FIP制度とは|FIT(固定価格買取)との違いとプレミアムの仕組み・再エネの売り方をわかりやすく解説

2026.06.28
再生可能エネルギー

再生可能エネルギーを、もっと「電力市場のなかで」育てたい——。その発想から、2022年4月に始まったのがFIP制度(フィードインプレミアム)です。これまでのFIT(固定価格買取制度)が「固定価格で買い取ってもらう」仕組みだったのに対し、FIPは「市場で自ら売り、プレミアム(上乗せ額)を受け取る」仕組み。本記事では、その違いとプレミアムの仕組みを、わかりやすく解説します。

電力市場の全体像は電力市場とは、取引所そのものはJEPX(日本卸電力取引所)とはもあわせてご覧ください。

この記事の目次

FIP制度とは

まず、FIP制度をひとことで整理します。「固定価格で買い取ってもらう」FITから、「市場で自ら売って、プレミアムを上乗せしてもらう」へ——という発想の転換から入りましょう。

FIP制度をひとことで言うと

FIP制度とは、再エネで発電した電気を、発電事業者が卸電力市場(JEPX)などで自ら売り、その売電収入に「プレミアム」と呼ばれる上乗せ額を受け取る制度です。FIPは「Feed-in Premium」の略。2022年4月に導入されました。

ポイントは、電気を市場で売るという点にある。固定価格で買い取ってもらうのではなく、自分で売り先を見つけ、市場価格で売る。そのうえで、収入が一定水準を下回らないよう、プレミアムで補う——。再エネを、補助で守られた存在から、市場のなかで稼ぐ存在へと近づける仕組みなのです。

なぜFITから移行するのか

そもそも、なぜFITから移行するのか。理由は、再エネを「主力電源」へと育てるためです。FITは再エネの普及を一気に進めた一方、買い取り費用が再エネ賦課金として電気料金に上乗せされ、国民負担が増えてきました。さらに、いつ発電しても同じ価格で買い取られるため、需要が多い時間に合わせて売る、といった市場を意識した行動が起きにくい。

再エネが電源の主役になるには、需給に応じてふるまうことが欠かせません。電気が足りない時間に多く供給し、余る時間は抑える——。そうした行動を促すには、市場価格に連動する仕組みが要る。そこで、再エネを電力市場に統合するFIPへと舵を切ったのです。

FIT(固定価格買取制度)との違い

FIPを理解するには、これまで再エネ普及を支えてきたFITとの違いを押さえるのが近道です。両者を比べてみましょう。

FITとFIP、何が違う

FIT(固定価格買取制度)

2012年スタート

電力会社が固定価格で一定期間買い取ることを国が約束。市場価格から切り離されている。いつ発電しても同じ価格で、需給を意識する必要は乏しい

FIP(フィードインプレミアム)

2022年スタート

発電事業者が卸電力市場などで自ら売り、売電収入にプレミアムを上乗せ。市場価格に連動し、価格が高い時間に売るなどの行動を促す。

FIT=固定価格で市場と切り離し/FIP=市場で売ってプレミアムを上乗せ。再エネを電力市場に統合するのが狙い。

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

FITは「固定価格」で市場と切り離す

FIT(固定価格買取制度)は、2012年7月に始まりました。再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)にもとづき、再エネで発電した電気を、電力会社が一定の固定価格で一定期間買い取ることを、国が約束する制度です。発電事業者にとっては、売電収入の見通しが立てやすい。これが再エネ普及を大きく後押ししました。

その特徴は、市場価格から切り離されていることにある。いつ発電しても、市場がいくらであっても、買い取り価格は同じ。だから発電事業者は、需要と供給のバランスを意識する必要が乏しかった。普及を急ぐ段階では有効でしたが、再エネが増えるほど、この「市場と無関係」という性質が課題になっていきました。

FIPは「市場で売って」プレミアムを上乗せ

一方のFIPは、市場で電気を売ることが前提です。発電事業者は、卸電力市場や相対契約で電気を売り、市場価格に応じた収入を得る。そのうえで、収入が基準を下回らないよう、プレミアム(上乗せ額)を受け取ります。

FITが「いくらで買い取るか」を約束するのに対し、FIPは「市場で売った収入に、いくら上乗せするか」を決める仕組みだ。この違いは小さくありません。FIPでは、市場価格が高い時間に売れば収入が増える。再エネ事業者にも、市場を見て動く動機が生まれる——。これが、再エネを電力市場へ統合していく第一歩なのです。

