売った製品も、いつかは使い終わり、捨てられます。そのとき、埋め立てや焼却、リサイクルの過程で、またCO2が出る——。この製品の「最期」に伴う排出を計上するのが、Scope3のカテゴリ12「販売した製品の廃棄」です。自社の事業から出るごみを扱うScope3カテゴリ5(事業から出る廃棄物)とは対をなす、下流の廃棄を見るカテゴリになる。本記事では、カテゴリ12の対象範囲と計算ステップを、環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォームやGHGプロトコルの一次情報をもとに、実務目線で解説します。
≡この記事の目次
- 1Scope3カテゴリ12(販売した製品の廃棄)とは
- ►販売した製品が使用後に廃棄される排出
- ►カテゴリ5(事業の廃棄物)との違い
- 2販売した年に、将来の廃棄分を見積もる
- ►計上のタイミングは販売年
- ►廃棄方法の想定(廃棄シナリオ)
- 3計算の考え方――素材量×処理方法別係数
- ►廃棄物種類別法と平均データ法
- ►素材構成と処理方法別の係数
- 4データはどこから取るのか
- ►販売量と製品の素材構成
- ►処理方法別の排出原単位と廃棄統計
- 5設計で減らす考え方
- ►リサイクルしやすい設計・素材選択
- ►減量・長寿命化と法制度
- 6CDP回答・開示での実務ポイント
- ►算定方法と前提の記載
- ►実務で多い方法と現実的な進め方
- 7カテゴリ12の算定をどう進めるか
- 8出典・参考(一次情報)
Scope3カテゴリ12(販売した製品の廃棄)とは
まず、カテゴリ12が何を対象とするのかを整理します。「売った製品が、使い終わったあとにどう捨てられるか」という視点から入りましょう。
販売した製品が使用後に廃棄される排出
カテゴリ12は、報告する企業が販売した製品が、使用後(使い終わったあと)に廃棄・処理されることに伴う排出を対象にします。自動車、家電、日用品——。売られた製品は、いつか寿命を迎え、埋め立てや焼却、リサイクルといった処理に回る。その処理の過程で発生するCO2やメタンを、サプライチェーンの排出として計上するわけです。
ポイントは、この廃棄が自社の手を離れた先、つまりお客さまのもとで起こるという点にあります。製品を売った時点で、その後の廃棄は購入者や社会の廃棄物処理に委ねられる。Scope3とはの15カテゴリのうち、カテゴリ12は、製品ライフサイクルのいちばん最後(エンドオブライフ)を受け持つカテゴリです。
カテゴリ5(事業の廃棄物)との違い
カテゴリ12でまず押さえたいのが、カテゴリ5との違いです。同じ「廃棄物」でも、誰の廃棄物かが異なります。カテゴリ5(事業から出る廃棄物)は、自社の工場やオフィスから出るごみ——自社が出した廃棄物の処理が対象です。一方、カテゴリ12(販売した製品の廃棄)は、自社が売った製品が、お客さまのもとで最後にごみになる分が対象になる。
整理すると、カテゴリ5は「自社が出したごみ」、カテゴリ12は「売った製品が最期にごみになる分」です。前者は自社の事業運営、後者は製品の下流——見ている場所が違う。両方を扱うことで、自社の廃棄と、売った製品の廃棄の両面から、サプライチェーンの排出をとらえられます。
販売した年に、将来の廃棄分を見積もる
カテゴリ12の特徴的な考え方が、計上のタイミングです。まだ捨てられていない分まで、販売した年に見積もります。
販売した年に、将来の廃棄分を見積もる
実際の廃棄は将来でも、販売した年にまとめて計上する
カテゴリ11(販売した製品の使用)と同じ考え方。将来を見積もるので廃棄シナリオという前提を置く。
出典:GHGプロトコル・環境省の公開情報をもとにgreenote作成
計上のタイミングは販売年
カテゴリ12で戸惑いやすいのが、「いつの排出として数えるか」です。製品が実際に廃棄されるのは、数年後、ものによっては十数年後かもしれません。しかしカテゴリ12では、その製品を販売した年に、廃棄までに見込まれる排出をまとめて計上します。まだ捨てられていない分まで、売った年に先取りして数えるわけです。
これは、カテゴリ11(販売した製品の使用)と同じ考え方です。使用も廃棄も、実際に起こるのは将来だが、販売した年の製品がもたらす将来の排出を、その年に計上する。だから、カテゴリ12は「将来を見積もる」カテゴリだといえます。実績値ではなく、見込みを置いて算定する点が、特徴になる。
