Scope3カテゴリ10(販売した製品の加工)の算定方法|中間製品の加工排出とカテゴリ11との違いを実務目線で解説

2026.07.04
Scope3

鋼材、化学素材、電子部品——。これらは、そのままでは製品になりません。買った企業がさらに加工し、組み立てて、はじめて最終製品になる。その「加工」の工程で出る排出を計上するのが、Scope3のカテゴリ10「販売した製品の加工」です。中間製品を売る企業に特有のカテゴリで、逆に最終製品を売る企業では「関連なし」となることも多い、少し個性的な位置づけになる。本記事では、カテゴリ10の対象範囲と計算の考え方を、環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォームやGHGプロトコルの一次情報をもとに、実務目線で解説します。

この記事の目次

Scope3カテゴリ10(販売した製品の加工)とは

まず、カテゴリ10が何を対象とするのかを整理します。「売った中間製品が、さらに加工されるとき」という視点から入りましょう。

中間製品が加工されるときの排出

カテゴリ10は、報告する企業が販売した中間製品が、それを購入した第三者(下流の企業)によって、最終製品になるまでに加工・処理されることに伴う排出を対象にします。たとえば、鉄鋼メーカーが売った鋼材が、自動車メーカーで部品に加工される。その加工の工程で使われる電力や燃料からCO2が出る——。この排出を、鋼材を売った側のサプライチェーン排出として計上するわけです。

ポイントは、対象が「中間製品」に限られることです。中間製品とは、それ自体では最終製品ではなく、さらに加工・組み立てを経て製品になる、素材・部品・半製品を指す。Scope3とは15カテゴリのうち、カテゴリ10は、自社の製品が買い手の工場で「化ける」工程を見る、下流のカテゴリです。

カテゴリ11・12との違い

カテゴリ10は、同じ「販売した製品」を扱うカテゴリ11・12と混同しやすいため、先に整理しておきましょう。カテゴリ11(販売した製品の使用)は、売った最終製品が使われるときの排出。カテゴリ12(販売した製品の廃棄)は、売った製品が使用後に廃棄されるときの排出です。

これに対し、カテゴリ10は「使われる前・完成する前」、つまり加工の段階を見る。製品ライフサイクルの流れでいえば、加工(10)→ 使用(11)→ 廃棄(12)という順に位置づけられます。中間製品を売るならカテゴリ10、完成品を売るならカテゴリ11——。この違いが、後で見る「関連なし」の判断にもつながります。

どんな企業・製品が対象になるか

カテゴリ10が関わるのは、特定のタイプの企業です。対象になる製品と、そうでない製品を整理します。

中間製品を売るなら、カテゴリ10

対象になる(中間製品)
鉄鋼・鋼材
化学素材
電子部品

▼ 購入企業が加工して最終製品へ ▼

それ自体は製品にならず、さらに加工される。加工の排出がカテゴリ10。

対象になりにくい(最終製品)
完成車
家電
食品

そのまま使われる(加工なし)

加工の工程がないため、関連なしとなりやすい。

それ自体では製品にならず、さらに加工される中間製品が対象。最終製品メーカーは関連なしが多い

出典:GHGプロトコル・環境省の公開情報をもとにgreenote作成

中間製品・素材・部品を売る企業

カテゴリ10が関わりやすいのは、中間製品を販売する企業です。具体的には、鉄鋼・アルミなどの金属素材、化学素材・樹脂、電子部品、繊維、ガラスといった、それ自体では最終製品にならないものを売る企業。これらは、購入した企業が加工・成形・組み立てを行って、はじめて自動車や家電、日用品などの製品になります。

こうした素材・部品メーカーにとって、自社が売った製品は、買い手の工場で必ず何らかの加工を経る。その加工に伴う排出は、自社のサプライチェーンの下流として無視できないことがある。だからこそ、素材・部品を扱う企業では、カテゴリ10が意味のあるカテゴリになりうるわけです。

