NTTのESG経営を分析|2040年カーボンニュートラルとIOWN

2026.07.19
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

通信国内

スマートフォンでの動画も、AIとの対話も、その裏では膨大な電力が動いています。私たちのデジタルな暮らしを支えるのが、通信ネットワークやデータセンターです。そして日本で、その中核を担うのがNTT(日本電信電話)になります。大量の電力を使う企業だからこそ、脱炭素の責任も重大です。NTTは2040年という早い時期に、カーボンニュートラルを掲げています。本記事では、そのESG経営を、環境ビジョン「NTT Green Innovation toward 2040」とIOWNを軸に、公式情報をもとに中立に分析します。

この記事の目次

01

NTTのESG経営とは|通信インフラと電力の課題

まず、NTTがどんな企業で、そのESG経営がなぜ重要なのかを整理しましょう。

デジタルを支える、その裏側で

NTT固定電話・光回線・NTTドコモ・通信ネットワーク・データセンターを運営する情報通信の巨大企業
→
環境課題事業に大量の電力が必要。脱炭素が経営の重要テーマ

社会の情報インフラを支えるからこそ、環境責任が重い。

出典:NTTの公表情報をもとにgreenote作成

通信を支える巨大インフラ企業

NTT(日本電信電話)は、日本を代表する情報通信の企業グループです。固定電話や光回線、NTTドコモの携帯電話、そして全国に張りめぐらされた通信ネットワークやデータセンターを運営しています。私たちが当たり前に使うインターネットや通話は、こうしたインフラの上に成り立っています。

いわば、社会全体のデジタルな営みを、足元から支える存在です。その規模は、日本有数のものになります。だからこそ、同社が環境にどう向き合うかは、社会全体にとっても大きな意味を持ちます。

通信インフラならではの環境課題

NTTのESGを考えるうえで、避けて通れない事実があります。それは、通信インフラが大量の電力を消費するという点です。全国のネットワーク機器や、膨大なデータを処理するデータセンターは、24時間365日、動き続けています。そこには、たえず電力が必要です。

しかも、動画配信や生成AIの普及で、扱うデータの量は爆発的に増えています。データが増えれば、それを処理する電力も増えます。つまり、放っておけば電力消費は膨らむ一方なのです。この構造的な課題にどう立ち向かうかが、NTTのESG経営の核心になります。データセンターの電力問題は、関連記事のデータセンターの電力問題とはもあわせてご覧ください。

02

NTT Green Innovation toward 2040|2040年カーボンニュートラル

NTTのESG経営の軸となる、環境エネルギービジョンを見ていきます。

2040年を、めざす

NTT Green Innovation toward 2040
2021年9月に策定した環境エネルギービジョン
事業活動による環境負荷の削減
限界を打破するイノベーションの創出
中核目標:2040年度に、グループ全体でカーボンニュートラル

出典:NTTの公表情報をもとにgreenote作成

NTTは2021年9月、新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定しました。このビジョンは、大きく2つの柱からなります。ひとつが、事業活動による環境負荷の削減。もうひとつが、限界を打破するイノベーションの創出です。自社を減らすことと、技術で新しい解を生み出すこと。その両輪で臨む姿勢が示されています。

そして、このビジョンの中核にあるのが、2040年度にグループ全体でカーボンニュートラルを実現するという目標です。多くの企業が2050年を目標に掲げるなか、それより10年早い2040年を打ち出しました。大量の電力を使う企業が、あえて高い目標を掲げる。その本気度が、ここに表れています。カーボンニュートラルの考え方は、関連記事のカーボンニュートラルとはもあわせてご覧ください。

