電力系統とは|発電から送配電・小売の仕組みと同時同量をわかりやすく解説

再生可能エネルギー

スイッチを押せば、当たり前のように電気がつく。その裏側には、発電所から自宅まで電気を運ぶ、巨大で精緻な仕組みがあります。それが電力系統です。

電力系統とは、電気を発電所から需要家まで届けるための、発電・送電・変電・配電という一連の設備の総称を指します。電気が、いつでも安定して使える。その当たり前を支えているのが、この電力系統です。

本記事では、電力系統の意味と電気が届くまでの流れから、送電と配電の仕組み、日本の最新の電源構成、周波数と同時同量、そして脱炭素時代の課題までを、わかりやすく解説します。電力・エネルギーを学ぶ特集の基礎編として、お役に立てれば幸いです。

電気が届くまで|電圧の変化

送電ロスを抑えるため、いったん上げてから下げる

1発電所(発電)数千〜2万V
昇圧(電圧を上げる)
2変電所27.5万〜50万V
3送電線(長距離を送電)高電圧のまま
降圧(電圧を下げる)
4変電所・柱上変圧器段階的に降圧
5需要家(家庭・工場)100V/200V

変えているのは電圧(V)だけで、送電の途中で電力が増えるわけではありません。高電圧にするのは、長距離の送電ロスを抑えるためです。

目次

電力系統とは|電気が届くまでの仕組み

まずは、電力系統という言葉の意味と、電気が届くまでの全体像を押さえましょう。ここを理解すると、電力にまつわるニュースもぐっと読みやすくなります。

電力系統とは

電力系統は、発電から消費まで、電気の流れ全体を支える設備のネットワークです。発電所でつくられた電気は、送電線・変電所・配電線を通り、家庭や工場へと届けられます。この一連の設備が、電力系統です。

発電設備を、電気を送れるように系統へつなぐことを「系統連系」と呼びます。電力中央研究所の解説動画でも、電気を安定して届けるうえで、この電力系統全体の運用が重要だと説明されていました。私たちが意識することはほとんどありませんが、その安定があってこそ、快適な暮らしは成り立っているのです。

発電→送電→変電→配電→需要家

電気は、決まった道のりをたどって届きます。まず発電所で電気がつくられ、変電所で電圧を変えながら、送電線で遠くまで運ばれます。需要家に近づくと、配電用の変電所や柱上変圧器でさらに電圧が下げられ、配電線を通って各家庭や事業所に届くのです。

電柱から建物へ引き込まれる線を「引込線」といいます。発電から消費まで、電気はこうしてバトンをつなぐように運ばれていきます。長い旅路を、一瞬で駆け抜けているわけです。

発電・送配電・小売の3部門

電力系統は、大きく3つの部門に分けられます。電気をつくる「発電部門」、電気を運ぶ「送配電部門」、そして需要家に電気を販売する「小売部門」です。

かつては、地域の電力会社1社がこの3部門をすべて担っていました。しかし電力システム改革を経て、いまはそれぞれが別の役割として分かれる形です。この改革の詳細は、関連記事の電力システム改革とは|3つの柱・小売自由化と発送電分離で解説しています。

送電と配電|電圧を変えながら届ける

電気は、電圧を何段階も変えながら需要家へ届きます。なぜ高電圧で送るのか。その理由と仕組みを見ていきましょう。

なぜ高電圧で送るのか(送電ロス)

発電所から需要家までの距離は、決して短くありません。電気が送電線を流れると、電気抵抗によって熱が生じ、電力の一部が失われます。これを「送電ロス」といい、平均して数%が失われてしまうのです。

この送電ロスは、電圧が高いほど小さく抑えられます。だからこそ、発電所からは数十万ボルトという高電圧で送り出すのです。一気に家庭用まで電圧を下げるのではなく、高電圧のまま長距離を運ぶ。それが、損失を抑える知恵になります。

段階的に降圧して届ける

高電圧のまま、家庭にそのまま届けるわけにはいきません。そこで、需要家に近づくにつれ、変電所で電圧を段階的に下げていきます。数十万ボルトから、数万ボルト、数千ボルトへ。そして最後に、柱上変圧器(トランス)で100V/200Vまで下げられ、各家庭に届くのです。

交流の電気が広く使われているのは、この電圧変換が比較的容易だからです。段階的な降圧によって、効率と安全の両方が保たれるのです。電柱の上にある灰色の機器が、その最終段階を担う変圧器なのです。

責任分界点とは

電力会社と需要家の間には、設備の保安責任を分ける境界が存在します。これを「責任分界点」と呼びます。一般に、引込線が建物に取り付けられる点までが電力会社(送配電部門)の設備です。

この分界点を境に、保安の責任が分かれます。家庭ではあまり意識しませんが、電力設備を正しく管理するうえで欠かせない考え方です。なお、電力量計(メーター)などは、送配電部門の設備として扱われます。

日本の電源構成(最新)

電力系統に流れる電気は、何から作られているのでしょうか。日本の最新の電源構成と、今後の見通しを確認しましょう。

日本の電源構成(2023年度)

