温室効果ガス(GHG)とは|種類・GWPと排出の現状・削減のポイントを解説

2026.06.12
気候変動

「温室効果ガスを減らそう」。よく耳にする言葉です。けれど、それが何なのか、なぜ地球を暖めるのかを、改めて説明するのは案外むずかしいものです。

温室効果ガス(GHG)とは、大気中で熱を吸収・再放射し、地表付近の気温を上昇させる働きを持つ気体の総称を指します。二酸化炭素やメタンが、その代表例です。適度な温室効果は、私たちの生命に欠かせません。問題は、人間活動によってその濃度が高まり、温暖化が加速している点にあります。

本記事では、温室効果ガスの意味と仕組みから、主な種類、GWP(地球温暖化係数)、世界と日本の排出の現状、削減目標、そして企業に求められる算定・開示まで、できるだけわかりやすく解説します。脱炭素の基礎をつかむ一助になれば幸いです。

温室効果のメカニズム

熱を地表付近にとどめる仕組み

1

太陽光が地表を暖める

太陽からのエネルギーが地表に届き、地面や海を暖める

2

地表が熱を放射する

暖まった地表が、熱(赤外線)を宇宙へ放射する

3

GHGが熱を再放射

温室効果ガスが熱の一部を吸収し、地表付近にとどめる

適度な温室効果は生命に必要。濃度の上昇で気温が上がりすぎることが問題です。

この記事の目次

温室効果ガス(GHG)とは|地球を暖める気体

まずは、温室効果ガスという言葉の意味と、地球を暖める仕組みを押さえましょう。ここを理解すると、削減がなぜ重要なのかも腑に落ちます。

温室効果ガスとは

温室効果ガスは、英語のGreenhouse Gasを略して「GHG」とも呼ばれます。大気中にあって、地表から宇宙へ逃げようとする熱を吸収し、再び地表へ放射する性質を持つ気体です。

解説動画『それ、ちゃんと説明できる?温室効果ガス(GHG)とは』でも、こうした熱を捕まえる働きが、温暖化を考えるうえでの出発点だと整理されていました。代表的なのは二酸化炭素ですが、実際には複数の気体がこの役割を担っています。

温室効果のメカニズム

仕組みは、3つの段階で考えるとわかりやすいでしょう。まず、太陽の光が地表に届き、地面や海を暖めます。次に、暖まった地表が、その熱を赤外線として宇宙へ放射します。

ここで登場するのが温室効果ガスです。放射された熱の一部を吸収し、再び地表へ向けて放射する。この働きによって、熱が地表付近にとどまり、地球は暖かく保たれます。温室効果ガスは、地球にとっての毛布のような存在だといえるでしょう。

なぜ「ちょうどよい温室効果」が崩れたのか

実は、温室効果そのものは悪者ではありません。もし温室効果がまったくなければ、地球の平均気温はマイナス19℃ほどになり、生命は生きられないとされています。適度な温室効果があるからこそ、いまの温暖な気候が保たれてきました。

問題は、そのバランスが崩れたことにあります。産業革命以降、化石燃料の大量消費などによって、大気中の温室効果ガスの濃度が急激に高まりました。毛布が厚くなりすぎたわけです。解説動画『地球温暖化とは?』でも、この濃度上昇が温暖化の主因だと説明されているのです。

世界の年平均気温偏差の推移(気象庁)
世界の年平均気温は長期的に上昇を続けている(トレンド +0.76℃/100年)。
出典:気象庁(環境省「脱炭素ポータル」より)

温室効果ガスの主な種類

ひとくちに温室効果ガスといっても、種類はさまざまです。代表的な二酸化炭素から、強力な温室効果を持つフロン類まで、主なガスを確認しましょう。

主な温室効果ガスとGWP

種類ごとに発生源と温室効果の強さが異なる

温室効果ガス主な発生源GWP(CO2=1)
二酸化炭素(CO2)化石燃料の燃焼など1
メタン(CH4)畜産・稲作・廃棄物など約25
一酸化二窒素(N2O)農業・燃料の燃焼など約298
フロン類(HFCs・PFCs・SF6・NF3)冷媒・半導体・電気絶縁など数千〜約2万

CO2は量が圧倒的に多く影響が最大。フロン類は量は少ないが極めて強力です。

二酸化炭素(CO2)

