最終更新日:2026年8月4日
エアコンや冷蔵庫に欠かせない冷媒として使われてきた代替フロン(HFC)。オゾン層を破壊しない「環境にやさしい」物質として広まりましたが、じつは強力な温室効果ガスでもあります。いま世界は、このHFCの削減に動き出しています。
この記事では、代替フロン(HFC)とは何か、フロンの3世代の違い、なぜ問題なのか、国際的な枠組み「キガリ改正」、日本のフロン排出抑制法、そして企業への影響と対応までを、中立的に整理します。メタンと同じく、CO2以外の温室効果ガスとして近年注目が高まっているテーマです。
※本記事は2026年時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。削減スケジュールや規制内容は更新されるため、最新・確定の内容は各公式情報をご確認ください。
この記事の目次
代替フロン(HFC)とは|オゾン層は守るが、温暖化は進める
フロン類とは、炭素・フッ素・塩素・水素などからなる人工の化合物の総称です。無色・無臭で扱いやすく、冷やす力に優れることから、冷媒などとして広く普及しました。
その一つが代替フロン(HFC=ハイドロフルオロカーボン)です。塩素を含まないためオゾン層は破壊しませんが、大気中で強い温室効果を発揮します。「オゾン層は守るが、温暖化は進める」——ここに、HFCが抱える難しさがあります。
フロンの3世代|CFC・HCFC・HFCの違い
フロンは、規制の歴史とともに「世代交代」してきました。大きく3つに整理すると、性質の違いがよくわかります。
CFC(クロロフルオロカーボン)
オゾン層を大きく破壊。モントリオール議定書で全廃された。
HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)
オゾン層破壊はCFCより小さいが残る。段階的に全廃へ。
HFC(ハイドロフルオロカーボン)
塩素を含まずオゾン層は壊さないが、強力な温室効果ガス。
オゾン層を守るためにCFCからHCFC、そしてHFCへと置き換えが進みました。ところが、最後に主流となったHFCが、今度は温暖化の観点で問題になったのです。一つの課題を解決した先に、別の課題が現れた形といえます。
なぜ問題なのか|非常に高い温室効果
HFCが問題視される最大の理由は、上図のとおり温室効果が非常に大きいことです。同じ重さで比べたときの温室効果(地球温暖化係数=GWP)は、種類によってCO2の数百倍から、1万倍を超えるものもあるとされます。
排出量そのものはCO2に比べれば小さいものの、少量でも影響が大きいのが特徴です。エアコンや冷蔵庫の冷媒として使われるため、使用中の漏えいや、機器を廃棄する際の放出が主な排出源になります。GHGプロトコルでも、HFCは算定対象の温室効果ガスに含まれています。
モントリオール議定書とキガリ改正|HFCの段階的削減
モントリオール議定書(1987年)
フロンをめぐる国際的な枠組みが、モントリオール議定書です。1987年に採択され、オゾン層を破壊するCFCやHCFCを規制・全廃へと導いてきました。国際協調の成功例としてよく知られています。
キガリ改正(2016年)でHFCも規制へ
この議定書を2016年に改正したのが、キガリ改正です。オゾン層は壊さないものの温暖化係数の高いHFCを、段階的に削減(フェーズダウン)していくことを定めました。2019年に発効し、先進国から順に、途上国も後年から削減に取り組む仕組みです。オゾン層保護の枠組みが、気候変動対策にも役割を広げた点が特徴です。
日本の対策|フロン排出抑制法
フロン排出抑制法の全体像
日本の中心的な制度が、フロン排出抑制法です。フロンの製造から使用、廃棄までのライフサイクル全体を対象に、排出を抑える仕組みを定めています。地球温暖化対策推進法とあわせて、フロン対策の柱となっています。
業務用機器に求められる点検・回収
とくに業務用の冷凍・空調機器については、使用する事業者(管理者)に定期点検などが求められ、機器を廃棄する際には登録業者による冷媒の回収が義務づけられています。あわせて、温室効果の小さい低GWP機器やノンフロン機器への転換も進められています。
企業への影響と対応|冷媒の転換と回収
