サステナビリティ人材とは|ESG・脱炭素に求められるスキルと育成・確保の方法を解説

2026.07.12
ESG開示

「サステナビリティ担当を任されたが、何から手をつければいいのか」。「開示や脱炭素の専門家が、社内にいない」。こうした悩みを抱える企業が増えています。その根っこにあるのが、サステナビリティ人材の不足です。ESGや脱炭素の取り組みを担い、事業へとつなげていく人材。その育成と確保が、いま経営の重要テーマになってきました。本記事では、サステナビリティ人材とは何か、求められるスキル、そして育成・確保の方法までを、公的機関の情報をもとに整理します。

この記事の目次

サステナビリティ人材とは(おさらい)

まず、サステナビリティ人材がどのような役割を担う人材で、なぜ「ESG人材」とも呼ばれるのかを整理しましょう。

専門知識を、事業につなぐ推進役

ESG・脱炭素の専門知識気候・開示基準・GHG算定・人権など
事業戦略・経営価値創造とリスク低減
サステナビリティ人材=両者を橋渡しし、全社に浸透させる

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

ESG・脱炭素を事業に橋渡しする推進役

サステナビリティ人材とは、ESGや脱炭素、サステナビリティに関する専門性を持ち、それを事業戦略に橋渡しして全社に浸透させる推進役となる人材です。「ESG人材」とも呼ばれます。

担う業務は、実に多岐にわたります。GHG排出量の算定、サステナビリティ情報の開示、投資家や取引先との対話、環境法規制への対応など。これまで社内に専門部署がなかった企業にとっては、まったく新しい職種ともいえます。ESG開示の全体像は、関連記事のESG情報開示とはもあわせてご覧ください。

専門知識だけでは足りない

ここで大切なのは、サステナビリティ人材は専門知識さえあればよい、というわけではないという点です。知識を持っているだけでは、取り組みは前に進みません。

求められるのは、非財務の取り組みを、企業の中長期的な価値創造やリスク低減へとつなげる力です。環境や社会の課題を、経営や事業の言葉に翻訳し、全社を動かしていく。いわば、専門家であると同時に、社内をつなぐ「翻訳者」であり「推進役」でもあるのです。この二面性が、サステナビリティ人材の難しさであり、価値でもあります。

なぜいま求められるのか

背景にあるのは、サステナビリティ業務の急増と、それに追いつかない人材の供給です。2つの流れから見ていきましょう。

業務は増えるのに、人が足りない

増える業務開示の義務化 ・ 脱炭素目標(SBTやカーボンニュートラル) ・ 投資家や取引先からの要請
需要は急増専門人材へのニーズが拡大
供給が追いつかない育成が間に合わず不足

グリーン関連の雇用は2030年までに世界で約2,400万人増えるとの試算も。

出典:ILO等の情報をもとにgreenote作成

開示義務化と脱炭素目標で業務が急増

第一の流れが、企業が対応すべき業務の急増です。有価証券報告書でのサステナビリティ開示が義務化に向かい、多くの企業がSBTやカーボンニュートラルといった脱炭素目標を掲げています。さらに、投資家や取引先からの要請も強まる一方です。

こうした取り組みは、片手間でこなせるものではない。専門知識をもって、継続的に対応する担い手が要ります。有報での開示については、関連記事の有価証券報告書のサステナビリティ開示もあわせてご覧ください。

グリーン人材の需給ギャップ

第二の流れが、人材の供給不足です。業務が急増する一方で、それを担える専門人材は、まだ十分に育っていません。脱炭素社会への移行にともない、グリーン関連の雇用は、2030年までに世界で約2,400万人増えるとも試算されています。

需要が急拡大するなか、供給が追いつかない。この「需給ギャップ」が、サステナビリティ人材の獲得を難しくしています。専門人材の争奪戦は、世界的に激しさを増しているのです。だからこそ、外部から採るだけでなく、社内で育てる視点が欠かせなくなってきました。

求められるスキル

サステナビリティ人材に求められるのは、専門知識だけではありません。事業と結びつける力が問われます。代表的なスキルを整理しましょう。

知識に加えて、つなぐ力

専門知識気候・開示基準・GHG算定・人権などへの理解と関心
橋渡し力非財務と財務・経営を結びつけて考える
対話・調整力多様なステークホルダーと協働する
学習・適応力制度や動向の変化に自ら学び対応する

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

専門知識と最新動向への理解

土台となるのが、専門知識です。気候変動やGHG排出量の算定、TCFDやSSBJといった開示基準、人権や生物多様性など、サステナビリティの領域は広く、深くなっています。これらを理解していることが、出発点になります。

