オフィスや工場から出るごみ、製造の過程で生じる端材や排水——。事業活動からは、さまざまな廃棄物が生まれます。その廃棄物を外部で処理するときにも、CO2は出る。これを計上するのが、Scope3のカテゴリ5「事業から出る廃棄物」です。ここでまず戸惑うのが、自社で燃やす分はScope1なのに、外部に委託した処理はカテゴリ5という切り分けでしょう。本記事では、カテゴリ5の対象範囲と計算ステップを、環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォームやGHGプロトコルの一次情報をもとに、実務目線で解説します。
≡この記事の目次
- 1Scope3カテゴリ5(事業から出る廃棄物)とは
- ►事業活動で生じた廃棄物の処理に伴う排出
- ►Scope1(自社での焼却)との違い
- 2対象になる廃棄物と処理方法
- ►対象になる廃棄物の種類
- ►埋立・焼却・リサイクル・排水処理
- 3計算の考え方――廃棄物種類別法が中心
- ►廃棄物量×処理方法別の排出原単位
- ►平均データ法・支出ベース法
- 4データはどこから取るのか
- ►産業廃棄物管理票(マニフェスト)
- ►処理方法別の排出原単位
- 5リサイクルと削減の考え方
- ►処理方法で排出が変わる
- ►減量・リサイクルと二重計上への注意
- 6CDP回答・開示での実務ポイント
- ►算定方法と対象範囲の記載
- ►実務で多い方法と現実的な進め方
- 7カテゴリ5の算定をどう進めるか
- 8出典・参考(一次情報)
Scope3カテゴリ5(事業から出る廃棄物)とは
まず、カテゴリ5が何を対象とするのかを整理します。「事業から出た廃棄物を、第三者が処理する」という視点から入りましょう。
事業活動で生じた廃棄物の処理に伴う排出
カテゴリ5は、報告する企業の事業活動から生じた廃棄物を、自社が所有・管理しない第三者の施設で処理・処分することに伴う排出を対象にする。工場の製造工程で出る端材や汚泥、オフィスから出る紙くず、そして排水——。こうした廃棄物を廃棄物処理業者に委託し、埋立や焼却、リサイクルなどが行われる際に、CO2やメタンが発生する。その分を、サプライチェーンの排出として計上するわけです。
ポイントは、対象が「事業から出た廃棄物」に限られるという点にあります。製品を使い終わったあとにお客さまが捨てる廃棄——これはカテゴリ12(販売した製品の廃棄)として別に扱う。Scope3とはの15カテゴリのうち、カテゴリ5が見るのは、あくまで自社の事業運営そのものから出るごみです。
Scope1(自社での焼却)との違い
カテゴリ5でとくに間違えやすいのが、Scope1との切り分けです。同じ「廃棄物の処理」でも、どこで処理するかで扱いが変わる。自社が所有・管理する施設で廃棄物を焼却するなら、その排出は自社の設備から直接出るため、Scope1(直接排出)に含めます。一方、外部の処理業者に委託して処理するなら、それはカテゴリ5(Scope3)になる。
つまり、線引きは「誰の施設で処理したか」です。自社の焼却炉で燃やせばScope1、業者に運んで処理してもらえばカテゴリ5——。この区別を最初に押さえておかないと、同じ排出を二重に数えたり、逆に漏らしたりしかねません。多くの企業では、廃棄物の処理を外部委託しているため、その分がカテゴリ5の中心になります。
対象になる廃棄物と処理方法
カテゴリ5が具体的に何を含むのかを整理します。廃棄物の種類と、その処理のされ方が鍵になります。
カテゴリ5に含まれるもの
対象になる廃棄物
主な処理方法(排出量のイメージ)
自社が所有しない第三者の施設での処理が対象。自社施設での焼却はScope1。
出典:GHGプロトコル・環境省の公開情報をもとにgreenote作成(棒の長さは大小関係のイメージ)
対象になる廃棄物の種類
カテゴリ5の対象になる廃棄物は、事業活動から出るものすべてが視野に入ります。製造業なら、加工で出る端材や汚泥、廃油、廃プラスチックといった産業廃棄物。オフィスなら、紙くずや使用済みの備品などの一般廃棄物。さらに、事業所から出る排水(廃水)の処理も、カテゴリ5に含まれる。
大切なのは、まず自社からどんな廃棄物が、どれだけ出ているかを洗い出すことです。多くの企業は、廃棄物の管理のために、種類ごとの排出量をすでに把握している。その既存のデータが、カテゴリ5算定の出発点になる。何が対象かに迷ったら、「事業運営から出て、外部で処理しているもの」を基準に考えると整理しやすいでしょう。