火力が約7割。再エネは着実に増加

火力
68.6%
LNG 32.9%/石炭 28.3%/石油等 7.4%
再生可能エネルギー
22.9%
太陽光 9.8%/水力 7.6%/バイオマス 4.1%/風力 1.1%/地熱 0.3%
原子力
8.5%

再エネは2013年度の約11%から増加。2040年度は再エネ4〜5割の見通しです(資源エネルギー庁)。

火力が約7割(2023年度)

日本の電気は、いまも大半を火力発電が支えています。資源エネルギー庁が公表した2023年度の電源構成では、火力発電が約68.6%を占めました。内訳は、天然ガス(LNG)が32.9%、石炭が28.3%、石油等が7.4%です。

火力は、安定して大量の電気をつくれる頼れる電源です。しかし、燃料を燃やすため、CO2を多く排出します。脱炭素の観点からは、この火力依存をどう減らすかが、大きな課題です。温室効果ガスの全体像は、関連記事の温室効果ガス(GHG)とは|種類・GWPと排出の現状もあわせてご覧ください。

再生可能エネルギーと原子力

火力に次ぐのが、再生可能エネルギーです。2023年度の再エネは22.9%を占め、その中心は太陽光(9.8%)でした。続いて水力(7.6%)、バイオマス(4.1%)、風力(1.1%)、地熱(0.3%)です。再エネは、2013年度の約11%から、着実に比率を高めてきました。

一方、原子力は8.5%です。東日本大震災の前には約3割を占めていましたが、震災後の長期停止を経て、稼働は限られています。低炭素な電源として、その位置づけは議論が続いているのが現状です。

2040年に向けた見通し

電源構成は、これから大きく変わっていく見通しです。国のエネルギー基本計画では、2040年度の電源構成として、再エネが4〜5割程度、原子力が2割程度、火力が3〜4割程度という姿が示されています。

火力を減らし、再エネを大幅に増やす。それが、脱炭素に向けた日本の電源の方向性です。再エネを主力電源としていくうえで、それを支える電力系統の役割は、ますます重要になっていくでしょう。

周波数と同時同量|安定供給の要

電力系統を安定させるには、需要と供給を絶えず一致させる必要があります。その鍵となる周波数と同時同量を解説しましょう。

同時同量と調整力

需要と供給を、常に一致させる

需要

家庭・工場などで使う電力

供給

発電所などがつくる電力

釣り合えば周波数は一定。崩れると周波数が乱れ、ずれ(インバランス)が生じ、停電のおそれも

発電量を細かく増減させる「調整力」が、刻々と需給を一致させています。

周波数(東日本50Hz・西日本60Hz)

交流の電気は、プラスとマイナスが周期的に入れ替わります。この1秒間の繰り返し回数が「周波数」で、ヘルツ(Hz)で表されます。日本では、富士川あたりを境に、東日本が50Hz、西日本が60Hzと分かれています。

これは明治時代に、東日本がドイツ製、西日本がアメリカ製の発電機を導入したことに由来します。同じ国内で周波数が違うのは、世界的にも珍しい構造です。この違いは、東西で電力を融通する際の障壁にもなり、周波数変換設備を介してやり取りされます。

同時同量とインバランス

周波数を一定に保つには、電力の需要と供給を絶えず一致させる必要があります。これを「同時同量」と呼びます。電気は大量に貯めておくことが難しいため、使う量と作る量を、常に釣り合わせなければなりません。

需要が増えれば発電機の回転は遅くなり、周波数は下がります。逆に需要が減れば、周波数は上がるという関係です。この需給のずれが「インバランス」です。インバランスが大きくなると、周波数が乱れ、機器の不具合や、最悪の場合は停電を招きます。

需給を調整する調整力

同時同量を実現するのが、「調整力」です。送配電事業者が電力系統を監視し、刻々と変わる需要に合わせて、発電量を細かく増減させます。秒単位の細かな変動から、数分・数十分の変動まで、複数の仕組みで対応します。

従来、この調整力は、主に火力発電の出力調整などが担ってきました。しかし再エネが増えると、調整の難しさは増します。そこで近年は、需要側からも調整力を提供する新しい仕組みが広がっているのです。

脱炭素時代の電力系統の課題

再生可能エネルギーの拡大は、電力系統に新たな難しさをもたらします。これからの系統運用の課題を整理しましょう。

日本の周波数は東西で異なる

富士川あたりを境に、東日本50Hz/西日本60Hz

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東日本 50Hz 西日本 60Hz
東日本(50Hz)北海道・東北・新潟・関東・山梨
西日本(60Hz)中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄

明治期に東はドイツ製、西は米国製の発電機を導入した名残。新潟・長野・静岡など境界付近は一部で混在し、東西の融通には周波数変換設備が要ります。

再エネの変動性という難しさ

再生可能エネルギーには、大きな特徴があります。太陽光や風力は、天候によって発電量が変わるのです。晴れれば多く、曇れば少ない。風が吹けば回り、やめば止まる。出力が一定ではありません。