廃棄方法の想定(廃棄シナリオ)
将来を見積もるうえで欠かせないのが、廃棄方法の想定です。売った製品が、どれだけ埋め立てられ、どれだけ焼却され、どれだけリサイクルされるか——。これは購入者や社会の処理に委ねられるため、自社では分かりません。そこで、処理方法の割合を仮定した「廃棄シナリオ」を置いて算定します。
たとえば「この素材は、国内の平均で何割が埋立・焼却・リサイクルに回る」といった仮定です。この割合は、国や地域の廃棄統計などを根拠に置くのが一般的になる。廃棄シナリオは結果を左右するため、どんな前提を置いたかを明示することが欠かせません。前提を記録しておけば、見直しや他社との比較もしやすくなります。
計算の考え方――素材量×処理方法別係数
カテゴリ12の計算の基本を整理します。製品の素材の量と、その処理のされ方でとらえます。
素材の量と処理方法でとらえる
(素材の種類ごとの質量) × 処理方法別の排出原単位
(廃棄シナリオを反映) = 排出量
同じ素材でも、処理方法で排出量は大きく変わる(イメージ)
主な方法は廃棄物種類別法と平均データ法。素材構成と廃棄シナリオが土台になる。
出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成(棒の長さは大小関係のイメージ)
廃棄物種類別法と平均データ法
カテゴリ12の主な算定方法は、2つです。第一が廃棄物種類別法。販売した製品に含まれる素材の種類ごとの質量に、処理方法別の排出原単位を掛ける方法で、精度が高いとされます。「この製品には鉄が何kg、プラスチックが何kg」と素材を分け、それぞれの廃棄処理の係数を掛けて合算する。第二が平均データ法で、製品の総質量に、平均的な廃棄処理の原単位を掛ける簡便な方法です。
CDPに開示された算定方法を見ると、カテゴリ12では廃棄物種類別法と平均データ法が、二大手法として並んで多く使われています。素材構成が細かく分かるなら種類別法、まず概算したいなら平均データ法、という使い分けが実務的です。いずれの方法でも、次に見る素材構成と廃棄シナリオが計算の前提になる。
素材構成と処理方法別の係数
計算の土台になるのが、素材構成と処理方法別の係数です。素材構成とは、製品がどんな素材で、どれだけできているか——鉄、アルミ、プラスチック、ガラスといった内訳です。製品設計や部品表(BOM)から把握できることが多い。この素材ごとの質量に、廃棄シナリオを反映した処理方法別の原単位を掛けます。
ここで効いてくるのが、処理方法による排出量の違いです。同じ素材でも、埋立はメタンの発生などから排出が大きく、焼却は燃焼のCO2が出る。一方、リサイクルは相対的に排出が小さい傾向があります。つまり、素材の種類と、その素材がどう処理されるかの両方が、カテゴリ12の排出量を決める。だからこそ、素材と処理方法を分けてとらえることが大切になります。
データはどこから取るのか
製品の素材量と、その廃棄のされ方をどう把握するか。活動量データと排出係数の入手先を整理します。
使うデータはどこから
活動量(販売量と素材構成)
販売台数や販売量は自社の販売データから、製品の素材構成(鉄・プラスチックなどの質量)は製品設計や部品表(BOM)から把握する。
処理方法別の排出原単位と廃棄統計(公的)
埋立・焼却・リサイクルなど処理方法別の係数と、廃棄割合(廃棄シナリオ)の根拠となる国や地域の廃棄統計。環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームの排出原単位データベースなど。
活動量は自社の販売・設計データ、係数と廃棄割合は公的な根拠を使い分ける。置いた前提を記録する。
出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
販売量と製品の素材構成
カテゴリ12の活動量は、販売量と製品の素材構成の2つが柱です。販売量(販売台数や販売重量)は、自社の販売データから把握できる。もう一つの素材構成、つまり製品が鉄・アルミ・プラスチックなどをそれぞれ何kg含むかは、製品設計や部品表(BOM)から得られることが多い。
自社の製品なら、これらのデータは社内にあることが多く、活動量はとらえやすい部類です。まずは、主力製品について、販売量と素材構成を整理することが出発点になる。多品種の場合は、代表的な製品モデルの素材構成を使って、製品群全体を推計する方法もとられます。