最終製品メーカーは「関連なし」が多い

一方、消費者向けの最終製品を販売する企業では、事情が変わります。完成した自動車や家電、食品などは、買った人がそのまま使うため、購入後に「加工」する工程がありません。加工の工程がなければ、カテゴリ10の排出は発生しない。だから、最終製品メーカーの多くは、カテゴリ10を「関連なし」と判断します。

実際、開示データを見ても、最終製品を扱う企業では、カテゴリ10を関連なしとして理由を説明するケースが大半を占めています。自社の製品が、買い手のもとでさらに加工されるかどうか——。これが、カテゴリ10が関連するかどうかの、いちばんの分かれ目になる。

計算の考え方――加工量×加工の排出原単位

カテゴリ10の計算の基本を整理します。売った中間製品が、どれだけ加工されるかでとらえます。

加工される量と、加工の排出でとらえる

販売した中間製品の量
(重量など)
× 加工の排出原単位
(加工に伴うエネルギーなど)
排出量
実際にどう加工されるかは購入者次第のため、加工の方法や量を想定する(加工シナリオ)。販売した年に見積もって計上する。

まずは自社の中間製品が下流でどんな加工をされるかを把握することが出発点。

出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成

基本式と加工の排出原単位

カテゴリ10の計算は、販売した中間製品の量(重量など)に、その加工に伴う排出原単位を掛けるのが基本です。つまり、加工量 × 加工の排出原単位 = 排出量。売った素材や部品が、下流の工場で加工されるときに、どれだけのエネルギーが使われ、CO2が出るか——。それを、販売量に応じて見積もるわけです。

ここで使う「加工の排出原単位」は、その中間製品がどんな加工を経るかによって決まります。たとえば、鋼材をプレス・溶接するのか、樹脂を成形するのか。加工の種類ごとに、必要なエネルギーは異なる。だから、まずは自社の中間製品が、下流でどんな加工をされるかを把握することが、計算の出発点だ。

販売年に見積もる(加工シナリオ)

カテゴリ10も、カテゴリ11(使用)カテゴリ12(廃棄)と同じく、販売した年に、将来の加工分を見積もって計上します。実際に加工されるのは後になるかもしれませんが、その年に売った中間製品がもたらす加工の排出を、その年にまとめてとらえる。

そして、実際にどう加工されるかは、購入者に委ねられるため、加工の方法や量を想定する必要があります。これが加工シナリオです。「この素材は、平均的にこういう加工を経る」といった前提を置いて算定する。加工シナリオは結果を左右するため、どんな前提を置いたかを明示することが欠かせません。前提を記録しておけば、見直しもしやすくなります。

データはどこから取るのか

加工の排出をどう把握するか。活動量データと排出係数の入手先を整理します。

使うデータはどこから

活動量(販売量と加工先の情報)

販売した中間製品の量は自社の販売データから、どんな加工をされるかは加工先(顧客)の情報や業界の一般的な加工工程から把握する。

サイト固有法(精度が高い)

加工を行う下流企業の実際のエネルギー使用などのデータを用いる。

平均データ法(簡便)

業界平均などの加工の排出原単位を用いて推計する。

加工先の実データが得られればサイト固有法、なければ平均データ法。置いた前提を記録する。

出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成

販売量と加工先の情報

カテゴリ10の活動量は、販売した中間製品の量と、その加工先の情報が柱です。販売量(販売重量など)は、自社の販売データから把握できる。もう一つの、どんな加工をされるかは、加工先(顧客)からの情報や、その素材・部品が一般に経る加工工程から推し量ります。

自社の販売量は分かっても、買い手がどう加工するかは見えにくいのが、カテゴリ10の難しさです。主要な取引先であれば、加工の内容やエネルギー使用について情報を得られることもある。得にくい場合は、業界の一般的な加工工程を前提に置くことになります。まずは、販売量の大きい主要な中間製品から整理するのが現実的です。