プレミアムの仕組み――基準価格と参照価格

FIPの核心は、上乗せされる「プレミアム」の決まり方にあります。基準価格と参照価格という2つの価格から見ていきます。

プレミアムは、2つの価格の差で決まる

基準価格(FIP価格)

国が定め一定期間固定

参照価格

市場価格に連動して変動

プレミアム

上乗せ額

市場価格が高いとき

参照価格が高い→プレミアムは小さい。売電収入が多いので上乗せは少なくてよい。

市場価格が低いとき

参照価格が低い→プレミアムは大きい。売電収入が少ない分を補う。

収入は売電収入+プレミアム。高い時間に多く売れば収入を増やせる。

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

基準価格-参照価格=プレミアム

プレミアムは、2つの価格の差で決まります。式にすると、基準価格(FIP価格)-参照価格=プレミアム。まず基準価格は、効率的に発電する場合に必要となる費用の見込みをもとに、国があらかじめ定める価格です。一定期間(たとえば20年間)固定されます。

もう一方の参照価格は、市場取引などで期待される収入をもとに、市場価格に連動して機械的に決まる価格だ。この2つの差額が、発電事業者に上乗せされる。「本来必要な水準(基準価格)」と「市場で得られる見込み(参照価格)」のギャップを埋めるのが、プレミアムの役割なのです。

市場価格に応じてプレミアムが変わる

ここがFIPの妙味です。参照価格は市場価格に連動するため、市場価格が高いときはプレミアムが小さく、低いときは大きくなります。市場価格が高ければ売電収入が多いので上乗せは少なくてよく、低ければその分を補う、という関係だ。

結果として、発電事業者の収入(市場での売電収入+プレミアム)は、おおむね基準価格の水準にならされます。一見、FITと同じく安定しているように見える。けれど決定的に違うのは、市場価格が高い時間帯に多く売れば、収入をさらに増やせる点です。だからこそ、再エネ事業者にも「いつ売るか」を工夫する動機が生まれるのです。

再エネを市場に統合する狙い

FIPがめざすのは、再エネを電力市場に「溶け込ませる」ことです。なぜそれが必要なのか、どう行動が変わるのかを見ていきます。

市場に溶け込む再エネ、支えるアグリゲーター

FIPが促す行動

価格が高い時間に売る

需要が多く市場価格が高い時間帯に、多く供給する動機が生まれる。

蓄電池を活用する

価格が安いときに充電し、高いときに放電して売る。需給に合わせて調整できる。

アグリゲーターの役割

再エネアグリゲーター

予測と計画発電量を予測し計画をつくる

蓄電池の活用貯めて高い時間に売る

取引と契約市場取引や需要家との契約

リスク引き受けインバランスを負担

計画値同時同量という専門的な業務を代行し、発電事業者がFIPに取り組みやすくする。

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

価格が高い時間に売る・蓄電するインセンティブ

FIPが再エネにもたらす最大の変化は、「いつ供給するか」を意識させることです。市場価格は、需要が多い時間に高く、余る時間に低くなる。FIPでは市場価格に連動して収入が変わるため、需要が多く価格が高い時間帯に多く供給するほど、収入を増やせます。

ここで効いてくるのが、蓄電池です。価格が安い時間に充電し、高い時間に放電して売る。あるいは再エネが余る時間に貯めて、足りない時間に出す。こうして需給に合わせて調整できれば、収入も電力システムの安定も両立できる。FIPは、再エネと蓄電池を組み合わせる動機を生み、再エネを市場の一員へと変えていくのです。

アグリゲーターとバランシング

とはいえ、発電事業者が自分で市場取引や需給管理までこなすのは、簡単ではありません。FIPでは原則として自ら電気を売る必要があり、発電計画と実績がずれるとインバランス(過不足)の調整も求められる。この専門的な業務を代行するのが、アグリゲーター(再エネアグリゲーター)です。

アグリゲーターは、発電量の予測と計画づくり、蓄電池の活用、市場取引や需要家との契約、インバランスのリスクの引き受けなどを担います。発電量を計画どおりに合わせる「計画値同時同量」は専門性が高い業務ですが、取引や調整に長けたアグリゲーターの得意分野。FIPが回り始めたのは、こうした担い手がいたからこそ、ともいわれます。再エネを束ねるVPP(仮想発電所)とも重なる、新しいビジネスが広がっています。

