ペロブスカイト太陽電池とは|仕組み・強みと課題、日本の量産競争まで深掘り解説

2026.06.27
再生可能エネルギー

薄くて、軽くて、くるくると丸められる太陽電池——。そんなSFのような技術が、いま実用化の最終盤を迎えています。それが、日本発の次世代太陽電池ペロブスカイト太陽電池です。設置できる場所を一気に広げ、再エネ拡大の新たな主役として期待を集める存在。

本記事では、ペロブスカイト太陽電池とは何かを、できるだけかみ砕きつつ、一歩踏み込んで解説します。結晶構造を「塗ってつくる」仕組み、4つの強み、シリコン太陽電池との関係、立ちはだかる課題、そして日本の量産競争までを順に見ていきましょう。発電した電気を活かす出力制御(カーテイルメント)とはや、政策の全体像である第7次エネルギー基本計画とはとあわせて読むと、位置づけが立体的に見えてきます。

この記事の目次

ペロブスカイト太陽電池とは

まず、ペロブスカイト太陽電池をひとことで整理します。「塗ってつくれる、軽くて曲がる次世代の太陽電池」という発想から入りましょう。

ペロブスカイト太陽電池をひとことで言うと

ペロブスカイト太陽電池とは、「ペロブスカイト」という特定の結晶構造を持つ材料を、光を吸収する層に使った太陽電池です。最大の特徴は、材料を溶かした液を塗ったり印刷したりして、薄い膜としてつくれる点にあります。

いまの主流であるシリコン太陽電池は、硬くて重く、高温の大がかりな設備で製造します。これに対しペロブスカイトは、薄く・軽く・曲げられるうえ、低い温度でつくれる。この違いが、太陽光発電の「常識」を塗り替える可能性を秘めているのです。

日本発の技術という背景

特筆すべきは、これが日本発の技術だという点です。2009年、桐蔭横浜大学の宮坂力(みやさかつとむ)教授らが、ペロブスカイト材料を太陽電池に応用する研究を発表しました。これが、世界中の研究を一気に加速させる原点になりました。

発表当初の効率はごくわずかでしたが、その後の10年あまりで性能は飛躍的に向上しています。いまや世界の研究機関や企業がしのぎを削る一大分野へと成長しました。日本が生み出した種が世界で花開き、再びその実用化で日本が先頭を走ろうとしている——。そんな物語を背負った技術なのです。

仕組み――結晶構造を「塗ってつくる」発電

名前の由来であるペロブスカイトという結晶構造と、それを「塗ってつくる」という製法に、この電池のユニークさが詰まっています。

塗って重ねた薄い膜で発電する

ペロブスカイト太陽電池の仕組み

☀ 太陽光 ↓

光が当たる透明な電極
ペロブスカイト層光を吸収する結晶。ここで電気のもとが生まれる
電気を取り出す電極 → 電気へ
材料を塗る・印刷する → 低い温度で薄い膜ができる

薄く軽い膜を、塗布や印刷でつくれるのが最大の特徴です。

出典:産業技術総合研究所・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成

ペロブスカイトという結晶構造

「ペロブスカイト」とは、もともと特定の並び方をした結晶構造の名前です。一般にABX3型と表され、3種類の成分が規則正しく組み合わさった結晶。もとは鉱物の名に由来し、太陽電池に使われる材料がこの構造をとることから、こう呼ばれている。

太陽電池では、この構造を持つ材料が光を吸収する層を担う、いわば心臓部。光が当たると、材料のなかで電気のもと(電子)が生まれ、それを電極から取り出すことで発電します。少ない材料で効率よく光を吸収できることが、薄い膜でも高い性能を出せる理由です。

印刷・塗布でつくれる薄い膜

ペロブスカイト太陽電池の真骨頂が、製造プロセスの簡素さです。材料を溶かした液を、基板に塗ったり印刷したりして、比較的低い温度で薄い膜に仕上げられます。

シリコンが、高温・高真空といった大がかりな設備を必要とするのとは対照的です。将来的には、新聞を刷るように、フィルムを連続して流しながら印刷する「ロール・ツー・ロール」方式での量産も期待されています。こうした製法が確立すれば、省資源で低コストな生産につながる可能性があります。塗ってつくるという発想こそ、この電池の可能性の源泉だといえるでしょう。

