CORSIA(国際航空のカーボンオフセット制度)とは|仕組み・フェーズと企業への影響を解説

2026.08.14
気候変動

最終更新日:2026年8月4日

飛行機の旅は便利な一方、多くのCO2を排出します。国境を越えて飛ぶ国際線の排出を、世界共通のルールで抑えようとする仕組みがCORSIA(コルシア)です。増えた排出分をカーボンオフセットで相殺する、国際航空のための制度です。

この記事では、CORSIAとは何か、なぜ必要なのか、仕組みと3つのフェーズ、適格クレジットやSAF(持続可能な航空燃料)の役割、そして課題と企業・日本への影響までを、中立的に整理します。

※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。ベースラインや適格クレジットの扱いは調整・更新が続いているため、最新・確定の内容は各公式情報をご確認ください。

CORSIAの基本の流れ
① 測る国際線のCO2排出量をモニタリング・報告(MRV)
② 比べる基準(ベースライン)を上回った増加分を算定
③ 相殺する適格なクレジットを購入して相殺(SAF利用で軽減)

この記事の目次

CORSIAとは|国際航空のCO2を相殺する国際制度

CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)とは、国際線の航空から出るCO2を対象に、その排出を一定水準に抑えることを目指す国際的な制度です。国連の専門機関であるICAO(国際民間航空機関)が策定しました。

ポイントは、排出そのものをゼロにするのではなく、増えた分をカーボンクレジットの購入で「相殺(オフセット)」する仕組みだという点です。航空需要の成長に伴う排出増を、まずは相殺によって抑えることが狙いとされています。

なぜ必要なのか|航空の脱炭素の難しさ

電化が難しい航空機の脱炭素

航空機の脱炭素は、簡単ではありません。自動車のように電気で動かすのが難しく、大量のエネルギーを必要とするため、当面は化石燃料への依存が続くと見られています。技術的に「減らしにくい」分野の一つです。

国際線ゆえの「世界共通ルール」

一方で、国際線の排出は特定の国に属さず、各国バラバラのルールでは抜け道が生じかねません。そこで、世界共通の枠組みとしてCORSIAがつくられました。根本的な削減技術が育つまでの「橋渡し」として、相殺を活用する考え方です。

仕組み|排出のモニタリングとオフセット

CORSIAの基本は、上図のとおり「測る・比べる・相殺する」の流れです。

  • 測る:航空会社が、国際線のCO2排出量をモニタリングし、報告する(MRV)。
  • 比べる:あらかじめ定めた基準(ベースライン)を上回った増加分を算定する。
  • 相殺する:その増加分に見合う適格なクレジットを購入し、相殺する。持続可能な航空燃料(SAF)を使えば、相殺すべき量を減らせる。

この仕組みにより、航空会社は排出の増加に「価格」を意識するようになり、効率化やSAF導入へのインセンティブが働くと期待されています。

3つのフェーズ|自主参加から義務へ

CORSIAは、段階的に対象と義務を広げる設計になっています。上図のように、大きく3つのフェーズに分かれます。

CORSIAの3つのフェーズ
2021〜2023

パイロットフェーズ

試行期間。参加は各国の自主的な選択にゆだねられた。

2024〜2026

第1フェーズ

引き続き自主参加。日本を含む多くの国が参加している。

2027〜2035

第2フェーズ

原則として加盟国に義務化(後発開発途上国など一部に例外)。

当初は自主参加でスタートし、2027年からの第2フェーズで原則義務へと移行します。日本は早くから参加しており、国内の航空会社も対象になっています。ただし、詳細な運用や参加状況は変わりうる点に留意が必要です。

適格クレジットとSAFの役割

相殺に使える「適格クレジット」の条件

CORSIAで相殺に使えるのは、どんなクレジットでもよいわけではありません。ICAOの技術的な審査を経て承認された、適格な排出削減ユニットに限られます。ボランタリー・カーボン市場の信頼性でも重視される「質」——追加性や、国をまたぐ際の相当調整(二重計上の防止)——が求められます。

パリ協定6条との関係とSAFの役割

ここでパリ協定6条との関係も論点になります。国際的に移転されるクレジットの扱いをそろえることで、CORSIAと各国の目標の間で排出が二重に数えられないようにする必要があるためです。また、SAF(持続可能な航空燃料)の利用は相殺義務を減らせるため、航空会社にとって根本的な削減の柱と位置づけられています。

