CDPとは|気候・水・森林の環境開示とスコア(A〜D)・ISSBとの関係を解説

2026.06.18
ESG開示

「あの企業はCDPでA評価」——ESGのニュースで、こんな表現を目にしたことはないでしょうか。CDPは、企業の環境への取り組みを測る「ものさし」として、世界中の投資家や企業に使われる存在です。高いスコアは、環境経営の優等生の証ともいえます。

本記事では、CDPとは何かを整理したうえで、A〜Dのスコアの仕組み、Aリストの実績、開示する質問書のテーマ、ISSB(IFRS S2)など他基準との関係、そして日本企業がCDPに回答する意味とスコアの高め方までを解説します。気候開示の枠組みはTCFDとは、世界共通の基準はISSBとはもあわせてご覧ください。

目次

CDPとは|世界の環境開示プラットフォーム

ESGの世界で、企業の環境への取り組みを測る「ものさし」として広く使われているのがCDPです。投資家も注目するこの仕組みを、まずは概要から押さえましょう。

投資家の求めに応じて環境情報を開示する

CDPは、もともと「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」という名称でした。現在は略称のCDPを正式名とする国際NGOです。企業や自治体が環境への取り組みを開示する、世界的なプラットフォームを運営。

特徴は、投資家や取引先の「求めに応じて」開示する点にあります。多くの機関投資家が、投資先にCDPへの回答を要請します。企業はそれに応える形で、環境データを開示する。こうして集まった情報は、世界最大級の環境データベースとなり、投資判断などに活用される貴重な資産です。

気候・水・森林という3つの柱

CDPが扱う環境テーマは、一つではありません。中心となるのが、気候変動・水セキュリティ・森林の3つです。脱炭素だけでなく、水資源や森林の保全まで、環境課題を幅広くカバーしているのが特徴です。

近年は、さらに生物多様性やプラスチック、海洋へと対象を広げています。気候から自然全般へ。CDPは、企業の環境パフォーマンスを総合的に映す鏡へと進化しているのです。

CDPのスコア(A〜D)

CDPの特徴は、開示内容がスコアとして評価される点です。AからDまでの段階で、企業の取り組みレベルが可視化されます。

CDPのスコア(A〜D)

取り組みの深さが4段階で表れる

A

リーダーシップ

ベストプラクティスを示す最高評価=Aリスト

B

マネジメント

環境課題に対処する取り組みを進めている

C

認識

自社の環境への影響を認識している

D

開示

環境情報を開示している(回答しないとF)

2025年のAリストは877社(前年比約70%増)。気候・水・森林すべてでAのトリプルAは23社

出典:CDP(スコアリング方法論)をもとにgreenote作成

開示・認識・マネジメント・リーダーシップの4段階

CDPのスコアは、おおむね4つのレベルで評価されます。最も基本的なのが、環境情報を開示している段階(開示:D)。次に、自社の環境への影響を認識している段階(認識:C)。さらに、課題に対処する取り組みを進めている段階(マネジメント:B)。そして最高評価が、ベストプラクティスを示すリーダーシップの段階(A)です。

低い順に、D→C→B→Aと積み上がるイメージです。AやBの中にも、A-、B-といった中間評価があります。なお、要請を受けても回答しない企業は、Fと評価されます。単に「やっている」だけでなく、どこまで踏み込んでいるかが、スコアに表れる仕組みです。

AリストとトリプルA

最高評価のAを獲得した企業は、「Aリスト」として公表されます。これは環境経営のトップランナーの証であり、企業にとって大きな名誉です。2025年には、877社がAリスト入りしました。前年から約70%の増加で、開示の裾野が広がっていることがうかがえます。

さらに、気候変動・水セキュリティ・森林の3分野すべてでAを獲得した企業は、「トリプルA」と呼ばれます。2025年にこれを達成したのは、わずか23社。あらゆる環境分野で最高水準を満たす、まさに別格の存在です。

何を開示するのか|質問書のテーマ

CDPで開示する内容は、質問書(questionnaire)に沿って答える形です。対象となるテーマは、年々広がっています。

CDP質問書のテーマ

気候から自然全般へ、対象は拡大中

スコア対象

3テーマ

気候変動

水セキュリティ

森林

拡大中

現状スコア対象外

生物多様性

プラスチック

海洋

2026年は海洋の新設問や森林の対象拡大。カカオ・コーヒー・天然ゴムが森林スコアに反映。

出典:CDP(質問書)をもとにgreenote作成

気候・水・森林(スコア対象)

スコアの対象となるのは、気候変動・水セキュリティ・森林の3テーマです。たとえば気候変動では、温室効果ガスの排出量や削減目標、リスク管理の状況などが問われます。排出量の算定はScope3まで広がります。算定の基礎はスコープ3排出量の算定方法もあわせてご覧ください。

水セキュリティでは水の使用や排水、汚染管理が、森林では木材や紙、パーム油などの調達が対象になります。2026年の質問書では、水セキュリティの開示がより詳細になり、従来は開示のみだったカカオ・コーヒー・天然ゴムが森林スコアに反映されるなど、対象が広がっています。

