カリフォルニア州 気候開示法(SB253・SB261)とは|日本企業への影響と2026年報告をわかりやすく解説

2026.08.12
サステナビリティ開示

最終更新日:2026年8月4日

米国カリフォルニア州が、企業に温室効果ガス排出量や気候リスクの開示を義務づける2つの州法——SB253SB261——の実施に動き出しました。連邦(SEC)の気候開示規則が後退するなかで、州レベルの開示義務として世界の注目を集めています。

特徴は、その対象の広さです。カリフォルニアで事業を行う一定規模以上の企業が対象で、米国外の企業も無関係ではありません。この記事では、2つの法律の違い、対象企業と閾値、報告スケジュールと最新状況、訴訟による不確実性、そして日本企業に求められる備えを、中立的に整理します。

※本記事は公表情報(2026年時点)に基づく解説です。規則・期限は改定や訴訟の状況により変わります。確定情報ではないため、必ずCARB等の公式情報をご確認ください。

対象企業の目安(カリフォルニアで事業を行う企業)

SB253

年間総収益 10億ドル超

GHG排出量(Scope1〜3)の報告+第三者保証。

SB261

年間総収益 5億ドル超

気候関連財務リスク報告書の作成・公開(隔年)。

「カリフォルニアで事業を行う」大企業が対象=影響は米国外にも及ぶ

この記事の目次

カリフォルニア州 気候開示法とは|2つの州法(SB253・SB261)

カリフォルニア州の気候開示法は、大きく2つの州法から成ります。ひとつは排出「量」の開示を求めるSB253、もうひとつは気候関連の財務「リスク」の開示を求めるSB261です。

いずれも、州の大気資源局(CARB=California Air Resources Board)が具体的なルールづくりと運用を担います。連邦レベルの開示規則が後退する一方で、経済規模の大きいカリフォルニア州が独自に開示を義務づけたことで、実質的に多くの大企業に影響が及ぶ点が重要です。

なぜ日本企業に関係するのか|「州で事業を行う」企業への広がり

「米国カリフォルニア州の州法なら自社には関係ない」と考えるのは早計です。理由は3つあります。

  • 域外への広がり:対象は「カリフォルニアで事業を行う」一定規模以上の企業です。米国内で組織された企業が中心とされますが、日本企業も米国子会社や現地事業を通じて対象に含まれる可能性があります。
  • Scope3を通じた波及:SB253はScope3(サプライチェーン排出)まで対象とするため、報告義務のある取引先から、日本のサプライヤーへ排出データの提供を求められる場面が増えると見込まれます。
  • 世界的な開示トレンド:EUのCSRDや各国のISSB導入と並び、開示を求める流れの一部です。どの制度にも共通する算定・開示の体制づくりが、結局は効いてきます。

SB253とSB261の違い|比較で押さえる

2つの法律は、求める開示の「対象」と「枠組み」が異なります。まず全体像を比較表で押さえましょう。

SB253とSB261の違い
SB253とSB261の比較
観点SB253SB261
正式名気候コーポレート・データ説明責任法気候関連財務リスク法
対象(収益)年10億ドル超年5億ドル超
開示内容GHG排出量(Scope1・2・3)気候関連の財務リスクと対応
準拠枠組みGHGプロトコル+第三者保証TCFD(またはIFRS S2等の同等枠組み)
頻度毎年隔年(2年に1回)

SB253|GHG排出量(Scope1〜3)の報告と第三者保証

SB253(気候コーポレート・データ説明責任法)は、年間総収益が10億ドルを超え、カリフォルニアで事業を行う企業に、GHGプロトコルに準拠したScope1・2・3の排出量報告を求めます。加えて、データの信頼性を担保する第三者保証(アシュアランス)が求められる点も特徴です。Scope3を含む点で、排出係数やサプライチェーン全体の算定体制が問われます。

SB261|気候関連財務リスクの開示(TCFD準拠)

SB261(気候関連財務リスク法)は、年間総収益が5億ドルを超える企業に、気候変動が事業にもたらす財務リスクと、その対応状況の報告書を求めます。TCFD(またはIFRS S2など同等の枠組み)に沿って作成し、公開(Webサイト掲載)することが基本で、頻度は隔年とされています。

対象となる企業と閾値

対象の目安は、上図のとおり収益規模で分かれます。SB253は年10億ドル超、SB261は年5億ドル超が目安で、いずれも「カリフォルニアで事業を行う」ことが前提です。自社単体だけでなく、米国子会社やグループ全体の収益・事業実態をふまえて該当性を確認する必要があります。

また、SB253は排出「量」、SB261は財務「リスク」と、開示の性質が異なるため、両方に該当する企業は2つの報告を並行して準備することになります。

スケジュールと最新状況|CARBの規則化と報告期限

CARBは実施に向けた規則づくりを進めており、報告期限も具体化しています。2026年時点で示されているおおまかな流れは次のとおりです。

報告スケジュールの目安(2026年時点・変動あり)
報告スケジュール
時期内容
2026年3月CARBが実施に向けた初期規則を採択
2026年11月(延長後)SB253のScope1・2排出量の初回報告期限(当初8月→3か月延長)
2027年SB253のScope3報告が開始(2026年度データ)
隔年SB261の気候関連財務リスク報告書を公表