温室効果ガスの代表格が、二酸化炭素(CO2)です。石炭・石油・天然ガスといった化石燃料の燃焼によって、大量に排出されます。火力発電、工場、自動車、暖房など、私たちの暮らしのあらゆる場面が発生源です。

1つあたりの温室効果は、後述するフロン類ほど強くありません。しかし、排出される量が圧倒的に多いため、温暖化への寄与は最大とされています。CO2をいかに減らすかが、脱炭素の中心的な課題だといえます。

メタン(CH4)と一酸化二窒素(N2O)

二酸化炭素に次いで重要なのが、メタン(CH4)と一酸化二窒素(N2O)です。メタンは、家畜のげっぷや稲作、廃棄物の埋め立て、化石燃料の採掘などから発生します。その温室効果は、CO2の約25倍にもなります。

一酸化二窒素は、農業での肥料の使用や、燃料の燃焼などから排出されます。こちらの温室効果は、CO2の約298倍です。量はCO2より少ないものの、1つあたりの影響が大きいため、無視できない存在です。

フロン類(HFCs・PFCs・SF6・NF3)

フロン類(代表例が代替フロン(HFC))は、人工的に作られた気体です。ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)が含まれます。エアコンの冷媒や、半導体の製造、電気の絶縁などに使われてきました。

これらの特徴は、CO2の数千倍から数万倍という、桁外れに強い温室効果を持つ点にあります。たとえば六フッ化硫黄は、CO2の約2万倍ともいわれます。排出量こそ少ないものの、わずかな漏えいでも大きな影響を及ぼすため、厳格な管理が求められます。

GWP(地球温暖化係数)とCO2換算

種類の違うガスを、どう比べ、どう合算するのでしょうか。その鍵となるGWPと、CO2換算という共通のものさしを解説します。

GWP(地球温暖化係数)とは

ここで登場するのが、GWP(地球温暖化係数)です。これは、各温室効果ガスが二酸化炭素の何倍の温室効果を持つかを示した数値になります。英語のGlobal Warming Potentialを略した言葉です。

CO2を基準の「1」とし、ほかのガスをその何倍かで表します。メタンなら約25、一酸化二窒素なら約298、といった具合です。なお、GWPはガスが大気にとどまる期間によっても変わるため、一般には100年間で評価した値が使われます。

主なガスのGWP

主なガスのGWPを並べると、その差は歴然です。二酸化炭素が1、メタンが約25、一酸化二窒素が約298。そしてフロン類になると、数千から数万という大きな値です。

ただし、注意したいのは、GWPの高さが、そのまま影響の大きさを意味しないことです。いくらGWPが高くても、排出量がごくわずかなら、全体への影響は限られます。逆にCO2は、GWPは1でも、膨大な量が排出されるため、最大の影響をもたらすわけです。

なぜCO2換算でそろえるのか

種類も影響度も違うガスを、ばらばらに語っても、全体像はつかめません。そこで使うのが、CO2換算(CO2e)という考え方です。各ガスの排出量にGWPを掛け、二酸化炭素の量に換算してから合算します。

こうすれば、すべての温室効果ガスを、CO2という1つのものさしで比べられます。「当社の排出量は年間〇トンCO2換算」と語れるのは、この仕組みのおかげです。排出量の算定や開示は、すべてこのCO2換算を土台に進みます。

世界と日本の排出の現状

温室効果ガスは、世界でどれだけ、何が排出されているのでしょうか。世界全体の内訳と、日本の最新の排出量を確認しましょう。

世界の温室効果ガス排出量の内訳

二酸化炭素が最大、およそ4分の3を占める

二酸化炭素 CO2
約76%
メタン CH4
約16%
一酸化二窒素 N2O
約6%
フッ素系ガス
約2%

割合は出典・年により変動しますが、CO2が最大という点は共通です。化石燃料由来のCO2をどう抑えるかが世界共通の課題です。

世界の排出量と内訳(CO2が最大)

世界全体で見ると、排出される温室効果ガスの最大の割合を占めるのは、二酸化炭素です。出典や年によって幅はありますが、CO2だけでおよそ4分の3を占めるとされています。

残りを、メタン、一酸化二窒素、フッ素系ガスが分け合います。解説動画『温室効果ガスって正直なに?』でも、世界の排出はCO2が中心だと整理されていました。つまり、化石燃料由来のCO2をどう抑えるかが、世界共通の最大の論点になります。

日本の排出量(2022年度の実績)

