島国(オセアニア・太平洋)の電力事情とは|NZ・島嶼国の再エネと独立系統を解説

再生可能エネルギー

最終更新日:2026年8月4日

他国とつながらない、独立した小さな電力系統——それが島国の共通点です。水力と地熱でほぼ100%再エネのアイスランドやニュージーランドがある一方、太平洋の島嶼国は割高な輸入ディーゼルに頼り、太陽光+蓄電での自立を進めています。同じ島国である日本にとっても、示唆に富む地域です。

この記事は、世界の電力事情を地域別にみるシリーズの最終編(島国・オセアニア/太平洋編)です。北米の電力事情欧州の電力事情東アジア・オーストラリアの電力事情南アジア・東南アジアの電力事情南米の電力事情中東・アフリカの電力事情に続き、ニュージーランド・アイスランド・太平洋島嶼国の電源構成、各国の数値、電力取引、外資、日本との共通点までを整理します。

※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。とくに小国は統計の制約が大きく、数値は概数としてご覧ください。市場制度・政策は変わりうるため、最新・確定の内容は各公式情報をご確認ください。特定の国・企業への投資を推奨するものではありません。

島国の電力事情|3つの特徴
独立した小さな系統他国とつながらない独立系統が基本。規模が小さく、変動に弱い面も
水力・地熱で高い再エネNZ・アイスランドは水力と地熱で、電力の大半を再エネでまかなう
輸入燃料からの脱却太平洋の島嶼国は輸入ディーゼルに依存。太陽光+蓄電での自立が進む

この記事の目次

島国(オセアニア・太平洋)の電力事情とは|小さく独立した系統

独立した小さな系統

島国の電力の最大の特徴は、他国とつながらない「独立系統」であることです。大陸のように国境を越えて電気を融通できないため、必要な電力を自国内で完結させる必要があります。系統の規模も小さく、大きな発電所が一つ止まるだけで需給が揺らぎやすい、という難しさもあります。

クリーンな国と課題を抱える国

一方で、島国には二つの顔があります。ニュージーランドやアイスランドは、豊かな水力と地熱発電(地熱)で電力の大半を再エネでまかない、世界でも有数のクリーンな電力を実現しています。他方、太平洋の島嶼国は割高な輸入燃料に依存し、気候変動の最前線にも立たされています(IEA「Electricity 2026」)。

電源構成|水力・地熱と輸入燃料

国ごとの3つのタイプ

島国の電源構成は、資源の有無で大きく分かれます。大きく3つのタイプに整理できます。

島国の電源|3つのタイプ
水力・地熱でクリーン

ニュージーランド・アイスランド

豊かな水力と地熱で、電力の大半を再エネでまかなう。100%再エネをめざす動きも。

ディーゼル依存→転換

太平洋の島嶼国(フィジー等)

輸入ディーゼルに頼ってきたが、太陽光+蓄電で燃料輸入からの自立を進める。

水力+火力の混在

パプアニューギニア等

水力・地熱とディーゼルが混在。地方の電化(電力アクセス)も課題。

ニュージーランド・アイスランドは水力・地熱でクリーン、太平洋の小さな島嶼国はディーゼルから太陽光+蓄電へ、パプアニューギニアなどは水力・地熱と火力が混在——という違いがあります。

各国の電源構成を数値でみる|水力・地熱・太陽光ほか

主要な島国の電源構成

各国の電源構成を、数値で見てみましょう。下のグラフは、発電量に占める電源別のおおよその割合です。とくに小国は統計の制約が大きいため、あくまで概数としてご覧ください。

主要な島国の電源構成(発電量に占める割合・概数)
火力原子力風力太陽光水力地熱ほか
ニュージーランド
アイスランド
フィジー
パプアニューギニア

概数(年により変動)。「地熱ほか」はバイオマス等も含む。小国はデータの制約が大きく、幅がある点にご留意ください。出典:Ember・IEA・IRENA等をもとにgreenote作成

島国(ニュージーランド・アイスランド・太平洋島嶼国などの代表イメージ)の電源構成の推移を概観します。水力・地熱を中心とした再エネの比率が高く、火力(多くはディーゼル)を置き換える動きが進んでいます。