サイト固有法・平均データ法

計算に使う方法は、大きく2つです。第一がサイト固有法加工を行う下流企業の、実際のエネルギー使用などのデータを用いる方法で、精度が高い。主要な加工先から実データの提供を受けられる場合に使えます。第二が平均データ法で、業界平均などの加工の排出原単位を用いて推計する簡便な方法です。

CDPに開示された算定方法を見ても、カテゴリ10では平均データ法が中心で、実データが得られる範囲でサイト固有法やハイブリッドな方法が使われています。加工先の実データはそろえにくいため、まずは平均データ法で概算し、重要な取引先について精度を高める、という進め方が現実的だ。排出原単位は、環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームなどを参照する。

「関連なし」の判断と、その説明

カテゴリ10は「関連なし」と判断されることが多いカテゴリです。その考え方と、説明の仕方を整理します。

まず、自社に関連するかを見極める

自社が販売するのは、中間製品か、最終製品か?

最終製品(そのまま使われる)

購入後に加工する工程がない。

→ 関連なし。理由を説明する

中間製品(さらに加工される)

加工の排出を算定する。加工が多様で見積もりが難しい場合は、その旨を説明する。

→ 算定する(前提を明示)

含めるにせよ除くにせよ、判断の根拠を説明できることが大切。

出典:GHGプロトコル・環境省の公開情報をもとにgreenote作成

最終製品なら対象外

カテゴリ10でまず行うのは、自社に関連するかどうかの見極めです。判断の軸はシンプルで、自社が販売するのが中間製品か、最終製品か。そのまま使われる最終製品を販売しているなら、購入後に加工する工程がないため、カテゴリ10は「関連なし」になります。この場合は、その理由(最終製品を販売しており、下流での加工がないため)を説明すれば十分です。

GHGプロトコルも、関連性の低いカテゴリは、理由を明示したうえで除外してよいとしています。カテゴリ10を無理に算定しようとするより、まず自社の製品が中間製品か最終製品かを整理することが先決です。多くの最終製品メーカーにとって、これは負担の小さい、明快な判断になります。

加工が多様で見積もりにくい場合

一方、中間製品を売っていても、加工の実態が見積もりにくいことがあります。同じ素材でも、買い手によって加工方法がまったく違ったり、多数の取引先にさまざまな用途で販売していたりする場合です。こうしたケースでは、加工シナリオの前提を置くこと自体が難しい。

その場合も、大切なのは判断の根拠を説明できることです。たとえば、「主要な用途については平均データ法で算定し、把握が難しい少量・多用途の販売分については前提を明示して概算した」といった説明が考えられます。完璧な精度を目指すより、どこまでを、どんな前提で算定したかを透明に示す——。これが、見積もりの難しいカテゴリ10と付き合うコツになります。

CDP回答・開示での実務ポイント

算定結果を、CDPなどでどう開示するか。カテゴリ10の押さえどころを整理します。

カテゴリ10の開示で押さえること

1

関連性を判断する

中間製品を売るか最終製品を売るかから、関連ありか関連なしかを判断し理由を説明する

2

算定方法と加工シナリオを記す

サイト固有法・平均データ法などの算定方法と、どんな加工を想定したか(加工シナリオ)を示す

3

活動量と前提を記載する

販売量などの活動量と、使った加工の排出原単位の出典・版、置いた前提を記す

関連なしと判断する場合も、理由を説明できることが信頼性につながる。

出典:CDP・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成

関連性の判断と算定方法の記載

カテゴリ10をCDPとはなどで開示する際、まず問われるのが関連性の判断です。中間製品を売るか最終製品を売るかを踏まえ、関連ありか関連なしかを判断し、関連なしならその理由(最終製品のため加工工程がない、など)を説明する。関連ありなら、評価ステータス・排出量・算定方法(サイト固有法・平均データ法など)を記します。

あわせて、どんな加工を想定したか(加工シナリオ)も説明したいところです。活動量(販売量)と、使った加工の排出原単位の出典・版、置いた前提も記載する。カテゴリ10は加工シナリオという想定が入るため、どんな前提で算定したかを説明できることが、開示の信頼性を左右します。

