東アジア・オーストラリアの電力事情とは|中国・日本・韓国・豪の電源構成と電力取引を解説

2026.08.14
再生可能エネルギー

最終更新日:2026年8月4日

世界最大の電力消費国である中国、資源を輸入に頼る日本と韓国、石炭大国でありながら再エネが急拡大するオーストラリア——。東アジアとオーストラリアには、性格の異なる巨大な電力市場が集まっています。世界の脱炭素の行方は、この地域の電力にかかっているといっても過言ではありません。

この記事は、世界の電力事情を地域別にみるシリーズの一編(東アジア・オーストラリア編)です。北米の電力事情欧州の電力事情に続き、中国・日本・韓国・オーストラリアの電源構成、各国の数値、電力の自由取引、日本との制度の違い、課題までを、詳しく整理します。インド・東南アジア(タイ・インドネシア・シンガポールなど)は、次の南アジア・東南アジア編で取り上げます。

※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。電源構成の数値や市場制度・政策は年・統計・情勢によって変わるため、最新・確定の内容は各公式情報をご確認ください。特定の国・企業への投資を推奨するものではありません。

東アジア・オーストラリアの電力|3つの特徴
巨大な需要地中国を筆頭に、日本・韓国・豪を含め世界最大級の電力需要が集まる
石炭と再エネの併存石炭火力への依存が根強い一方、風力・太陽光も世界最大級の規模で拡大
多様な制度発達した市場から国家主導まで、電力取引の仕組みは国ごとに大きく異なる

この記事の目次

東アジア・オーストラリアの電力事情とは|多様な4か国

世界で最も伸びる電力需要

東アジアとオーストラリアは、世界最大級の電力市場が集まる地域です。とりわけ中国は、世界最大の電力消費国であり、近年の世界の電力需要の増加分の多くを一国で占めるとされます。日本・韓国も成熟した大需要国で、オーストラリアも資源国として存在感があります。

石炭と再エネの併存

もう一つの特徴が、石炭と再エネの「併存」です。中国やオーストラリアは石炭火力に大きく依存する一方、中国は風力・太陽光の導入量でも世界の最前線にあります。脱炭素と成長・安定供給をどう両立させるかが、地域共通のテーマです(IEA「Electricity 2026」)。

電源構成|石炭・原子力・再エネの多様なミックス

国ごとの3つのタイプ

この地域の電源構成は、国によって大きく異なります。大きく3つのタイプに整理できます。

この地域の電源|3つのタイプ
石炭大国

中国

石炭火力が電源の柱で、需要急増を支える。同時に風力・太陽光の導入量も世界最大級で急拡大中。

火力+原子力

日本・韓国

資源を輸入に頼り火力が中心。韓国は原子力の比重が高め、日本は再エネの拡大が課題。

再エネ豊富

オーストラリア

石炭大国だが日射・風況に恵まれ、太陽光・風力が急拡大。水素・アンモニアの輸出も視野。

中国は石炭が柱で、需要の急増を支えています。日本・韓国は資源を輸入に頼り火力が中心で、原子力の比重に差があります。オーストラリアは石炭大国ながら、日射・風況を生かした太陽光・風力が急拡大し、アンモニア(燃料・水素キャリア)や水素の輸出も視野に入れています。

各国の電源構成を数値でみる|火力・原子力・風力・太陽光ほか

主要国の電源構成

各国の電源構成を、数値で見てみましょう。下のグラフは、発電量に占める電源別のおおよその割合です。数値は年や統計により変わるため、あくまで概数としてご覧ください。

主要国の電源構成(発電量に占める割合・概数)
火力原子力風力太陽光水力その他
中国
日本
韓国
オーストラリア

概数(年により変動)。「その他」はバイオマス等を含む。出典:Ember・IEA等の公開データをもとにgreenote作成

東アジア・オセアニア全体(中国・日本・韓国・オーストラリアの合計イメージ)で、電源構成の推移を概観します。中国の規模が大きく、火力が高い水準ですが、風力・太陽光が伸びています。

東アジア・オセアニア全体の電源別シェアの推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)|地域全体のイメージ(凡例の%は近年の値)
0%20%40%60%80%201020152020近年
火力 63%原子力 6%風力 9%太陽光 8%水力 12%その他 2%

地域全体の概数(年・国により変動/各年の合計はおおむね100%)。出典:Ember等の公開データをもとにgreenote作成

火力(石炭・ガス)への依存度が国によって大きく異なることがわかります。中国は石炭を含む火力が大きく、韓国は原子力、オーストラリアは太陽光・風力の比率が高いのが特徴です。日本は火力が中心で、再エネは拡大の途上にあります。

