EUDR(EU森林破壊防止規則)とは|対象7品目・2026年12月適用と日本企業への影響をわかりやすく解説

2026.08.12
生物多様性

最終更新日:2026年8月4日

コーヒーやチョコレート、家具、タイヤ——私たちの身近な製品の多くは、海外の農地や森林とつながっています。こうした製品が森林破壊に加担していないかを問うのが、EUのEUDR(EU森林破壊防止規則、Regulation (EU) 2023/1115)です。EU市場に関わる企業に、対象産品が「森林破壊フリー」であることの証明を求める、影響の大きな規則です。

EUへ対象産品を輸出する企業や、EUを含むグローバルなサプライチェーンを持つ企業にとって、これは他人事ではありません。この記事では、EUDRの目的、対象となる7つのコモディティ、3つの中核要件、たびたび延期されてきた適用スケジュールと2025年の簡素化、国別のリスク区分、そして日本企業への影響と備えを、順を追って整理します。

※EUDRは延期や簡素化の改定が続いており、内容・日程は今後も変わりえます。本記事は欧州委員会等の公表情報(2026年時点)に基づく解説です。確定情報ではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。

EUDRが求める3つの中核要件
① 森林破壊フリー2020年末以降に森林破壊した土地由来でない
② 合法性生産国の関連法令に適合している
③ デューデリジェンス生産地の位置情報付きで確認・申告
3要件すべてを満たさないとEU市場での上市・輸出ができない

この記事の目次

EUDR(EU森林破壊防止規則)とは|何を求める規則か

EUDRは、EU市場で取引される特定の産品が、森林破壊や森林の劣化に由来しないことを担保するための規則です。正式には Regulation (EU) 2023/1115 といい、従来の木材規制(EUTR)を大幅に拡張・強化したものです。

ポイントは、対象産品をEU市場で「上市(販売)」または「EUから輸出」する事業者に、森林破壊フリーであることの確認とデューデリジェンス(相当の注意)を義務づける点です。要件を満たさない産品は、EU市場で扱えなくなります。

なぜ導入されたのか|EUの消費と世界の森林破壊

世界の森林破壊の大きな要因の一つが、農地の拡大です。牛の放牧地や、大豆・パーム油などの生産のために森林が切り開かれ、その産品が国際的に取引されて先進国で消費されてきました。

EUは、自らの消費が世界の森林破壊の一因になっているとの問題意識から、需要側(消費地)の規制でこの流れを止めようとしています。気候変動対策だけでなく、ネイチャーポジティブや生物多様性の保全とも深く関わる規制です。

対象となる7つのコモディティと派生製品

EUDRの対象は、森林破壊との関連が大きい次の7つのコモディティと、それらを使った幅広い派生製品です。身近な最終製品まで含む点が特徴です。

対象コモディティと主な派生製品の例
EUDRの対象コモディティ
コモディティ派生製品の例
牛肉、革製品 など
カカオチョコレート など
コーヒー焙煎・インスタントコーヒー など
パーム油食品・洗剤・化粧品の原料 など
ゴムタイヤ・ゴム製品 など
大豆飼料・食用油 など
木材家具・紙・パルプ など

なお、対象品目の細部は改定が続いており、たとえば溶けるインスタントコーヒーや一部のパーム油派生品を加える一方、革や再生タイヤを対象から外す案などが議論されています。自社の取扱品が対象かは、最新の品目リストで確認する必要があります。

3つの中核要件|森林破壊フリー・合法性・デューデリジェンス

EUDRが求めるのは、上図の3要件です。いずれか一つでも満たさなければ、対象産品をEU市場で扱うことはできません。

森林破壊フリー(2020年末以降が基準)

産品の原料が、2020年12月31日以降に森林破壊または森林劣化が行われた土地に由来しないことが求められます。この「基準日」が明確に定められている点がEUDRの核心で、どの農地から来たのかを特定する必要が生じます。

生産国での合法性

原料の生産が、その国の関連する法令(土地利用、環境保護、労働、人権など)に適合していることも求められます。森林破壊フリーであっても、生産国の法に反していれば要件を満たしません。

