オーストラリアの電力事情|石炭大国の急転換と屋根置き太陽光世界一を数値で解説

2026.08.15
再生可能エネルギー

最終更新日:2026年8月4日

つい10数年前まで、発電の約8割を石炭に頼っていた国が、いま世界でも屈指のスピードで再エネへ舵を切っています。オーストラリアです。強い日射と広い土地、そして「屋根置き太陽光」の世界一の普及を武器に、石炭大国は急速に姿を変えつつあります。

この記事は、世界の電力事情シリーズの国別深掘り編(オーストラリア)です。東アジア・オセアニアの電力事情で見たオセアニアの中心として、電源構成の推移、屋根置き太陽光、石炭火力の退役、化石燃料輸出国という二面性、電力市場と外資、そして日本への示唆までを、数値とともに整理します。同じ石炭輸出国のインドネシアの電力事情や、再エネ先進国のドイツの電力事情ともあわせてご覧ください。

※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。電源構成の数値や政策は年・統計・情勢によって変わるため、最新・確定の内容は各公式情報をご確認ください。特定の国・企業への投資を推奨するものではありません。

オーストラリアの電力|3つの特徴
石炭大国からの急転換かつて発電の約8割が石炭。いま急速に減り、再エネが伸びている
屋根置き太陽光が世界一おおむね3軒に1軒が屋根に太陽光。分散型電源の先進国
化石燃料輸出国の二面性石炭・LNGを大量輸出しつつ、国内は脱炭素へ舵を切る

この記事の目次

オーストラリアの電力事情とは|石炭大国の急転換

石炭の国から

オーストラリアの電力を理解する出発点は、石炭です。国内に豊富な石炭を産し、それを燃やして安い電気をつくってきました。2010年ごろには、発電の約8割を石炭が占めていたほどです。同時に、石炭とLNG(液化天然ガス)を世界に大量輸出する「化石燃料の大国」でもあります。

3つの特徴

特徴は上図の3つです。かつての石炭大国からの急速な転換、屋根置き太陽光の世界一の普及、そして化石燃料を大量輸出しつつ国内は脱炭素へ向かうという二面性です。強い日射と広い国土という自然の恵みを武器に、オーストラリアは世界のエネルギー転換のトップランナーの一つになりつつあります(IEA「Electricity 2026」)。

電源構成の今と昔|石炭急減・太陽光急増

2010年と近年の比較

オーストラリアの電源構成を、2010年ごろと近年で並べてみましょう(概数)。

オーストラリアの電源構成|2010年ごろと近年(概数)
石炭ガス太陽光風力水力
2010年ごろ
近年

概数(年により変動)。石炭が急減し、太陽光・風力が急拡大したのが特徴。太陽光は屋根置きを含む。出典:AEMO・OpenNEM・Ember等の公開データをもとにgreenote作成

変化の大きさが際立ちます。2010年ごろは石炭(濃いグレー)が約8割を占めていましたが、近年は5割を切るまで低下。代わりにゼロだった太陽光(黄)が2割弱まで急拡大し、風力(緑)も伸びました。ガス(薄いグレー)は調整用として一定量、水力(青)は安定した脇役です。「石炭一辺倒」から「再エネ主体へ」の移行が、猛スピードで進んでいます。

電源別シェアの推移

時系列で見ると、その転換の速さがよくわかります。まず、石炭と再エネの推移です。

オーストラリア:石炭と再エネの推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)|石炭が急減、再エネが急増
78%8%
70%13%
62%22%
47%35%
2010年2015年2020年近年
石炭再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力)

概数(年により変動)。残りは主に天然ガス。出典:AEMO・OpenNEM・Ember等をもとにgreenote作成

石炭が右肩下がりに急落し、入れ替わるように再エネ(太陽光・風力・水力)が急上昇しています。両者はまさにクロスしようとする勢い。次に、電源別に推移を重ねてみます。

オーストラリアの電源別シェアの推移(概数)
発電量に占めるおおよその割合(%)|石炭が急落、太陽光・風力が急伸(凡例の%は近年の値)
0%20%40%60%80%201020152020近年
石炭 47%ガス 18%太陽光 17%風力 12%水力 6%

概数(年により変動/各年の合計はおおむね100%)。出典:AEMO・OpenNEM・Ember等の公開データをもとにgreenote作成

石炭が一直線に下がり、太陽光が2015年ごろから急カーブで立ち上がっているのが読み取れます。風力も着実に伸長。短期間でこれほど電源構成が変わった先進国は多くありません(いずれも概数)。