HFCは、冷凍・空調機器を持つ多くの企業に関わります。上表のように、課題と打ち手をセットで捉えると、対応の勘所が見えてきます。
課題
使用中の漏えい。業務用の冷凍・空調機器から冷媒が少しずつ漏れる。
打ち手
定期点検で漏れを早期に見つけ、補修する(フロン排出抑制法の管理者義務)。
課題
廃棄時の放出。機器を廃棄する際に冷媒が大気へ出てしまう。
打ち手
廃棄時は登録業者による回収を徹底する(回収は法律上の義務)。
課題
高GWP冷媒への依存。従来のHFCは温室効果が非常に大きい。
打ち手
低GWP冷媒(HFO)や自然冷媒(CO2・アンモニア・炭化水素)へ計画的に転換する。
食品・小売・製造・物流など、冷凍・空調を多用する業種ほど影響は大きくなります。冷媒の管理と転換は、カーボンフットプリントやScope1排出の削減にも直結します。見えにくいガスだからこそ、点検と記録による「見える化」が、着実な削減の第一歩です。
まとめ|「見えないガス」を見える化して減らす
代替フロン(HFC)は、オゾン層保護のために生まれながら、今度は温暖化対策の課題となった物質です。キガリ改正やフロン排出抑制法により、世界と日本は、その削減へと大きく舵を切っています。
企業に求められるのは、まず自社が使う冷媒を把握し、漏えいを防ぎ、廃棄時に確実に回収すること。そして、低GWP・自然冷媒への転換を計画的に進めることです。CO2だけでなくHFCにも目を向けることが、カーボンニュートラルやネットゼロに向けた着実な一歩になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 代替フロン(HFC)とは何ですか?
塩素を含まないためオゾン層を破壊しないフロン類(ハイドロフルオロカーボン)で、エアコンや冷蔵庫の冷媒などに広く使われてきました。ただし、大気中で強い温室効果を発揮する温室効果ガスでもあります。
Q. 特定フロン・指定フロンとの違いは何ですか?
フロンは大きく3世代に分かれます。特定フロン(CFC)はオゾン層を大きく破壊、指定フロン(HCFC)は破壊が小さいものの残る、代替フロン(HFC)はオゾン層を壊さないが強力な温室効果ガス、という違いです。
Q. なぜHFCが問題なのですか?
温室効果が非常に大きいためです。同じ重さで比べたときの温室効果(GWP)は、種類によってCO2の数百倍から1万倍を超えるものもあるとされます。少量でも影響が大きく、使用中の漏えいや廃棄時の放出が主な排出源です。
Q. モントリオール議定書とキガリ改正とは何ですか?
モントリオール議定書(1987年採択)は、オゾン層を破壊するCFCやHCFCを規制・全廃へ導いてきた国際的な枠組みです。2016年のキガリ改正は、これを改正し、温暖化係数の高いHFCを段階的に削減することを定めました(2019年発効)。
Q. 日本のフロン排出抑制法とは何ですか?
フロンの製造から使用、廃棄までのライフサイクル全体を対象に排出を抑える日本の法律です。業務用の冷凍・空調機器の管理者には定期点検が、廃棄時には登録業者による冷媒の回収が求められ、低GWP・ノンフロン機器への転換も進められています。
Q. HFCはどこで使われているのですか?
エアコンや冷蔵庫・冷凍庫の冷媒、断熱材の発泡剤、スプレー(エアゾール)などに使われています。とくに冷媒としての用途が多く、使用中や廃棄時の排出が課題です。
Q. 企業にとっての影響は何ですか?
冷凍・空調機器を使う多くの企業に関わります。使用中の漏えい、廃棄時の放出、温室効果の大きい従来型冷媒への依存が課題で、食品・小売・製造・物流など冷凍空調を多用する業種ほど影響が大きくなります。
Q. 企業はどう対応すべきですか?
まず自社の冷媒を把握し、定期点検で漏えいを防ぎ、廃棄時に確実に回収することです。そのうえで、低GWP冷媒(HFO)や自然冷媒(CO2・アンモニア・炭化水素)への計画的な転換を進めることが重要です。
出典・参考資料(一次情報)
※ 本記事は上記の公表情報をもとにgreenote編集部が整理した一般的な解説です。削減スケジュールや規制内容は更新されるため、最新・確定の内容は各公式情報でご確認ください。
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最終更新日:2026年8月14日