そして、知識は一度覚えれば終わりではありません。開示基準や規制は、いまも猛烈な勢いで変化しています。最新の動向を追い続け、学び直す関心と姿勢が欠かせないのです。変化の速さこそが、この分野の特徴だといえます。

非財務と財務をつなぐ力・対話力

専門知識と並んで重視されるのが、事業に橋渡しする力です。環境や社会の取り組みを、経営や財務の言葉に翻訳し、価値創造やリスク低減へとつなげる。この力がなければ、取り組みは「コスト」で終わってしまいます。

さらに、社内外の多様な関係者と協働する対話力・調整力も求められます。経営層、事業部門、投資家、取引先、地域。立場の異なる人々を巻き込み、同じ方向へ動かしていく。加えて、変化に自ら適応していく姿勢。これらを兼ね備えた人材は、決して多くありません。人的資本経営の視点は、関連記事の人的資本経営とはもあわせてご覧ください。

どんな役割・ポジションがあるのか

サステナビリティ人材と一口に言っても、その役割はさまざまです。代表的なものを整理します。

専任から、各部門への広がりへ

専任の役割

CSO最高サステナビリティ責任者。全社戦略を統括
サステナビリティ推進部門施策の企画・運営
算定・開示担当GHG算定とTCFD・SSBJ開示
各部門にも広がる:経営企画・財務・調達・人事などにもサステナビリティの視点を持つ人材が必要

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

サステナビリティ人材の役割は、幅広く存在します。まず、全社のサステナビリティ戦略を統括するCSO(最高サステナビリティ責任者)や、サステナビリティ推進部門の担当者です。施策の企画から運営までを担う、いわば司令塔の役割になります。

そのほか、GHG排出量を算定する担当、TCFDやSSBJに沿った情報開示を担う担当、環境法規制やESG評価に対応する担当など、専門分野ごとの役割も広がっています。さらに近年は、経営企画や財務、調達、人事といった既存の部門にも、サステナビリティの視点を持つ人材が求められるようになりました。専任部署だけの話ではなく、全社に必要な素養へと変わりつつあるのです。

育成・確保の方法

不足するサステナビリティ人材を、企業はどう確保すればよいのでしょうか。大きく2つの道があります。

採るか、育てるか

外部採用専門人材を採用。即戦力になるが、獲得競争が激しい
社内育成(リスキリング)既存社員に知識やスキルを身につけてもらう。事業を知る社員が橋渡し役に

習熟度に応じて入門・ケーススタディ・実践と段階的に育てる。経営層の関与が鍵。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

外部採用と社内育成(リスキリング)

一つ目の道が、専門性を持つ人材の外部採用です。即戦力を確保できる利点がありますが、前述のとおり需要が高く、獲得競争は激しい。採りたくても採れない、という声も多く聞かれます。

そこで重要になるのが、二つ目の道である社内育成(リスキリング)です。既存の社員に、サステナビリティの知識やスキルを新たに身につけてもらう。事業を深く知る社員がサステナビリティを学べば、「橋渡し役」として大きな力を発揮します。外部採用と社内育成を組み合わせることが、現実的な確保策になります。

習熟度に応じた学びと経営の関与

社内育成では、習熟度に応じた段階的なプログラムが有効です。多くの企業で、入門編、ケーススタディ編、実践編といった学習プランが取り入れられています。全社員向けの基礎教育から、担当者向けの実践研修まで、レベルを分けて設計するのです。

そして、育成を成功させる最大の鍵が、経営層の関与です。サステナビリティを「一部門の仕事」ではなく、経営の重要課題として位置づける。トップがその姿勢を示すことで、社員の学ぶ意欲も、全社の巻き込みも変わってきます。中小企業での取り組み方は、関連記事の中小企業のサステナビリティ経営とはもあわせてご覧ください。

サステナビリティ人材をめぐる課題

確保や育成には、乗り越えるべき壁もあります。冷静に押さえておきましょう。

採れない、片手間、届かない

専門人材の不足外部採用は競争が激しく、容易でない
兼任・片手間他業務と掛け持ちで専任体制を組みにくい。中小企業で特に
経営との距離サステナ部門が孤立し、取り組みが浸透しにくい

だからこそ経営層の関与と、全社を巻き込む仕組みづくりが欠かせない。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

第一の課題が、専門人材そのものの不足です。需給ギャップが続くなか、外部からの採用は競争が激しく、容易ではありません。特に知名度や待遇で大企業に劣る企業ほど、確保に苦しみがちです。

第二に、兼任・片手間の問題が挙げられます。担当者が他の業務と掛け持ちし、サステナビリティに専念できないケースは少なくありません。専任体制を組めない中小企業などでは、特に深刻な課題になります。そして第三が、経営や事業部門との距離です。サステナビリティ部門が孤立し、取り組みが全社に浸透しない。こうした状況では、せっかくの人材も力を発揮できません。だからこそ、経営層の関与と、全社を巻き込む仕組みづくりが欠かせないのです。

