アイスランドの電力事情|水力・地熱でほぼ100%再エネの島を数値で解説

2026.08.14
再生可能エネルギー

最終更新日:2026年8月4日

火山と氷河の島・アイスランド。その電力は、ほぼ100%が再生可能エネルギーでまかなわれています。豊かな水と、地下から噴き出す地熱。この二つの自然の恵みだけで、国全体の電気をつくる——世界でも稀有な「脱炭素の完成形」に、この島は最も近い場所にいます。

この記事は、世界の電力事情シリーズの国別深掘り編(アイスランド)です。島国(オセアニア・太平洋)の電力事情で触れた島国の中でも、アイスランドは再エネ100%の象徴的存在。電源構成、地熱の活用、安い電力が呼ぶ産業、独立した島の系統、外資、そして日本への示唆までを、数値とともに整理します。国別編のドイツの電力事情デンマークの電力事情UAEの電力事情チリの電力事情ともあわせてご覧ください。

※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。電源構成の数値や政策は年・統計・情勢によって変わるため、最新・確定の内容は各公式情報をご確認ください。特定の国・企業への投資を推奨するものではありません。

アイスランドの電力|3つの特徴
ほぼ100%再エネ電力は水力7割+地熱3割。化石燃料はほとんど使わない
地熱と火山の島活発な火山活動を活かし、発電と暖房(地域熱供給)に地熱をフル活用
安い電力が産業を呼ぶ豊富で安い電力で、アルミ精錬やデータセンターが集積する

この記事の目次

アイスランドの電力事情とは|ほぼ100%再エネの島

水力と地熱の島

アイスランドは、北大西洋に浮かぶ人口約40万人の小さな島国です。しかし電力の世界では、特別な存在感を放っています。氷河が生む豊富な水を使った水力発電と、火山活動による地熱発電。この二つだけで、電力のほぼ全量をまかなっているのです。石炭・石油・ガスといった化石燃料の出番は、電力にはほとんどありません。

3つの特徴

特徴は上図の3つです。電力がほぼ100%再エネであること、火山を活かした地熱発電をフルに活用していること、そして安く豊富な電力がアルミ精錬やデータセンターといった産業を呼び込んでいることです。「再エネ100%の電力システムは実現できるのか」という問いに、アイスランドはすでに答えを出しています(IEA「Electricity 2026」)。

電源構成の今と昔|水力7割・地熱3割

2010年と近年の比較

アイスランドの電源構成を、他国と同じように2010年ごろと近年で並べてみましょう(概数)。

アイスランドの電源構成|2010年ごろと近年(概数)
水力地熱風力その他
2010年ごろ
近年

概数(年により変動)。ほぼ100%が再エネ(水力・地熱)。化石燃料はごく僅か。出典:Orkustofnun(アイスランド国家エネルギー庁)・Ember等の公開データをもとにgreenote作成

一目でわかるのは、どちらの時点も「ほぼ全部が緑(再エネ)」だということです。水力(青)が約7割、地熱(緑)が約3割。この構成は長年ほとんど変わっていません。他国の電源構成が石炭やガスから再エネへと「移行中」なのに対し、アイスランドはとうの昔にゴールに到達しているのです。

電源別シェアの推移

時系列で見ても、その安定ぶりがわかります。

アイスランドの電源別シェアの推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)|長年ほぼ100%が水力・地熱(凡例の%は近年の値)
0%20%40%60%80%201020152020近年
水力 70%地熱 29%風力 1%その他 0%

概数(年により変動/各年の合計はおおむね100%)。出典:Orkustofnun・Ember等の公開データをもとにgreenote作成

水力が7割前後、地熱が3割前後で、長年ほぼ横ばい。近年はわずかに地熱の比率が上がり、風力も少しずつ試験的に導入されています。「変化が少ない」こと自体が、アイスランドの電力の強さを物語っています(いずれも概数)。

地熱大国|火山がつくる電力と暖房

アイスランドを語るうえで欠かせないのが、地熱です。この島はプレートの境界にあり、火山活動が活発で、地下には高温の熱水や蒸気が豊富にあります。これを使って発電するのが地熱発電です。地熱は天候に左右されず24時間安定して発電できる、貴重なベース電源です。