島国(オセアニア・太平洋)全体の電源別シェアの推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)|地域全体のイメージ(凡例の%は近年の値)
0%20%40%60%201020152020近年
火力 30%原子力 0%風力 6%太陽光 3%水力 40%地熱ほか 21%

地域全体の概数(年・国により変動/各年の合計はおおむね100%)。出典:Ember等の公開データをもとにgreenote作成

アイスランドは水力と地熱でほぼ100%再エネ、ニュージーランドも水力・地熱が柱でクリーンです。対照的に、フィジーやパプアニューギニアはディーゼル(火力)への依存が残り、水力と組み合わせて電力を賄っています。

ニュージーランドの推移

次に、時間の経過とともに構成がどう変わってきたかを見てみます。ここでは、再エネ先進国のニュージーランドについて、再エネと火力の推移を示します。

ニュージーランドの発電:再エネと火力の推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)の変化
80%20%
82%18%
87%13%
2015年ごろ2020年ごろ近年
再生可能エネルギー火力

概数(年により変動)。再エネ=水力・地熱・風力・太陽光の合計。出典:Ember等の公開データをもとにgreenote作成

ニュージーランドは、もともと高かった再エネ比率をさらに引き上げ、火力を減らしてきました。100%再エネ電力を国家目標に掲げ、干ばつ時の備えなど残る課題に取り組んでいます(いずれも概数)。

再エネ比率の推移

島国ごとに、再エネ比率の推移を見てみましょう。水力・地熱に恵まれた国と、これから高めていく国の差が表れます。

島国の「再生可能エネルギー比率」の推移(概数)
発電量に占める再エネ(水力・地熱・風力・太陽光)のおおよその割合(%)
0%25%50%75%100%201020152020近年100%87%62%55%
アイスランドニュージーランドフィジーパプアニューギニア

概数(年により変動)。小国はデータの制約が大きい点にご留意ください。出典:Ember等をもとにgreenote作成

アイスランドはほぼ100%を維持、ニュージーランドも着実に上昇しています。フィジーやパプアニューギニアも、太陽光や水力で再エネ比率を高めてきました(いずれも概数)。

各国の特徴|NZ・太平洋島嶼国・アイスランド

ニュージーランド|水力・地熱の再エネ先進

ニュージーランドは、電力の大半を水力と地熱発電(地熱)でまかなう再エネ先進国です。100%再エネ電力を国家目標に掲げ、風力・太陽光の導入も進めています。課題は、渇水の年に水力が落ち込むこと。それを補う長時間エネルギー貯蔵(LDES)(長時間の蓄電)や、揚水などの検討が進んでいます。卸電力市場も整備されています。

太平洋島嶼国|ディーゼルから太陽光+蓄電へ

フィジーやサモア、トンガなどの太平洋島嶼国は、長らく割高な輸入ディーゼルで発電してきました。燃料価格の変動や輸送コストが、電気代と経済を圧迫します。そこで近年広がっているのが、太陽光+蓄電池(バッテリー)による自立です。小さな島でも、日中の太陽光と夜間の蓄電を組み合わせれば、燃料輸入を大きく減らせます。気候変動の最前線に立つ島々にとって、脱炭素は生存にも関わるテーマです。

アイスランド|地熱・水力の100%再エネ

アイスランドは、電力のほぼ100%を水力と地熱発電(地熱)でまかなう、世界でも稀有な国です。豊富で安価なクリーン電力を生かし、アルミ精錬などのエネルギー多消費産業や、データセンターを誘致してきました。独立した島国でありながら再エネで完結できることを示す好例で、地熱の活用は日本にとっても参考になります。

電力の自由取引|小さな市場と国営

各国の市場のかたち

島国の電力は、規模が小さいため、国営の電力会社が担う国が多いのが特徴です。

  • ニュージーランド:卸電力市場が整備され、複数の発電・小売事業者が競争している。
  • アイスランド:国営のランズヴィルクユンが発電の中心を担う。
  • 太平洋島嶼国:フィジーのEFLなど、国営の電力会社が発電・供給を一手に担う国が多い。
  • 日本JEPX(日本卸電力取引所)が卸取引を担い、広域機関(OCCTO)が全国の需給を調整する。

