ヘンケル、トルコとインドの主力工場でカーボンニュートラル生産を達成|2045年ネットゼロへ前進

2026.06.15
海外ニュース

脱炭素は、全社の目標を掲げて終わりではありません。一つひとつの工場で、排出を実際にゼロへ近づけていく地道な積み重ねが問われます。そのことを示す事例が、海外から届きました。

ドイツに本社を置く化学・消費財大手のヘンケルが、トルコとインドの主力工場でカーボンニュートラル生産を達成したと報じられました。同社が掲げる2045年のネットゼロ目標に向けた、着実な一歩です。

本記事では、報道の要点を整理したうえで、「カーボンニュートラル生産」という言葉の意味、そして日本企業にとっての示唆を、ESGの観点からわかりやすく解説します。

目次

ヘンケルが達成したカーボンニュートラル生産

まずは、今回ヘンケルが発表した内容を整理します。複数の主力工場が対象です。

今回の達成のポイント

先進国だけでなく、新興国の主力工場まで

トルコ

国内の全工場がCNに

GEBKİM工場が新たに達成。先行のTuzla工場と合わせ、国内の接着剤技術工場はすべてカーボンニュートラル。

インド

Kurkumbh工場も達成

インド・中東・アフリカ地域の二大拠点がカーボンニュートラル生産に。

全社目標

2045年ネットゼロへ

長期のネットゼロ排出目標に向けた、重要なマイルストーン。

全社目標を、工場ごとの具体的な成果へ落とし込む戦略を示す事例です。

トルコの接着剤技術工場がすべてカーボンニュートラルに

報道によると、ヘンケルはトルコ・コジャエリにあるGEBKİM工場の接着剤技術プラントを、カーボンニュートラルな施設へと転換しました。生産にともなう排出を、実質的にゼロにしたという発表です。

注目すべきは、これが単独の達成ではない点です。同社はすでに、イスタンブールのTuzla工場をカーボンニュートラル生産に移行させていました。今回のGEBKİM工場の達成により、トルコ国内にあるヘンケルの接着剤技術工場は、すべてカーボンニュートラルになったことになります。

インドの主力工場も達成

動きは、トルコだけにとどまりません。報道では、インドのKurkumbh(クルクンブ)工場も、同様にカーボンニュートラル生産を達成したと伝えられています。

これにより、インド・中東・アフリカ地域における同社の二大拠点が、カーボンニュートラルな生産を行う体制になったとされます。先進国の拠点だけでなく、新興国の主力工場まで対象を広げている点が、この発表の特徴です。

2045年ネットゼロ目標への一歩

ヘンケルは、2045年までにネットゼロ排出を達成するという目標を掲げています。今回の工場の達成は、その長期目標に向けた重要なマイルストーン(節目)と位置づけられています。

全社の大きな目標を、個々の工場での具体的な成果へと落とし込む。声明では、こうした戦略を現場レベルで成果に変える力の表れだと説明されています。目標の宣言から、実装の段階へ。その進み方を示す事例といえます。

「カーボンニュートラル生産」とは何を意味するか

ニュースで使われる「カーボンニュートラル生産」とは、具体的に何を指すのでしょうか。考え方を押さえます。

カーボンニュートラル生産の実現イメージ

3つを組み合わせ、排出を実質ゼロに

1

減らす

省エネルギーで、排出そのものを削減する。

2

切り替える

工場で使う電力を、再生可能エネルギーに。

3

相殺する

残る分を、クレジットなどでオフセット。

→ 生産にともなう排出を「実質ゼロ」に

まず削減を優先し、相殺は補完にとどめることが信頼の前提です。

生産活動に伴う排出を実質ゼロにする

カーボンニュートラル生産とは、工場の生産活動にともなって出る温室効果ガスを、実質的にゼロにすることを指します。「実質」という言葉がつくのは、排出を完全にゼロにするのが難しいためです。

そこで一般的には、まず省エネルギーによって排出そのものを減らします。次に、工場で使う電力を再生可能エネルギーに切り替えます。そして、どうしても残ってしまう分を、クレジットの購入などで相殺(オフセット)する。この組み合わせで、差し引きゼロを目指すのが基本的な考え方です。脱炭素の全体像は、関連記事のカーボンニュートラルとは|2050年目標と脱炭素の全体像もあわせてご覧ください。

省エネ・再エネと残余分の相殺

特に効果が大きいのが、電力の再エネ化です。生産には多くの電力が使われるため、その電源を切り替えるだけで、排出量は大きく下がります。再エネの調達手法は、関連記事のRE100とは|再生可能エネルギー100%の仕組みもあわせてご覧ください。

残余分の相殺には、クレジットが使われることが一般的です。ただし、相殺に頼りすぎる姿勢には批判もあります。あくまで自社の削減を優先し、クレジットは補完にとどめる。その順序が、取り組みの信頼性を左右します。