中国の推移

次に、時間の経過とともに構成がどう変わってきたかを見てみます。まず、地域最大の中国について、石炭と風力・太陽光の推移を示します。

中国の発電:石炭と風力・太陽光の推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)の変化
7%68%
13%63%
20%58%
2015年ごろ2020年ごろ近年
風力+太陽光石炭

概数(年により変動)。出典:Ember等の公開データをもとにgreenote作成

中国は、石炭が依然として最大の電源ですが、その割合は少しずつ低下し、風力・太陽光が急速に伸びています。欧州のように再エネが石炭を上回るには至っていませんが、変化の方向は明確です(いずれも概数)。

国別の推移

国ごとに推移を見ると、伸び方はさまざまです。下のグラフは、主要国の発電に占める「風力+太陽光」の割合の推移です。

主要国の「風力+太陽光」比率の推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)
0%10%20%30%201020152020近年18%29%12%8%
中国オーストラリア日本韓国

概数(年により変動)。出典:Ember等の公開データをもとにgreenote作成

オーストラリアが急速に伸び、中国も着実に拡大する一方、日本・韓国は相対的に緩やかです。出発点も伸び方も国ごとに異なることが読み取れます(いずれも概数)。

電力の自由取引|国ごとに大きく異なる市場

各国の市場のかたち

この地域の電力取引は、国ごとに仕組みが大きく異なります。発達した卸電力市場を持つ国から、国家が主導する国まで、多様です。

  • オーストラリア:東部を結ぶ卸電力市場NEM(National Electricity Market)が発達し、5分単位の取引など先進的な仕組みを持つ。
  • 韓国:電力取引所KPXを通じて取引されるが、国営KEPCOを中心とする「単一買い手」に近いモデルで、自由化は限定的とされる。
  • 中国:国家主導のもと、省内・省間の電力市場や中長期契約を段階的に広げているが、国の管理色が強い。
  • 日本JEPX(日本卸電力取引所)が卸取引を担い、広域機関(OCCTO)が全国の需給を調整する。

同じ地域でも、市場を通じて自由に取引する国と、国家や大手が強く関与する国が併存しています。日本の同時市場の検討のように、効率化に向けた市場改革は各国で進みつつあります。

日本との制度比較|市場・自由化・国際連系の違い

この地域の主要国と日本を、制度面で並べてみましょう。

東アジア・豪の主要国と日本|電力制度の比較
観点オーストラリア韓国中国日本
市場の形態NEMなど発達した卸電力市場単一買い手に近い(KPX・KEPCO中心)国家主導。市場改革を段階的に導入中
小売の自由化進んでいる限定的部分的(大口中心に拡大)
主力電源石炭+急拡大する太陽光・風力火力+原子力石炭(再エネも世界最大級で拡大)
国際連系島大陸で限定的ほぼ独立一部の隣国と連系
再エネの勢い非常に速いこれから世界最大規模で拡大

表のとおり、市場の自由化の度合いも、主力電源も、国ごとに大きく異なります。共通するのは、北米の電力事情欧州の電力事情のような広域の国際連系が乏しく、多くの国で系統が国内にとどまる点です。島国の日本はもちろん、韓国やオーストラリアも国際連系は限定的です。

外資の参入状況|国により大きく異なる開放度

中国は制限的、豪は開放的

この地域は、外資への開放度が国によって大きく異なります。中国は発電の一部に外資参入の余地はあるものの、国家の管理色が強く、送配電は国有が中心です。日本・韓国は発電に外資が参入できますが、送配電は規制されています。

オーストラリアは外資に比較的開放的で、再エネに海外資本やファンドが活発に投資しています。ただし、重要インフラの買収は外国投資審査委員会(FIRB)の対象となります。

外資にとっての参入機会と留意点

参入機会

  • オーストラリアの再エネに大きな投資余地
  • 日韓の発電事業への参入
  • 水素・アンモニアなど新分野

留意点

  • 中国は国家管理が強く参入領域が限定
  • 送配電は各国で規制
  • 重要インフラの外資審査(豪FIRB等)

開放度や規制は国・年により変わります。最新・確定の内容は各国の公式情報でご確認ください。

日本企業の動き

日本のJERA・電力会社・商社は、オーストラリアの再エネや水素・アンモニア、韓国などの発電事業に関与してきました。資源・再エネの供給元として、また脱炭素技術の展開先として、この地域を重視しています。

