ホンダのESG経営を分析|Triple Action to ZEROと2040年EV100%

2026.07.19
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

自動車国内

「2040年に、エンジンだけの新車は売らない」。自動車メーカーとして、これはとても重い決断です。それを世界に向けて掲げたのが、ホンダ(本田技研工業)である。四輪も二輪も手がけるモビリティの総合メーカーが、電動化へと大きく舵を切ろうとしている。本記事では、ホンダのESG経営を、環境方針「Triple Action to ZERO」と2040年の電動化目標を軸に、トヨタとの違いもふまえながら、公式情報をもとに中立に分析します。

この記事の目次

01

ホンダのESG経営とは|Triple Action to ZERO

まず、ホンダがどんな企業で、その環境方針の全体像を整理しましょう。

3つのゼロで、環境負荷ゼロへ

Triple Action to ZERO
カーボンニュートラルCO2排出をゼロに
クリーンエネルギー使うエネルギーをカーボンフリーに
リソースサーキュレーション資源を循環させる

3つを関連づけ、相乗効果をねらう。

出典:Hondaの公表情報をもとにgreenote作成

モビリティの総合メーカー

ホンダ(本田技研工業)は、日本を代表するモビリティの総合メーカーです。自動車(四輪)で知られていますが、それだけではありません。オートバイ(二輪)では、世界最大級のシェアを持ちます。さらに、発電機などのパワープロダクツ、そして航空機まで、幅広く手がけている。

つまりホンダは、人や物が「移動する」ことに、幅広くかかわる企業です。だからこそ、その脱炭素は、社会全体のモビリティの脱炭素に直結します。多くの人の移動を支える企業として、環境への責任も大きくなる。

3本柱の環境方針

ホンダの環境への取り組みを束ねるのが、「Triple Action to ZERO(トリプルアクション・トゥ・ゼロ)」という方針です。「環境負荷ゼロ」の社会をめざし、3つの取り組みを一体で進めます。第一が、カーボンニュートラル(CO2排出をゼロに)。第二が、クリーンエネルギー(使うエネルギーをカーボンフリーに)。第三が、リソースサーキュレーション(資源を循環させる)です。

ポイントは、この3つを、別々にではなく、関連づけて進める点にあります。たとえば、電気自動車を普及させるには、その電気がクリーンでなければ意味が半減します。気候・エネルギー・資源を一体でとらえ、相乗効果をねらう。ここに、ホンダの環境方針の特徴があります。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

02

2050年カーボンニュートラル|全製品と企業活動で

ホンダの脱炭素目標の全体像を見ていきます。

2050年、すべてでゼロへ

2050年カーボンニュートラル = 企業活動と、販売する全製品を対象
CO2排出をゼロに
カーボンフリーエネルギーの利用率100%
持続可能な材料の利用率100%

製品の走行時だけでなく、製造や部品の調達まで含めた広い範囲が対象。

出典:Hondaの公表情報をもとにgreenote作成

Triple Action to ZEROの中核が、カーボンニュートラルです。ホンダは、2050年に、カーボンニュートラルを実現する目標を掲げています。対象となる範囲が広いのが特徴です。自社の工場やオフィスといった企業活動だけでなく、販売するすべての製品を含めて、カーボンニュートラルをめざします。

これは、簡単なことではありません。自動車のカーボンニュートラルというと、走行時のCO2ばかりに目が向きがちです。しかしホンダは、製造や部品の調達まで含めた、広い範囲を対象にしています。2050年に向けて、CO2排出ゼロ、カーボンフリーエネルギーの利用率100%、そして持続可能な材料の利用率100%といった、意欲的な目標を掲げている。ライフサイクル全体で環境負荷をゼロに近づける。壮大な挑戦だといえます。

03

2040年EV・FCEV100%|四輪の電動化への決断

ホンダのESG経営を象徴するのが、四輪車の電動化目標です。

2040年、新車はすべて電動へ

現在ガソリン車・ハイブリッド車・電気自動車などが混在
→
2040年四輪の新車販売を、グローバルですべてEVとFCEVに

エンジンだけで走る新車は世界で売らない方針。電動車への全面移行を明確に打ち出す。

出典:Hondaの公表情報をもとにgreenote作成

ホンダのESG経営を、もっとも象徴するのが、四輪車の電動化目標です。ホンダは、2040年に、四輪の新車販売を、グローバルですべてEV(電気自動車)とFCEV(燃料電池車)にするという、明確な目標を掲げています。つまり、2040年以降は、エンジンだけで走る新車を、世界で売らないという方針です。