いずれの島国も、他国と系統がつながらない「独立系統」です。だからこそ、市場の仕組み以上に、限られた電源をいかに安定して運用するかが問われます。

外資の参入状況|投資・援助と日本企業

再エネと援助を通じた参入

島国への外資の関わりは、他地域とは少し性格が異なります。市場が小さく規模の経済が効きにくいため、純粋な投資に加え、ODA(政府開発援助)や国際開発銀行(ADB・世界銀行など)の支援を通じたプロジェクトが多いのが特徴です。太平洋では、日本・オーストラリア・中国などが、太陽光+蓄電やマイクログリッドの整備に関与してきました。

ニュージーランドは外資に開かれていますが、重要資産の取得には審査(OIO)があります。太平洋島嶼国では、地政学的な関心の高まりから、支援をめぐる各国の動きも活発になっています。

外資にとっての参入機会と留意点

参入機会

  • 太陽光+蓄電・マイクログリッドの需要
  • NZの再エネIPP・地熱
  • 援助と結びついた事業(ODA・開発銀行)

留意点

  • 市場が小さく規模の経済が効きにくい
  • 離島の物流・保守コストが高い
  • 気候災害リスク・政策の不確実性

開放度や規制は国・年により変わります。最新・確定の内容は各国の公式情報でご確認ください。

日本企業(商社・援助)の動き

日本は、JICA(国際協力機構)などを通じて、太平洋島嶼国の太陽光・蓄電やマイクログリッドの整備を支援してきました。商社やメーカーも、島しょ向けの再エネ・蓄電システムに関与しています。同じ島国として、また太平洋の重要なパートナーとして、日本の役割は小さくありません。なお各主体の個別方針は変化するため、最新は各公式情報をご確認ください。

日本との制度比較|同じ島国としての共通点

島国の主要国と日本を、制度面で並べてみましょう。同じ島国だからこその共通点が見えてきます。

島国の主要国と日本|電力制度の比較
観点ニュージーランドアイスランドフィジー日本
市場の形態卸電力市場あり国営中心(ランズヴィルクユン)国営(EFL)中心
主力電源水力・地熱水力・地熱水力+ディーゼル
国際連系なし(独立系統)なし(独立系統)なし(独立系統)
再エネ比率高い(約8〜9割)ほぼ100%中程度
気候脆弱性比較的低い比較的低い非常に高い(海面上昇等)

最大の共通点は、いずれも「独立系統」で、他国と電気を融通できないことです。この点は、大陸の欧州の電力事情北米の電力事情と決定的に異なります。ニュージーランドやアイスランドは、その制約のなかでも水力・地熱で高い再エネ比率を実現しており、同じ島国の日本にとって大きな示唆になります。

島国が抱える課題|独立系統・輸入燃料・気候脆弱性

島国の電力には、独立系統ゆえの固有の課題があります。

島国の電力が抱える課題

課題

小さく独立した系統。他国とつながらず規模も小さいため、需給の変動に弱い。

論点

蓄電池やデマンドレスポンスで、変動を吸収し安定させる。

課題

輸入燃料への依存。太平洋の島嶼国は、割高な輸入ディーゼルに頼ってきた。

論点

太陽光+蓄電で、燃料輸入と価格変動から自立する。

課題

気候変動への脆弱性。海面上昇や巨大サイクロンが、インフラを直撃する。

論点

強靱な設備と分散型電源で、災害に強い電力をつくる。

他国と系統がつながらないため、需給の変動を自国内で吸収しなければなりません。だからこそ、蓄電池や長時間エネルギー貯蔵(LDES)、需要側の調整(デマンドレスポンス)が、島国ではとりわけ重要になります。太平洋の島嶼国では、輸入燃料からの脱却と、気候災害に強い電力インフラづくりが、待ったなしの課題です。

日本企業への示唆|島しょの電力と日本へのヒント

島国の電力は、同じ島国である日本にとって、身近なヒントの宝庫です。ニュージーランドやアイスランドの地熱発電(地熱)活用、太平洋島嶼国の太陽光+蓄電による自立は、独立系統のなかで再エネを増やす実例そのものです。