さらにアイスランドでは、地熱を「暖房」にも使っています。地下から取り出した熱を各家庭に配る地域熱供給(地域暖房)が普及し、国内の住宅の大半が地熱で暖められています。発電だけでなく暖房まで再エネでまかなう——地熱を丸ごと使い切る仕組みが、この島の脱炭素を支えています。

安い電力が呼ぶ産業|アルミ精錬とデータセンター

豊富で安い再エネ電力は、アイスランドに独特の産業構造を生みました。世界でも指折りの安い電力を求めて、電気を大量に使う産業が集まってきたのです。その代表がアルミニウムの精錬です。アルミ精錬は膨大な電力を消費するため、電気が安い場所に立地する傾向があり、アイスランドはその適地となりました。

その結果、アイスランドは一人当たりの電力消費量が世界最大級の国になっています。下のグラフのように、電力の大半をアルミ精錬などの大口産業が消費しているのが特徴です。近年は、寒冷な気候(サーバーの冷却に有利)と安い電力を武器に、データセンターの誘致も進んでいます。

アイスランドの電力の使いみち(用途別・概数)
電力消費に占めるおおよその割合(%)|大半を大口産業が消費
68%32%
74%26%
78%22%
80%20%
2010年2015年2020年近年
大口産業(アルミ精錬など)家庭・商業・その他

用途の内訳は概数(年により変動)。近年はデータセンターの需要も拡大。出典:Orkustofnun・Landsvirkjun等をもとにgreenote作成

一方で、電力需要が少数の大口産業に集中していることは、経済がその動向に左右されやすいという弱さも意味します。需要の担い手を、データセンターやグリーン水素などへ広げていくことが課題です。

アイスランドの電力システムの課題と対応

課題

大口産業への集中。電力の大半をアルミ精錬など少数の大口が消費し、経済がそこに依存する。

対応

データセンターやグリーン水素など、需要の担い手を多様化していく。

課題

独立した島の系統。他国とつながっておらず、余剰も不足も自国内で調整するしかない。

対応

貯水池のある水力で需給を調整。海底送電ケーブル(対欧州)の構想も議論されてきた。

課題

開発の環境影響。新たな水力・地熱の開発が、貴重な自然や景観に影響しうる。

対応

環境アセスや保護区の設定、既存設備の増強、地熱の持続可能な利用を重視する。

独立系統と市場|連系なき島の電力

アイスランドの電力システムには、大きな特徴があります。他国とまったく送電線でつながっていない、完全な「独立系統」だということです。欧州大陸のように隣国と電気を融通し合うことができず、余剰も不足も、すべて自国内で調整しなければなりません。

幸い、アイスランドの主力である水力には、水を貯めておける貯水池があります。これが天然の「電池」の役割を果たし、需要に合わせて発電量を調整できます。過去には、アイスランドの安い再エネ電力を海底ケーブルで欧州(英国など)へ輸出する「IceLink」構想も議論されてきました。実現すれば、欧州の電力事情の市場とつながる大きな一歩になりますが、コストや環境影響から慎重な検討が続いています。

外資の参入状況|電力集約型産業の誘致

開かれた産業誘致

アイスランドは、安い再エネ電力を武器に、外国資本の電力集約型産業を積極的に誘致してきました。アルミ精錬所には、米国や欧州の大手アルミメーカーが進出しています。近年は、世界のIT企業やデータセンター事業者が、寒冷な気候と100%再エネ電力を求めて拠点を構えています。「再エネで動くデータセンター」を求める企業にとって、アイスランドは魅力的な立地です。

アイスランドの電力|外資の参入機会と留意点

参入機会

  • 世界最安級の再エネ電力を長期・安定調達できる
  • アルミ精錬・データセンターの好適地(寒冷で冷却も有利)
  • グリーン水素・e-fuelの製造拠点になりうる

留意点

  • 独立系統で他国と電力を融通できない
  • 新規の水力・地熱開発は自然・景観への配慮が必要
  • 小規模市場・寒冷地の気象や立地の制約

制度や開放度は年により変わります。最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。

日本企業と地熱

地熱発電の分野では、日本企業の存在感が光ります。地熱発電に使われるタービンは、日本メーカーが世界で高いシェアを持ち、アイスランドを含む世界の地熱発電所に納入されてきました。日本は火山国で地熱資源が豊富なため、アイスランドの地熱活用は日本にとって学ぶべき先行事例でもあります。RE100コーポレートPPAを進める企業にとっても、100%再エネの立地は参考になります。各社の個別戦略は変化するため、最新は各社の開示をご確認ください。