実務で多い方法と現実的な進め方

CDPに開示された状況を見ると、カテゴリ10は「関連なし」として理由を説明する企業が最も多いカテゴリの一つです。最終製品を扱う企業が多いためです。算定している企業では、平均データ法が中心で、実データが得られる範囲でサイト固有法やハイブリッドな方法が使われています。

現実的な進め方は、まず自社が中間製品を売っているかを見極めることです。最終製品だけなら、理由を説明して関連なしとすれば十分。中間製品を売っているなら、販売量の大きいものから、平均データ法で概算し、主要な加工先について精度を高めるのが定石です。カテゴリ10は、無理に精緻化するより、関連性の判断とその説明に力点を置くのが実務的だ。

カテゴリ10の算定をどう進めるか

Scope3カテゴリ10(販売した製品の加工)は、自社が販売した中間製品が、他社によって最終製品へ加工されるときの排出を計上するものです。鉄鋼・化学素材・電子部品などの中間製品を売る企業で関連しやすく、最終製品を売る企業では加工工程がないため「関連なし」となることが多い、という個性を持ちます。計算は「加工量 × 加工の排出原単位」で、カテゴリ11(使用)カテゴリ12(廃棄)と同じく、販売した年に加工シナリオを置いて見積もるのが特徴です。

大切なのは、まず自社が中間製品を売っているかを見極め、含めるにせよ除くにせよ判断の根拠を説明できるようにすること。関連するなら、販売量の大きい中間製品から、平均データ法で概算し、主要な加工先について精度を高めていく。Scope3の全体像はScope3とは、製品の使用はカテゴリ11、廃棄はカテゴリ12もあわせてご覧ください。ESGの全体像はESG完全ガイドもどうぞ。

売った素材が、買い手の工場で製品へと変わるとき。カテゴリ10の算定は、自社の製品が下流で「化ける」工程まで視野に入れる、サプライチェーンの奥行きを教えてくれる。なお本記事は、環境省・GHGプロトコルなどの公開情報をもとに算定の考え方を整理したものであり、特定のツールや製品を推奨するものではありません。係数や制度は変わりうるため、算定時は最新の一次情報をご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q. Scope3カテゴリ10は、どんな企業が算定するのですか?

A. 自社が販売した『中間製品』が、他社によってさらに加工されて最終製品になる場合に関わります。たとえば、鉄鋼・化学素材・電子部品などの中間製品を販売する企業です。これらは、購入した企業が加工・組み立てを行って初めて製品になるため、その加工の排出がカテゴリ10になります。一方、消費者向けの最終製品を販売する企業では、購入後に加工する工程がないため、カテゴリ10を『関連なし』と判断することが多くなります。

Q. カテゴリ10とカテゴリ11は何が違いますか?

A. 対象が『中間製品』か『最終製品』かが違います。カテゴリ10(販売した製品の加工)は、自社が売った中間製品が、他社によって最終製品へ加工される工程の排出です。一方、カテゴリ11(販売した製品の使用)は、自社が売った最終製品が使われるときの排出です。同じ『販売した製品』でも、まだ加工される途中(カテゴリ10)か、使われる段階(カテゴリ11)かで分かれます。中間製品を売るならカテゴリ10、完成品を売るならカテゴリ11が関わりやすい、と整理できます。

Q. カテゴリ10はなぜ「関連なし」とされることが多いのですか?

A. 多くの企業が最終製品を販売しており、購入後にさらに加工される工程がないためです。カテゴリ10は中間製品(素材・部品・半製品)を販売する企業に特有のカテゴリで、該当しない企業ではそもそも加工の排出が発生しません。また、中間製品を売る企業でも、購入者がどのように加工するかは多様で見積もりが難しいことがあります。含めるにせよ除くにせよ、その判断の根拠を説明できることが大切です。本記事は特定のツールや製品を推奨するものではありません。

出典・参考(一次情報)

最終更新日:2026年7月4日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

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