新電力(PPS・小売電気事業者)とは|登録制度と大手電力との違いを実例で解説

2026.07.08
再生可能エネルギー

「電力会社を切り替えませんか」という提案を、営業担当者や取引先から受けたことがある調達担当者は少なくないはずです。しかし提案してくる新電力が具体的にどのような会社で、大手電力とどう違うのか、正確に説明できるかというと怪しい方も多いのではないでしょうか。新電力(PPS)とは、2016年の電力小売全面自由化以降に事業へ参入した「登録小売電気事業者」の通称です。LooopやENEOSでんきといった名前は知っていても、事業モデルの違いまで理解している方は多くありません。本記事では、新電力の制度的な位置づけを、実在する企業の具体例を通じて整理します。

📘この記事は連載「電力調達実務ガイド」の一部です。新電力の選び方から料金・契約・RE100戦略まで、全8記事で体系的に解説しています。特集の全8記事を見る →

この記事の目次

新電力(PPS)とは(おさらい)

まず、新電力・PPSという言葉が何を指すのか、電力自由化の歴史から整理しましょう。

電力自由化、20年の歩み

2000年特別高圧のみ自由化
PPS登場
2004〜2005年高圧まで
自由化を拡大
2016年4月低圧まで
全面自由化
現在登録小売電気事業者
761者(2025年3月末)

新電力・PPSは、この自由化の流れで参入した事業者の通称

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

PPSはかつての呼び方、今は「新電力」全体を指す通称

PPS(Power Producer and Supplier)とは、もともと2000年に始まった電力自由化の初期段階で、大規模な工場やビルなど特別高圧の需要家向けに限定して新規参入が認められた事業者を指す呼び方でした。その後、自由化の対象は2004〜2005年に高圧需要家(中規模のビル・オフィス)まで広がりました。

2016年4月の電力小売全面自由化で、家庭を含む低圧需要家まで対象が拡大されると、制度上の名称は「登録小売電気事業者」に統一されます。それでも、大手電力(旧一般電気事業者)以外の事業者を指す通称として「新電力」「PPS」という呼び方はそのまま定着し、現在も広く使われています。

2000年から段階的に進んだ電力自由化

つまり、新電力とは特定の1社を指す言葉ではなく、電力自由化の流れの中で新規参入した事業者群の総称です。電力システム改革とはで解説した小売自由化・発送電分離という2つの柱のうち、「小売自由化」によって生まれた事業者が新電力にあたります。

登録小売電気事業者制度の仕組み

新電力は誰でも名乗れるわけではなく、経済産業省への登録が必要です。制度の仕組みを見ていきます。

登録小売電気事業者数の推移

2016年4月 制度開始時制度スタート
拡大
2025年3月末761者

直近は横ばい傾向。経済産業大臣の登録を受けた事業者だけが小売電気事業を営める。

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

経済産業大臣の登録が必要な「登録小売電気事業者」

小売電気事業を営むには、資源エネルギー庁の登録小売電気事業者制度に基づき、経済産業大臣の登録を受ける必要があります。登録に際しては、需要家への説明義務や苦情対応体制の整備、電気の安定供給に必要な供給力の確保といった要件が課されます。誰でも自由に「電気を売る」と名乗れるわけではなく、一定の事業体制が求められる仕組みです。

登録事業者数は2025年3月末時点で761者

資源エネルギー庁の資料によれば、登録小売電気事業者数は2025年3月末時点で761者に達しています。2016年の制度開始から着実に増えてきましたが、直近は横ばい傾向にあり、後述するように事業から退出する事業者も一定数存在します。数百社という規模感は、電力調達を検討する担当者にとって「選択肢の多さ」であると同時に、「事業者の見極めが必要」であることも意味しています。

大手電力系の小売部門も、実は新電力と同じ立ち位置

東京電力エナジーパートナーのような大手電力系の会社も、制度上は新電力と同じ枠組みで競争しています。その理由を解説します。

発電・小売と送配電は別会社

発電・小売(競争分野)

東京電力
エナジーパートナー
中部電力
ミライズ
新電力各社
(Looop等)

送配電(地域独占)

一般送配電事業者
(東京電力パワーグリッド等)

大手電力の小売部門も新電力も、同じ送配電網を利用する立場は共通。

出典:資源エネルギー庁・各社公開情報をもとにgreenote作成

2020年の発送電分離で「発電・小売」と「送配電」が分かれた

2020年4月、大手電力(旧一般電気事業者)は法的分離により、発電・小売部門と送配電部門を別会社に分社化しました。これにより、送配電という地域独占インフラを運用する部門と、電気を販売して顧客と競争する部門が、制度上明確に切り分けられています。