まとめ|サステナビリティ人材は変革の「担い手」

サステナビリティ人材は、企業の脱炭素とESGを前へ進める、変革の担い手です。最後に、要点を振り返りましょう。

  • サステナビリティ人材(ESG人材)とは、ESG・脱炭素を事業戦略に橋渡しし、全社に浸透させる推進役。専門知識だけでは足りない
  • 求められる背景は、開示義務化や脱炭素目標による業務急増と、供給が追いつかない需給ギャップ
  • スキルは、専門知識・橋渡し力・対話調整力・学習適応力の4つ。知識に加えて「つなぐ力」が要
  • 役割はCSOや推進部門、算定・開示担当など幅広く、いまは既存部門にも必要とされる
  • 確保は、外部採用と社内育成(リスキリング)の組み合わせ。経営層の関与が成功の鍵

サステナビリティ人材は、いまや一部の専門家だけの話ではありません。開示や脱炭素が経営の常識となるなか、その担い手をどう育て、どう活かすかが、企業の競争力を左右します。採るだけでなく、育てる。そして、経営を挙げて支える。その積み重ねが、サステナビリティを絵に描いた餅で終わらせない力になっていきます。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. サステナビリティ人材(ESG人材)とは何ですか?

A. サステナビリティ人材とは、ESGや脱炭素、サステナビリティに関する取り組みを推進する専門性を持ち、それを事業戦略に橋渡しして全社に浸透させる推進役となる人材です。ESG人材とも呼ばれます。単に環境や開示の知識を持っているだけでなく、非財務の取り組みを企業の中長期的な価値創造やリスク低減へとつなげる役割が期待されます。GHG排出量の算定、サステナビリティ情報の開示、投資家との対話など、その業務は多岐にわたります。

Q. なぜいまサステナビリティ人材が求められているのですか?

A. サステナビリティに関する業務が、急速に増えているためです。有価証券報告書でのサステナビリティ開示の義務化、SBTやカーボンニュートラルといった脱炭素目標の設定、投資家や取引先からの要請など、企業が対応すべきことが年々増えています。一方で、こうした専門性を持つ人材の供給は追いついていません。脱炭素社会への移行に伴い、グリーン関連の雇用は世界で2030年までに約2,400万人増えるとも試算され、需要に供給が追いつかない「需給ギャップ」が生じています。

Q. サステナビリティ人材にはどんなスキルが求められますか?

A. 主に4つの力が求められます。1つ目は、気候変動や開示基準、人権といったESG・サステナビリティの潮流に対する専門知識と、変化を追い続ける関心です。2つ目は、非財務の取り組みと財務・経営を結びつけて考える力です。3つ目は、社内外の多様なステークホルダーと協働するための対話力・調整力です。そして4つ目が、制度や動向の変化に自ら学んで適応していく姿勢です。専門知識に加え、事業に橋渡しする力が重視されます。

Q. サステナビリティ人材にはどんな役割・ポジションがありますか?

A. 役割は幅広くあります。全社のサステナビリティ戦略を統括するCSO(最高サステナビリティ責任者)やサステナビリティ推進部門の担当者、GHG排出量を算定する担当、TCFDやSSBJに沿った情報開示を担う担当、環境法規制やESG評価に対応する担当などです。近年は、経営企画や財務、調達、人事といった既存の部門にも、サステナビリティの視点を持つ人材が求められるようになっています。

Q. サステナビリティ人材はどのように確保・育成すればよいですか?

A. 大きく2つの道があります。1つは、専門性を持つ人材の外部採用ですが、需要が高く獲得競争は激しくなっています。もう1つが、既存の社員に知識やスキルを身につけてもらう社内育成(リスキリング)です。多くの企業では、習熟度に応じた入門・ケーススタディ・実践といった段階的な育成プログラムが取り入れられています。いずれの場合も、経営層がサステナビリティを経営課題と位置づけ、育成に関与することが成功の鍵になります。

Q. サステナビリティ人材の確保にはどんな課題がありますか?

A. 主な課題は3つあります。1つ目は、専門人材そのものの不足で、外部からの採用は競争が激しく容易ではありません。2つ目は、担当者が他の業務と兼任し、「片手間」になってしまいがちなことです。専任体制を組めない中小企業などでは特に課題になります。3つ目は、サステナビリティ部門が経営や事業部門から距離を置かれ、取り組みが浸透しにくいことです。だからこそ、経営層の関与と、全社を巻き込む仕組みづくりが欠かせません。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

最終更新日:2026年7月12日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

関連記事

目次