村田製作所のESG経営を分析|RE100前倒しと電子部品の環境責任

2026.07.18
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

電子部品国内

スマートフォンの中に、1000個以上。電気自動車には、1万個以上。私たちの身のまわりの電子機器には、ごく小さな部品が、数えきれないほど詰まっている。その代表的な部品で世界首位を走るのが、村田製作所(Murata)です。地味な存在に思えるかもしれません。しかし同社は、脱炭素で驚くほど野心的な目標を掲げています。本記事では、電子部品メーカーのESG経営を、RE100の前倒しと製品を通じた貢献を軸に、公式情報をもとに中立に分析します。

この記事の目次

01

村田製作所のESG経営とは|電子部品から地球を考える

まず、村田製作所がどんな企業で、そのESG経営がなぜ重要なのかを整理しましょう。

小さな部品に、大きな責任

村田製作所MLCCなどの電子部品で世界首位
使われる場所スマートフォン・自動車・データセンターなど、あらゆる電子機器

部品メーカーとして、サプライチェーンの一員の環境責任を担う。

出典:村田製作所の公表情報をもとにgreenote作成

MLCCで世界首位の電子部品メーカー

村田製作所は、京都に本拠を置く、世界的な電子部品メーカーです。とりわけ有名なのが、MLCC(積層セラミックコンデンサ)という部品になります。電気をためたり、流したりを細かく調整する、電子回路に欠かせない部品です。村田製作所は、このMLCCで世界首位のシェアを持ちます。

MLCCは、とても小さな部品です。しかし、その用途は広大です。スマートフォンや自動車、データセンターなど、あらゆる電子機器に、数多く使われている。目立たないけれど、なくてはならない。現代のエレクトロニクスを、足元から支える存在なのです。

部品メーカーだからこその環境責任

「部品メーカーに、そこまでの環境責任があるのか」。そう思う人もいるかもしれません。しかし、答えは明確です。むしろ、部品メーカーだからこそ、責任が重くなります。

理由は、サプライチェーンにあります。スマートフォンや自動車のメーカーは、自社だけでなく、部品の調達まで含めたサプライチェーン全体(Scope3)の排出削減を進めています。つまり、部品の製造で出るCO2も、最終製品の排出の一部として問われるのです。村田製作所のような部品メーカーの脱炭素は、その先にいる多くの企業の脱炭素に直結する。サプライチェーン排出の考え方は、関連記事のScope3とはもあわせてご覧ください。

02

脱炭素目標|RE100を2035年度へ15年前倒し

村田製作所のESG経営を象徴するのが、脱炭素目標の高さです。

前倒しで、加速する

RE100事業活動で使う電力を100%再生可能エネルギーに。目標を2050年から2035年度へ15年前倒し
2040年度自社の事業活動(Scope1・2)でネットゼロ
2050年度サプライチェーンを含めた全体(Scope3含む)でネットゼロ

出典:村田製作所の公表情報をもとにgreenote作成

村田製作所は、電子部品業界でいち早くRE100を宣言した企業のひとつです。RE100とは、事業活動で使う電力を、100%再生可能エネルギーにすることをめざす国際的な枠組みになります。当初、同社はこの達成時期を2050年としていました。ところが、これを2035年度へと、15年も前倒ししたのです。RE100について詳しくは、関連記事のRE100とはもあわせてご覧ください。

さらに、温室効果ガスそのものの目標も高く設定されています。自社の事業活動(Scope1・2)を2040年度までにネットゼロ、そしてサプライチェーンを含めた全体(Scope3を含む)を2050年度までにネットゼロにする、という内容です。電力の再エネ化だけでなく、事業活動やサプライチェーン全体の排出をゼロへ。この段階的で高い目標が、同社の本気度を物語る。

03

進捗と評価|Scope1・2を35%削減、CDPでA評価

目標だけでなく、その進捗と外部からの評価も見ておきましょう。

掲げて、進めて、認められる

SBT認定温室効果ガスの削減目標が、科学的根拠にもとづくと認定された
Scope1・2を約35%削減2024年時点の実績。着実に前進
CDPでA評価環境情報の開示を評価する国際的な仕組みで、複数年にわたり最高評価