東京電力EP・中部電力ミライズ・関電エネルギーソリューションの例

東京電力エナジーパートナーは東京電力ホールディングス傘下の小売電気事業者で、自社に発電所や送電線を持たず、発電事業者から電気を購入して東京電力パワーグリッド(一般送配電事業者)に届けてもらう構造です。中部電力ミライズも2020年4月に中部電力の販売部門を引き継いで発足し、送配電は分社化した中部電力パワーグリッドが担当します。関西電力は送配電部門を関西電力送配電として分社化し、法人向けには2001年設立の関電エネルギーソリューションも小売電気事業を担っています。

つまり、大手電力系の小売会社も、制度上は登録小売電気事業者の一社として新電力各社と同じ土台で競争しているのが実態です。「大手電力か新電力か」という区分は、事業の成り立ちの違いであって、送配電を利用する立場としては変わりません。

独立系新電力に見る、母体の多様性

独立系の新電力は、母体となる業種によって強みがまったく異なります。実例で見ていきましょう。

独立系新電力、母体タイプで見る違い

石油元売り系ENEOSでんき
商社・バイオマス系サミットエナジー・イーレックス
独立系エネルギー会社Looop・みんな電力(UPDATER)
ガス・通信キャリア系東京ガス・エネット・auでんき等

母体の事業がそのまま調達力や料金プランの強みに直結する。

出典:各社公開情報をもとにgreenote作成

石油元売り系・商社系・バイオマス発電系の事業者

母体の業種によって、新電力の強みは大きく異なります。ENEOSでんきENEOSグループが2016年に開始した事業で、全国100カ所超の自社発電所を保有する点が特徴です。サミットエナジー住友商事が100%出資し2001年に設立した事業者で、自社発電所とグループ・他社の発電設備、卸電力取引市場を組み合わせて調達します。イーレックス1999年創業で新電力として3番目に登録した老舗で、バイオマス発電を中心に発電から小売まで一貫して手がけています。

P2Pトラッキング型・通信キャリア系の事業者

一方、Looopは再エネ普及をビジョンに掲げ、市場連動型プランや非化石証書の原価販売に強みを持つ独立系事業者です。みんな電力(現UPDATER)2018年に世界初商用化した独自のP2P電力トラッキングにより、発電者と需要家をブロックチェーン上でマッチングし「顔の見える電力」を提供しています。エネット(ENNET)は2000年にNTTファシリティーズ・東京ガス・大阪ガスの出資で設立され、現在はNTTグループの子会社として特別高圧・高圧の法人向け新電力で高い販売量を持つ事業者です。通信キャリア系では、auでんき(現auエネルギー&ライフ)やソフトバンクでんき、楽天でんきが、通信サービスとのセット割やポイント還元を組み合わせた料金プランを展開しています。

母体が石油・商社・ガス・通信のいずれであっても、登録小売電気事業者としての立場は同じです。ただし、どのような発電資産を持つか、どのような調達手段を使うかによって、料金プランや再エネ比率の打ち出し方には明確な個性が出ています。

新電力と大手電力、制度的な違いはどこにあるか

新電力に切り替えると停電しやすくなるのでは、という誤解も少なくありません。制度的な違いを正確に整理します。

送配電網は変わらない――地域独占の一般送配電事業者

新電力に切り替えても、電気を家庭やオフィスまで届ける送配電網は変わりません。送配電を担うのは、大手電力から分社化した一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)で、地域独占として運用が続きます。新電力を選ぶことで変わるのは電気の「調達先・料金プラン」であり、「届け方」の部分は変わらないため、新電力への切り替えが停電リスクを高めるという理解は誤りです。

発電設備の有無と料金プランの多様化

新電力の多くは自社発電所を持たず、JEPX(日本卸電力取引所)とはで解説した卸電力取引所や、発電事業者との相対契約で電気を調達する「小売専業型」です。一方、イーレックス・Looop・サミットエナジーのように自社発電所(バイオマス発電など)を併せ持つ事業者も存在します。どちらの形態でも、需要家に電気を届ける段階では同じ送配電網を利用する点は変わりません。料金プランについても、市場連動型、通信サービスとのセット割、再エネ比率を訴求するプランなど、新電力の参入によって選択肢は大きく多様化しました。

新電力に切り替えると何が変わる?