何がすごいのか――4つの強み

ペロブスカイト太陽電池が世界で注目される理由は、従来のシリコンにはない4つの強み。

シリコンにはない、4つの強み

設置できる場所を一気に広げる特性

1

軽い・薄い

重さや厚みが小さく、扱いやすい。屋根や壁への負担が小さい。

2

曲げられる

フィルム状にでき、曲面にも貼れる。設置の自由度が高い。

3

低照度でも発電

弱い光や室内の明かりでも電気を生む。IoT電源にも。

4

塗ってつくれる

印刷・塗布で省資源・低コスト生産の可能性。

ビルの壁面・曲面・耐荷重の小さい屋根など、これまで置けなかった場所へ。

出典:産業技術総合研究所・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成

軽い・曲がる・低照度でも発電

第一の強みが、軽くて薄く、曲げられることです。フィルムのように加工できるため、重い太陽光パネルを載せられなかった場所にも設置できます。ビルの壁面、曲面の屋根、耐荷重の小さい屋根——。設置できる場所が、一気に広がります。

第二の強みが、低照度でも発電できる点です。曇りの日や、室内の弱い明かりのもとでも電気を生み出せます。この特性は、屋外の大規模発電だけでなく、室内のIoT機器やセンサーの電源といった、新しい用途への道も開きます。シリコンが苦手としてきた領域を、得意とするのです。

高効率とタンデムの可能性

第三の強みが、変換効率の高さです。光を電気に変える効率は、研究室レベルの小さなセルで、シリコン単接合に迫る25%前後まで急速に伸びてきました。登場からの伸びの速さは、ほかの太陽電池に例を見ません。

そして第四が、タンデムの可能性です。これは、ペロブスカイトをシリコンの上に重ねて使う手法を指します。それぞれが異なる波長の光を吸収するため、合わせれば30%を超える効率も報告されています。ただし、これらは小面積の研究用セルの数値で、実際の大きなモジュールでは効率が下がる点には注意が必要です。研究の値と製品の値は、分けて捉えましょう。

シリコン太陽電池との違いと関係

では、いまの主流であるシリコン太陽電池に取って代わるのでしょうか。答えは「補い合う」関係にあります。

置き換えではなく、補い合う

シリコン・ペロブスカイト・タンデムの比較

シリコン

重く硬い

効率と耐久性に実績

広い屋根や地上に向く

ペロブスカイト

軽く曲がる

低照度でも発電

壁面や曲面に向く/耐久性が課題

タンデム(重ねる)

両者を積層

効率をさらに高める

30%超も報告

適材適所で使い分け、重ねて高める。競争相手であり、相棒でもある関係です。

出典:産業技術総合研究所・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成(効率は研究進展で変動)

置き換えではなく補完

結論から言えば、ペロブスカイトはシリコンをすぐに置き換えるものではありません。シリコン太陽電池は、長年の実績で培われた高い効率と耐久性を持ち、広い屋根や地上の発電所では今後も主役であり続けるでしょう。

ペロブスカイトの出番は、シリコンが不得意な場所です。重さや形状の制約で太陽光を置けなかったビルの壁面や曲面に、薄く軽いペロブスカイトを貼る。両者は奪い合うのではなく、それぞれの土俵で活躍する関係にあります。設置の余地が広がれば、国全体の太陽光の総量を押し上げられます。

タンデムで効率を底上げする

さらに注目すべきが、両者を重ねる「タンデム」です。光にはさまざまな波長があり、シリコンとペロブスカイトでは、得意な波長が異なります。そこで二つを積み重ねれば、より多くの光を電気に変えられるわけです。

これは、競争相手だった両者が、手を組んで限界を超えるアプローチだといえます。タンデムは、太陽電池の効率を一段引き上げる切り札として、世界中で研究開発が進む注目の手法。置き換えか共存かという二者択一ではなく、「重ねて高め合う」第三の道が描かれているのです。

立ちはだかる課題

大きな期待の一方で、本格的な普及には越えるべき壁があります。主な課題を整理します。

普及へ、越えるべき4つの壁

効率は有望でも、ここを解いてこそ本格普及

耐久性・寿命

水分・熱・紫外線で劣化しやすい。封止技術で改善中。

大面積化

小さなセルは高効率でも、大型化すると効率が下がりやすい。

鉛の扱い

鉛を含むものが多く、漏れ対策や鉛フリーの研究が進む。

コスト・量産

安定した品質での量産と価格低減が普及のカギ。

期待先行で語らず、課題を一つずつ解く姿勢が欠かせません。

出典:産業技術総合研究所・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成

耐久性と大面積化

最大の課題が、耐久性(寿命)です。ペロブスカイト材料は、水分・熱・紫外線・酸素に弱く、劣化しやすい性質を持ちます。20年以上の使用が当たり前のシリコンに対し、いかに長寿命化するかが問われます。湿気や酸素を遮断する封止(ふうし)技術の改良が、各社で急ピッチに進められているところです。