デューデリジェンスとジオロケーション

事業者は、上記2点を確認するデューデリジェンスを実施し、EUの情報システムにデューデリジェンス・ステートメントを提出します。特徴的なのが、原料の生産地のジオロケーション(地理座標)の提出です。どの区画で生産されたかを座標で示すことで、衛星データ等と照合できる仕組みです。Scope3の算定と同様、サプライチェーンをさかのぼる情報整備が不可欠になります。

適用スケジュールと延期|2026年12月へ

EUDRは、準備の負担やシステムの整備状況を背景に、たびたび適用が延期されてきました。2026年時点で示されている大枠は次のとおりです。

適用スケジュールの目安(2026年時点・変動あり)
EUDRの適用スケジュール
時期内容
2023年EUDRが成立(規則2023/1115)
2025年12月簡素化・延期の改定をEU理事会が承認
2026年12月30日大企業・中堅を含む全事業者に適用開始(延期後)
2027年6月30日零細・小規模事業者に適用開始

当初は2024年末の適用予定でしたが延期され、2025年末の改定で、全事業者への適用は2026年12月30日、零細・小規模事業者は2027年6月30日となりました。今後さらに変わる可能性もあるため、最新の公式情報の確認が欠かせません。

2025年の簡素化・見直し|何が変わったか

2025年末の改定では、適用の延期とあわせて、実務負担を軽くする簡素化が盛り込まれました。主な内容は次のとおりです。

  • 小規模事業者の簡易化:低リスク国に拠点を置く零細・小規模の一次事業者は、都度のデューデリジェンスに代えて、一度の簡易な申告で足りる場合がある。
  • 位置情報の緩和:一部のケースで、精密な座標ではなく郵便番号などで足りるとされる。
  • 川下事業者の負担軽減:中小企業以外の川下事業者は、都度の申告は不要で情報システムへの登録で足りるなど、役割に応じた整理。
  • 簡素化レビュー:欧州委員会が規則全体の簡素化を検討し、報告する枠組みが設けられた。

ただし、これらは「義務の撤廃」ではなく「運用の軽量化」です。森林破壊フリーの証明という規則の骨格は維持されている点に注意が必要です。

国別のリスク区分(ベンチマーク)

EUDRでは、生産国を「低リスク」「標準リスク」「高リスク」に区分するベンチマークが導入されます。区分に応じて、求められるデューデリジェンスの深さや、当局によるチェックの頻度が変わります。

低リスク国からの調達では手続きが簡素化される一方、高リスク国からの調達では、より踏み込んだ確認が求められます。自社の調達先がどの区分かを把握することが、対応の出発点になります。

日本企業への影響|輸出・調達・商社

EUの規則ですが、日本企業も次のような形で影響を受けます。

  • EUへの輸出:対象産品や派生製品(食品、家具、紙、タイヤ、化粧品原料など)をEUへ輸出する企業は、直接に要件への対応が求められる。
  • グローバル供給網・商社:EUを含むサプライチェーンを持つメーカーや商社は、原料の産地・座標のトレーサビリティ整備を迫られる。
  • 取引先からの要請:EU向けの顧客から、産地情報やデューデリジェンス情報の提供を求められる。強制労働・現代奴隷人権デューデリジェンスへの対応と重なる領域も多い。

企業に求められる備え

  • 対象品目の棚卸し:自社の製品・原料が7コモディティや派生製品に該当するかを確認する。
  • トレーサビリティの構築:原料の産地を特定し、可能な範囲でジオロケーション情報を取得・管理する体制をつくる。
  • 調達方針の見直し:森林破壊フリーと合法性を担保できる調達先へ、段階的に切り替える。
  • 関連制度と一体で整備CSDDD人権デューデリジェンスCSRDの開示とあわせ、サプライチェーン情報を一元的に整える。

関連制度との関係|CSDDD・人権DD・CSRD

EUDRは、EUが進めるサステナビリティ関連の一連の規制の一部です。企業のデューデリジェンスを広く求めるCSDDD、人権に焦点を当てた人権デューデリジェンス、開示を求めるCSRDなどと重なり合います。