処理方法別の排出原単位と廃棄統計
素材の質量に掛ける、処理方法別の排出原単位は、公的なデータベースから入手します。日本では、環境省がグリーン・バリューチェーンプラットフォームで公開する排出原単位データベースに、廃棄物の処理方法別の原単位が示されています。あわせて、廃棄シナリオ(埋立・焼却・リサイクルの割合)の根拠となる、国や地域の廃棄統計も参照する。
ここでも、どの原単位を、いつの版で使い、どんな廃棄シナリオを置いたかを記録することが欠かせません。方法論はGHGプロトコルのScope 3 Standardに沿って進めます。活動量は自社の販売・設計データ、係数と廃棄割合は公的な根拠、と使い分けるのが基本です。将来を見積もる前提だからこそ、記録がとりわけ重要になる。
設計で減らす考え方
カテゴリ12は、製品の作り方で大きく変わります。設計段階からの削減の視点を整理します。
設計段階から廃棄の排出を減らす
リサイクルしやすい設計
素材を分別しやすくする、単一素材にする、リサイクルしやすい素材を選ぶ。
減量(軽量化)
製品に使う素材そのものを減らし、廃棄される量を減らす。
長寿命化・再使用
長く使える設計や、再使用・修理しやすい設計で廃棄を先延ばしする。
作る段階の選択が、最後の廃棄の排出を左右する。法制度(各種リサイクル法)も関わる。
出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
リサイクルしやすい設計・素材選択
カテゴリ12は、製品を「どう作るか」で大きく変わるカテゴリです。廃棄の排出は、製品の素材構成と、その素材がどう処理されるかで決まる。だからこそ、設計段階からの工夫が効きます。代表的なのが、リサイクルしやすい設計です。素材を分別しやすくする、なるべく単一の素材にまとめる、リサイクルしやすい素材を選ぶ——。こうした設計は、廃棄時にリサイクルへ回る割合を高め、排出を下げる。
素材選択そのものも重要です。廃棄時の排出が小さい素材を選ぶことで、カテゴリ12は下がる。製品の企画・設計の段階で「この製品は、最後にどう捨てられるか」まで見通す——。このエコデザイン(環境配慮設計)の視点が、下流の排出削減につながります。
減量・長寿命化と法制度
設計での削減には、ほかにも道があります。一つが減量(軽量化)。製品に使う素材そのものを減らせば、廃棄される量も減り、カテゴリ12は小さくなる。もう一つが長寿命化・再使用です。長く使える設計や、修理・再使用しやすい設計は、廃棄そのものを先延ばし・削減することにつながります。
背景として、各種リサイクル法などの法制度も関わります。日本には、容器包装・家電・自動車・小型家電などのリサイクルを促す法律があり、製品の廃棄・リサイクルの枠組みを定めている。こうした制度は、廃棄シナリオの前提にも影響する。作る段階の選択と、社会の制度の両方が、カテゴリ12の排出を形づくるわけです。
CDP回答・開示での実務ポイント
算定結果を、CDPなどでどう開示するか。カテゴリ12の押さえどころを整理します。
カテゴリ12の開示で押さえること
算定方法を選ぶ
廃棄物種類別法・平均データ法などから、使った方法を選択する
廃棄シナリオと前提を説明する
埋立・焼却・リサイクルの割合をどう想定したか、素材構成の把握方法など、置いた前提を明示する
活動量と原単位を記載する
販売量や素材構成などの活動量と、使った処理方法別原単位の出典・版を記す
将来を見積もるカテゴリだからこそ、置いた前提を説明できることが信頼性につながる。
出典:CDP・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
算定方法と前提の記載
カテゴリ12をCDPとはなどで開示する際は、他のカテゴリと同様に、評価ステータス・排出量・算定方法(廃棄物種類別法・平均データ法など)を記します。カテゴリ12でとくに説明したいのが、廃棄シナリオと前提です。埋立・焼却・リサイクルの割合をどう想定したか、素材構成をどう把握したか。将来を見積もるカテゴリだけに、前提の説明が信頼性を左右する。
活動量(販売量や素材構成)と、使った処理方法別原単位の出典・版も記載します。廃棄シナリオという仮定が入るため、どんな根拠で割合を置いたかを説明できるようにしておくと、開示の質が高まるだろう。
実務で多い方法と現実的な進め方