日本に目を向けましょう。環境省によれば、2022年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は、約10億8,500万トン(CO2換算)でした。これは前年度から減少し、2013年度比で約22.9%の減少にあたります。算定開始以来、過去最低の水準です。

国際的に見ると、日本は世界のCO2排出量の約2.9%を占め、世界第5位の排出国にあたります。排出量は着実に減ってきましたが、さらなる削減への道のりは、なお険しいといえるでしょう。

部門別の特徴とエネルギー起源CO2

日本の排出量の大半は、二酸化炭素が占めます。なかでも中心となるのが、エネルギーを使うことで生じる「エネルギー起源CO2」です。発電、工場、運輸、家庭。電気や燃料を使うあらゆる場面が、その発生源になります。

日本のCO2排出量の部門別内訳(電気・熱配分前後)
日本のCO2排出量の部門別内訳。発電などのエネルギー転換部門の排出を、電気・熱の使用先である最終消費部門に割り振ったのが「配分後」。
出典:環境省「脱炭素ポータル」

だからこそ、再生可能エネルギーへの転換や、省エネルギーの推進が、削減の柱として重視されるわけです。脱炭素社会への移行の全体像は、関連記事のカーボンニュートラルとは|意味・脱炭素の取り組みと企業の進め方もあわせてご覧ください。

削減目標と国際的な枠組み

排出量を減らすため、世界と日本はどんな目標を掲げているのでしょうか。パリ協定から日本のネットゼロ目標まで整理しましょう。

日本の温室効果ガス排出量と削減目標

測る → 減らす → 実質ゼロへ

2013年度
削減目標の基準年 ― これ以降の削減率を測る起点
2022年度
約10.85億トン(CO2換算) ― 2013年度比 約22.9%減・過去最低
2030年度
2013年度比 46%削減 ― さらに50%の高みへ挑戦
2050年
カーボンニュートラル(ネットゼロ) ― 排出を実質ゼロに

日本は世界のCO2排出の約2.9%・第5位。目標はパリ協定の1.5℃目標と整合します。

パリ協定と1.5℃目標

国際的な枠組みの中心にあるのが、2015年に採択された「パリ協定」です。世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑えることを目指すものです。

この1.5℃目標を達成するには、世界の排出量を2030年までに大幅に減らす必要があります。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2030年までに世界全体で約43%の削減が必要だと指摘しました。残された時間は、決して長くありません。

日本の目標(2030年46%削減・2050年ネットゼロ)

日本も、この国際的な流れの中で、野心的な目標を掲げています。まず、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減すること。さらに、50%の高みに向けて挑戦を続ける方針も示しました。

そして、より長期の目標が、2050年の「カーボンニュートラル」です。排出量を実質的にゼロにする、という宣言になります。これらの目標は、パリ協定の1.5℃目標と歩調を合わせたものです。

ネットゼロ・カーボンニュートラルとの関係

ここでいう「実質ゼロ」とは、排出を完全にゼロにする意味ではありません。排出せざるを得ないぶんを、森林などによる吸収や除去で相殺し、差し引きでゼロにする考え方です。これをネットゼロ(カーボンニュートラル)と呼びます。

温室効果ガスの削減と、吸収量の確保。この両輪で、ネットゼロは達成へ近づきます。気候関連のリスクと機会をどう開示するかは、関連記事のTCFDとは|4つの柱・11項目とシナリオ分析・義務化の動向でも解説しています。

企業に求められる算定と開示

削減の第一歩は、自社の排出量を正しく測ることです。企業が温室効果ガスを算定・開示するための枠組みを確認しましょう。

GHGプロトコルとScope(算定の枠組み)

企業が排出量を算定・報告する際の世界標準が、GHGプロトコルです。この基準は、排出量を3つの「Scope」に区分します。Scope1が自社の直接排出、Scope2がエネルギー起源の間接排出、Scope3がそれ以外のサプライチェーン全体の排出です。

自社だけでなく、調達から販売後までを視野に入れる。それが現代の排出量算定の考え方です。GHGプロトコルやScopeの詳細は、関連記事のGHGプロトコルとは|Scope1・2・3と算定の基準・組織境界で詳しく解説しています。

7つのガスをCO2換算で測る

算定では、これまで見てきた7つの温室効果ガスが対象です。二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、そしてフロン類になります。それぞれの排出量に、GWPを掛けます。