いずれも「サプライチェーンをさかのぼって把握し、責任を持つ」という方向性を共有しています。ネイチャーポジティブ生物多様性クレジットといった自然分野の動きともつながり、森林・生物多様性への配慮が調達・開示の前提になりつつあります。個別に対応するより、サプライチェーン情報の基盤を一度整えて使い回す発想が効率的です。

あわせて読みたい:脱炭素と重要鉱物・供給網の地政学リスクの交差点 → 経済安全保障とサステナビリティ(ESG)とは|重要鉱物・サプライチェーンと脱炭素

まとめ|「森林破壊フリー」を証明する時代へ

EUDRは、牛・カカオ・コーヒー・パーム油・ゴム・大豆・木材とその派生製品について、森林破壊フリー・合法性・デューデリジェンス(ジオロケーション付き)の3要件を求めるEUの規則です。適用は延期されて2026年12月30日(小規模は2027年6月30日)となり、2025年には運用を軽くする簡素化も行われましたが、骨格は維持されています。

EUの規則でありながら、EUへ輸出する企業や、グローバルな供給網・商社を通じて、日本企業にも実務的な影響が及びます。求められるのは、原料の産地までさかのぼって「森林破壊に加担していない」と示せる体制づくりです。CSDDDやCSRDなど関連制度と一体で、サプライチェーン情報の基盤を早めに整えることが、これからの調達とESGの前提になります。

よくある質問(FAQ)

Q. EUDR(EU森林破壊防止規則)とは何ですか?

EU市場で扱う特定の産品が、森林破壊や森林劣化に由来しないことを担保するEUの規則(Regulation (EU) 2023/1115)です。対象産品をEUで販売またはEUから輸出する事業者に、森林破壊フリーの確認とデューデリジェンスを義務づけます。

Q. 対象となるコモディティは何ですか?

牛、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材の7つと、それらを使った幅広い派生製品(チョコレート、革製品、家具、紙、タイヤ、化粧品原料など)です。対象品目の細部は改定が続いており、最新のリストで確認が必要です。

Q. いつから適用されますか?

たびたび延期されており、2026年時点では、全事業者への適用が2026年12月30日、零細・小規模事業者が2027年6月30日とされています。今後さらに変わる可能性があるため、最新情報の確認が必要です。

Q. 「森林破壊フリー」の基準日はいつですか?

原料が2020年12月31日以降に森林破壊・劣化した土地に由来しないことが基準です。この日以降に開かれた農地由来の原料は、要件を満たさないことになります。

Q. ジオロケーション(地理座標)とは何ですか?

原料が生産された土地の位置を示す座標情報です。EUDRでは、デューデリジェンスの一環として生産地の座標の提出が求められ、衛星データ等と照合して森林破壊の有無を確認できる仕組みになっています。

Q. 2025年の簡素化で義務はなくなったのですか?

いいえ。適用の延期と運用の軽量化(小規模事業者の簡易申告、位置情報の緩和など)が行われましたが、森林破壊フリーの証明という規則の骨格は維持されています。

Q. 日本企業も対象になりますか?

EUへ対象産品や派生製品を輸出する企業は直接の対応が必要です。また、EUを含む供給網を持つメーカーや商社は、取引先からの要請を通じて産地情報やデューデリジェンス情報の整備を求められます。

Q. まず何から準備すべきですか?

自社の製品・原料が対象品目に該当するかの棚卸し、原料の産地の特定とトレーサビリティ(可能な範囲でのジオロケーション取得)、そして森林破壊フリー・合法性を担保できる調達先への見直しが出発点です。

Q. 他のEU規制とどう関係しますか?

企業のデューデリジェンスを広く求めるCSDDD、人権デューデリジェンス、開示を求めるCSRDなどと方向性を共有します。いずれもサプライチェーンをさかのぼって把握・開示する流れで、情報基盤を一体で整えると効率的です。

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出典・参考(一次情報)

※ 本記事は欧州委員会・EU理事会等の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した解説です。EUDRは改定が続くため、最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください(EUの一部サイトは環境により表示が制限される場合があります)。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月6日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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