この変動性が、電力系統の運用を難しくします。需要に合わせて発電量を調整したくても、再エネは思いどおりに増やせません。再エネを増やすほど、需給を一致させる同時同量の難易度は上がっていきます。

調整力と系統の増強

この難しさに対応する鍵が、調整力と系統の増強です。再エネの変動を補うため、柔軟に出力を変えられる電源や、蓄電池などの調整力が、これまで以上に重要になります。

加えて、再エネの適地(風の強い地域や日射の多い地域)と、電気を使う都市部は離れていることが多いものです。そのため、地域をまたいで電気を運ぶ送電網の増強も欠かせません。再エネの主力化は、それを支える系統の整備とセットなのです。

需要側の活用(VPP・DR)

もう一つの注目が、需要側を活用する発想です。これまで調整力は、発電する「供給側」が担うものでした。しかし近年は、電気を使う「需要側」からも調整力を引き出す試みが広がってきました。

蓄電池やEVといった需要側の機器を、まるで一つの発電所のように束ねて制御する。これがVPP(仮想発電所)やデマンドレスポンス(DR)です。脱炭素で再エネが増えるほど、こうした柔軟な仕組みの価値は高まります。再エネ電力の調達手段は、関連記事の再生可能エネルギー調達とPPAとは|調達手法の種類と企業の選び方もあわせてご覧ください。

まとめ|電力系統は脱炭素を支える基盤

電力系統とは、発電所から需要家まで電気を届ける、発電・送電・変電・配電の一連の設備でした。電気は高電圧で長距離を運ばれ、需要家に近づくほど段階的に降圧されて届きます。日本の電源は2023年度時点で火力が約68.6%を占め、再エネ22.9%、原子力8.5%と続きます。

電力系統の安定には、需要と供給を一致させる同時同量が欠かせません。東日本50Hz・西日本60Hzという周波数を一定に保つため、調整力が刻々と需給を調整します。そして再生可能エネルギーが増えるほど、その変動を吸収する調整力や系統の増強、需要側を活用するVPP・DRの重要性が高まっていきます。

電力系統は、ふだん意識されることのない、社会の縁の下の力持ちです。しかし脱炭素を進めるいま、その役割はかつてなく重要になっています。続く特集記事では、電力を取引する電力市場や、需給調整市場、VPP・V2Gといった新しい取り組みを、順に掘り下げていきます。ESG・脱炭素の全体像はESGとは|意味・E/S/G・情報開示・投資まで完全ガイドもあわせてご覧ください。greenoteでは、脱炭素やエネルギーの実務情報を、これからもお届けしていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. 電力系統とは何ですか? A. 電力系統とは、電気を発電所から需要家(家庭や工場)まで届けるための、発電・送電・変電・配電の一連の設備の総称です。発電所でつくられた電気は、送電線・変電所・配電線を経由して各家庭や事業所に届きます。電力系統は大きく、発電部門・送配電部門・小売部門の3つに分けられます。

Q. なぜ電気は高電圧で送られるのですか? A. 送電中の電力損失(送電ロス)を抑えるためです。電気が送電線を流れると、抵抗によって熱が発生し、電力の一部が失われます。この損失は電圧が高いほど小さくなるため、発電所からは数十万ボルトの高電圧で送り、需要家に近づくにつれて変電所で段階的に電圧を下げ、最終的に家庭用の100V/200Vにして届けます。

Q. 日本の電源構成はどうなっていますか? A. 資源エネルギー庁が公表した2023年度のデータでは、火力発電が約68.6%(LNG32.9%・石炭28.3%・石油等7.4%)、再生可能エネルギーが22.9%、原子力が8.5%です。依然として火力が約7割を占めますが、再エネは2013年度の約11%から着実に増えています。2040年度には再エネが4〜5割まで高まる見通しです。

Q. 同時同量とは何ですか? A. 同時同量とは、電力の需要と供給を、常に一致させることをいいます。電気は大量に貯めておくことが難しいため、使う量と作る量が釣り合っていないと、周波数が乱れ、最悪の場合は停電につながります。需要と供給のずれ(インバランス)を防ぐため、発電量を細かく調整しながら、需給のバランスが保たれています。

Q. 日本の周波数はなぜ東西で違うのですか? A. 東日本が50Hz、西日本が60Hzと異なります。これは明治時代に、東日本がドイツ製、西日本がアメリカ製の発電機を導入したことに由来します。富士川あたりを境に分かれており、東西で電力を融通する際は周波数変換設備が必要です。同じ国内で周波数が異なるのは、世界的にも珍しい構造です。

Q. 再生可能エネルギーが増えると電力系統にどんな課題がありますか? A. 太陽光や風力は天候によって発電量が変動するため、需要と供給を一致させる同時同量が難しくなります。そのため、変動を補う「調整力」の確保や、送電網の増強が課題となります。近年は、蓄電池やEVなど需要側の機器を束ねて活用するVPPやデマンドレスポンスも、調整力の新たな担い手として期待されています。

この記事の著者

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