電力調達の契約形態とは|固定単価型・市場連動型と需給管理の仕組みを解説

2026.07.08
再生可能エネルギー

電力調達で「どの電力会社にするか」まで絞り込んだあと、次に向き合うのが「どの契約形態(料金プラン)を選ぶか」という問いです。同じ事業者でも、単価が固定されたプランと市場価格に連動するプランでは、コストの動き方もリスクもまったく異なります。電力調達の契約形態とは、電力量料金がどのように決まるか――固定単価型か、市場連動型か――という料金プランの型の選択が中心にあります。本記事では、この2つの基本の型と、市場連動型が抱えるリスクを示した2021年1月の市場高騰、料金の裏側にある需給管理の仕組み、そして混同されやすい「相対契約」という言葉までを、一次情報をもとに整理します。

📘この記事は連載「電力調達実務ガイド」の一部です。新電力の選び方から料金・契約・RE100戦略まで、全8記事で体系的に解説しています。特集の全8記事を見る →

この記事の目次

電力調達の契約形態とは(おさらい)

まず、法人の電力調達で「契約形態を選ぶ」とは何を選ぶことなのか、全体像から整理しましょう。

調達で選ぶ2つの軸

① 料金の型

固定単価型
単価が固定
市場連動型
JEPX価格に連動

② 調達の中身

通常メニュー
再エネ指定メニュー
コーポレートPPA・自家消費

料金の型と調達の中身を組み合わせて選ぶのが電力調達の契約形態。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

法人の電力調達で選ぶのは、大きく分けて「料金の型」と「調達の中身」の2つの軸です。料金の型とは、電力量料金の単価が固定されているか、市場価格に連動するかという違い。調達の中身とは、通常の電気か、再生可能エネルギー指定のメニューか、あるいはコーポレートPPAや自家消費型太陽光といった調達手段かという違いです。

本記事では、まず料金の型である固定単価型と市場連動型を軸に解説し、後半で調達の中身の広がりと、混同されやすい「相対契約」という言葉を整理します。契約先の事業者選びについては、新電力(PPS)とはや本連載の別回で扱っています。

固定単価型と市場連動型――2つの基本の型

法人向けの料金プランは、電力量料金の単価が固定か、市場価格に連動するかで大きく2つに分かれます。

固定単価型と市場連動型

固定単価型

単価があらかじめ固定

料金が読みやすい

高騰リスクが小さい

市場が安くても安くなりにくい

市場連動型

JEPX価格に30分ごとに連動

安い時間帯にシフトで割安

燃料費調整の影響を受けにくい

市場高騰時に大幅上振れリスク

JEPXは1日を30分刻みの48コマで取引し、地域別に価格が変わる。

出典:各社公開解説をもとにgreenote作成

固定単価型――単価が確定し料金が読みやすい

固定単価型は、使用量に応じて変動する電力量料金の単価があらかじめ固定されているプランです。単価が契約時に確定しているため、使用量から料金をおおよそ予測しやすく、市場価格が高騰しても単価が跳ね上がるリスクが小さいのが特徴です。

一方で、市場価格が下がった局面でも料金が安くなりにくいという面があります。料金の予見性・安定性を重視する事業者や、電力コストを予算として固めたい場合に向いた型といえます。

市場連動型――JEPX価格に30分ごとに連動する

市場連動型は、電力量料金の単価がJEPX(日本卸電力取引所)とはで解説したスポット取引価格に連動して30分ごとに変動するプランです。JEPXは1日を30分刻みの48コマで取引し、各コマ・各エリアの価格で決まるため、市場連動型の料金も30分単位・地域別に動きます。

市場価格が安い時間帯に使用をシフトできれば割安になり、燃料費の変動が比較的早く反映される点がメリットです。伊藤忠エネクスや丸紅新電力などの解説でも、こうした特性が整理されています。実際、市場連動型(高圧向け)は、中部電力ミライズ(2022年6月)、東北電力(2022年7月)、東京電力エナジーパートナー(2022年8月)といった大手電力も導入しています。ただし、需給ひっ迫で市場価格が急騰すると、料金が大幅に上振れするリスクがあります。このリスクが現実になったのが、次に見る2021年1月の市場高騰です。

市場連動型のリスク――2021年1月の市場高騰

市場連動型の最大のリスクが表面化したのが、2021年1月のJEPXスポット価格の高騰でした。

2021年1月 市場連動型のリスクが表面化

通常時のスポット価格

約10円/kWh

2021年1月

一時最高250円/kWh
市場連動型の契約者に高額請求・採算悪化した新電力の撤退が相次いだ
(平均価格も150円超/kWh)