変わらないもの

  • 電気を届ける送配電網は同じ(一般送配電事業者=東京電力PGなど)
  • 地域独占で運用が続く
  • だから切替で停電リスクが高まるのは誤り

変わるもの

  • 電気の調達先(JEPXや相対契約、自社発電)
  • 料金プラン(市場連動型・通信セット割・再エネ比率訴求など)
  • 新電力の参入で選択肢が大きく多様化

新電力を選んで変わるのは「調達先・料金プラン」で、「届け方(送配電)」の部分は変わりません。

新電力のシェアは全体17.5%、低圧では23%まで拡大

自由化から約10年、新電力はどこまでシェアを広げたのでしょうか。電力・ガス取引監視等委員会のデータで確認します。

新電力シェアの拡大

2016年4月

5.2%

低圧(家庭等)は0.1%

2024年4月

17.5%

低圧(家庭等)は23%

低圧(家庭等)分野での伸びが特に大きい。

出典:電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報」をもとにgreenote作成

電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報」によれば、新電力の販売電力量シェアは2016年4月の自由化時点で全体約5.2%・低圧分野(家庭等)では約0.1%にとどまっていました。これが2024年4月時点では全体約17.5%、低圧分野では約23%まで拡大しています。特に低圧分野での伸びが大きく、家庭向け市場でも新電力が確かな存在感を持つに至ったことが分かります。

とはいえ、大手電力が依然として8割以上のシェアを保っている点も見落とせません。新電力の台頭は着実に進んでいますが、電力市場の主軸が入れ替わったわけではなく、両者が並存する構造が続いています。

電力調達担当者がまず押さえておきたいこと

新電力とは、2016年の電力小売全面自由化以降に参入した登録小売電気事業者の通称であり、大手電力系の小売部門も含めて761者(2025年3月末時点)が同じ登録制度のもとで競争しています。石油元売り系のENEOSでんき、商社系のサミットエナジー、バイオマス発電系のイーレックス、P2Pトラッキング型のみんな電力、通信キャリア系のauでんきやソフトバンクでんきなど、母体によって強みは大きく異なりますが、送配電網という届け方の部分は共通です。

電力調達を検討する担当者にとって重要なのは、「新電力か大手電力か」という単純な二択ではなく、各事業者がどのような発電資産・調達手段・料金プランを持っているかを個別に見極めることです。761者という選択肢の多さは、比較検討の幅であると同時に、事業者の信頼性を見る目も求められることを意味します。実際の切替え手続きの流れや、調達先を選ぶ際の具体的な比較ポイントについては、本連載の次回以降で詳しく解説します。

なお本記事は、資源エネルギー庁・電力・ガス取引監視等委員会などの公開情報および各社公式サイトをもとに整理したものです。特定の事業者への切り替えを推奨するものではありません。

あわせて読みたい:「売る側」に回る選択肢——参入の理由と始め方 → 電力小売り事業への参入とは|理由・6ステップ・留意点

よくある質問(FAQ)

Q. 新電力とPPSは同じ意味ですか?

A. 現在はほぼ同じ意味で使われています。PPS(Power Producer and Supplier)は、2000年から始まった電力自由化の初期段階で、大口需要家向けに限定して新規参入が認められた事業者を指す呼び方でした。2016年の電力小売全面自由化以降は「登録小売電気事業者」という制度上の名称に統一されましたが、大手電力(旧一般電気事業者)以外の事業者を指す通称として「新電力」「PPS」という言葉がそのまま使われ続けています。

Q. 新電力に切り替えると停電しやすくなりますか?

A. いいえ、送配電網は変わらないため停電のリスクは基本的に変わりません。電気を家庭やオフィスまで届ける送配電網は、新電力に切り替えても大手電力(旧一般電気事業者)から分社化した一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)が地域独占で運用し続けます。新電力を選ぶことで変わるのは、電気の「調達先・料金プラン」であり、「届け方」の部分は変わりません。

Q. 新電力は自社の発電所を持っているのですか?

A. 事業者によって異なります。イーレックスやLooop、サミットエナジーのように自社で発電設備(バイオマス発電所など)を持つ事業者もありますが、多くの新電力は自社発電所を持たず、卸電力取引所(JEPX)や発電事業者との相対契約で電気を調達する「小売専業型」です。どちらの形態でも、需要家に電気を届ける際は同じ送配電網を利用します。

出典・参考(一次情報)

最終更新日:2026年7月8日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

関連記事

目次