CDPに開示された算定方法を見ると、カテゴリ12では廃棄物種類別法と平均データ法が二大手法として使われています。素材構成が分かる製品は種類別法で、そうでなければ平均データ法で——という使い分けが多い。一方、廃棄の実態は購入者に委ねられるため、廃棄シナリオという前提を置く必要があり、一次データは少なめの傾向があります。
現実的な進め方は、まず主力製品の素材構成と販売量を整理することです。製品設計のデータを活用すれば、種類別法で算定しやすい。カテゴリ12は、カテゴリ11(使用)と同じく販売年に将来を見積もるため、置いた前提をそろえて管理するのがコツです。算定を通じて製品の廃棄が見えれば、そのままリサイクルしやすい設計への改善にもつながります。
カテゴリ12の算定をどう進めるか
Scope3カテゴリ12(販売した製品の廃棄)は、自社が販売した製品が使用後に廃棄・処理されることに伴う排出を計上するものです。自社の事業から出る廃棄物(カテゴリ5)とは対をなし、売った製品が最後にごみになる分を、販売した年に見積もって計上します。計算は「製品の素材量 × 処理方法別の排出原単位」で、埋立・焼却・リサイクルの割合を想定する廃棄シナリオが前提になるのが特徴です。
大切なのは、まず主力製品の素材構成と販売量を整理し、置いた廃棄シナリオの前提を明示すること。将来を見積もるカテゴリだからこそ、前提の記録がものを言います。リサイクルしやすい設計や減量・長寿命化は、そのまま削減につながる。Scope3の全体像はScope3とは、自社の廃棄はカテゴリ5(事業から出る廃棄物)、製品の使用はカテゴリ11(販売した製品の使用)もあわせてご覧ください。ESGの全体像はESG完全ガイドもどうぞ。
売った製品の、最期に宿るCO2。カテゴリ12の算定は、製品を作る段階から「どう捨てられるか」まで見通す、循環型の視点を育ててくれる。なお本記事は、環境省・GHGプロトコルなどの公開情報をもとに算定の考え方を整理したものであり、特定のツールや製品を推奨するものではありません。係数や制度は変わりうるため、算定時は最新の一次情報をご確認ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. Scope3カテゴリ12とカテゴリ5は何が違いますか?
A. どちらも廃棄物に関わりますが、誰の廃棄物かが違います。カテゴリ5(事業から出る廃棄物)は、自社の事業活動から出る廃棄物(工場の端材やオフィスのごみなど)の処理が対象です。一方、カテゴリ12(販売した製品の廃棄)は、自社が販売した製品を、お客さまが使い終わったあとに廃棄・処理する分が対象です。つまり、カテゴリ5は『自社が出したごみ』、カテゴリ12は『売った製品が最後にごみになる分』、と整理すると分かりやすいでしょう。
Q. カテゴリ12はどうやって計算しますか?
A. 主流は廃棄物種類別法と平均データ法です。廃棄物種類別法は、販売した製品に含まれる素材(鉄・プラスチックなど)の種類ごとの質量に、埋立・焼却・リサイクルといった処理方法別の排出原単位を掛けて合算します。平均データ法は、製品の総質量に平均的な廃棄処理の原単位を掛ける簡便な方法です。実際にどう廃棄されるかは購入者次第のため、処理方法の割合を想定する『廃棄シナリオ』を置いて計算する点がポイントになります。
Q. カテゴリ12は、いつの排出として計上しますか?
A. 実際に製品が廃棄されるのは数年後でも、その製品を『販売した年』に、廃棄までに見込まれる排出をまとめて計上します。これは、カテゴリ11(販売した製品の使用)と同じ考え方です。将来の廃棄を見積もる必要があるため、廃棄方法の想定(廃棄シナリオ)や素材構成といった前提を置き、その前提を明示することが大切です。前提を記録しておけば、後から見直しや比較もしやすくなります。本記事は特定のツールや製品を推奨するものではありません。
出典・参考(一次情報)
- 環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(サプライチェーン排出量の算定・排出原単位データベース)」
- 環境省「サプライチェーン排出量の算定方法」
- GHG Protocol「Corporate Value Chain (Scope 3) Standard」
最終更新日:2026年7月4日
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。