埋立・焼却・リサイクル・排水処理
もう一つの軸が、処理方法です。同じ廃棄物でも、どう処理されるかで排出量は大きく変わります。主な処理方法は、埋立(埋め立て)・焼却・リサイクル(再資源化)・堆肥化・排水処理など。たとえば、生ごみを埋め立てると、分解の過程でメタンが発生し、これは強力な温室効果ガスになる。焼却では、燃焼に伴うCO2が出る。
一方、リサイクルは、相対的に排出が小さくなる傾向があります。だからこそ、カテゴリ5の算定では、廃棄物を「種類」と「処理方法」の両方で分けてとらえることが欠かせません。「何を、どれだけ、どう処理したか」——この3点が、次に見る計算の土台だ。
計算の考え方――廃棄物種類別法が中心
カテゴリ5の計算の基本を整理します。廃棄物の量と、処理方法でとらえます。
量と処理方法でとらえる
(種類・処理方法ごとの重量) × 処理方法別の
排出原単位 = 排出量
同じ量でも、処理方法で排出量は大きく変わる(イメージ)
基本は廃棄物種類別法。種類と処理方法ごとに分けて計算するのが精度の高い方法。
出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成(棒の長さは大小関係のイメージ)
廃棄物量×処理方法別の排出原単位
カテゴリ5の主な算定方法が、廃棄物種類別法です。これは、廃棄物の種類と処理方法ごとの発生量(重量)に、その種類・処理方法に対応する排出原単位を掛ける方法で、GHGプロトコルが推奨する精度の高い方法とされます。「廃プラスチックを何トン焼却した」「汚泥を何トン埋め立てた」——こう分けて、それぞれに係数を掛けて合算する。
CDPに開示された算定方法を見ても、カテゴリ5では廃棄物種類別法が突出して多くなっています。廃棄物の種類・処理方法別の量は、後述する産業廃棄物管理票などから把握しやすく、精度の高い算定につなげやすいためです。まずは主要な廃棄物について、この方法で算定するのが基本になる。
平均データ法・支出ベース法
廃棄物種類別法のほかにも、算定の道はあります。一つが平均データ法。廃棄物の総量に、平均的な排出原単位を掛ける方法で、種類別の内訳が細かく分からないときに使います。もう一つが支出ベース法で、廃棄物処理にかかった費用に金額あたりの原単位を掛けて概算する。まずざっくりつかみたいときの方法です。
実務では、主要な廃棄物は種類別法で精度高く、細かいものは平均データ法で押さえる、といった使い分けが現実的です。いずれにせよ、処理方法によって排出係数が大きく変わるため、可能な範囲で処理方法を分けてとらえることが、算定の質を左右する。
データはどこから取るのか
廃棄物の量と処理方法をどう把握するか。活動量データと排出係数の入手先を整理します。
使うデータはどこから
活動量(廃棄物の量と処理方法)
産業廃棄物管理票(マニフェスト)や、廃棄物処理業者からの報告、社内の廃棄物管理記録から、種類・処理方法ごとの重量を把握する。
処理方法別の排出原単位(公的)
埋立・焼却・リサイクルなど処理方法別の係数。環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームの排出原単位データベースなど。
活動量は自社の廃棄物記録、原単位は公的な根拠を使い分ける。使った前提と係数を記録する。
出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
産業廃棄物管理票(マニフェスト)
カテゴリ5の活動量、つまり廃棄物の量と処理方法は、比較的とらえやすいのが特徴です。産業廃棄物を委託処理する際には、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付が法律で義務づけられており、そこに廃棄物の種類・数量・処理方法が記録される。このマニフェストが、種類別・処理方法別の活動量を把握する、有力なデータ源だ。
マニフェストのほか、廃棄物処理業者からの報告や、社内の廃棄物管理記録も活用できます。多くの企業は、廃棄物の適正管理のために、こうしたデータをすでに持っている。まずは既存の廃棄物管理データを棚卸しし、種類・処理方法ごとに整理することが、算定の第一歩になる。
処理方法別の排出原単位
