J-クレジット制度とは|仕組み・方法論と創出から活用までの流れを解説

2026.07.15
気候変動

カーボンニュートラルやカーボンオフセットの話に、必ずといっていいほど登場するのがJ-クレジットです。省エネや森林管理でCO2を減らした「量」を、国がクレジットとして認証する。そのクレジットを企業が売り買いすることで、国内の脱炭素の取り組みが、お金の流れとともに回っていきます。名前は聞くけれど、仕組みはよくわからない。そんな方も多いのではないでしょうか。本記事では、J-クレジット制度とは何か、創出から活用までの流れ、方法論と2つの種類、そして売買の方法までを、公式情報をもとにわかりやすく整理します。

この記事の目次

J-クレジット制度とは(おさらい)

まず、J-クレジット制度がどのような仕組みで、何を認証するのかを整理しましょう。

減らした量、吸収した量を、国が認証する

省エネ・再エネによるCO2の排出削減量
森林管理によるCO2の吸収量
国が認証
J-クレジット(売買できる)

経済産業省・環境省・農林水産省が共同で運営する制度。

出典:J-クレジット制度事務局の情報をもとにgreenote作成

国が認証する削減・吸収のクレジット

J-クレジット制度とは、省エネや再生可能エネルギーによるCO2などの排出削減量、そして適切な森林管理などによるCO2の吸収量を、「クレジット」として国が認証する制度です。ここでいうクレジットとは、削減・吸収した量を、取引できる形にしたものを指します。

ポイントは、削減や吸収の「量」に、公的なお墨付きを与える点にあります。認証されたクレジットは、他の企業などに売ることができます。CO2を減らした人が対価を得て、埋め合わせたい人がそれを買う。この仕組みによって、国内の脱炭素の取り組みに、資金が回るようになるのです。

3省による運営と信頼性

J-クレジット制度は、経済産業省・環境省・農林水産省の3省が共同で運営しています。国が関わることの意味は小さくありません。海外には民間主導のクレジットも数多くありますが、それらと比べて、算定方法や審査が厳格で、信頼性が高いとされます。

この制度は、2013年度に始まりました。それまであった「国内クレジット制度」と「J-VER制度」という2つの制度を、一本化して生まれたものです。以来、家庭や中小企業、自治体などの取り組みを後押しし、国内で環境と経済を両立させる仕組みとして育ってきました。カーボンクレジット全般の考え方は、関連記事のカーボンクレジットとはもあわせてご覧ください。

クレジット創出から活用までの流れ

J-クレジットは、どのように生まれ、使われるのでしょうか。基本の流れを見ていきましょう。

創り出す人と、使う人をつなぐ

1

創出者が実施

方法論に沿って削減・吸収

2

審査と国の認証

第三者審査を経て認証

3

クレジット発行

量に公的なお墨付き

4

購入者が活用

オフセットや報告に

売り手は資金を得て、買い手は環境貢献を示せる

出典:J-クレジット制度事務局の情報をもとにgreenote作成

J-クレジットの流れは、大きく4つの段階に分けられます。まず、削減や吸収に取り組む事業者、いわば創出者が、決められた方法論に沿ってプロジェクトを実施します。省エネ設備を入れる、森林を適切に管理する、といった取り組みです。

次に、その削減・吸収量が、第三者機関の審査と国の認証を経て、クレジットとして発行されます。ここで、量に公的なお墨付きが付くわけです。発行されたクレジットは、他の企業などの購入者が買い取る。そして購入者は、そのクレジットを自社のCO2排出の埋め合わせや、各種制度への報告などに活用する。創出者は資金を得て、購入者は環境貢献を示せる。この関係が、制度の土台になっています。

方法論と2つの種類(削減系・吸収系)

J-クレジットの土台となるのが「方法論」です。クレジットの種類とあわせて整理します。

ルールに沿って、減らすか、吸収するか

方法論=削減・吸収量を算定するためのルール。省エネ・再エネ・工業プロセス・農業・廃棄物・森林など分野別に多数(2023年11月時点で約70)

削減系

省エネや再エネで、CO2の排出を減らした量。

吸収系

森林管理や植林で、CO2を吸収した量。供給が少なく価格は高め。

出典:J-クレジット制度事務局の情報をもとにgreenote作成

方法論とは

方法論とは、どのような取り組みで、どれだけの削減・吸収があったのかを算定するためのルールのことです。誰がやっても同じように量を計算できるよう、手順が細かく定められている。省エネ、再生可能エネルギー、工業プロセス、農業、廃棄物、森林など、分野ごとに多数の方法論が用意されている。2023年11月時点で、その数はおよそ70にのぼる。