この地域が抱える課題|石炭・需要急増・系統

急成長するこの地域の電力には、いくつかの大きな課題があります。

この地域の電力が抱える課題

課題

石炭依存からの脱却。とくに中国は石炭火力への依存が根強い。

論点

再エネ拡大と並行し、既存の石炭をどう段階的に減らすか(アンモニア混焼などの議論も)。

課題

需要の急増。経済成長・電化・データセンターで需要が伸び続ける。

論点

増える需要を、脱炭素と両立しながらどう満たすかが問われる。

課題

系統と国際連系の弱さ。国をまたぐ連系が乏しく、再エネの融通が難しい。

論点

国内系統の増強に加え、将来的な広域連系(アジア・スーパーグリッド構想など)が論点。

最大の課題は、石炭依存からの脱却です。需要が伸び続けるなかで、既存の石炭火力をどう減らすか——アンモニア(燃料・水素キャリア)の混焼のような移行技術も議論されますが、評価は分かれます。また、国をまたぐ連系が乏しいため、再エネの余剰を融通しにくく、将来的な広域連系(アジア・スーパーグリッド構想など)も論点になっています。

日本企業への示唆|東アジア・豪での電力調達

東アジアとオーストラリアは、多くの日本企業にとって生産・調達の拠点が集まる要の地域です。そのため、各国の電力事情を理解することは、事業継続と脱炭素の両面で重要になります。

再エネ電力の調達しやすさは、国によって大きく異なります。コーポレートPPAの整備が進むオーストラリアがある一方、韓国のように選択肢が限られる国もあります。RE100ネットゼロの達成に向けては、拠点のある国ごとに調達手段を見極める必要があります。ペロブスカイト太陽電池のような次世代技術の動向も、今後の調達を左右するでしょう。

まとめ|脱炭素の行方を左右する東アジアと豪

東アジアとオーストラリアは、世界の電力需要の増加と脱炭素の行方を左右する、決定的に重要な地域です。石炭への依存が根強い一方で、再エネの拡大も世界最大級。電力取引の仕組みも、発達した市場から国家主導まで、実に多様です。

国際連系が乏しく、各国が国内で電力を賄う構図は、島国の日本にも通じます。だからこそ、系統の増強や市場改革といったこの地域の取り組みは、日本の電力を考えるうえでも参考になります。次回は、インドや東南アジア(タイ・インドネシア・シンガポールなど)の電力事情を、同じく電力取引の視点から見ていきます(World Energy Outlook 2025)。

よくある質問(FAQ)

Q. この地域(東アジア・オーストラリア)の電力の特徴は?

世界最大級の電力市場が集まり、需要の伸びが大きい点が特徴です。中国は石炭火力への依存が根強い一方、風力・太陽光も世界最大級の規模で拡大しています。日本・韓国は火力中心、オーストラリアは石炭大国ながら再エネが急拡大と、性格はさまざまです。

Q. 中国の電源構成はどうなっていますか?

石炭火力が最大の柱ですが、その割合は少しずつ低下しています。同時に、水力に加えて風力・太陽光が世界最大級の規模で急拡大しており、再エネ導入量では世界の最前線にあります(いずれも概数)。

Q. 日本と韓国の電力の違いは何ですか?

どちらも資源を輸入に頼り火力が中心ですが、原子力の比重が異なります。韓国は原子力の割合が比較的高く、日本は火力への依存が大きく再エネは拡大の途上です。市場制度も、日本は全面自由化、韓国は単一買い手に近く限定的です。

Q. オーストラリアの電力の特徴は?

石炭大国でありながら、豊かな日射・風況を生かして太陽光・風力が急拡大しているのが特徴です。東部にはNEMという発達した卸電力市場があり、水素・アンモニアの輸出も視野に入れています。

Q. この地域の電力取引は日本とどう違いますか?

国ごとに大きく異なります。オーストラリアはNEMという発達した卸市場を持ち、韓国は単一買い手に近く自由化が限定的、中国は国家主導です。日本はJEPXと広域機関が担います。共通するのは、国際連系が乏しく国内で電力を賄う点です。

Q. なぜこの地域で電力需要が増えているのですか?

経済成長にともなう生活水準の向上、産業の拡大、電化の進展、そして近年はデータセンターの増加などが背景です。とくに中国の需要増が大きく、世界の需要増加分の多くを占めるとされます。

Q. この地域の電力が抱える課題は何ですか?

石炭火力への依存からの脱却、伸び続ける需要と脱炭素の両立、そして国をまたぐ連系が乏しく再エネを融通しにくいことが主な課題です。将来的な広域連系(アジア・スーパーグリッド構想など)も論点になっています。

Q. インドや東南アジアの電力は扱わないのですか?

本記事は東アジア(中国・日本・韓国)とオーストラリアに絞っています。インドや東南アジア(タイ・インドネシア・シンガポールなど)は、別の「南アジア・東南アジア編」で詳しく取り上げる予定です。

出典・参考資料(一次情報)

※ 本記事は上記の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した一般的な解説です。電源構成・市場制度・政策は年・統計・情勢で変わるため、最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月14日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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