活動量(重量)に掛ける、処理方法別の排出原単位は、公的なデータベースから入手します。日本では、環境省がグリーン・バリューチェーンプラットフォームで公開する排出原単位データベースに、廃棄物の種類・処理方法別の原単位が示されています。埋立・焼却・リサイクルなど、処理方法ごとに異なる係数を使い分ける。
ここでも、どの原単位を、いつの版で使ったかを記録することが欠かせません。方法論はGHGプロトコルのScope 3 Standardに沿って進めます。活動量は自社の廃棄物記録、原単位は公的な根拠、と使い分けるのが基本です。廃棄物の種類分けの前提も、あわせて記録しておきます。
リサイクルと削減の考え方
処理方法によって排出量は大きく変わります。減量・リサイクルが、どう削減につながるかを整理します。
減らす順番と処理方法の見直し
廃棄物処理の優先順位
処理方法で排出が変わる
埋立・焼却からリサイクルへ切り替えると、カテゴリ5の排出は下がる傾向。
まず減らす、次に処理方法を見直す。リサイクルの削減効果を差し引く際は二重計上に注意。
出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
処理方法で排出が変わる
カテゴリ5の削減を考えるうえで、鍵になるのが処理方法による排出量の違いです。一般に、埋立は、分解に伴うメタンの発生などから排出が大きくなりやすい。焼却は燃焼によるCO2が出る。一方、リサイクルは相対的に排出が小さい傾向があります。つまり、同じ量の廃棄物でも、埋立や焼却からリサイクルへ切り替えれば、カテゴリ5の排出は下がるわけです。
もっとも、削減の王道は、そもそもの廃棄物を減らす(減量・リデュース)ことです。廃棄物処理には、「発生抑制→再使用→再生利用(リサイクル)→熱回収→適正処分」という優先順位の考え方があり、上流ほど望ましいとされます。まず出さない、次に活かす——この順番が、削減の基本です。
減量・リサイクルと二重計上への注意
削減に取り組む一方で、算定上、注意したい点があります。それが、リサイクルによる削減効果の扱いです。リサイクルすると、他社が新たな資源を使わずに済むため、社会全体では排出が減るとされます。しかし、この「他社での削減効果」を、自社のカテゴリ5の排出量からそのまま差し引くと、二重計上になりうる。
こうした「回避された排出(アボイデッド・エミッション)」は、自社のインベントリ(排出量の計上)とは分けて扱うのが原則です。カテゴリ5では、あくまで自社の廃棄物を処理した際に出る排出を計上する。削減効果をアピールしたい場合は、別枠で、前提を明示して示すのが適切でしょう。算定範囲と前提を記録しておくことが、ここでも大切になります。
CDP回答・開示での実務ポイント
算定結果を、CDPなどでどう開示するか。カテゴリ5の押さえどころを整理します。
カテゴリ5の開示で押さえること
算定方法を選ぶ
廃棄物種類別法・平均データ法・支出ベース法などから、使った方法を選択する
対象範囲と処理方法を説明する
どの廃棄物を含めたか、埋立・焼却・リサイクルなど処理方法をどう分けたかを明示する
活動量と原単位を記載する
廃棄物の種類・処理方法別の重量などの活動量と、使った処理方法別原単位の出典・版を記す
どの範囲を、どんな前提と方法で算定したかを説明できることが信頼性につながる。
出典:CDP・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
算定方法と対象範囲の記載
カテゴリ5をCDPとはなどで開示する際は、他のカテゴリと同様に、評価ステータス・排出量・算定方法(廃棄物種類別法・平均データ法・支出ベース法など)を記します。カテゴリ5でとくに説明したいのが、対象範囲と処理方法の分け方です。どの廃棄物を含めたか、埋立・焼却・リサイクルといった処理方法をどう区別したか。範囲を明確にすることが、開示の質を高める。
活動量(廃棄物の種類・処理方法別の重量)と、使った処理方法別原単位の出典・版も記載します。廃棄物は、種類分けや処理方法の把握に前提が入るため、どんな考え方で分類・推計したかを説明できるようにしておくと、信頼性が高まるだろう。
実務で多い方法と現実的な進め方
CDPに開示された算定方法を見ると、カテゴリ5では廃棄物種類別法が中心で、平均データ法がこれに続きます。マニフェストなどから種類・処理方法別の量を把握しやすいため、精度の高い種類別法を使いやすいのが、このカテゴリの特徴です。一方で、原単位は公表値を使うことが多く、サプライヤー固有の一次データは少なめの傾向があります。
