電気は、つくる量と使う量が常にぴったり一致していないと、周波数が乱れて停電につながります。とはいえ、需要も再生可能エネルギーの出力も、刻一刻と変わります。このズレを瞬時に埋めているのが「調整力」であり、それを取引するのが需給調整市場です。
需給調整市場とは、周波数を保つために必要な調整力を、全国大で取引する市場を指します。2021年に始まったばかりの、比較的新しい市場です。
本記事では、需給調整市場の役割から、調整力の5つの商品区分、取引の仕組み、火力から蓄電池・VPPまで広がる担い手、そして卸電力市場や容量市場との違いまでを、わかりやすく解説します。電力・エネルギーを学ぶ特集の調整力編として、お役に立てれば幸いです。
調整力とは|需給のズレを瞬時に埋める
需要も供給も刻々と変わる。そのズレを埋めて周波数を保つ
需要
気温・時間帯で
刻々と変動
供給
再エネの出力で
刻々と変動
調整力
需要と供給のズレを、発電量や需要量を増減させて瞬時に埋める。
電気は大量に貯められないため、需要と供給は常に一致(同時同量)が必要です。調整力は、その一致を支える「余力」です。
≡この記事の目次
- 1需給調整市場とは|調整力を取引する市場
- ►需給調整市場とは
- ►調整力とは何か
- ►なぜ市場で調達するのか
- 25つの商品区分|応動時間で分かれる調整力
- ►一次・二次・三次の全体像
- ►応動時間と継続時間で分類
- ►2024年度に全商品が出そろう
- 3商品要件と複合商品|ΔkW・上げ下げ調整力・入札の実務
- ►ΔkW(デルタキロワット)とは
- ►商品要件の一覧|応動時間・継続時間・導入年
- ►上げ調整力と下げ調整力
- ►複合商品とは|まとめて入札する仕組み
- 4どう取引されるのか|取引の仕組み
- ►全国大での広域調達
- ►kW価格とkWh価格
- ►ゲートクローズと前日・当日取引
- 5調整力の担い手|火力からVPP・蓄電池まで
- ►火力・揚水という従来の担い手
- ►蓄電池の参入
- ►VPP・DRとアグリゲーター
- 6卸市場・容量市場との違い
- ►卸電力市場との違い
- ►容量市場との違い
- ►3つの市場の役割分担
- 7まとめ|需給調整市場は再エネ時代の安定供給を支える
需給調整市場とは|調整力を取引する市場
まずは、需給調整市場という言葉の意味と、調整力を市場で調達する理由を押さえましょう。ここが分かると、電力の安定供給を支える裏側が見えてきます。
需給調整市場とは
需給調整市場は、電気の周波数を保つための調整力を、売り買いする場です。調整力を提供したい事業者が応札し、必要とする一般送配電事業者が調達します。
電気の周波数は、需要と供給が一致しているときに、東日本なら50Hz、西日本なら60Hzに保たれます。この一致が崩れると周波数がずれ、機器の不調や、最悪の場合は大規模停電を招きかねません。だからこそ、ズレを瞬時に補う調整力が欠かせないのです。電力システムの安定を、陰で支える存在といえます。
調整力とは何か
調整力とは、需要と供給のズレを埋めるために、発電量や需要量を増やしたり減らしたりする能力のことです。
たとえば、急に気温が上がって冷房需要が跳ね上がったとします。このとき、待機していた発電機の出力を上げて供給を増やせば、需給は再び一致するわけです。逆に、太陽光の出力が雲で急に落ちたときは、別の電源がその穴を埋めます。こうした「いざというときに動かせる余力」が、調整力の正体です。発電を増やす方向だけでなく、需要を減らす方向の調整も含まれます。
なぜ市場で調達するのか
かつて調整力は、各エリアの送配電事業者が、自社の管内で個別に確保していました。しかし、それでは地域ごとに余力が偏り、コストも割高になりがちでした。
そこで、電力システム改革による発送電分離を背景に、調整力を競争的に調達する仕組みへと舵が切られたのです。全国の事業者が応札し、安い調整力から順に約定する。この方式なら、社会全体のコストを抑えながら、必要な調整力を確保できます。発送電分離の経緯は、関連記事の電力システム改革とは|3つの柱・小売自由化と発送電分離もあわせてご覧ください。
5つの商品区分|応動時間で分かれる調整力
調整力と一口にいっても、求められる速さはさまざまです。需給調整市場では、5つの商品に区分されています。
一次・二次・三次の全体像
調整力は、応答の速い順に、一次調整力・二次調整力・三次調整力と呼ばれます。さらに二次と三次はそれぞれ2種類に分かれ、全部で5つの商品です。
イメージとしては、リレーのようなものです。需給がずれた瞬間、まず最も速い一次調整力が反応します。続いて二次調整力が引き継ぎ、最後に三次調整力が長めの時間を支える。こうして役割をバトンタッチしながら、周波数を保ち続けているのです。