生物多様性・プラスチック・海洋へ拡大

スコア対象の3テーマに加え、CDPは開示の領域を広げ続けています。生物多様性、プラスチック、海洋といったテーマです。これらは現状ではスコアの対象外ですが、設問の整備が進行中です。

2026年の質問書では、海洋に関する設問が新設され、森林やその他の自然生態系のカバー範囲も広がります。気候から自然資本全体へ。CDPの守備範囲は、年々拡張しているのです。企業に問われる環境情報も、それだけ多面的になっています。

ISSB・他の基準との関係

CDPは、ほかの開示基準と切り離されたものではありません。むしろ、世界の基準と足並みをそろえる方向に進んでいます。

CDPと他基準の整合

一度の開示を、多くの基準に活かす

CDPの質問書

IFRS S2(ISSB)

2024年から完全整合=一度の開示で両対応

ESRS(CSRD)

EUの開示基準と整合

TNFD

自然関連開示

GRI

サステナビリティ報告

SBTN

自然の科学的目標

GHGプロトコル

排出量算定基準

CDPは主要な開示の枠組みをつなぐ「ハブ」的存在に。企業の二度手間を減らします。

出典:CDP(公開情報)をもとにgreenote作成

気候質問書はIFRS S2と整合(2024年〜)

CDPと他基準の関係で、最も重要なのがISSBとの整合です。CDPの気候変動質問書は、2024年からISSBの気候開示基準であるIFRS S2と完全に整合しています。

これが意味するのは、効率化です。企業はCDPに回答することで、ISSBが求める開示にも対応しやすくなります。いわば「一度の開示で、両方に対応できる」形です。乱立しがちな開示基準のなかで、CDPは企業の二度手間を減らす役割を果たしているのです。

TNFD・GRI・SBTNとの連携

整合の相手は、ISSBだけではありません。CDPの質問書は、EUのCSRD基準であるESRSや、自然関連開示のTNFDとも整合しています。さらに、TNFD・GRI・SBTN・GHGプロトコルなどとの整合も深めているところです。

つまりCDPは、世界の主要な開示の枠組みをつなぐ「ハブ」のような存在になりつつあります。自然版の科学的目標であるSBTNとの連携はSBTNとはもあわせてご覧ください。一度の回答が、多くの基準に活きる。これは、開示に追われる企業にとって、大きな利点です。

日本企業への示唆

なぜ多くの企業がCDPに回答するのでしょうか。背景にある動機と、スコアを高めるための要点を整理します。

投資家とサプライチェーンからの要請

企業がCDPに回答する動機は、大きく2つあります。一つは、投資家からの要請です。多くの機関投資家が、CDPのデータを投資判断に用います。回答しないこと自体が、評価を下げる要因になりかねません。

もう一つが、サプライチェーンからの要請です。大手の買い手企業が、取引先(サプライヤー)にCDPへの回答を求めるケースが増えています。つまり、自社が直接投資家と向き合っていなくても、取引先を通じて回答を求められることがあるのです。CDPは、ESG評価の重要な入力にもなります。評価の全体像はESG評価・格付けとはもあわせてご覧ください。

スコアを高めるには

では、よいスコアを得るにはどうすればよいのでしょうか。鍵は、単なる情報開示にとどまらないことです。スコアの段階が示すように、開示(D)から、認識(C)、マネジメント(B)、リーダーシップ(A)へと、取り組みの深さが問われます。

具体的には、温室効果ガス排出量を正確に算定し、科学的根拠に基づく削減目標を掲げ、リスク管理の体制を整えること。そして、それらを質問書で具体的に示すことです。一朝一夕には上がりませんが、地道な環境経営の積み重ねが、スコアという形で報われます。回答のプロセス自体が、自社の課題を見つめ直す機会にもなります。

まとめ|CDPは環境開示の「共通言語」

CDPは、企業の環境への取り組みを、世界共通のものさしで映し出す仕組みです。最後に、要点を振り返りましょう。

  • CDPとは、企業が投資家や取引先の求めに応じて環境情報を開示する世界的なプラットフォーム(国際NGO)。気候・水・森林が中心
  • 開示内容はA〜Dのスコアで評価される(開示→認識→マネジメント→リーダーシップ)。最高評価はAリスト(2025年は877社、トリプルAは23社)
  • 質問書のテーマは気候・水・森林(スコア対象)に加え、生物多様性・プラスチック・海洋へ拡大中
  • 気候質問書はIFRS S2(ISSB)と完全整合(2024年〜)。一度の開示で両対応でき、TNFD・GRI・SBTN等とも連携

開示基準が乱立するなかで、CDPは多くの枠組みをつなぐ「共通言語」として機能しています。投資家やサプライチェーンからの要請も強まる今、CDPへの対応は、もはや一部の先進企業だけのものではありません。回答を通じて自社の環境課題を見つめ直すこと。それが、これからの企業価値を支える土台になります。ESG・サステナビリティ開示の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

参考(出典):CDP(公式サイト・スコアリング方法論・質問書)ほか

編集責任

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サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

最終更新日:2026年6月21日

この記事の著者

greenote編集部

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