現実的な進め方は、まず既存の廃棄物管理データを棚卸しすることです。マニフェストや廃棄物管理記録がそろっていれば、種類別法で算定しやすい。カテゴリ5は、多くの企業ですでにあるデータを活用しやすく、着手のハードルが比較的低いカテゴリです。算定を通じて廃棄物の実態が見えれば、そのまま減量・リサイクルの取り組みにもつながる。
カテゴリ5の算定をどう進めるか
Scope3カテゴリ5(事業から出る廃棄物)は、事業活動から生じた廃棄物を第三者の施設で処理することに伴う排出を計上するものです。自社施設での焼却(Scope1)とは、処理する施設の所有者で区別します。計算は「廃棄物の種類・処理方法別の重量 × 処理方法別の排出原単位」という廃棄物種類別法が中心で、活動量は産業廃棄物管理票(マニフェスト)などから把握しやすいのが特徴です。
大切なのは、まず自社の廃棄物データを種類・処理方法ごとに棚卸しし、無理なく続けられる仕組みにすること。多くの企業ですでにあるデータを活かせるため、着手しやすいカテゴリです。埋立・焼却からリサイクルへの切り替えや、そもそもの減量は、そのまま削減につながっていく。Scope3の全体像はScope3とは、上流の輸送はカテゴリ4(輸送・配送 上流)もあわせてご覧ください。ESGの全体像はESG完全ガイドもどうぞ。
事業から出る、ごみ。カテゴリ5の算定は、廃棄物の実態を可視化し、減らす・活かすという行動へつなげる入り口でもある。なお本記事は、環境省・GHGプロトコルなどの公開情報をもとに算定の考え方を整理したものであり、特定のツールや製品を推奨するものではありません。係数や制度は変わりうるため、算定時は最新の一次情報をご確認ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. Scope3カテゴリ5とScope1は何が違いますか?
A. どちらも廃棄物に関わりますが、処理する場所(施設の所有者)が違います。カテゴリ5(Scope3)は、事業から出た廃棄物を、自社が所有・管理しない第三者の施設で処理・処分する場合の排出です。一方、自社が所有・管理する施設で廃棄物を焼却するなど、自社の設備から直接出る排出はScope1(直接排出)に含まれます。同じ『廃棄物の処理』でも、誰の施設で処理するかで、Scope1かカテゴリ5かが分かれる点に注意しましょう。
Q. カテゴリ5はどうやって計算しますか?
A. 主流は廃棄物種類別法です。廃棄物の種類と処理方法(埋立・焼却・リサイクルなど)ごとの発生量(重量)に、その種類・処理方法に対応する排出原単位を掛けて合算します。廃棄物の量は、産業廃棄物管理票(マニフェスト)などから把握できます。ほかに、総量に平均的な原単位を掛ける平均データ法や、処理費用から概算する支出ベース法もあります。処理方法によって排出係数が大きく変わるため、処理方法を分けてとらえるのがポイントです。
Q. リサイクルすると排出量は減りますか?
A. 処理方法によって排出係数が変わるため、埋立や焼却からリサイクルへ切り替えると、カテゴリ5の排出量は小さくなる傾向があります。さらに、そもそもの廃棄物を減らす減量(リデュース)が最も効果的です。ただし、リサイクルによって生じるとされる『他社での排出削減効果』を自社のカテゴリ5からそのまま差し引くと二重計上になりうるため、扱いには注意が必要です。使った前提や算定範囲を記録しておきましょう。本記事は特定のツールや製品を推奨するものではありません。
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出典・参考(一次情報)
- 環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(サプライチェーン排出量の算定・排出原単位データベース)」
- 環境省「サプライチェーン排出量の算定方法」
- GHG Protocol「Corporate Value Chain (Scope 3) Standard」
最終更新日:2026年7月3日
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。