出典:村田製作所の公表情報をもとにgreenote作成

高い目標は、着実な進捗と、外部からの評価に裏づけられています。まず、村田製作所の温室効果ガス削減目標は、SBT(科学的根拠にもとづく目標)の認定を受けています。パリ協定の「1.5度目標」に沿った、信頼できる目標だと、国際的なイニシアチブに認められているわけです。

実績も出ています。公表情報によれば、2024年時点で、自社の事業活動(Scope1・2)の排出を約35%削減したとされます。目標に向けて、着実に前進している数字です。加えて、環境情報の開示を評価する国際的な仕組みであるCDPでは、複数年にわたり最高評価のAを獲得してきました。目標・実績・開示の三拍子がそろっている点が、同社の強みになる。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

04

製品を通じた貢献|省エネ・電化を支える小さな部品

自社の削減に加え、製品そのものが社会の脱炭素を支えています。

小さくても、支えている

村田製作所の電子部品
省エネを支える機器のエネルギーを効率よく制御し、無駄を減らす
電化を支える電気自動車や再生可能エネルギーの設備に多数使われる

小さな部品が社会で使われ、エネルギーの無駄を減らす効果を生む。

出典:村田製作所の公表情報をもとにgreenote作成

村田製作所の脱炭素は、自社の排出を減らすだけではありません。製品そのものが、社会の脱炭素を支えています。同社の電子部品は、機器のエネルギーを効率よく制御し、省エネを後押しします。小さな部品が、電力の無駄を減らす役割を担っているのです。

とりわけ重要なのが、電化への貢献です。たとえば、電気自動車(EV)には、電力を制御するために、多数のコンデンサが使われます。また、太陽光発電などの再生可能エネルギーの設備にも、同社の部品が組み込まれている。社会が電化を進めるほど、こうした部品の役割は大きくなる。電化について詳しくは、関連記事の電化(電化シフト)とはもあわせてご覧ください。小さな部品が数多く使われることで、社会全体のエネルギー効率を底上げしている。これも、村田製作所のESG経営の重要な一面です。

05

水と資源循環|ものづくりならではの環境課題

気候変動以外の、製造業ならではの環境課題にも取り組んでいます。

つくる責任を、果たす

製造工程で使う水を大切に使い、循環させて排水を減らす
資源循環廃棄物を減らし、資源をくり返し使う。原材料を有効に活用する

多くの工場を持つ製造業だからこその環境課題。

出典:村田製作所の公表情報をもとにgreenote作成

村田製作所の環境への取り組みは、気候変動だけにとどまりません。多くの工場でものづくりを行う製造業だからこそ、資源循環も重要なテーマになります。電子部品の製造には、水が欠かせません。そのため同社は、製造工程で使う水を大切に使い、循環させて排水を減らす取り組みを進めている。

もうひとつが、資源循環です。廃棄物を減らし、資源をくり返し使う。原材料を有効に活用し、捨てるものを最小限にする。こうした取り組みは、限りある資源を守るうえで欠かせません。気候変動、水、資源。これら複数の環境課題に、同時に向き合う。それが、ものづくりを担う企業の責任のかたちです。循環型の考え方は、関連記事のサーキュラーエコノミーとはもあわせてご覧ください。

人的資本と多様性(S)|グループでのD&I推進

村田製作所は、国内外のグループ会社を含めてダイバーシティ&インクルージョンを推進しており、女性の活躍推進や育児との両立支援、多様な人材の採用をグループ各社で展開しているとされます。

生産拠点が北陸などの地域に分散する同社にとって、地域の人材に選ばれ続けることは事業継続の生命線であり、人的資本への投資は経営戦略そのものです。

ガバナンス(G)|多様性を意識した取締役会の指名方針

取締役会には、エグゼクティブサーチ会社出身者や特許庁長官経験者など女性の社外取締役2名が加わっており、官庁・会計・金融・他社経営・知的財産といった知見のバランスと多様性を確保する指名方針を明示しているとされます。

電子部品という技術の会社でありながら、取締役会のスキル構成を開示して統治の説明責任を果たす姿勢は、ガバナンス・コード時代のモデルの一つです。

06

まとめ|村田製作所のESG経営から学べること

村田製作所の歩みは、目立たない企業こそ大きな役割を担うことを教えてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