プロジェクトは、このいずれかの方法論に沿って実施します。そして、手順どおりに削減・吸収量を算定・報告することで、クレジットの認証を受けられるのです。方法論という共通のものさしがあるからこそ、クレジットの品質がそろい、安心して取引できます。

削減系と吸収系

J-クレジットには、大きく2つの種類がある。ひとつが、削減系のクレジットです。省エネ設備の導入や再エネの活用などによって、CO2の排出を「減らした」量にもとづく。もうひとつが、吸収系のクレジットになります。こちらは、適切な森林管理や植林によって、CO2を「吸収した」量にもとづくものです。

両者は、供給量や価格に違いがあります。吸収系、とくに森林由来のクレジットは、供給が比較的少なく、価格が高めになる傾向がある。森林の吸収の詳しい仕組みは、関連記事の森林クレジットとはもあわせてご覧ください。目的や予算に応じて、どちらの種類を使うかを選ぶことになります。

クレジットの売買と市場

生まれたクレジットは、どのように取引されるのでしょうか。売買の方法を見ていきます。

3つの売買のかたち

相対取引

売り手と買い手が直接交渉して決める。

入札販売

国などが実施する入札で売買する。

取引所

2023年に東京証券取引所にカーボン・クレジット市場が開設。

取引所の登場で、価格の透明性が高まり参加しやすくなった。

出典:J-クレジット制度事務局・東京証券取引所の情報をもとにgreenote作成

J-クレジットの売買には、主に3つの方法がある。第一が、相対取引です。売り手と買い手が直接交渉して、価格や量を決める方法になります。もっとも基本的なかたちです。第二が、入札販売です。国などが売り手となり、入札を通じてクレジットを販売します。

そして第三が、取引所を通じた売買です。2023年には、東京証券取引所にカーボン・クレジット市場が開設され、J-クレジットが売買できるようになりました。この取引所の登場は、大きな意味を持ちます。誰でも価格を見られるようになり、透明性が高まったのです。これにより、これまで取引に不慣れだった企業も、より参加しやすくなりました。

創出者・購入者それぞれのメリット

J-クレジットは、売り手と買い手の双方にメリットがあります。それぞれ整理します。

売り手にも、買い手にも

創出者(売り手)

  • クレジット売却による収入
  • 環境の取り組みのPR
  • 取引を通じた新たなネットワーク

購入者(買い手)

  • CO2排出のオフセット
  • 脱炭素の姿勢のアピール
  • 各種制度での目標達成

出典:J-クレジット制度事務局の情報をもとにgreenote作成

まず、クレジットを生み出す創出者(売り手)のメリットです。最大の利点は、クレジットの売却による収入が得られることです。省エネや森林管理の取り組みが、そのまま資金へとつながる。加えて、環境への取り組みをPRできること、そして取引を通じて新たなネットワークが広がることも、見逃せない利点だ。

一方、クレジットを買う購入者(買い手)にもメリットがあります。自社でどうしても減らせないCO2排出を、埋め合わせ(オフセット)できることです。それによって、脱炭素への姿勢を対外的にアピールでき、後述する各種制度での目標達成にも役立ちます。売り手と買い手、双方に得がある。だからこそ、この仕組みは回っていくのです。

活用先と注意点

購入したクレジットは、さまざまな場面で活用できます。あわせて注意点も押さえましょう。

使い道と、気をつけること

主な活用先

温対法・省エネ法などの報告
SBTやCDPへの活用
カーボンオフセット・CN宣言
RE100(再エネ由来クレジット)
二重計上を避ける売り手と買い手の双方が自社実績として数えない
削減が先自社の削減努力を尽くしたうえでの埋め合わせ手段

出典:環境省・J-クレジット制度事務局の情報をもとにgreenote作成

J-クレジットの活用先は、幅広く広がっています。温対法や省エネ法にもとづく国への報告に使えるほか、SBTやCDPといった国際的な枠組みへの活用も進んでいます。国境を越えたクレジットの土台としてはパリ協定6条があります。さらに、自社のカーボンオフセットやカーボンニュートラル宣言の裏づけとして使われることも増えました。再エネ由来のクレジットは、RE100の達成に活用されることもある。

