グリーン水素とは|水素の色分類・作り方と日本の水素政策をわかりやすく解説

2026.06.20
気候変動

脱炭素の議論で、再生可能エネルギーと並んで欠かせないのが「水素」です。燃やしても出るのは水だけ。しかも、電気では脱炭素しにくい分野までカバーできる——そんな期待から、水素は脱炭素の「切り札」と呼ばれてきました。なかでも本命とされるのが、グリーン水素です。

本記事では、グリーン水素とは何かという基本から、よく使われる「色」の分類、つくり方(電気分解)と用途、そして日本の水素政策や世界の動向、コストなどの課題までを、できるだけわかりやすく整理します。

目次

グリーン水素とは

グリーン水素とは、再生可能エネルギーの電力を使って水を電気分解し、CO2を排出せずにつくられた水素のことです。同じ水素でも、製造の過程で温室効果ガスをほとんど出さない点が、最大の特徴です。

水素が脱炭素の「切り札」とされる理由

水素が注目される理由は、その使い勝手の広さです。燃やしても出るのは水であり、CO2は発生しません。発電にも、燃料電池にも、製鉄や化学の原料にも使え、ためておくこともできます。

とりわけ重要なのが、「電気で脱炭素しにくい分野」を担えるという点です。鉄鋼や化学、長距離輸送のように、電化だけではCO2をゼロにしにくい領域も少なくありません。こうした難しい分野に、水素は有力な選択肢を与えてくれます。再エネと水素は、競合ではなく補い合う関係だといえます。

グリーン水素の定義

ただし、水素なら何でも「クリーン」というわけではありません。水素は燃やす段階ではCO2を出さないものの、その水素をどうやってつくったかで、環境への影響は大きく変わってきます。

グリーン水素は、太陽光や風力などの再エネ電力で水(H2O)を水素(H2)と酸素(O2)に分解してつくります。電力が再エネ由来であれば、製造から利用まで通してCO2をほぼ出しません。この「再エネ由来の電気分解」こそが、グリーン水素の条件です。

水素の「色」分類(グレー・ブルー・グリーン)

水素は無色透明の気体ですが、業界では製造方法ごとに「色」で呼び分けます。これはCO2排出量の違いを直感的に示す、便利な分類です。

水素の「色」分類

つくり方でCO2排出量が大きく異なる

グレー水素

つくり方

天然ガスなど化石燃料から製造

CO2

大量に排出(水素1kgあたり約10kg)

位置づけ

現在の主流だが脱炭素ではない

ブルー水素

つくり方

化石燃料から製造+CO2を回収・貯留(CCS)

CO2

大幅に削減

位置づけ

移行期の選択肢

グリーン水素

つくり方

再生可能エネルギーの電力で水を電気分解

CO2

ほぼゼロ

位置づけ

本命だがコストが課題

水素は同じでも、製造方法によって環境負荷はまったく違うのです。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

製造方法で分かれる水素の色

代表的なのが3つの色です。まず「グレー水素」は、天然ガスなどの化石燃料から取り出す、現在の主流の水素を指します。製造時に大量のCO2を出すのが難点で、水素1kgあたり約10kgものCO2が発生するとされます。

次に「ブルー水素」は、化石燃料からつくる点はグレーと同じですが、発生したCO2を回収・貯留(CCS)して排出を抑えたものです。そして「グリーン水素」が、再エネ電力による電気分解でつくる、CO2をほぼ出さない水素にあたります。色は、脱炭素の度合いを示す目印といえます。CCSの詳細はCCS(CO2回収・貯留)とはもあわせてご覧ください。

クリーン水素という考え方(炭素集約度)

近年は、色による分類だけでなく、「炭素集約度」で水素を評価する考え方が広がりつつあります。水素1kgをつくるのに、ライフサイクルでどれだけCO2を出したか、という物差しです。

この発想では、色のラベルそのものより、実際の排出量が問われます。各国の支援制度も、一定の排出基準を満たす「低炭素水素」「クリーン水素」を対象に設計されるのが一般的です。グリーンかブルーかという二分法から、数値で測る段階へと移りゆく途上にあります。

グリーン水素の作り方と用途

グリーン水素を理解する鍵は、製造の心臓部である「電気分解(電解)」と、その使いみちにあります。

グリーン水素のバリューチェーン

再エネ電力から、電化が難しい分野の利用まで

1

再エネ電力

太陽光・風力などで発電

2

電気分解

水を水素と酸素に分解。CO2は出ない

3

貯蔵・輸送

圧縮・液化やアンモニア等に変換して運ぶ

4

利用

製鉄・化学・長距離輸送・発電など

水素は万能ではなく、電化が難しい分野を中心に「適材適所」で使うのが鍵です。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

水の電気分解(電解)の仕組み

電気分解とは、水に電気を流して、水素と酸素に分ける化学反応です。理科の実験で見た、あの仕組みと基本は同じです。この装置を「電解槽(でんかいそう)」と呼びます。

ポイントは、ここで使う電気を再エネでまかなう点です。太陽光や風力でつくった電気を使えば、製造の全工程を通してCO2をほぼ出さずに水素を得られます。逆にいえば、グリーン水素のコストと環境性能は、再エネ電力をどれだけ安く豊富に確保できるかに大きく左右されます。再生可能エネルギーの基礎は再生可能エネルギーとはもあわせてご覧ください。

どこで使うのか(製鉄・運輸・発電・化学)

グリーン水素の出番は、「電気で代替しにくい分野」が中心です。代表が鉄鋼で、コークスの代わりに水素で鉄鉱石を還元すれば、製鉄のCO2を大きく減らせます。これがグリーンスチールの本命技術です。グリーンスチールの詳細はグリーンスチールとはで解説しています。