もう一つが、大面積化の壁です。研究室の小さなセルでは高い効率が出ても、実用的な大きさのモジュールにすると、効率や歩留まりが下がりやすくなります。小さな成功を、大きな製品へとスケールさせる。ここに、研究と量産を隔てる深い谷が横たわっているのです。

鉛・コスト・量産という宿題

次に、鉛(Pb)の問題です。高い性能を出す材料の多くは、有害な鉛を含みます。万一の破損や廃棄の際に漏れ出さないための対策や、鉛を使わない「鉛フリー」材料の研究が、重要なテーマになっています。

そして、コストと量産です。塗ってつくれる強みを生かしても、安定した品質で大量に、安く生産できなければ、市場には広がりません。耐久性・大面積化・鉛・コスト——。効率という点ではすでに有望でも、これらの宿題を一つずつ解いてこそ、本格普及への道が開けます。期待先行で語るのではなく、課題を冷静に見据える姿勢が欠かせません。

日本の量産競争と政策

ペロブスカイト太陽電池は、日本が世界をリードしうる数少ない分野です。その強みと、国を挙げた後押しを見ていきます。

ヨウ素という資源の強み

日本には、この分野で有利な資源の強みがあります。ペロブスカイト材料の主要な原料の一つがヨウ素で、日本はその世界有数の生産国(おおむね世界第2位)なのです。エネルギー資源の多くを輸入に頼る日本にとって、これは大きな意味を持ちます。

加えて、軽くて曲がるという特性は、国土が狭く平地の少ない日本にこそ向くといえるでしょう。広い土地に頼らず、ビルの壁面や狭小な屋根に貼って発電できれば、設置の余地はまだまだあります。発明国としての技術の蓄積と、原料・国土の事情。これらが重なり、いまや日本にとって戦略的に重要な技術。

企業の事業化と国の支援

実用化に向けた競争も、熱を帯びています。国内では、積水化学工業がフィルム型の事業化を進めるなど、パナソニック・東芝・カネカといった企業が、それぞれの強みを生かして開発・実用化に取り組んできました。建材一体型や、ビル壁面向けなど、用途の広がりも見え始めました。

国も、これを強力に後押ししています。2050年カーボンニュートラルや2040年を見据えたGX(グリーントランスフォーメーション)の方針のもと、グリーンイノベーション基金やGX経済移行債などを通じて、量産化と需要の創出を後押し。技術・資源・政策の三つがそろい、日本が再び太陽電池で世界をリードできるか——。その正念場を迎えています。なお、各社の事業化の時期や規模は計画であり、今後変わりうる点には留意が必要です。

ペロブスカイト太陽電池をどう捉えるか

ペロブスカイト太陽電池は、「重くて硬い」という太陽光発電の常識を覆し、設置できる場所そのものを広げる技術です。軽く、曲がり、低照度でも発電し、塗ってつくれる。その特性は、平地の限られた日本で再エネを増やす、現実的な切り札になりえます。シリコンと競うのではなく、補い、重なり合って、太陽光発電の総量を底上げする存在です。

大切なのは、この技術を「夢の万能電池」と持ち上げすぎず、「課題を着実に解きながら実用化へ向かう、有望な発展途上の技術」として捉えることでしょう。発電を担うペロブスカイト、増えた電気を活かす蓄電池や出力制御(カーテイルメント)とは、そして全国へ送る地域間連系線・系統増強とは。つくる技術と、送り・ため・使う仕組みがそろってこそ、再エネは主力になれます。電力システム全体の地図は電力システムまるわかりガイド次世代エネルギー技術ガイドもご覧ください。

日本の研究室で生まれた小さな種が、世界を巡り、いままさに社会を変えようとしている最中です。ペロブスカイト太陽電池の行方は、脱炭素の未来と、日本の産業競争力を映す鏡でもあるのです。なお本記事は、特定の技術・企業・金融商品への投資を推奨するものではなく、技術の現在地と展望を中立に整理したものです。

【2026年の到達点】事業化と効率記録の更新

2026年に入り、ペロブスカイト太陽電池は「研究開発」から「初期市場」の段階へ移りました。積水化学工業が2026年3月にフィルム型の「SOLAFIL」で事業化しています。ただし2026年度は現有設備による限定的な生産量とされ、供給先は補助事業の採択団体などが優先されます。「製品は出たが、まだ誰でも買える段階ではない」というのが実情で、設備投資の計画は2027年度以降を前提に置くのが現実的です。