一方で、注意点もあります。第一が、二重計上を避けることです。同じ削減・吸収量を、売り手と買い手の双方が自社の実績として数えてしまえば、見かけ上の削減が二重になってしまう。第二が、削減が先という原則です。クレジットの購入は、あくまで自社でできる削減努力を尽くしたうえで、残る排出を埋め合わせる手段と位置づけるのが基本になります。クレジット頼みにならない姿勢が欠かせません。この考え方は、関連記事のカーボンオフセットとはもあわせてご覧ください。

まとめ|J-クレジットは国内の脱炭素をつなぐ仕組み

J-クレジット制度は、国内の脱炭素の取り組みを、資金の流れでつなぐ仕組みです。最後に、要点を振り返りましょう。

  • J-クレジット制度とは、省エネ・再エネの排出削減量や森林の吸収量を、国がクレジットとして認証する制度。3省が共同運営
  • 2013年度に国内クレジット制度とJ-VER制度を一本化。算定・審査が厳格で信頼性が高い
  • 流れは創出→審査・認証→発行→活用。売り手は資金を得て、買い手は環境貢献を示せる
  • 方法論(約70)に沿って算定。削減系(省エネ・再エネ)と吸収系(森林)の2種類がある
  • 売買は相対取引・入札・東証のカーボン・クレジット市場(2023年開設)。注意点は二重計上の回避と「削減が先」

J-クレジットは、地道な削減や吸収の努力を、目に見える価値へと変える仕組みです。減らした人が報われ、その資金がまた次の取り組みを生む。この好循環こそが、制度のねらいです。クレジットに頼りきるのではなく、まず自ら減らす。その原則を守りながら賢く活用することが、確かな脱炭素への道になります。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. J-クレジット制度とは何ですか?

A. J-クレジット制度とは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2などの排出削減量、そして適切な森林管理によるCO2の吸収量を、「クレジット」として国が認証する制度です。認証されたクレジットは、他の企業などに売買できます。経済産業省・環境省・農林水産省が共同で運営しており、国が関わることで、算定方法や審査の信頼性が高いのが特徴です。2013年度に、従来の国内クレジット制度とJ-VER制度を一本化して始まりました。

Q. J-クレジットはどのように創出・活用されますか?

A. まず、削減や吸収に取り組む事業者(創出者)が、決められた方法論に沿ってプロジェクトを実施します。その削減・吸収量が第三者の審査と国の認証を経て、クレジットとして発行されます。発行されたクレジットは、他の企業(購入者)が買い取り、自社のCO2排出の埋め合わせ(オフセット)や、各種制度への報告などに活用します。売り手は資金を得て、買い手は環境貢献を示せる、という関係です。

Q. J-クレジットの「方法論」とは何ですか?

A. 方法論とは、どのような取り組みで、どれだけの削減・吸収があったかを算定するためのルールです。省エネ、再生可能エネルギー、工業プロセス、農業、廃棄物、森林など、分野ごとに多数の方法論が定められています。2023年11月時点で約70の方法論があります。プロジェクトは、いずれかの方法論に沿って実施し、その手順どおりに削減・吸収量を算定・報告することで、クレジットの認証を受けられます。

Q. J-クレジットの削減系と吸収系の違いは何ですか?

A. 削減系クレジットは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用などによって、CO2などの排出を「減らした」量にもとづくものです。一方、吸収系クレジットは、適切な森林管理や植林などによって、CO2を「吸収した」量にもとづきます。吸収系(森林由来)は供給量が比較的少なく、価格が高めになる傾向があります。目的や予算に応じて、どちらのクレジットを使うかを選びます。

Q. J-クレジットはどこで売買できますか?

A. 売買の方法は主に3つあります。1つ目は、売り手と買い手が直接交渉する「相対取引」です。2つ目は、国などが実施する「入札販売」です。そして3つ目が、取引所を通じた売買で、2023年には東京証券取引所にカーボン・クレジット市場が開設され、J-クレジットが売買できるようになりました。取引所の登場により、価格の透明性が高まり、より参加しやすくなっています。

Q. J-クレジットを使うときの注意点は何ですか?

A. 主な注意点は2つあります。1つ目は「二重計上を避ける」ことです。同じ削減・吸収量を、売り手と買い手の双方が自社の実績として数えてしまうと、見かけ上の削減が二重になってしまいます。2つ目は「削減が先」という原則です。クレジットの購入は、自社でできる削減努力を尽くしたうえでの、残りの排出を埋め合わせる手段と位置づけるのが基本です。クレジット頼みにならない姿勢が求められます。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月15日

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