03

2030年度目標|温室効果ガスを80%削減、ドコモとデータセンターはCN

2040年に向けた、途中の重要な目標も確認しましょう。

まず、2030年度に

-80%グループ全体の温室効果ガス排出量を、2013年度比で削減
モバイル(NTTドコモ)とデータセンターは、より早く2030年度にカーボンニュートラル

排出の大きい部分を、先に集中して減らす。

出典:NTTの公表情報をもとにgreenote作成

2040年という目標は、遠い未来の話ではありません。NTTは、そこへ至る中間目標も、明確に掲げています。まず、2030年度に、グループ全体の温室効果ガス排出量を2013年度比で80%削減することをめざします。2040年を待たず、その10年前に大きく減らす計画です。

さらに注目すべきは、電力消費の大きい部分を先に集中して減らすという考え方です。具体的には、モバイル(NTTドコモ)とデータセンターについて、グループ全体より早く、2030年度のカーボンニュートラルを掲げています。携帯電話網とデータセンターは、NTTの中でもとりわけ電力を多く使う領域です。だからこそ、そこを優先的に脱炭素する。めりはりのついた戦略だといえます。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

04

IOWN|光で電力を抜本的に減らす次世代基盤

NTTの脱炭素を支える、独自の技術がIOWNです。

電気から、光へ

これまで電気の信号で通信や計算を行う。電力消費が大きい
→
IOWN光を活用した次世代の通信・情報処理基盤。電力消費を大幅に減らせる

大量の電力を使う通信ネットワークやデータセンターを、抜本的に省電力化する切り札。

出典:NTTの公表情報をもとにgreenote作成

高い目標を、どう実現するのか。その切り札が、NTTが開発を進めるIOWN(アイオン)です。IOWNとは、光を活用した次世代の通信・情報処理基盤になります。これまでの通信や計算は、主に電気の信号でおこなわれてきました。IOWNは、その多くを光に置き換えようという、野心的な構想です。

なぜ、それが脱炭素につながるのでしょうか。光を使うことで、通信や計算にかかる電力消費を、従来より大幅に減らせると期待されているからです。前述の通り、通信ネットワークやデータセンターは、大量の電力を使います。その基盤そのものを、抜本的に省電力化する。IOWNは、NTTの脱炭素目標を足元から支える、いわば土台の技術です。単なる省エネの積み重ねではなく、仕組みごと変えることで大きな削減をめざす。ここに、NTTらしい発想が見えます。

05

社会全体への貢献|自社を超えた削減インパクト

NTTの目標は、自社の排出削減だけにとどまりません。

自社を超えて、社会へ

IOWNを通信分野から、さまざまな産業へ普及
日本全体約4%2040年度に温室効果ガス排出量の削減に貢献
世界全体約2%2040年度に排出量の削減に貢献

自社の技術で、社会全体の脱炭素を後押しする見通し。

出典:NTTの公表情報をもとにgreenote作成(将来の見通し)

NTTの視野は、自社の枠を超えています。IOWNのような省電力の技術は、NTTの中だけで使うにとどまりません。通信分野から、さまざまな産業へと普及させることで、社会全体の電力消費とCO2を減らすことができます。多くの産業が、通信や計算に頼る時代です。その基盤が省電力になれば、効果は社会全体に波及します。

その見通しも、具体的な数字で示されています。公表情報によれば、NTTは、IOWNなどの普及を通じて、2040年度には日本全体の温室効果ガス排出量の約4%、世界全体では約2%の削減に貢献するという見通しを掲げています。一企業の技術が、国や世界の排出量に影響を与えうる。インフラを担う企業ならではの、スケールの大きな貢献の形です。ただし、これはあくまで将来の見通しであり、実際の効果は技術の普及しだいで変わりうる点には留意が必要です。

06

まとめ|NTTのESG経営から学べること

NTTの歩みは、インフラ企業が担う大きな責任と役割を、私たちに見せてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

NTTに学ぶ、3つのこと

最大の課題に向き合う事業で最も負荷の大きい電力消費に、正面から取り組む
高い目標と道筋2040年カーボンニュートラルと2030年度80%削減で道筋を明確に
技術で社会に貢献IOWNで自社を超え、社会全体の脱炭素を後押し

