)のタイミングで供給元が切り替わって完了します。
かかる期間の目安は、スマートメーターがすでに設置されているかどうかで変わります。交換工事が必要な場合はおよそ2週間程度、すでに設置済みで交換が不要な場合はおよそ数日程度が一般的な目安とされています。ただし、この日数は地域や契約する電力会社の状況によって前後するため、確定的なものではありません。切替えのタイミングを事業のスケジュールに組み込む場合は、余裕を持った計画が安全です。
調達担当者が押さえておきたい切替え時の注意点
スムーズに見えるスイッチングにも、契約内容によっては注意すべき落とし穴があります。
切替え前に確認したい3つの注意点
特に法人の年間契約やキャンペーン契約は解約条件の事前確認が重要。
出典:各種公開情報をもとにgreenote作成
解約金・違約金が発生する契約
第一の注意点は、解約金・違約金です。一定期間の継続利用を条件とするプランでは、期間内に解約すると違約金が発生する場合があります。特に法人の年間契約や、料金割引と引き換えに契約期間を定めたキャンペーン契約では、解約条件を事前に確認することが欠かせません。ワンストップで切替え自体は簡単でも、旧契約の解約コストは需要家側の負担になるため、切替えによる料金メリットと違約金を比較する視点が重要です。
高圧一括受電マンションでは個別に切り替えられない
第二の注意点は、建物単位の契約形態です。マンションなどで建物全体が「高圧一括受電契約」を結んでいる場合、入居者が個別に電力会社を切り替えることはできません。これは、建物がまとめて高圧で電気を購入し、各戸へ分配する仕組みになっているためです。
電気料金が管理組合や管理会社を経由して請求されている場合は、一括受電の可能性があります。加えて、契約種別(低圧か高圧か)や供給エリアによっても対応できる事業者・プランは異なります。オフィスや店舗の切替えを検討する際は、こうした建物・契約の前提条件をまず確認することが、実務の出発点になります。
切替えても電気の品質・停電リスクは変わらない
切替えに不安を感じる担当者も少なくありませんが、供給の安定性という観点では心配は不要です。
電力会社を切り替えても、電気を家庭やオフィスまで届ける送配電網は、引き続き地域の一般送配電事業者が一括して管理・メンテナンスします。資源エネルギー庁の情報でも、電気の品質や供給の安定性は契約する電力会社によって変わらないと説明されています。
つまり、新電力に切り替えたからといって停電しやすくなることはなく、切替えの瞬間に電気が止まることも原則としてありません。変わるのは電気の「調達先・料金プラン」であって、「届け方」の部分は変わらない――この点は、切替えを社内で検討する際に伝えておくと、不要な不安を避けられます。
スイッチングを実務でどう捉えるか
電力のスイッチングは、新しい電力会社への申込み1回で旧電力の解約まで完結するワンストップの手続きです。その裏側では、OCCTOが2016年から運用するスイッチング支援システムが、託送契約の切替えや廃止取次といった事業者間の連携を担っています。申込みに必要なのは検針票で確認できる22桁の供給地点特定番号で、切替えに伴うスマートメーターへの交換費用は原則として需要家負担ではありません。
一方で、解約金の有無や高圧一括受電マンションでの制約など、契約内容によっては事前確認が必要な点もあります。調達担当者にとっては、「切替え手続き自体は容易でも、旧契約の解約条件と建物の契約形態は必ず確認する」という姿勢が、トラブルのない切替えの鍵になります。手続きの容易さを理解したうえで、次回以降で解説する契約形態や料金の内訳といった中身の比較に進むのが、実務的な順序といえるでしょう。
なお本記事は、資源エネルギー庁・電力広域的運営推進機関(OCCTO)・一般送配電事業者などの公開情報をもとに整理したものです。解約金や一括受電の扱いは契約ごとに異なるため、実際の切替えにあたっては各社の契約条件をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 電力会社を切り替えるとき、今の電力会社に解約の連絡は必要ですか?
A. 原則として不要です。新しい電力会社(新電力など)に申し込むと、契約者の同意に基づいて、切替え先の電力会社が旧電力会社への解約手続き(廃止取次)を代行します。需要家は新しい電力会社への申込み1回で手続きが完結する「ワンストップ」の仕組みになっています。ただし、旧契約に解約金や違約金の定めがある場合は、別途その支払いが必要になることがあります。
Q. 切替えにはどのくらいの期間がかかりますか?
A. スマートメーターがすでに設置されているかどうかで変わります。スマートメーターへの交換工事が必要な場合はおよそ2週間程度、すでに設置済みで交換が不要な場合はおよそ数日程度が目安とされています。実際の供給元の切替えは、次回の検針日(計量日)のタイミングで行われるのが一般的です。正確な期間は契約する電力会社や地域の状況によって異なるため、申込み時にご確認ください。
Q. マンションに住んでいますが、電力会社を自由に選べますか?
A. 多くの場合は選べますが、建物全体で「高圧一括受電契約」を結んでいるマンションでは、入居者が個別に電力会社を切り替えることはできません。これは、建物が一括して高圧で電気を購入し、各戸へ分配する仕組みになっているためです。電気料金が管理組合や管理会社経由での請求になっている場合は、一括受電の可能性があるため、切替えを検討する前に管理会社へ確認することをおすすめします。
→ 電気代は今後どうなる?|確定している値上げ要因と中小企業の電力調達の考え方
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出典・参考(一次情報)
- 資源エネルギー庁「電力会社の切り替え方法」
- 電力広域的運営推進機関(OCCTO)「スイッチング支援システム」
- 北海道電力ネットワーク「供給地点特定番号について」
- 北陸電力送配電「スマートメーターへの取替に関するFAQ」
最終更新日:2026年7月8日
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。