屋根置き太陽光は世界一|分散する電源

オーストラリアの太陽光を象徴するのが、「屋根置き太陽光」です。戸建て住宅の屋根にソーラーパネルを載せる家庭が非常に多く、その普及率はおおむね3軒に1軒ともいわれ、世界トップ級です。強い日射に加え、電気代の高さや補助制度が後押しし、家庭が自ら発電する「分散型電源」が一気に広がりました。

この大量の屋根置き太陽光は、電力システムに新しい課題をもたらしました。晴れた日の昼間は、家庭の太陽光が一斉に発電して電気が余り気味になり、夕方に太陽が沈むと需要が急増する——いわゆる「ダックカーブ(アヒルの曲線)」です。昼に余った電気をいかに夕方以降へ回すかが、蓄電池やEVの活用の鍵になっています。

オーストラリアの電力システムの課題と対応

課題

昼の電気余り(ダックカーブ)。屋根置き太陽光が増えすぎて、日中に電気が余る時間帯が生じる。

対応

大型蓄電池や家庭用電池、EV、需要のシフトで、昼の電気を夕方以降へ回す。

課題

石炭火力の退役と安定供給。老朽石炭の閉鎖が加速し、供給に谷が生じるおそれ。

対応

再エネ+蓄電を急ぎ、当面はガスで橋渡ししながら、計画的に移行する。

課題

広大で分断された系統。東部のNEM、西部のWAなど系統が分かれ、送電距離も長い。

対応

大型の送電線を新設し、再エネの適地と需要地を結ぶ(送電網の整備)。

石炭火力の退役と安定供給|移行の谷

再エネが急増する一方で、オーストラリアでは老朽化した石炭火力の閉鎖(退役)が加速しています。安い再エネに押されて石炭火力の採算が悪化し、当初の予定より早く閉鎖する動きが相次いでいます。これは脱炭素の前進である一方、供給力が急に減る「谷」を生むリスクもはらみます。

石炭火力が抜けた穴を、再エネと蓄電池でどう埋めるか。当面は天然ガスが「橋渡し」の役割を担いつつ、大型蓄電池(テスラの大型バッテリーが有名です)の導入が進んでいます。急ぎすぎれば停電リスク、遅すぎれば脱炭素の遅れ——その微妙なバランスを取りながら、計画的に移行を進めることが求められています。

化石燃料輸出国という二面性|石炭・LNGと脱炭素

オーストラリアには、大きな「二面性」があります。国内では再エネへの転換を急ぐ一方、国外へは石炭とLNGを大量に輸出する、世界有数の化石燃料輸出国でもあるのです。輸出は経済と雇用を支える柱であり、簡単には手放せません。

この二面性は、次第に問い直されつつあります。輸出先の国々が脱炭素を進めれば、いずれ石炭・LNGの需要は細っていきます。そこでオーストラリアは、豊富な再エネを活かしたグリーン水素・アンモニアを「次の輸出品」に育てようとしています。化石燃料の輸出大国が、クリーンエネルギーの輸出大国へ——その転換に挑もうとしています。日本にとっても、将来の水素・アンモニアの供給元候補として重要です。

電力市場と外資|NEMと州ごとの制度

分断された市場

オーストラリアの電力市場は、地理を反映して分かれています。東部・南部を結ぶ「NEM(国家電力市場)」が最大の市場ですが、西オーストラリア(WA)や北部準州(NT)は別の系統・市場です。国土が広大で送電距離が長いため、再エネの適地と需要地(都市)を結ぶ送電網の整備が、転換のボトルネックになっています。市場は自由化され、AEMO(豪エネルギー市場運用者)が需給を運用しています。

オーストラリアの電力|外資の参入機会と留意点

参入機会

  • 世界屈指の太陽光・風力資源
  • 2030年82%目標に向けた大型案件
  • グリーン水素・アンモニアの輸出候補

留意点

  • 送電網の制約による出力抑制
  • 州ごとに異なる制度・許認可
  • 政策・市場ルールの変動

制度や開放度は年により変わります。最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。

外資と日本企業

世界屈指の太陽光・風力資源と、2030年82%という野心的な再エネ目標を背景に、オーストラリアの再エネは外資に開かれています。日本の商社・電力会社・メーカーも、太陽光・風力・洋上風力や、グリーン水素・アンモニアのプロジェクトに関わってきました。資源の輸入元として、また将来のクリーンエネルギー供給元として、日本にとってオーストラリアは重要な相手です。RE100コーポレートPPAを進める企業にも注目されています。各社の個別戦略は変化するため、最新は各社の開示をご確認ください。