日本企業にとっては、太平洋島嶼国の再エネ・蓄電が、援助と結びついた事業機会になります。同時に、島しょのマイクログリッドや蓄電の知見は、日本国内の離島や、非常時のレジリエンス(強靱性)にも応用できます。RE100ネットゼロをめざすうえでも、独立系統で再エネを回す島国の工夫は参考になります。

まとめ|独立系統の島国が示す再エネの可能性

島国は、他国とつながらない独立系統という制約のなかで、それぞれの答えを探しています。アイスランドやニュージーランドは水力・地熱でほぼ再エネを実現し、太平洋の島嶼国は太陽光+蓄電で輸入燃料からの自立を進めています。

「独立した系統でも、再エネで電力をまかなえる」——島国が示すこの可能性は、同じ島国の日本にとって、大きな励みでもあります。これで、世界の電力事情シリーズ(北米の電力事情欧州の電力事情東アジア・オーストラリアの電力事情南アジア・東南アジアの電力事情南米の電力事情中東・アフリカの電力事情・本編)はひと通りそろいました。地域ごとの違いを比べながら、世界と日本の電力の未来を考える手がかりにしてください(World Energy Outlook 2025)。

よくある質問(FAQ)

Q. 島国の電力事情の特徴は何ですか?

他国とつながらない「独立系統」で、規模が小さいことが最大の特徴です。ニュージーランドやアイスランドは水力・地熱でほぼ再エネ、太平洋の島嶼国は輸入ディーゼルに依存しつつ太陽光+蓄電で自立を進める、という二つの顔があります。

Q. アイスランドはなぜ100%近く再エネなのですか?

豊富な水力と地熱に恵まれているためです。安価でクリーンな電力を生かして、アルミ精錬などのエネルギー多消費産業やデータセンターを誘致してきました。独立した島国でも再エネで完結できることを示す好例です。

Q. ニュージーランドの電源構成は?

水力と地熱が電力の柱で、風力・太陽光も加わり、再エネ比率は約8〜9割と高い水準です。100%再エネ電力を国家目標に掲げています。課題は渇水時に水力が落ち込むことで、蓄電などで備えています(いずれも概数)。

Q. 太平洋の島嶼国の電力はどうなっていますか?

長らく割高な輸入ディーゼルに頼ってきましたが、近年は太陽光+蓄電池による自立が進んでいます。小さな島でも、日中の太陽光と夜間の蓄電を組み合わせれば燃料輸入を減らせます。気候変動の最前線にあり、脱炭素は生存にも関わるテーマです。

Q. 島国の電力は日本とどう関係しますか?

日本も他国とつながらない独立系統の島国です。ニュージーランドやアイスランドの地熱活用、太平洋島嶼国の太陽光+蓄電による自立は、独立系統で再エネを増やす実例として、日本に多くの示唆を与えます。

Q. 島国に外資はどのくらい入っていますか?

ニュージーランドは外資に開かれています(重要資産は審査あり)。太平洋島嶼国は市場が小さいため、ODAや国際開発銀行の支援と結びついたプロジェクトが多く、日本・豪州・中国などが太陽光+蓄電やマイクログリッドの整備に関与しています。

Q. 島国の電力が抱える課題は何ですか?

小さく独立した系統ゆえの需給変動への弱さ、輸入燃料への依存、気候変動(海面上昇・サイクロン)への脆弱性が主な課題です。蓄電池やデマンドレスポンス、分散型で災害に強い電源が対応の鍵になります。

Q. 日本企業は島国の電力にどう関われますか?

太平洋島嶼国の再エネ・蓄電が、援助と結びついた事業機会になります。島しょのマイクログリッドや蓄電の知見は、日本の離島や非常時のレジリエンスにも応用できます。同じ島国として、また太平洋のパートナーとして関与の余地が大きい分野です。

出典・参考資料(一次情報)

※ 本記事は上記の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した一般的な解説です。とくに小国は統計の制約が大きく、数値は概数です。最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月14日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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