課題と企業・日本への影響

期待の一方で、CORSIAにはいくつかの課題も指摘されています。上表のように、論点とポイントをセットで押さえておくと理解しやすくなります。

CORSIAの課題と論点

課題

ベースラインの設定。コロナ禍で排出が激減し、基準の妥当性が議論になった。

ポイント

2019年を基準にするなどの調整が行われたとされる。基準しだいで相殺義務が変わる。

課題

クレジットの質。相殺に使うクレジットが本当に削減につながるか。

ポイント

ICAOが承認したプログラムに限定し、相当調整・二重計上防止を求める。パリ協定6条との整合も論点。

課題

相殺への依存。オフセットは排出そのものを減らすわけではない。

ポイント

SAFの利用や機材の効率化など、根本的な削減と組み合わせることが重要。

企業にとっては、航空会社はもちろん、出張や物流で航空を使う一般の企業にも、コストや開示を通じて影響が及びます。相殺はあくまで橋渡しであり、削減貢献量の考え方と同じく、まず自らの排出をどう減らすかが問われます。

まとめ|「相殺」から「本当の削減」へ

CORSIAは、減らしにくい国際航空の排出に、世界共通のルールで歯止めをかけようとする取り組みです。相殺を入り口としつつ、最終的にはSAF(持続可能な航空燃料)や機材の効率化による「本当の削減」へと軸足を移していくことが求められています。

企業に大切なのは、相殺の仕組みを理解したうえで、それに頼りすぎないことです。航空需要そのものの見直しや、質の高いクレジットの選択、SAFの後押しなど、相殺と削減を組み合わせる姿勢が、これからの航空の脱炭素を支えます。

よくある質問(FAQ)

Q. CORSIA(コルシア)とは何ですか?

国際線の航空から出るCO2を対象に、その排出を一定水準に抑えることを目指す国際的な制度です。国連の専門機関ICAO(国際民間航空機関)が策定し、増えた排出分をカーボンクレジットの購入で相殺(オフセット)する仕組みです。

Q. なぜCORSIAが必要なのですか?

航空機は電化が難しく大量のエネルギーを使うため、脱炭素が難しい分野です。また国際線の排出は特定の国に属さないため、各国バラバラのルールでは抜け道が生じます。そこで世界共通の枠組みとして、根本的な削減技術が育つまでの橋渡しにCORSIAがつくられました。

Q. CORSIAの仕組みを教えてください。

「測る・比べる・相殺する」が基本です。航空会社が国際線のCO2をモニタリング・報告し(MRV)、基準(ベースライン)を上回った増加分を算定し、その分に見合う適格なクレジットを購入して相殺します。SAF(持続可能な航空燃料)を使えば相殺すべき量を減らせます。

Q. CORSIAのフェーズはどうなっていますか?

パイロットフェーズ(2021〜2023年)と第1フェーズ(2024〜2026年)は自主参加、第2フェーズ(2027〜2035年)は原則として加盟国に義務化されます(後発開発途上国など一部に例外)。運用や参加状況は変わりうるため最新情報の確認が必要です。

Q. どんなクレジットが使えるのですか?

どんなクレジットでもよいわけではなく、ICAOの技術的な審査を経て承認された適格な排出削減ユニットに限られます。追加性や、国をまたぐ際の相当調整(二重計上の防止)といった質が求められ、パリ協定6条との整合も論点です。

Q. SAFとの関係は?

SAF(持続可能な航空燃料)の使用は、相殺すべき排出量を減らせるため、航空会社にとって根本的な削減の柱と位置づけられています。相殺(オフセット)に頼りすぎず、SAFや機材の効率化と組み合わせることが重要です。

Q. どんな課題がありますか?

コロナ禍で排出が激減したことによるベースライン設定の妥当性、相殺に使うクレジットの質の確保、そして相殺への依存(排出そのものは減らない)などが指摘されています。

Q. 日本や企業への影響は?

日本は早くから参加しており、国内の航空会社も対象です。航空会社だけでなく、出張や物流で航空を使う企業にも、コストや開示を通じて影響が及びます。相殺を理解しつつ、自らの排出削減にも取り組む姿勢が求められます。

出典・参考資料(一次情報)

※ 本記事は上記の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した一般的な解説です。ベースラインや適格クレジットの扱いは調整・更新が続くため、最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。

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greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年8月14日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

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