調整力の5つの商品区分
応動時間(動き出す速さ)が速い順に並べる
速い調整力ほど技術的なハードルが高く、2021年4月の三次②から段階導入。全商品が出そろったのは2024年度です。
応動時間と継続時間で分類
5つの商品を分けるものさしは、主に二つあります。指令を受けてから動き出すまでの速さを示す応動時間と、出力を維持できる継続時間です。
最も速い一次調整力は、10秒以内に応動します。次の二次調整力は5分以内、三次調整力①は15分以内、三次調整力②は60分以内と、段階的にゆるやかになります(三次②は当初45分以内でしたが、現行の要件では60分以内に見直されています)。瞬時のブレには速い調整力、数十分かけて変わる変動には遅い調整力を割り当てる。こうして、過不足なく効率的に需給を整える狙いです。
2024年度に全商品が出そろう
需給調整市場は、いきなり全商品が始まったわけではありません。まず2021年4月に、応動のゆるやかな三次調整力②から取引がスタートしました。
その後、商品は段階的に追加されていきました。応答の速さが求められ、技術的なハードルも高い一次調整力や二次調整力を含め、すべての商品の取引が始まったのは2024年度のことです。これにより、瞬時から数十分までの幅広い調整力が、全国大の市場で取引される体制が整いました。
商品要件と複合商品|ΔkW・上げ下げ調整力・入札の実務
ここからは一歩踏み込んで、実際に入札を検討するときに必ず出てくる4つのキーワード——ΔkW(デルタキロワット)・商品要件・上げ下げ調整力・複合商品——を整理します。制度資料を読むときの「用語の壁」を越えるための章です。
ΔkW(デルタキロワット)とは|「調整できる幅」を売買する
需給調整市場で取引されているのは、電気そのものではなくΔkW(デルタキロワット)=出力を上げ下げできる「幅」です。たとえば「いま80で運転している発電機を、指令があれば100まで上げられる」なら、その20の幅がΔkWにあたります。
電気の価値を表す単位は3つを区別すると理解が進みます。kWは発電できる能力(容量市場で取引)、kWhは実際に発電した電力量(卸電力市場で取引)、そしてΔkWは需給の変動に合わせて動かせる調整幅(需給調整市場で取引)です。前述の「kW価格・kWh価格」の章で見たとおり、ΔkWとして待機した分にはΔkW価格(待機への対価)が、実際に動いた分にはkWh価格(稼働への対価)が支払われます。
商品要件の一覧|応動時間・継続時間・導入年
5つの商品それぞれに、満たすべき商品要件が定められています。中心となるのは「どれだけ速く動けるか(応動時間)」と「どれだけ維持できるか(継続時間)」の2つです。電力需給調整力取引所(EPRX)が公表している現行の要件は次のとおりです。
| 商品 | 応動時間 | 継続時間 | 主に対応する変動 | 取引開始 |
|---|---|---|---|---|
| 一次調整力 FCR | 10秒以内 | 5分以上 | 極短周期の変動・電源脱落 | 2024年4月 |
| 二次調整力① S-FRR | 5分以内 | 30分 | 短周期の時間内変動・電源脱落 | 2024年4月 |
| 二次調整力② FRR | 5分以内 | 30分 | 長周期の予測誤差 | 2024年4月 |
| 三次調整力① RR | 15分以内 | 30分 | ゲートクローズ後の需要・再エネ予測誤差、電源脱落 | 2022年4月 |
| 三次調整力② RR-FIT | 60分以内 | 30分 | FIT特例を利用する再エネの予測誤差 | 2021年4月 |
※EPRX「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール」第6版(2026年3月13日更新)に基づく。要件は制度見直しで変わることがあります(例:三次②の応動時間は当初の45分以内から60分以内へ、継続時間は3時間ブロックの時代から30分へ見直し)。
このほかにも、参入できるかどうかを左右する要件が商品ごとに決まっています。とくに効いてくるのが通信回線と最低入札量です。
| 商品 | 指令・制御 | 必要な回線 | 並列 |
|---|---|---|---|
| 一次調整力 | オフライン(自端制御) | 専用線のみ (オフライン監視なら不要) | 必須 |
| 二次調整力① | オンライン(LFC信号) | 専用線のみ | 必須 |
| 二次調整力② | オンライン(EDC信号) | 専用線 または 簡易指令システム | 任意 |
| 三次調整力① | オンライン(EDC信号) | 専用線 または 簡易指令システム | 任意 |