こうして、すべてのガスをCO2換算でそろえ、合算します。解説動画『地球温暖化の仕組みと温室効果ガスの種類』でも、種類ごとの特徴を踏まえて測る重要性が語られていました。サプライチェーン全体の算定の進め方は、関連記事のScope3とは|サプライチェーン排出量の算定・削減・開示も参考になります。

見える化から削減へ

排出量を測ることは、それ自体が目的ではありません。どこで、どれだけ排出しているかが見えて初めて、効果的な削減策が立てられます。測ることは、減らすための第一歩なのです。

近年は、有価証券報告書などでの排出量開示も広がってきました。正確な算定の重要性は、年々増しているのです。まずは自社の排出を見える化することが、すべての出発点になるでしょう。

まとめ|温室効果ガスを知ることが脱炭素の出発点

温室効果ガスとは、大気中で熱を吸収・再放射し、地表付近を暖める気体でした。適度な温室効果は生命に必要ですが、人間活動による濃度上昇が、地球温暖化を引き起こしています。代表的なCO2のほか、メタン、一酸化二窒素、フロン類があり、その影響度はGWPという係数で表され、すべてCO2換算で合算されます。

世界の排出はCO2が最大の割合を占め、日本の2022年度の排出量は約10億8,500万トン(CO2換算)で、過去最低を記録しました。日本は2030年度に2013年度比46%削減、2050年にネットゼロという目標を掲げています。そして企業には、GHGプロトコルに沿って、7つのガスをCO2換算で算定・開示することが求められます。

温室効果ガスを正しく知ることは、脱炭素への確かな出発点です。仕組みを理解すれば、ニュースで語られる目標や企業の取り組みの意味も、くっきりと見えてきます。まずは自社や暮らしのなかで、どこから排出が生まれているのかに目を向けてみてはいかがでしょうか。ESG・サステナビリティ開示の全体像はESGとは|意味・E/S/G・情報開示・投資まで完全ガイドもあわせてご覧ください。greenoteでは、脱炭素やサステナビリティの実務情報を、これからもお届けしていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. 温室効果ガスとは何ですか? A. 温室効果ガスとは、大気中で太陽からの熱(地表が放射する赤外線)を吸収・再放射し、地表付近の気温を上昇させる働きを持つ気体の総称です。二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などが代表例です。適度な温室効果は生命の維持に欠かせませんが、人間活動による濃度の上昇が、地球温暖化の主な原因とされています。

Q. 温室効果ガスにはどんな種類がありますか? A. 代表的なのは二酸化炭素(CO2)で、温暖化への影響が最も大きいガスです。ほかに、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、そしてハイドロフルオロカーボン(HFCs)・パーフルオロカーボン(PFCs)・六フッ化硫黄(SF6)・三フッ化窒素(NF3)といったフロン類があります。これら7種類が、京都議定書やGHGプロトコルで対象とされています。

Q. GWP(地球温暖化係数)とは何ですか? A. GWP(Global Warming Potential)とは、各温室効果ガスが二酸化炭素の何倍の温室効果を持つかを示した数値です。CO2を1とすると、メタンは約25倍、一酸化二窒素は約298倍、六フッ化硫黄(SF6)は数千〜約2万倍にもなります。GWPを用いることで、種類の違うガスをCO2換算という共通のものさしで合算できます。

Q. 日本の温室効果ガス排出量はどれくらいですか? A. 環境省によれば、2022年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は約10億8,500万トン(CO2換算)でした。これは2013年度比で約22.9%の減少にあたり、算定開始以来の過去最低を記録しています。日本は世界のCO2排出量の約2.9%を占め、世界第5位の排出国です。

Q. 日本の温室効果ガス削減目標は何ですか? A. 日本は、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減し、さらに50%の高みを目指して挑戦を続けることを掲げています。そのうえで、2050年までに排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(ネットゼロ)」の実現を目標としています。これらはパリ協定の1.5℃目標と整合する国際的な枠組みの一部です。

Q. 温室効果ガスとGHGプロトコル・Scopeはどう関係しますか? A. 企業が温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の世界標準が「GHGプロトコル」です。GHGプロトコルは、排出を自社の直接排出(Scope1)、エネルギー起源の間接排出(Scope2)、その他の間接排出(Scope3)に区分します。対象となる7つのガスを、それぞれのGWPを用いてCO2換算し、合算して把握します。

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出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

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最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

greenote編集部

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