日本との比較|違いと示唆

オーストラリアと日本を、電力の面で並べてみましょう。資源国と資源小国という違いはありますが、学べる点が多くあります。

オーストラリアと日本|電力の比較
観点オーストラリア日本
石炭急減中(かつて約8割)
屋根置き太陽光普及率が世界トップ級
再エネ目標2030年に82%(野心的)
化石燃料石炭・LNGの一大輸出国
系統州ごとに分断・長距離

最大の違いは、化石燃料の立場(豪=輸出国/日=輸入国)と、屋根置き太陽光の普及です。オーストラリアが屋根置き太陽光を一気に普及させ、ダックカーブや蓄電で対応してきた経験は、これから分散型の太陽光を増やす日本にとって、格好の教科書です。また、豪州は日本の重要な資源供給元であり、将来はグリーン水素の供給元にもなり得ます。ネットゼロに向けて、日豪の連携はますます重要になります。

まとめ|エネルギー転換のトップランナー

オーストラリアは、発電の約8割を石炭に頼っていた国から、世界屈指のスピードで再エネへ転換しつつある「トップランナー」です。屋根置き太陽光の世界一の普及と、老朽石炭の退役が、その転換を象徴しています。

昼の電気余り、石炭退役後の安定供給、広大な系統の整備、そして化石燃料輸出国という二面性——課題は多いものの、その一つひとつに世界が注目しています。豊かな資源をクリーンエネルギーの輸出へと転換できるか。オセアニア全体の文脈は東アジア・オセアニアの電力事情、同じ石炭輸出国のインドネシアの電力事情ともあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. オーストラリアの電力の特徴は何ですか?

かつて発電の約8割を石炭に頼っていた国が、世界屈指のスピードで再エネへ転換していることです。屋根置き太陽光の普及率は世界トップ級で、一方で石炭・LNGを大量に輸出する化石燃料大国という二面性も持ちます。

Q. オーストラリアの石炭比率はどのくらいですか?

近年は発電量の5割弱まで低下しました。2010年ごろの約8割から急減しており、太陽光・風力の急拡大と老朽石炭火力の閉鎖が背景です(いずれも概数・年により変動)。

Q. 屋根置き太陽光が世界一とはどういうことですか?

戸建て住宅の屋根に太陽光パネルを載せる家庭が非常に多く、普及率はおおむね3軒に1軒ともいわれ世界トップ級です。強い日射、高い電気代、補助制度が後押しし、家庭が自ら発電する分散型電源が急速に広がりました。

Q. ダックカーブとは何ですか?

屋根置き太陽光が増えすぎて、晴れた日の昼間に電気が余り、夕方に太陽が沈むと需要が急増する現象です。需要曲線がアヒルの形に見えることからこう呼ばれ、昼の余剰をいかに夕方以降へ回すか(蓄電池やEV)が課題です。

Q. オーストラリアはなぜ石炭火力を閉鎖しているのですか?

安く増えた再エネに押されて石炭火力の採算が悪化し、当初の予定より早く閉鎖する動きが相次いでいるためです。脱炭素の前進である一方、供給力が急に減る「谷」を生むリスクもあり、再エネと蓄電で穴を埋める必要があります。

Q. オーストラリアの化石燃料輸出はどうなりますか?

現在も石炭・LNGの世界有数の輸出国ですが、輸出先の脱炭素が進めば需要は細っていきます。そこで豊富な再エネを活かしたグリーン水素・アンモニアを「次の輸出品」に育てようとしており、日本の供給元候補としても注目されています。

Q. オーストラリアと日本の電力の違いは何ですか?

化石燃料の立場(オーストラリアは輸出国、日本は輸入国)と、屋根置き太陽光の普及度が大きく異なります。再エネ目標もオーストラリアは2030年に82%と野心的です。

Q. オーストラリアから日本が学べることは何ですか?

屋根置き太陽光を一気に普及させ、ダックカーブや蓄電で対応してきた経験は、分散型の太陽光を増やす日本の教科書になります。また、豪州は日本の重要な資源供給元であり、将来のグリーン水素の供給元としても連携が重要です。

出典・参考資料(一次情報)

※ 本記事は上記の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した一般的な解説です。電源構成・政策は年・統計・情勢で変わるため、最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月15日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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