カーボンオフセットとは|仕組みと3ステップ・種類とカーボンニュートラルとの違いを解説

2026.07.12
気候変動

「カーボンオフセット済み」。そう表示された商品やイベントを、見かけたことはないでしょうか。自分たちの出したCO2を、どこか別の場所での削減で埋め合わせる。この考え方が、カーボンオフセットです。ただし、使い方を誤れば「見せかけ」との批判も招きます。本記事では、カーボンオフセットの意味とカーボンクレジットとの違い、正しい手順である3ステップ、種類、そしてカーボンニュートラルとの関係までを、環境省などの情報をもとに整理します。

この記事の目次

カーボンオフセットとは(おさらい)

まず、カーボンオフセットがどのような考え方で、よく似たカーボンクレジットと何が違うのかを整理しましょう。

減らして、残りを埋め合わせる

どうしても残る排出
まず削減した分
クレジットで埋め合わせ残る排出に見合った、他の場所の削減・吸収を購入

差し引きで埋め合わせる=カーボンオフセット

出典:環境省の情報をもとにgreenote作成

排出を埋め合わせる考え方

カーボンオフセットとは、日常生活や事業活動で避けられないCO2などの排出について、まず削減の努力を行い、それでも残る分を、他の場所での削減・吸収量の購入などで埋め合わせる(相殺する)取り組みです。環境省が推進する考え方でもあります。なお、自社のバリューチェーンの内部で削減・吸収するカーボンインセッティング(インセット)と対比されます。

ポイントは、「まず減らし、残りを埋め合わせる」という順番にあります。オフセットは、削減努力を省くための免罪符ではありません。減らせるだけ減らしたうえで、どうしても残ってしまう排出を、埋め合わせる。この順番こそが、カーボンオフセットの土台なのです。脱炭素の全体像は、関連記事のカーボンニュートラルとはもあわせてご覧ください。

カーボンクレジットとの違い

カーボンオフセットは、カーボンクレジットとしばしば混同されます。しかし、両者が指すものは異なります。

カーボンクレジットは、他の場所での排出削減・吸収量を証書にした「モノ(道具)」です。一方カーボンオフセットは、そのクレジットなどを使って、自らの排出を埋め合わせる「行為・取り組み」を指します。埋め合わせるという行為がオフセットで、その際に使う手段がクレジット。道具と、その使い方。この関係を押さえると、両者の違いがすっきり見えてきます。クレジットそのものの仕組みは、関連記事のカーボンクレジットとはもあわせてご覧ください。

カーボンオフセットの3ステップ

カーボンオフセットは、いきなり埋め合わせるものではありません。決まった順番があります。環境省が示す3ステップで整理しましょう。

まず減らす、が大原則

1 知る自らのCO2排出量を算定して把握する
2 減らす省エネや再エネで自ら排出を削減する
3 オフセット削減しても残る分をクレジットで埋め合わせる

削減が先、オフセットはその次。この順番が信頼のカギ。

出典:環境省の情報をもとにgreenote作成

まず「知る」「減らす」

第一のステップは、「知る」ことです。自らの活動が、どれだけのCO2を排出しているのかを算定し、把握します。現状を測らなければ、何をどれだけ減らすべきかも見えてこない。排出量を測る道具は、関連記事のCO2排出量算定ツールとはもあわせてご覧ください。

第二のステップが、「減らす」です。ここがカーボンオフセットの核心になります。省エネや再エネの導入など、自ら排出を削減する努力を尽くす。オフセットは、あくまでこの削減を前提とした取り組みです。減らす努力を飛ばして、いきなり埋め合わせに走ってはいけません。

残りを「オフセット」する

そして第三のステップが、「オフセット」です。削減してもなお残ってしまう排出量。その分に見合ったクレジットを購入するなどして、埋め合わせます。

ここで初めて、クレジットの出番。自ら減らせなかった分を、他の場所での削減・吸収で相殺する。この順番を守ることで、カーボンオフセットは信頼できる取り組みになります。「知る・減らす・オフセット」。この3ステップの流れが、質の高いオフセットの条件なのです。

カーボンオフセットの種類

カーボンオフセットは、さまざまな形で身近に使われています。代表的な類型を整理します。

身近にあるカーボンオフセット

オフセット製品・サービス製造や利用に伴う排出を埋め合わせた商品
会議・イベントのオフセット開催に伴う排出を埋め合わせる
クレジット付き製品購入するとクレジットが付いてくる
寄付型オフセットクレジット購入を通じて削減活動に寄付

出典:環境省の情報をもとにgreenote作成

カーボンオフセットは、企業だけのものではありません。私たちの身のまわりにも、さまざまな形で存在します。代表的なのが、商品の製造や利用に伴う排出を埋め合わせた「オフセット製品・サービス」です。