とくにSB253のScope1・2の初回報告期限は、当初の2026年8月から11月へと3か月延長されました。Scope3は2027年からの開始が見込まれています。日程は今後の規則や訴訟の状況で変わりうるため、最新の公式情報の確認が欠かせません。

訴訟と不確実性|確定でない点に注意

これらの州法には、企業団体などが「表現の自由(憲法修正第1条)に反する」として争う訴訟が提起されており、一部の要件や期限には不確実性が残ります。CARBによる規則の細部も段階的に固まっている状況です。

したがって、現時点の情報を「確定」と捉えず、方向性を押さえつつ最新動向を追う姿勢が重要です。とはいえ、開示の大枠(排出量とリスクの開示)が求められる方向性は明確で、準備を先送りする理由にはなりません。

企業に求められる備え

  • 該当性の確認:米国子会社・グループの収益とカリフォルニアでの事業実態から、SB253・SB261の対象かを早めに確認する。
  • Scope3データの整備:Scope1〜3の算定体制と第三者保証への対応を進める。GHGプロトコル改定の動きとも整合させる。
  • リスク開示の枠組み整備TCFDに沿った気候リスクの評価・シナリオ分析の体制をつくる。
  • 取引先対応:直接の対象でなくても、顧客からのScope3データ要請に応えられるよう準備する。

関連制度との関係|CSRD・ISSB・SSBJ

カリフォルニアの気候開示は、世界的な開示制度の広がりの一部です。EUのCSRD、国際基準のISSB、日本のSSBJなど、各制度は細部が異なるものの、排出量と気候リスクの開示を求める点で共通します。SBTiネットゼロ基準のような目標側の基準ともあわせ、算定・開示・目標設定を一体で整えることが、複数制度への効率的な対応につながります。

まとめ|「州法」だが影響は世界へ

カリフォルニア州のSB253・SB261は、それぞれ排出量(Scope1〜3・第三者保証)と気候関連財務リスク(TCFD準拠)の開示を、州で事業を行う大企業に義務づける州法です。SB253は年10億ドル超、SB261は年5億ドル超が目安で、2026年から段階的に報告が始まります。

連邦の開示規則が後退するなかで、経済規模の大きい州が独自に開示を求めることで、影響は米国外にも及びます。日本企業も、米国子会社やScope3を通じて無関係ではいられません。訴訟による不確実性はあるものの、排出量とリスクの開示体制を早めに整えることが、世界の開示トレンドへの備えになります。

よくある質問(FAQ)

Q. カリフォルニア州のSB253とSB261とは何ですか?

いずれもカリフォルニア州が定めた気候開示の州法です。SB253は年間総収益10億ドル超の企業にGHG排出量(Scope1〜3)の報告と第三者保証を、SB261は年間総収益5億ドル超の企業に気候関連財務リスク報告書の公表(TCFD準拠・隔年)を求めます。

Q. 日本企業も対象になりますか?

対象は「カリフォルニアで事業を行う」一定規模以上の企業です。米国内で組織された企業が中心とされますが、日本企業も米国子会社や現地事業を通じて対象になる可能性があります。さらにScope3を通じ、報告義務のある取引先からデータ提供を求められる場面も増えると見込まれます。

Q. 報告はいつから始まりますか?

2026年時点では、SB253のScope1・2排出量の初回報告期限が2026年11月(当初8月から3か月延長)、Scope3は2027年から開始が見込まれています。SB261は隔年での報告です。日程は規則や訴訟の状況で変わりうるため、最新情報の確認が必要です。

Q. どの枠組みで開示すればよいですか?

SB253はGHGプロトコルに準拠した排出量算定と第三者保証、SB261はTCFD(またはIFRS S2など同等の枠組み)に沿った気候リスク開示が基本とされています。

Q. SB253とSB261の主な違いは?

SB253は排出「量」の開示(Scope1〜3・毎年・第三者保証あり・収益10億ドル超)、SB261は気候関連の財務「リスク」の開示(TCFD準拠・隔年・収益5億ドル超)です。両方に該当する企業は、2つの報告を並行して準備します。

Q. 連邦(SEC)の気候開示規則との関係は?

連邦のSEC規則が後退する一方で、カリフォルニア州が独自に開示を義務づけた形です。経済規模の大きい州のため、実質的に多くの大企業に影響が及び、連邦規則の行方にかかわらず州レベルの開示が進む点が特徴です。

Q. 訴訟で止まる可能性はありますか?

企業団体などが表現の自由を理由に争う訴訟があり、一部の要件や期限に不確実性が残ります。ただし、排出量とリスクの開示を求める大きな方向性は明確で、準備を進める意義は変わらないとされています。

Q. まず何から準備すべきですか?

自社が対象かの該当性確認、Scope1〜3の算定体制と第三者保証への対応、TCFDに沿ったリスク評価の体制づくりが出発点です。取引先からのScope3データ要請への備えも重要です。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事はCARB等の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した解説です。規則・期限・訴訟の状況は変わりうるため、最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください(CARBのサイトは一時的に接続できない場合があります)。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月6日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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