出典:NTTの公表情報をもとにgreenote作成

NTTのESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • 日本を代表する情報通信の巨大企業。通信ネットワークやデータセンターは大量の電力を使う
  • 環境ビジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定。2040年度にグループ全体でカーボンニュートラル
  • 中間目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で80%削減。ドコモとデータセンターは2030年度CN
  • 切り札は光を活用した次世代基盤IOWN。通信や計算の電力消費を、抜本的に減らす
  • IOWNの普及で、2040年度に日本全体の約4%・世界全体の約2%の排出削減に貢献する見通し

NTTから学べるのは、事業で最も負荷の大きい領域に、正面から向き合う姿勢です。通信インフラは大量の電力を使う。その課題から逃げず、2040年カーボンニュートラルという高い目標と、80%削減という中間目標で、道筋を明確に描いています。さらに、IOWNという技術で、自社を超えて社会全体の脱炭素に貢献しようとしている点も見逃せません。大きな責任を負う企業ほど、その取り組みは社会を動かす力になります。なお本記事は、特定の投資を推奨するものではありません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. NTT(日本電信電話)とはどんな企業ですか?

NTT(日本電信電話)は、日本を代表する情報通信の企業グループです。固定電話や光回線、NTTドコモの携帯電話、そして全国に張りめぐらされた通信ネットワークやデータセンターを運営しています。社会の情報インフラを支える巨大企業であり、その事業には大量の電力を必要とするため、脱炭素が経営の重要なテーマになっています。

Q. NTT Green Innovation toward 2040とは何ですか?

NTT Green Innovation toward 2040は、NTTグループが2021年9月に策定した環境エネルギービジョンです。大きく「事業活動による環境負荷の削減」と「限界を打破するイノベーションの創出」の2本柱からなります。中核となる目標が、2040年度にグループ全体でカーボンニュートラルを実現することです。多くの企業が2050年を目標とするなか、それより早い2040年を掲げている点が特徴です。

Q. NTTの2030年度の目標はどうなっていますか?

NTTは、2040年度のカーボンニュートラルに向けた中間目標として、2030年度にグループ全体の温室効果ガス排出量を2013年度比で80%削減することをめざしています。さらに、電力消費の大きいモバイル(NTTドコモ)とデータセンターについては、より早く2030年度にカーボンニュートラルを実現する目標を掲げています。事業の中でも排出の大きい部分を、先に集中して減らす考え方です。

Q. IOWNとは何ですか?脱炭素とどう関係しますか?

IOWN(アイオン)は、NTTが開発を進める、光を活用した次世代の通信・情報処理基盤です。電気の信号のかわりに光を使うことで、通信や計算にかかる電力消費を、従来より大幅に減らせると期待されています。通信ネットワークやデータセンターは大量の電力を使うため、その基盤を抜本的に省電力化するIOWNは、NTTの脱炭素目標を支える切り札と位置づけられています。

Q. NTTのESG経営は社会全体にどう貢献しますか?

NTTの目標は、自社の排出削減だけにとどまりません。IOWNを通信分野からさまざまな産業へと普及させることで、社会全体の電力消費とCO2の削減に貢献することをめざしています。公表情報によれば、2040年度には日本全体の温室効果ガス排出量の約4%、世界全体では約2%の削減に貢献するという見通しを掲げています。自社の技術で、社会の脱炭素を後押しする発想です。

Q. NTTのESG経営から学べることは何ですか?

大きく2つあります。1つ目は、事業で最も負荷の大きい領域(電力消費)に、正面から向き合っている点です。2040年カーボンニュートラルという高い目標と、80%削減という中間目標で、道筋を明確にしています。2つ目は、自社の削減にとどまらず、IOWNという技術で社会全体の脱炭素に貢献しようとしている点です。インフラ企業だからこそ担える、大きな役割を示しています。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月19日

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