そのほか、会議やイベントの開催に伴う排出を埋め合わせる「会議・イベントのオフセット」、購入するとクレジットが付いてくる「クレジット付き製品・サービス」、そしてクレジットの購入を通じて削減活動に寄付する「寄付型オフセット」などがあります。個人でも、こうした商品やサービスを選ぶことで、気軽にオフセットに参加できるのです。裾野の広さも、カーボンオフセットの特徴といえます。

カーボンニュートラル・ネットゼロとの関係

カーボンオフセットは、カーボンニュートラルやネットゼロと深く関わります。その関係を整理しましょう。

どこまで埋め合わせるか

カーボンオフセット排出の一部または全部を埋め合わせる取り組み
カーボンニュートラル責任範囲の排出を全て埋め合わせ、正味ゼロにした状態
ネットゼロ原則すべてのスコープで削減を優先し、残りを除去。より厳格

いずれも削減が前提。オフセットは削減の代わりにはならない

出典:環境省・SBTiの情報をもとにgreenote作成

カーボンオフセットとカーボンニュートラルは、地続きの関係にあります。環境省は、カーボンオフセットを深化させた取り組みとして、自らの責任と定めることが合理的と認められる範囲の排出量を「すべて」埋め合わせた状態を、カーボン・ニュートラルと定義しています。一部を埋め合わせるのがオフセット、対象範囲を全量埋め合わせて正味ゼロにするのがカーボンニュートラル、という関係です。

一方、より厳格なのがネットゼロです。ネットゼロは、原則としてすべてのスコープで削減を最優先し、残った排出だけを除去で相殺します。オフセット(クレジット購入)への依存を戒める点に特徴があります。いずれの概念も、共通するのは「まず削減」という大前提です。オフセットは、削減の代わりにはならないのです。ネットゼロの詳細は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

使われるクレジット(J-クレジットなど)

オフセットに使う「削減・吸収量」は、クレジットという形で調達します。日本の代表的な制度を見ていきましょう。

埋め合わせに使うクレジット

J-クレジット制度国(環境省・経産省・農水省)が運営。省エネ・再エネ・森林管理などの削減・吸収を認証
ボランタリークレジット民間の認証機関が運営する自主的な市場のクレジット

クレジットの質(追加性・永続性・二重計上の回避)が信頼のカギ。

出典:J-クレジット制度・各種情報をもとにgreenote作成

J-クレジット制度

日本でオフセットに広く使われるのが、J-クレジット制度です。これは、環境省・経済産業省・農林水産省が運営する国の制度で、省エネや再エネ設備の導入、適切な森林管理などによる温室効果ガスの削減・吸収量を、クレジットとして認証します。

国が認証する信頼性の高さと、国産で地域の取り組みを支えられる点が特徴です。企業は、このJ-クレジットを購入して、自らの排出をオフセットします。森林由来のクレジットについては、関連記事の森林クレジットとはもあわせてご覧ください。

ボランタリークレジット

もう一つが、ボランタリークレジットです。これは、国の制度とは別に、民間の認証機関が運営する自主的な市場で取引されるクレジットを指します。世界中のさまざまな削減・吸収プロジェクトが対象になり、種類も豊富です。

ただし、民間市場のクレジットは、質にばらつきがあるとも指摘されています。だからこそ、そのクレジットが本当に信頼できるかを見極める目が要るのです。クレジットの質は、次章で見るように、カーボンオフセットの信頼性を左右する重要な論点になります(質を見分ける国際基準はボランタリー・カーボン市場の信頼性(ICVCM・CCP)で解説しています)。

カーボンオフセットの課題

有効な手段である一方で、使い方を誤ると批判を招きます。注意点を押さえましょう。

オフセットに頼りすぎない

相殺頼み自ら減らす努力をせず、クレジット購入だけで済ませる
クレジットの質追加性・永続性・二重計上の回避が問われる
グリーンウォッシュ削減を伴わないオフセットは見せかけと批判される

あくまで削減を尽くした先の補完手段として使う。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

最大の課題が、「相殺頼み」になってしまうことです。自ら減らす努力をせず、クレジットの購入だけで済ませる。こうした姿勢は、カーボンオフセットの本来の趣旨から外れます。3ステップの「減らす」を飛ばした埋め合わせは、質の高いオフセットとはいえません。

次に、クレジットの質の問題があります。そのクレジットが、本当に追加的な削減を生んでいるか。蓄えた炭素に永続性はあるか。二重に計上されていないか。こうした点が不十分だと、埋め合わせの効果そのものが揺らぎます。そして、これらが伴わないオフセットは、グリーンウォッシュとの批判を招きかねません。SBTのネットゼロ基準でも、オフセットは削減の代わりにはならないとされています。あくまで削減を尽くした先の補完手段。その位置づけを守ることが大切です。見せかけを見抜く視点は、関連記事のグリーンウォッシュとはもあわせてご覧ください。