政府は2021年1月15日にインバランス料金の上限を200円/kWhとする措置を発表。

出典:資源エネルギー庁「今冬の電力スポット市場価格高騰に係る検証」をもとにgreenote作成

スポット価格が一時250円/kWhに高騰

2020年12月下旬以降、寒波による電力需要の急増と、LNG(液化天然ガス)在庫のひっ迫・供給力低下が重なり、JEPXスポット価格が記録的に高騰しました。資源エネルギー庁の検証によれば、一時最高価格は250円/kWh、平均価格も150円/kWhを超える水準に達しました。通常のスポット価格がおおむね10円前後/kWhであることを踏まえると、桁違いの高騰です。

事態を受けて、政府は2021年1月15日にインバランス料金の上限を200円/kWhとする措置を発表しました。この高騰は、市場価格が制御不能なほど上がりうることを、電力業界に強く印象づけました。

契約者への高額請求と新電力の撤退

この高騰で最も打撃を受けたのが、市場連動型プランを契約していた需要家です。単価が市場価格に直結するため、月次の請求額が通常の数倍に膨らむ事例が続出しました。市場連動型を「安い」という理由だけで選んでいた需要家にとっては、想定外の負担となりました。

同時に、市場から高値で電気を調達せざるを得なくなり採算が悪化した新電力の事業停止・撤退も相次ぎました。この一連の出来事は、市場連動型のリスクを示す代表例として、今も調達の教訓として語られています。次回解説する新電力の経営リスクとも深く関わる出来事です。

需給管理(バランシング)と同時同量――プラン設計の背景

料金プランの裏側には、小売電気事業者が負う「需給管理」という責務があります。調達コストの背景として理解しておきましょう。

同時同量とインバランス

前日正午までに翌日48コマの計画をOCCTOに提出
30分単位で一致させる = 同時同量
需要
(販売量)
一致
調達量
(発電・市場調達)
ずれた差分 = インバランス
一般送配電事業者が調整し、インバランス料金で事後精算

2016年の小売全面自由化に合わせて導入された計画値同時同量制度。

出典:資源エネルギー庁・送配電事業者の公開情報をもとにgreenote作成

計画値同時同量とインバランス

小売電気事業者は、自らの需要(販売量)と調達量(発電・市場調達)を30分単位で一致させる「同時同量」を達成する責務を負っています。現行は計画値同時同量制度で運用され、小売電気事業者・発電事業者は前日正午までに翌日48コマの需要調達計画・発電販売計画をOCCTO(電力広域的運営推進機関)とはで解説した機関に提出し、各コマの実需給1時間前(ゲートクローズ)まで変更できます。

計画値と実績にズレが生じるとインバランスとなり、一般送配電事業者が調整を行って、その差分をインバランス料金として事後精算します。この制度は、2016年4月の小売全面自由化に合わせて導入されました。

需給管理コストがプラン設計に反映される

同時同量やインバランスの精算は、あくまで小売電気事業者が担う業務であり、需要家が直接行うものではありません。しかし、この需給管理のコストとインバランスのリスクは、料金プランの設計に反映されています。

たとえば、固定単価型では、市場価格の変動リスクを小売事業者が引き受けるため、その分のリスクプレミアムが単価に含まれます。逆に市場連動型は、そのリスクを需要家に転嫁する構造です。プランの単価がなぜその水準なのかを理解するうえで、需給管理という裏側の仕組みを知っておくことは、調達担当者が料金の妥当性を見極める助けになります。

「相対契約」という言葉の整理

調達の場面でよく聞く「相対契約」は、指す対象が2通りあり混同しやすい言葉です。正確に整理します。

相対契約の2つの使われ方

市場(JEPX)を介さず、当事者間で個別に条件を取り決める取引
狭義・本来の主用法

発電事業者 ⇔ 小売電気事業者

卸売レベルの相対契約

広義

大口の法人需要家 ⇔ 小売電気事業者

小売レベルの個別契約

同じ言葉でも指す対象が異なるため、どちらの意味かを文脈で確認する

出典:公正取引委員会・経済産業省の公開情報をもとにgreenote作成

「相対契約(あいたいけいやく)」とは、本来、市場(JEPX)を介さずに当事者間で価格・数量・期間などの条件を個別に取り決める取引を指す言葉です。狭義には、発電事業者と小売電気事業者の間で結ぶ卸電力の相対契約を指すことが多く、市場調達(JEPX経由)との対比で語られます。

一方で、大口の法人需要家と小売電気事業者が個別条件で結ぶ契約も、当事者間で個別に交渉する点で「相対的な契約」と呼ばれることがあります。つまり、同じ「相対契約」でも、卸売レベル(発電と小売の間)と小売レベル(小売と需要家の間)で指す対象が異なるため、混同しやすいのです。調達の会話で「相対」という言葉が出てきたら、どちらのレベルの話なのかを確認すると、認識のズレを防げます。