村田製作所に学ぶ、3つのこと

環境対応は事業戦略RE100の前倒しは、顧客に選ばれ続けるための投資でもある
部品も大きな責任サプライチェーンの一員として、脱炭素の役割を担う
製品でも貢献省エネや電化を支え、社会の排出削減に寄与する

出典:村田製作所の公表情報をもとにgreenote作成

村田製作所のESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • MLCCで世界首位の電子部品メーカー。あらゆる電子機器を、足元から支える
  • 部品メーカーだからこそ、サプライチェーン(Scope3)の一員として環境責任が重い
  • RE100を2050年から2035年度へ15年前倒し。2040年度にオペレーション、2050年度に全体でネットゼロ
  • SBT認定を受け、2024年時点でScope1・2を約35%削減。CDPでも複数年A評価
  • 製品を通じて、省エネと電化を支え、社会の脱炭素にも貢献

村田製作所から学べるのは、環境対応が事業戦略そのものになったという現実です。RE100の前倒しは、単なる社会貢献ではありません。サプライチェーンの脱炭素を進める顧客から、選ばれ続けるための投資でもあります。そして、目立たない部品メーカーであっても、いや、多くの製品を支える存在だからこそ、その脱炭素は社会全体に大きな影響を及ぼします。小さな部品に宿る大きな責任。村田製作所の姿は、そのことを静かに示しています。なお本記事は、特定の投資を推奨するものではありません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. 村田製作所とはどんな企業ですか?

村田製作所(Murata)は、京都に本拠を置く、世界的な電子部品メーカーです。とくに、電子回路で電気をためたり流したりを調整するMLCC(積層セラミックコンデンサ)で、世界首位のシェアを持ちます。スマートフォンや自動車、データセンターなど、あらゆる電子機器に、同社の小さな部品が数多く使われています。目立たないながらも、現代のエレクトロニクスを支える重要な存在です。

Q. 村田製作所の脱炭素目標はどうなっていますか?

村田製作所は、電子部品業界でいち早くRE100を宣言した企業のひとつです。当初、事業活動で使う電力を100%再生可能エネルギーにする目標を2050年に掲げていましたが、これを2035年度へと15年前倒ししました。あわせて、自社の事業活動(Scope1・2)の温室効果ガスを2040年度までにネットゼロ、サプライチェーンを含めた全体(Scope3含む)を2050年度までにネットゼロにする目標を掲げています。

Q. RE100を前倒ししたのはなぜですか?

背景には、電子部品を採用する顧客からの要請があります。スマートフォンや自動車のメーカーは、自社のサプライチェーン全体(Scope3)の排出削減を進めており、部品メーカーにも再生可能エネルギーでの製造を求めるようになっています。再エネ化が遅れると「選ばれないリスク」が生じます。RE100の前倒しは、環境への貢献であると同時に、顧客に選ばれ続けるための、事業戦略でもあります。

Q. 村田製作所の脱炭素の進捗と評価はどうですか?

村田製作所は、温室効果ガスの削減目標について、SBT(科学的根拠にもとづく目標)の認定を受けています。公表情報によれば、2024年時点で、自社の事業活動(Scope1・2)の排出を一定の基準年比で約35%削減したとされます。また、環境情報の開示を評価する国際的な仕組みであるCDPで、複数年にわたり最高評価のAを獲得するなど、外部からの評価も高い企業です。

Q. 村田製作所の製品は社会の脱炭素にどう貢献していますか?

村田製作所の電子部品は、機器の省エネや電化を支えることで、社会の脱炭素に貢献しています。たとえば、電気自動車(EV)には多数のコンデンサが使われ、電力を効率よく制御する役割を担います。また、省エネ機器や再生可能エネルギーの設備にも、同社の部品が使われています。小さな部品ですが、それが社会で使われることで、エネルギーの無駄を減らす効果を生んでいます。

Q. 村田製作所のESG経営から学べることは何ですか?

大きく2つあります。1つ目は、脱炭素を「環境対応」と「事業戦略」の両面でとらえている点です。RE100の前倒しは、顧客に選ばれ続けるための投資でもあります。2つ目は、目立たない部品メーカーであっても、サプライチェーンの一員として大きな責任と役割を持つという事実です。最終製品だけでなく、それを支える部品の脱炭素も、社会全体の排出削減には欠かせません。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月18日

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