| 三次調整力② | オンライン | 専用線 または 簡易指令システム | 任意 |
注目したいのは回線の違いです。一次調整力と二次調整力①は専用線が必須で、二次調整力②以降は簡易指令システムでも参加できます。専用線は設備投資が重いため、アグリゲーターや蓄電池が入りやすいのは三次側からになります。並列(発電機を系統につないで運転している状態)が必須なのも、一次と二次①だけです。
入札の単位は全商品で共通です。最低入札量は1MW、刻み幅は1kW、入札の時間単位は30分です。1MWに届かないリソースは単独では入札できないため、アグリゲーターが複数の需要家や蓄電池を束ねて1つの入札にする形になります。ここが、VPPという事業が成り立つ制度的な理由です。
上げ調整力と下げ調整力|再エネ時代は「下げ」も主役
調整力には方向が2つあります。上げ調整力は電気が足りないときに出力を増やす(または需要を減らす)力、下げ調整力は電気が余るときに出力を減らす(または需要を増やす)力です。
ここは正確に押さえておきたいところです。商品の区分としては上げ・下げの両方が定められていますが、EPRXの商品仕様書(第6版)には「現行は上げ区分のみ調達」と明記されています。つまり下げ調整力は、制度の枠は用意されているものの、市場での調達がまだ始まっていません。「上げと下げの両方が取引されている」と書かれた解説を見かけますが、2026年9月時点の実態は上げだけです。
かつて調整力といえば「足りないときに備える上げ」が中心でした。しかし太陽光が大量に入った現在は、晴れた昼間に電気が余る「下げ不足」も深刻な課題になっています。再エネの出力制御を減らすうえでも、余った電気を吸収できる下げ調整力の確保は重要性を増しています。需給調整市場で下げをどう調達するかは、残された制度設計の論点です。
ここで強みを発揮するのが蓄電池です。放電すれば上げ、充電すれば下げと、1つのリソースで両方向の調整力を提供できるためです。揚水発電も同じ性質を持ちます。下げ調整力の受け皿が増えることは、再エネをより多く受け入れられる系統づくりに直結します。
複合商品とは|一次〜三次①をまとめて入札する仕組み
複合商品とは、一次調整力・二次調整力①②・三次調整力①の4商品を、1つの入札でまとめて応札できる仕組みです。独立した6つ目の商品があるわけではなく、「束ねて入札する方式」の呼び名である点がポイントです(三次調整力②は含まれず、別枠の前日商品として取引されます)。
背景には「不等時性」という考え方があります。一次〜三次①の各商品が必要になるタイミングは常に一致するわけではなく、また火力や蓄電池のように複数の商品要件を同時に満たせるリソースも存在します。そこで、複数商品への応札を組み合わせて全体の調達費用が最も安くなるように約定させる「複合約定ロジック」が採用されました。約定は安い順に積み上げられ、要件の厳しい高速な商品から順に充足されていきます。
取引のスケジュールは、複合市場商品(一次〜三次①)が実需給の前日11時30分〜14時に入札を受け付け、15時までに約定処理という流れです。さらに2026年度以降は、取引単位を30分コマに統一し、調整力の必要量も30分単位で算定する運用への移行が広域機関で進められています。細かい時間単位での取引に対応できるかどうかが、応札事業者の新たな腕の見せどころになりつつあります。
どう取引されるのか|取引の仕組み
需給調整市場では、調整力がいつ、どのように売買されるのでしょうか。広域調達と価格の仕組みを見ていきます。
全国大での広域調達
需給調整市場の大きな特徴は、エリアの垣根を越えて、全国から調整力を調達する点にあります。「広域需給調整システム」と呼ばれる仕組みが、これを支えています。
あるエリアで調整力が足りなくても、連系線を通じて、余力のある別のエリアから融通できます。安い調整力から順に使うため、地域ごとに個別調達していた時代より、コストを抑えやすくなりました。電気そのものの流れと同じく、調整力もまた、全国でやりくりされる時代に入ったのです。
ただし「全国」には例外があります。沖縄エリアは他のエリアと連系線でつながっていない独立系統のため、調整力の広域調達も広域運用もできません。そのため沖縄では2024年度以降も、需給調整市場ではなく従来の調整力公募が続いています。電力広域的運営推進機関は毎年その必要量の考え方を示しており、2027年度向けの検討結果は2026年6月24日に公表されました。「市場で全国調達」という原則と、系統がつながっていない地域の現実は、分けて理解しておくと正確です。
kW価格とkWh価格
需給調整市場の対価は、二段構えになっています。一つは、調整力をいつでも出せるよう待機しておくことへの対価であるkW価格(ΔkW価格)です。