日本との比較|違いと示唆

アイスランドと日本を、電力の面で並べてみましょう。同じ火山国・島国でありながら、電源構成は対照的です。

アイスランドと日本|電力の比較
観点アイスランド日本
再エネ比率ほぼ100%(水力・地熱)
主力電源水力・地熱
地熱世界有数の活用(発電+暖房)
電力消費一人当たり世界最大級(大口産業)
系統独立(他国と連系なし)

最大の違いは、再エネ比率(氷=ほぼ100%/日=2割強)です。とくに注目したいのが地熱。両国とも火山国で地熱資源に恵まれていますが、アイスランドが発電・暖房にフル活用しているのに対し、日本は資源が豊富でありながら活用が進んでいません。アイスランドの経験は、日本の地熱発電のポテンシャルを考えるうえで大きなヒントになります。ネットゼロに向けて、足元の資源をどう生かすか——アイスランドはその問いを投げかけます。

まとめ|火と水の電力システム

アイスランドは、水と火という自然の恵みだけで、電力のほぼ全量をまかなう国です。地熱を発電にも暖房にも使い切り、安い電力で産業を呼び込む——再エネ100%の電力システムが現実に機能していることを、この島は世界に示しています。

恵まれた自然条件あってのことですが、「足元の再エネ資源を徹底的に生かす」という姿勢は、どの国にも通じます。とくに同じ火山国の日本にとって、地熱の活用は大きな示唆です。島国の文脈は島国(オセアニア・太平洋)の電力事情、国別編のドイツの電力事情デンマークの電力事情UAEの電力事情チリの電力事情ともあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. アイスランドの電力の特徴は何ですか?

電力のほぼ100%を再生可能エネルギー(水力・地熱)でまかなっていることです。化石燃料をほとんど使わず、安く豊富な電力でアルミ精錬やデータセンターなどの産業を呼び込んでいます。

Q. アイスランドの電源構成はどうなっていますか?

水力が約7割、地熱が約3割で、この二つでほぼ全量を占めます。風力はごく一部で、化石燃料はほとんど使われません。この構成は長年ほぼ変わっていません(いずれも概数・年により変動)。

Q. なぜアイスランドは地熱が盛んなのですか?

プレートの境界に位置し火山活動が活発で、地下に高温の熱水や蒸気が豊富にあるためです。これを発電に使うほか、地域熱供給(暖房)にも活用し、住宅の大半を地熱で暖めています。

Q. アイスランドはなぜ電力消費が多いのですか?

安く豊富な再エネ電力を求めて、電気を大量に使うアルミ精錬などの大口産業が集まっているためです。その結果、一人当たりの電力消費量は世界最大級となっています。

Q. アイスランドの電力の課題は何ですか?

電力需要がアルミ精錬など少数の大口産業に集中していること、他国と送電線でつながっていない独立系統であること、新規の水力・地熱開発が自然環境に影響しうることなどです。

Q. アイスランドは電力を輸出していますか?

現在は他国と送電線でつながっておらず、電力の輸出入はしていません。過去には海底ケーブルで欧州へ輸出する「IceLink」構想も議論されましたが、コストや環境影響から慎重な検討が続いています。

Q. アイスランドと日本の電力の違いは何ですか?

再エネ比率(アイスランドはほぼ100%、日本は2割強)が対照的です。とくに地熱は、両国とも火山国で資源が豊富ですが、アイスランドはフル活用、日本は活用が途上という違いがあります。

Q. アイスランドから日本が学べることは何ですか?

足元の再エネ資源を徹底的に生かす姿勢です。とくに、同じ火山国として地熱を発電・暖房に活用する仕組みは、地熱資源が豊富でありながら活用が進んでいない日本にとって大きな示唆となります。

出典・参考資料(一次情報)

※ 本記事は上記の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した一般的な解説です。電源構成・政策は年・統計・情勢で変わるため、最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月14日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

関連記事

目次