ほかにも、化学品の原料、長距離の海運・航空・大型トラック、発電の調整電源など、用途は多岐にわたります。一方、乗用車などは電動化(EV)が先行しています。水素は万能ではなく、電化が難しい分野を中心に使う「適材適所」が肝心です。

日本の水素政策(水素基本戦略・水素社会推進法)

日本は、世界に先駆けて水素戦略を掲げてきた国の一つです。近年は、普及を後押しする法律や支援制度も整ってきたところです。

日本の水素政策

導入目標と、それを支える法律

水素基本戦略(2023年改定)の導入目標

2030年

最大300万t

2040年

1,200万t

2050年

2,000万t

値差支援

割高な低炭素水素と既存燃料との価格差を、一定期間補助

拠点整備支援

受入基地やパイプラインなど共用インフラの整備を支援

出典:経済産業省・資源エネルギー庁の公開情報(水素基本戦略・水素社会推進法)をもとにgreenote作成

水素基本戦略と導入目標

日本は2017年に世界初の水素基本戦略を策定し、2023年にこれを改定しました。改定後の戦略では、水素等の導入量の目標として、2030年に最大300万トン、2040年に1,200万トン、2050年に2,000万トンという数字が掲げられています。

この目標は、水素を一部の実証にとどめず、社会の基盤エネルギーへと育てる意思を示すものです。あわせて、製造から輸送、利用までのサプライチェーン全体を、官民で築いていく方針です。

水素社会推進法(値差支援・拠点整備)

戦略を実行に移す枠組みが、2024年に整いました。同年5月17日に成立し、10月23日に施行された「水素社会推進法」(正式名称は脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律)です(資源エネルギー庁)。

この法律の柱は、2つの支援にあります。1つが「値差支援」で、割高になる低炭素水素と既存燃料との価格差を、一定期間補助する仕組みです。もう1つが「拠点整備支援」で、受入基地やパイプラインといった共用インフラの整備を後押しします。価格と基盤の両面から、水素の立ち上げを支える設計になっています(経済産業省)。

世界のグリーン水素の動向

グリーン水素の競争は、世界規模で進んでいます。とくに欧米は、巨額の公的支援で立ち上げを加速させてきた点で共通します。

EU水素銀行

EUが設けたのが「欧州水素銀行(European Hydrogen Bank)」です。オークション方式で、再生可能水素の生産プロジェクトに補助金を配分するものです。1回のオークションで約10億ユーロ規模の支援が用意されるなど、域内での量産を後押ししています(欧州委員会)。

固定価格の補助を一定期間保証することで、事業者が投資判断を下しやすくする。これが、EUのねらいです。脱炭素と同時に、エネルギー安全保障や産業競争力の強化も視野に入れています。

米国のクリーン水素支援(IRA 45V)

米国は、インフレ抑制法(IRA)のなかにクリーン水素生産税額控除「45V」を設けました。ライフサイクルでの排出が極めて少ない水素に対し、最大で1kgあたり3ドルの税額控除を与えるものです。

この手厚い控除を使えば、グリーン水素のコストが化石燃料由来の水素と競合し得る水準まで下がる場合もあるとされます。税制を通じて市場を一気に立ち上げようとする、米国らしいアプローチだといえるでしょう。各国がそれぞれの手法で、水素の主導権を競う構図です。

グリーン水素の課題と展望

期待の大きいグリーン水素ですが、普及には現実的なハードルも残るのが実情です。冷静に課題を見ておきましょう。

コストと「鶏と卵」の問題

最大の課題は、やはりコストです。グリーン水素は、再エネ電力と電解槽の費用がかさみ、現状では化石燃料由来の水素より割高です。安くするには量産が要りますが、量産には需要が要る。需要を増やすには価格が下がる必要がある——この「鶏と卵」の関係こそ、立ち上げを難しくしてきた要因です。

各国の補助制度は、まさにこの悪循環を断ち切るためのものです。初期の価格差を公的支援で埋め、需要と供給を同時に育てる。そうして量産が進めば、コストは下がっていくと見込まれています。

どこから使うか(優先順位)

もう一つの論点が、用途の優先順位です。水素は貴重で高価なエネルギーであり、何にでも使えばよいわけではありません。電化で対応できる分野は電化に任せ、水素は電化が難しい分野に集中させる。こうした「適材適所」の見極めが重要です。

たとえば、乗用車はEVが優勢な一方、鉄鋼や化学、長距離輸送では水素の価値が高いとされます。限られた水素をどこへ振り向けるか。その戦略こそが、脱炭素全体の効率を左右します。脱炭素の全体像はカーボンニュートラルとは、日本の長期戦略はGX2040ビジョンとはもあわせてご覧ください。

まとめ|グリーン水素は脱炭素の「つなぎ役」

グリーン水素は、再エネ電力で水を電気分解してつくる、CO2をほぼ出さない水素です。同じ水素でも、つくり方によってグレー・ブルー・グリーンと分かれ、近年は炭素集約度という数値で評価する見方も定着してきた段階です。

鉄鋼や化学、長距離輸送など、電気では脱炭素しにくい分野を担えるのが、水素の最大の価値です。日本は水素基本戦略と水素社会推進法で、欧米は水素銀行や税額控除で、それぞれ立ち上げを競っています。コストや用途の優先順位という課題は残るものの、グリーン水素は電化と並ぶ脱炭素の「つなぎ役」として、これからの社会を支える存在になっていくでしょう。

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ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

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