もう一つが、実際に発電や需要調整を行った電力量に対して支払われるkWh価格です。たとえるなら、kW価格は「待機料」、kWh価格は「出来高払い」にあたります。事業者は、ただ余力を確保しておくだけでも、実際に動いたときにも、それぞれ報酬を受け取れる仕組みです。
ゲートクローズと前日・当日取引
調整力の取引は、前日から当日にかけて行われます。事業者が応札できる期限を、ゲートクローズと呼びます。
ゲートクローズは実際に電気を使う1時間前で、発電・需要計画の提出期限にあたります。需給調整市場の役割は、このゲートクローズより後に生じる変動に備えることです。そのための調整力(ΔkW)の応札は実需給の前日に行われ、複合市場商品(一次〜三次調整力①)は前日の11時30分から14時までに入札を受け付け、15時までに約定処理される流れです。卸電力市場の仕組みは、関連記事の電力市場とは|JEPXのスポット市場・価格の決まり方と高騰の理由もあわせてご覧ください。
調整力の担い手|火力からVPP・蓄電池まで
調整力を提供するのは、大きな発電所だけではありません。担い手は、いま大きく広がりつつあります。
火力・揚水という従来の担い手
調整力の主役を長く務めてきたのが、火力発電と揚水発電です。どちらも、出力を機動的に増減できる点が強みです。
とりわけ揚水発電は、電気が余るときに水をくみ上げ、足りないときに放水して発電する、いわば巨大な蓄電池のような存在です。需給のバランスを取るうえで、欠かせない役割を担ってきました。火力も、出力をこまめに調整できるため、いまも調整力の中心です。
調整力の担い手の広がり
従来の発電所に加え、蓄電池や需要側へ
出力をこまめに増減でき、調整力の中心。
水をくみ上げ・放水。巨大な蓄電池の役割。
一瞬で充放電を切替。最速の一次にも対応。
蓄電池やEV・需要を束ねて提供(アグリゲーター)。
再エネの変動が大きくなるほど、調整力の重要性は増します。担い手は多様化が進んでいます。
蓄電池の参入
近年、新たな担い手として急速に存在感を増しているのが、大型の蓄電池です。送電網につなぐこうした蓄電池は、系統用蓄電池と呼ばれます。
蓄電池の強みは、その反応の速さにあります。指令を受けてから一瞬で充放電を切り替えられるため、最も速い一次調整力にも対応できます。再生可能エネルギーが余る時間帯にためておき、足りない時間帯に放出する。そんな柔軟な使い方ができる点でも、調整力として大きな期待を集める存在です。
VPP・DRとアグリゲーター
担い手の広がりは、供給側だけにとどまりません。需要側の機器も、調整力になり得ます。ここで登場するのが、VPP(仮想発電所)とDR(デマンドレスポンス)です。
VPPは、各地に点在する蓄電池やEV、自家発電などを、通信で束ねて一つの発電所のように制御する仕組みを指します。DRは、工場や家庭の電気の使い方を増減させて、需給を調整します。これらを取りまとめ、市場へつなぐ事業者が、アグリゲーターです。小さな調整力を集めて大きな力に変えるこの仕組みは、再エネ時代の鍵を握っています。VPPやDRについては、特集の別記事でくわしく取り上げます。
卸市場・容量市場との違い
電力にはいくつもの市場があり、混同しがちです。需給調整市場が、卸電力市場や容量市場と何が違うのかを整理します。
3つの電力市場の違い
取引する「対象」と「時間軸」で役割を分担
電気そのもの(電力量)
前日・当日に売買
将来の発電できる能力
約4年先を前もって確保
需給のズレを埋める調整力
リアルタイムに近い直前
3つは競合せず、役割を分担して電力システムを支えます。本記事のテーマは、リアルタイムを担う需給調整市場です。
卸電力市場との違い
卸電力市場、たとえばJEPXのスポット市場で取引されるのは、実際に使う電気そのもの、つまり電力量(kWh)です。「明日の昼に使う電気を、いくらで買うか」を決める市場といえます。
一方、需給調整市場で取引されるのは、電気そのものではなく、需給のズレを埋める調整力です。いわば、卸電力市場が「電気の売買」なら、需給調整市場は「バランスを保つ力の売買」にあたります。両者は補い合う関係といえます。
容量市場との違い
容量市場は、将来にわたって必要な発電設備を確保しておくための市場です。取引されるのは、「いざというときに発電できる能力(kW)」であり、4年先の供給力を前もって押さえておきます。
これに対し需給調整市場は、もっと直前、リアルタイムに近い時間軸で、需給のズレを埋める調整力を取引します。容量市場が「将来の備え」なら、需給調整市場は「今この瞬間の調整」を担うわけです。時間軸の違いこそ、両者を分ける大きなポイントです。
3つの市場の役割分担