対象範囲(スコープ)に注意

「カーボンニュートラル」を読み解くうえで欠かせないのが、対象範囲の確認です。今回のような「生産」のカーボンニュートラルは、多くの場合、工場の操業に直接かかわる排出が中心です。

一方で、原材料の調達や製品の使用まで含めたサプライチェーン全体(スコープ3)は、別の大きな課題として残ります。「どこまでを対象にした達成なのか」を見極めることが、ニュースを正しく理解する鍵になります。

今回の達成をどう読むか|ESGの観点から

この発表は、ESGの観点からどんな意味を持つのでしょうか。背景と示唆を整理します。

拠点単位で成果を積み上げる戦略

今回の発表が示すのは、脱炭素を「拠点単位」で着実に進める戦略です。全社で一度に達成するのは現実的ではありません。工場を一つずつカーボンニュートラル化し、それを積み上げていく。地に足のついたアプローチといえます。

声明でも、全社戦略を現場の具体的な成果に変える力として、この達成が語られています。長期目標を掲げるだけの企業と、現場で実装する企業。その差が、投資家や取引先からの評価を分ける時代になっています。

新興国拠点での達成という意義

もう一つの注目点が、トルコやインドという新興国の拠点で達成された点です。脱炭素の取り組みは、ともすれば本社のある先進国に偏りがちです。再エネの調達環境が整わない地域も少なくありません。

そうしたなかで、新興国の主力工場をカーボンニュートラル化した意義は小さくありません。グローバル企業が、地域を問わず脱炭素を進める姿勢を示した事例として読み取れます。

サプライチェーン全体への波及

ヘンケルは、接着剤などを幅広い産業に供給するサプライヤーでもあります。そのサプライヤー自身が生産を脱炭素化することは、納入先である多くの企業のサプライチェーン排出(スコープ3)の削減にもつながります。

一社の取り組みが、取引を通じて川下の企業へと波及していく。責任ある調達やサプライチェーン管理の観点からも、示唆に富む動きです。サプライチェーンの脱炭素は、関連記事の責任ある調達とは|サプライチェーンのESG管理と進め方もあわせてご覧ください。

日本企業・実務への示唆

海外企業の動きは、日本企業にとっても無関係ではありません。実務へのヒントを整理します。

「工場ごと」の脱炭素という現実解

今回の事例は、日本企業にも参考になります。脱炭素を全社で一気に進めようとすると、ハードルの高さに足が止まりがちです。そうではなく、優先順位の高い工場から一つずつ取り組む。ヘンケルのアプローチは、その現実的な進め方を示しています。

まず排出量の大きい拠点や、再エネ調達のしやすい拠点から着手する。小さな達成を積み重ね、それを社内外に発信していく。この積み上げ型の戦略が、着実な前進につながります。

取引先からの要請に備える

グローバル企業が生産拠点の脱炭素を進めると、その波は取引先にも及びます。納入する部材や製品にも、脱炭素への対応が求められるようになるためです。これは、日本のサプライヤー企業にとって、無視できない流れです。

取引を維持し、新たに獲得していくうえで、自社の脱炭素は競争力の一部になりつつあります。大手の動向を早めに把握し、備えておくことが重要です。

達成の中身を見極める視点

最後に、こうしたニュースを受け取る側の視点も大切です。「カーボンニュートラル達成」という言葉だけで判断せず、その中身を確認する習慣が求められます。対象範囲はどこまでか。削減と相殺の割合はどうか。

取り組みの実質を見極める目を持つことが、自社の戦略を考えるうえでも、グリーンウォッシュを避けるうえでも役立ちます。見せかけを見抜く視点は、関連記事のグリーンウォッシュとは|見せかけの環境配慮を見抜く視点と企業の対応もあわせてご覧ください。

まとめ|着実な拠点の積み上げが全体を動かす

今回のニュースは、脱炭素が宣言の段階から実装の段階へと進んでいることを示しています。最後に、要点を振り返りましょう。

  • ヘンケルがトルコ(GEBKİM・Tuzla)とインド(Kurkumbh)の主力工場でカーボンニュートラル生産を達成
  • これにより、トルコ国内の同社接着剤技術工場はすべてカーボンニュートラルに
  • 同社の2045年ネットゼロ目標に向けたマイルストーンと位置づけ
  • 「カーボンニュートラル生産」は、省エネ・再エネ・残余の相殺で生産の排出を実質ゼロにすること。対象範囲(スコープ)の確認が重要
  • 日本企業には、拠点単位の積み上げという現実解と、取引先からの要請への備えという示唆

全社の大きな目標も、結局は一つひとつの拠点の積み重ねで実現されます。海外企業の着実な歩みは、日本企業が自社の脱炭素を考えるうえでの、よい参考になるはずです。ESG・サステナビリティの全体像はESGとは|意味・E/S/G・情報開示・投資まで完全ガイドもあわせてご覧ください。

参考(出典):Hürriyet Daily News「Henkel achieves carbon neutral production」(2026年6月14日)

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

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最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

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