まとめ|カーボンオフセットは「削減の次」の一手

カーボンオフセットは、削減を尽くした先で、残る排出を埋め合わせるための一手です。最後に、要点を振り返りましょう。

  • カーボンオフセットとは、削減しきれない排出を、他の場所の削減・吸収量(クレジット)で埋め合わせる取り組み。埋め合わせる行為がオフセット、使う手段がクレジット
  • 手順は、知る→減らす→オフセットの3ステップ。削減が先で、オフセットはその次
  • 種類は、オフセット製品・イベント・クレジット付き製品・寄付型など。個人でも参加できる
  • 責任範囲を全量埋め合わせるとカーボンニュートラル。ネットゼロはさらに厳格で削減を優先する
  • 課題は、相殺頼み・クレジットの質・グリーンウォッシュ。あくまで削減の補完手段として使う

カーボンオフセットは、うまく使えば脱炭素を後押しし、誤れば「見せかけ」となる、諸刃の剣です。大切なのは、順番を守ること。まず知り、減らし、それでも残る分を、質の高いクレジットで埋め合わせる。その誠実な姿勢が、カーボンオフセットを信頼できる一手に変えていきます。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. カーボンオフセットとは何ですか?

A. カーボンオフセットとは、日常生活や事業活動で避けられないCO2などの温室効果ガスの排出について、まずできるだけ削減する努力を行い、それでもどうしても出てしまう分を、他の場所での排出削減・吸収量(クレジット)の購入などによって埋め合わせる(相殺する)取り組みです。環境省が推進する考え方で、「まず減らし、残りを埋め合わせる」という順番が基本になります。

Q. カーボンオフセットとカーボンクレジットは何が違うのですか?

A. 両者は密接に関わりますが、指すものが異なります。カーボンクレジットは、他の場所での排出削減・吸収量を証書にした「モノ(道具)」です。一方カーボンオフセットは、そのクレジットなどを使って、自らの排出を埋め合わせる「行為・取り組み」を指します。つまり、埋め合わせるという行為がカーボンオフセットで、その際に使う手段がカーボンクレジット、という関係です。

Q. カーボンオフセットはどのような手順で行いますか?

A. 基本は3つのステップです。1つ目は「知る」で、自らの活動に伴うCO2排出量を算定して把握します。2つ目は「減らす」で、省エネや再エネの導入など、まず自ら排出を削減する努力を行います。そして3つ目が「オフセット」で、削減してもどうしても残る排出量に見合ったクレジットを購入するなどして埋め合わせます。削減が先で、オフセットはその次、という順番が重要です。

Q. カーボンオフセットにはどんな種類がありますか?

A. 身近なものから幅広くあります。商品やサービスの製造・利用に伴う排出をオフセットした「オフセット製品・サービス」、会議やイベントの開催に伴う排出を埋め合わせる「会議・イベントのオフセット」、購入するとクレジットが付いてくる「クレジット付き製品・サービス」、クレジットの購入を通じて削減活動に寄付する「寄付型オフセット」などです。個人でも、商品選びやサービス利用を通じて参加できます。

Q. カーボンオフセットとカーボンニュートラルはどう違うのですか?

A. カーボンニュートラルは、カーボンオフセットを深化させた取り組みと位置づけられます。環境省は、自らの責任と定めることが合理的と認められる範囲の排出量を「すべて」埋め合わせた状態を、カーボン・ニュートラルと定義しています。つまり、一部を埋め合わせるのがオフセット、対象範囲の排出を全量埋め合わせて正味ゼロにするのがカーボンニュートラル、という関係になります。

Q. カーボンオフセットにはどんな課題がありますか?

A. 最大の課題は、削減努力を伴わない「相殺頼み」になってしまうことです。自ら減らす努力をせず、クレジット購入だけで済ませる姿勢は、グリーンウォッシュとの批判を招きます。加えて、使うクレジットの質(そのクレジットが本当に追加的な削減か、永続性があるか、二重に計上されていないか)も問われます。SBTのネットゼロ基準でも、オフセットは削減の代わりにはならないとされており、あくまで削減を尽くした先の補完手段として使うことが大切です。

メールマガジン

ESG・脱炭素の最新動向を、月に数回

規制・評価・資金の流れは毎年変わります。実務に効く変更点だけを整理してお届けします(登録無料・解除はワンクリック)。

無料で登録する

手を動かす段階なら、無料のExcelテンプレートもあります → 実務テンプレート

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

最終更新日:2026年7月12日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

関連記事

目次