整理すると、3つの市場はそれぞれ別のものを取引しています。卸電力市場は電気そのもの(kWh)、容量市場は将来の発電能力(kW)、需給調整市場はリアルタイムの調整力(ΔkW)です。
これらは競合するものではなく、役割を分担しながら、電力システム全体を支えています。複数の市場が組み合わさることで、安定供給と効率的なコストの両立がはかられているのです。
まとめ|需給調整市場は再エネ時代の安定供給を支える
需給調整市場は、周波数を保つ調整力を全国大で取引する、新しい市場です。最後に、要点を振り返りましょう。
- 需給調整市場とは、同時同量を保つための調整力を全国大で取引する市場である
- 調整力は応動時間に応じて5つの商品に分かれ、一次は10秒以内、三次②は60分以内に応動する
- 2021年4月に三次②から始まり、全商品が出そろったのは2024年度である
- 対価は待機へのkW価格と出来高のkWh価格の二段構えで、実需給1時間前のゲートクローズまで取引される
- 担い手は火力・揚水から蓄電池・VPP・DRへ広がり、卸市場・容量市場とは取引対象と時間軸で役割を分ける
再生可能エネルギーが増えるほど、出力の変動は大きくなり、それを吸収する調整力の価値は高まります。需給調整市場は、再エネ時代の安定供給を市場の力で支える、重要な土台といえるでしょう。再エネ電力の調達は再生可能エネルギー調達とPPAとは|調達手法の種類と企業の選び方、ESG・脱炭素の全体像はESGとは|意味・E/S/G・情報開示・投資まで完全ガイドもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 需給調整市場とは何ですか?
A. 需給調整市場とは、電気の周波数を保つために必要な「調整力」を全国大で取引する市場です。2021年に始まった比較的新しい市場で、調整力を提供したい事業者が応札し、一般送配電事業者が調達します。
Q. 調整力とは何ですか?
A. 調整力とは、需要と供給のズレを埋めるために発電量や需要量を増やしたり減らしたりできる能力のことです。急な冷房需要の増加や、雲による太陽光出力の低下などに対し、いざというときに動かせる余力を指します。
Q. 調整力の5つの商品区分とは何ですか?
A. 応答の速い順に一次調整力・二次調整力(①②)・三次調整力(①②)の5商品に区分されます。応動時間は一次が10秒以内、二次が5分以内、三次①が15分以内、三次②が60分以内で、瞬時のブレには速い調整力、緩やかな変動には遅い調整力を割り当てます。
Q. 需給調整市場の全商品はいつ出そろいましたか?
A. まず2021年4月に応動のゆるやかな三次調整力②から取引が始まり、段階的に商品が追加されました。技術的なハードルが高い一次・二次調整力を含め、すべての商品の取引が始まったのは2024年度です。
Q. なぜ調整力を市場で調達するのですか?
A. かつては各エリアの送配電事業者が個別に確保していましたが、地域ごとに余力が偏りコストも割高でした。電力システム改革による発送電分離を背景に、全国から安い調整力を順に約定する競争的な調達に切り替え、社会全体のコストを抑えています。
Q. 卸電力市場・容量市場とは何が違いますか?
A. 卸電力市場は電気そのもの(電力量・kWh)、容量市場は将来の供給力(kW)を取引します。これに対し需給調整市場は、リアルタイムで周波数を保つための調整力を取引する点が異なります。
Q. 複合商品とは何ですか?
A. 一次調整力・二次調整力①②・三次調整力①の4商品を1つの入札でまとめて応札できる仕組みです。独立した商品区分ではなく、複数商品を束ねる入札方式を指します。全体の調達費用が最も安くなるよう「複合約定ロジック」で約定され、三次調整力②は含まれず別枠の前日商品として取引されます。
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出典・参考(一次情報)
- 電力広域的運営推進機関(OCCTO)「需給調整市場の検討・詳細設計」
- OCCTO「需給調整市場検討小委員会」(商品の詳細設計の審議)
- OCCTO「2027年度向け調整力の公募にかかる必要量等の検討結果について」(2026年6月24日・沖縄エリアの調整力公募)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場とは」
- EPRX「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール」第6版(2026年3月13日・PDF)
※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。
最終更新日:2026年9月13日