効率の記録も更新されました。単接合のペロブスカイトはNREL認証で27.3%に達し、ペロブスカイトとシリコンを重ねたタンデム型では35.5%(2026年7月、第三者認証)が報告され、シリコン単独の理論限界を超える領域に入っています。ただし注意したいのは、研究レベルのセル効率と、実際に屋根に貼るモジュールの効率は別だという点です。フィルム型モジュールの効率は15%程度が目安で、事業性の試算はモジュール効率で考える必要があります。

他社の動きも進みます。カネカはタンデム型の商用販売を2028年度めどとし、中国系メーカーの日本市場参入も報じられています。日本発の技術だからといって、日本企業の事業化が世界で先行しているとは限らない点は冷静に見ておく必要があります。

政府の導入目標案と2026年度の補助公募

政府側では、2026年6月に政府関連施設への導入目標案として2035年に50〜70MW、2040年に100MW以上という水準が示されました。なお環境省の調査による政府保有施設のポテンシャルは約9万kWですが、これは施設更新計画を作成中の防衛省施設を含まない数値です。

企業が使える支援としては、環境省が経済産業省・国土交通省と連携して2026年度の導入支援事業を実施しています。

2026年度の導入支援事業(概要)
・公募期間:2026年6月25日〜9月30日正午(中間締切あり)/予算70億円
・補助率:モジュール・付帯設備等 2/3/定置用蓄電池 1/3/交付上限 10億円
・対象:フィルム型・建材一体型のペロブスカイト太陽電池(事前調査・導入計画策定フェーズにも補助あり)
・実施:環境省・経済産業省・国土交通省/執行団体は環境技術普及促進協会(ETA)

参考として、2025年度の環境省補助事業の採択は5件・合計約80kWで、1件平均16kW規模でした。社内で「もう実装フェーズ」と説明すると期待値がずれる段階だという目安になります。

導入を検討する場合、確認の順序は次の5点です。①屋根の形状(当面の事業化対象は金属屋根が中心で、ポテンシャルの大きい陸屋根ほど施工方法が未確立)、②耐久性の定義(「10年相当」が加速試験か屋外実曝露かは公的資料でも明確でなく、調達仕様書での出力保証の書き方が要点)、③発電量の前提(壁面など垂直設置では発電量が落ち、定量的な係数は公的資料に乏しい)、④法令と保証(建築基準法・電気事業法・消防法・労働安全衛生法と、既存屋根の防水保証が施工で失効しないか)、⑤撤去・廃棄と開示(鉛含有でリサイクル制度上の位置づけが未確定。撤去費の負担を契約で決め、自家消費によるScope2削減の算定やRE100TCFD開示での書き方も整理しておく)。

この節の出典:環境省「2026年度フィルム型ペロブスカイト太陽電池導入支援事業」公募(2026年6月25日)環境技術普及促進協会(ETA)公募情報NEDO 施工ガイドライン等/NREL Best Research-Cell Efficiency Chart

よくある質問(FAQ)

Q. ペロブスカイト太陽電池は、シリコン太陽電池を置き換えるのですか?

A. 当面は、置き換えというより「補い合う」関係になると見られています。シリコン太陽電池は効率と耐久性に実績があり、広い屋根や地上設置に適しています。一方ペロブスカイトは、軽く曲げられる特性を生かして、これまで設置が難しかったビルの壁面や曲面、耐荷重の小さい屋根などを担えます。さらに、シリコンの上に重ねる『タンデム』にすれば、両者の良さを足し合わせて効率を高められます。適材適所で使い分け、組み合わせるのが現実的な姿です。

Q. 変換効率はどのくらいですか?

A. 研究室レベルの小さなセルでは、シリコン単接合に迫る25%前後まで効率が向上してきました。さらにシリコンと積層するタンデム構造では、30%を超える効率も報告されています。ただし、これらは小面積の研究用セルの値で、実際に製品となる大面積のモジュールでは、これより効率が下がるのが一般的です。研究と製品の数値は分けて捉えることが大切です。効率は研究の進展により変わります。

Q. いつごろ普及するのですか?

A. 一部の企業で事業化が始まりつつありますが、本格的な普及の時期は、耐久性(寿命)・大面積での量産・コストといった課題をどこまで克服できるかにかかっています。日本はヨウ素という原料の強みや発明国としての蓄積を持ち、政府も量産化を後押ししています。本記事は特定の時期や企業の成否を断定するものではなく、技術の現在地と展望を整理したものです。

最終更新日:2026年6月27日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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サステナビリティ実務・編集統括

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