広がる調達の選択肢――再エネメニュー・PPA・自家消費

固定・市場連動という料金の型に加え、脱炭素の観点から再エネ調達の選択肢も広がっています。

料金の型とは別の軸として、調達する電気の「中身」を選ぶ選択肢が近年広がっています。代表的なのが、小売電気事業者が電力量に見合う再エネ由来の環境価値をセットで提供する再エネ指定メニュー(実質再エネ100%プラン等)、発電事業者と需要家が長期の直接契約を結ぶコーポレートPPA、そして自社の敷地や屋根に発電設備を設置する自家消費型太陽光です。

環境省のRE100調達に関する資料などでも整理されているとおり、RE100やGXの文脈では、単に数字上の再エネ100%を満たすだけでなく、新たな再エネ電源を生み出す「追加性」のある調達への関心が高まっています。これらの調達手段の詳細は各論の別記事に譲りますが、契約形態を考える際には、「料金の型(固定か市場連動か)」と「調達の中身(通常か再エネか)」を組み合わせて選ぶという視点を持っておくとよいでしょう。再エネ調達戦略については、本連載の最終回でも取り上げます。

調達担当者が契約形態を選ぶときの視点

電力調達の契約形態は、電力量料金の単価が固定される固定単価型と、JEPX価格に30分ごとに連動する市場連動型という2つの型が基本になります。市場連動型は市場が安い局面では割安になりうる一方、2021年1月のように市場価格が一時250円/kWhまで高騰した局面では料金が大幅に上振れし、契約者に高額請求が発生し新電力の撤退も相次ぎました。この価格変動リスクを誰が負うのかが、2つの型を分ける本質です。

調達担当者にとっての要点は、「単価の安さ」だけでなく「価格変動リスクの所在」で契約形態を選ぶことです。予算の予見性を重視するなら固定単価型、使用時間帯を柔軟に調整でき、リスクを許容できるなら市場連動型が選択肢になります。加えて、脱炭素の観点からは再エネメニューやPPAといった調達の中身も選べます。料金プランの裏側にある需給管理の仕組みまで理解しておくことが、料金の妥当性を見極め、自社に合った契約形態を選ぶ土台になります。次回は、こうした調達判断とも関わる新電力の経営リスクと事業撤退の問題を取り上げます。

なお本記事は、資源エネルギー庁・電力広域的運営推進機関(OCCTO)・環境省などの公開情報および各社の公開解説をもとに整理したものです。特定の料金プランや事業者を推奨するものではありません。プランの詳細や最新の市場動向は、各社の料金表と一次情報をご確認ください。

あわせて読みたい:なぜ電気代は上がったのか、15年のデータで確認 → 電気料金の推移|高騰の理由と国際比較をデータで解説

よくある質問(FAQ)

Q. 市場連動型プランは危険なのですか?

A. 一概に危険とはいえませんが、価格変動リスクを需要家が負う仕組みである点は理解しておく必要があります。市場連動型は、電力量料金の単価がJEPX(日本卸電力取引所)のスポット価格に30分ごとに連動するため、市場価格が安い時間帯に使用をシフトできれば割安になります。一方で、2021年1月のように需給がひっ迫して市場価格が急騰した局面では、料金が大幅に上振れするリスクがあります。使用時間帯を柔軟に調整できる事業者には有利になりうる一方、価格の予見性を重視する場合は固定単価型が向いています。自社の需要パターンとリスク許容度に応じた選択が重要です。

Q. 需給管理やインバランスは、需要家が意識する必要がありますか?

A. 需給管理(同時同量の達成)やインバランスの精算は、小売電気事業者が担う業務であり、需要家が直接行うものではありません。ただし、小売電気事業者が負うこの需給管理コストやインバランスのリスクは、料金プランの設計(固定単価型のリスクプレミアムや、市場連動型の価格転嫁の仕組み)の背景になっています。したがって、プランの単価がなぜその水準なのかを理解するうえで、需給管理の仕組みを知っておくことは調達担当者にとって有益です。

Q. 「相対契約」とは需要家と電力会社の契約のことですか?

A. 文脈によります。「相対契約(あいたいけいやく)」は本来、市場(JEPX)を介さずに当事者間で価格や数量などの条件を個別に取り決める取引を指し、狭義には発電事業者と小売電気事業者の間の卸電力の相対契約を指すことが多い言葉です。一方で、大口の法人需要家と小売電気事業者が個別条件で結ぶ契約も、当事者間で個別に交渉する点で「相対的な契約」と呼ばれることがあります。同じ言葉でも卸売レベル(発電と小売の間)と小売レベル(小売と需要家の間)で指す対象が異なるため、どちらの意味で使われているかを文脈で確認することが大切です。

出典・参考(一次情報)

最終更新日:2026年7月8日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

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