対象と課題

FIPはすべての再エネに一律で適用されるわけではありません。対象範囲と、残る課題を整理します。

FIPの対象と、残る課題

対象

比較的規模の大きい電源から段階的にFIPへ。住宅用など小規模なものはFITが残るなど、規模や種類で扱いが分かれる

主な課題

価格変動リスク

市場価格が下がれば収入も影響を受け、変動リスクを事業者が負う。

予測と制御の手間

発電予測や計画値同時同量など、運用の負担が増える。

担い手と環境整備

アグリゲーターの育成や蓄電池のコストなど、支える条件づくりが要る。

制度は見直しが続いており、最新の内容は資源エネルギー庁などで確認を。

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

どの電源が対象になるのか

FIPは、すべての再エネに一律で適用されるわけではありません。基本的な考え方は、比較的規模の大きい電源から段階的にFIPへ移していく、というもの。市場で売る体力のある事業者から、市場統合を進めていくイメージです。

一方、住宅用の太陽光など小規模なものは、引き続きFITが残るなど、規模や種類によって扱いが分かれます。すべてを一気に市場へ放り込むのではなく、準備が整ったところから移行していく。再エネの裾野を守りつつ、主力となる電源を市場に統合する——。そうした段階的な設計になっているのです。

事業者が負うリスクと展望

FIPには、課題も残ります。第一に、価格変動リスクだ。市場価格が下がれば収入も影響を受け、その振れを事業者が負うことになる。第二に、予測と制御の手間。発電予測や計画値同時同量など、FITにはなかった運用の負担が増えます。第三に、アグリゲーターの育成や蓄電池のコストといった、仕組みを支える環境整備です。

これらをどう乗り越えるかが、FIPの定着を左右します。価格変動リスクには電力先物などのヘッジ手段、予測の手間にはアグリゲーターや技術の進歩、環境整備には政策の後押し——。FIP制度は導入後も見直しが続いており、よりよい形を探る議論が進んでいます。最新の内容は資源エネルギー庁などで確認するとよいでしょう。

FIP制度をどう捉えるか

FIP制度は、再エネ電気を市場で自ら売り、基準価格と参照価格の差で決まるプレミアムを上乗せして受け取る仕組みです。固定価格で市場から切り離されていたFITに対し、FIPは再エネを電力市場に統合し、価格が高い時間に売る・蓄電するといった行動を促します。その裏では、予測や取引、インバランスを担うアグリゲーターが支えています。

大切なのは、FIPを「補助の減額」と狭く捉えるのではなく、「再エネを、守られる存在から、市場のなかで自立して稼ぐ主力電源へと育てるための仕組み」として理解することでしょう。再エネが主役になるほど、需給に合わせてふるまう力が欠かせません。FIPは、その第一歩を制度として後押しするものです。電力システムの全体像は電力システムまるわかりガイドもご覧ください。

固定価格に守られた普及期から、市場で自立する成長期へ。FIP制度は、再エネが電力システムの主役へと歩みを進めるための、重要な転換点なのです。なお本記事は、特定の投資や事業を推奨するものではなく、制度を中立に整理したものです。

よくある質問(FAQ)

Q. FIP制度と、FIT(固定価格買取制度)は何が違うのですか?

A. FITは、再エネで発電した電気を電力会社が『固定価格』で一定期間買い取る制度で、市場価格から切り離されています。いつ発電しても同じ価格なので、需給を意識する必要は乏しいものでした。一方FIPは、発電事業者が卸電力市場(JEPX)などで『自ら電気を売り』、その収入に『プレミアム(上乗せ額)』が加わる制度です。市場価格に連動するため、価格が高い時間に売るなど、市場を意識した行動が促されます。FIPは2022年4月に導入されました。

Q. FIPのプレミアム(上乗せ額)は、どうやって決まるのですか?

A. プレミアムは『基準価格(FIP価格)-参照価格』で決まります。基準価格は国があらかじめ定め、一定期間固定されます。参照価格は市場価格などに連動して機械的に決まります。そのため、市場価格が高いときはプレミアムが小さく、低いときは大きくなります。結果として、発電事業者の収入(売電収入+プレミアム)はおおむね基準価格の水準にならされますが、価格が高い時間帯に多く売れば収入を増やせる仕組みです。

Q. FIPでは、発電事業者は電気を自分で売らないといけないのですか?

A. 原則として、FIPでは発電事業者が市場や相対で電気を自ら売る必要があり、発電計画と実績がずれるとインバランス(過不足)の調整が求められます。この予測や取引、計画値同時同量といった専門的な業務を代行するのが『アグリゲーター(再エネアグリゲーター)』です。発電予測・計画作成、蓄電池の活用、市場取引や需要家との契約、インバランスリスクの引き受けなどを担い、発電事業者がFIPに取り組みやすくする役割を果たします。本記事は仕組みを中立に整理したものです。

最終更新日:2026年6月28日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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