これは、自動車メーカーとして、非常に踏み込んだ決断です。長年つくり続けてきたエンジン車から、電動車へと全面的に移行する。それは、事業の根幹を大きく変えることを意味します。ガソリン車やハイブリッド車を、段階的に電動車へ。この明確な方向性が、ホンダの電動化戦略の特徴になる。電動化について詳しくは、関連記事の電化(電化シフト)とはもあわせてご覧ください。

04

トヨタとの比較|全方位と電動化集中の違い

同じ自動車大手でも、脱炭素へのアプローチには違いがあります。

同じゴール、違う道すじ

共通:両社とも2050年カーボンニュートラルをめざす
ホンダ四輪で2040年にEV・FCEV100%。電動化への集中
トヨタEVに加えハイブリッドや水素も地域に応じて使い分けるマルチパスウェイ(全方位)

アプローチの違いであり優劣ではない。将来のエネルギー事情で評価も変わりうる

出典:各社の公表情報をもとにgreenote作成

ホンダの電動化戦略は、同じ自動車大手のトヨタと比べると、その特徴がよくわかります。まず、両社に共通するのは、2050年カーボンニュートラルという最終ゴールです。ここは同じです。違いは、そこへ向かう道すじにあります。

ホンダは、四輪で2040年にEV・FCEV100%という、電動化への集中を明確にしています。一方トヨタは、EVだけでなく、ハイブリッドや水素なども、地域のエネルギー事情に応じて使い分ける「マルチパスウェイ(全方位)」を掲げています。ここで大切なのは、これはアプローチの違いであり、どちらが優れているかを一概に決められるものではないという点です。電動化を早く進めるべきという考えも、多様な選択肢を残すべきという考えも、それぞれに理があります。将来のエネルギー事情や技術の進展によって、評価は変わりえます。トヨタの戦略について詳しくは、関連記事のトヨタのESG経営もあわせてご覧ください。

05

リソースサーキュレーション|資源を循環させる

気候だけでなく、資源の循環にも取り組んでいます。

つくって終わり、にしない

リソースサーキュレーション = 資源を循環させる
持続可能な材料を使う再生材やリサイクルしやすい材料へ
使用済み製品を回収バッテリーなどを回収し再利用
材料の利用率100%へ2050年に持続可能な材料の利用率100%をめざす

電動化で重要になるバッテリーの資源循環がとくにカギ。

出典:Hondaの公表情報をもとにgreenote作成

Triple Action to ZEROの3本柱のひとつが、リソースサーキュレーション(資源循環)です。これは、資源をくり返し使い、廃棄を減らす取り組みになります。ホンダは、2050年に持続可能な材料の利用率100%をめざしており、再生材やリサイクルしやすい材料への切り替えを進めています。

とくに、電動化を進めるうえで重要になるのが、バッテリー(電池)の資源循環です。EVには大量のバッテリーが使われ、そこには貴重な資源が含まれます。使用済みのバッテリーを回収し、再利用やリサイクルへ回す。この循環をつくれるかどうかが、電動化時代の大きな課題になる。ホンダは、この資源の循環にも早くから目を向けています。循環経済の考え方は、関連記事のサーキュラーエコノミーとはもあわせてご覧ください。

人的資本と多様性(S)|製造業の壁に挑む女性活躍

自動車業界は伝統的に男性比率が高く、ホンダも例外ではありません。それでも同社は、生え抜きの女性役員の登用(2016年に初、2021年から取締役)や女性管理職比率の引き上げを進め、業界の女性活躍を先導する姿勢を示しているとされます。

「技術の会社」における多様性推進は一朝一夕には進みませんが、だからこそアンコンシャス・バイアスへの組織的な対処や登用パイプラインづくりが問われる領域です。

ガバナンス(G)|指名委員会等設置会社への移行

ホンダは、監督と執行を分離する指名委員会等設置会社へ移行しており、取締役会に占める社外取締役の比率も高い水準(4割超とされる時期の開示あり)を確保しています。創業者精神の強い会社が、統治の近代化を明確に選んだ形です。

電動化への大転換期にある同社にとって、大型投資の監督機能は経営の生命線。E(電動化・カーボンニュートラル宣言)を実行する土台としてのGに注目です。

06

まとめ|ホンダのESG経営から学べること

ホンダの歩みは、モビリティ企業がどう脱炭素に挑むかを、明快に示してくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

ホンダに学ぶ、3つのこと

関連づけて進める気候・エネルギー・資源を、Triple Action to ZEROで一体に
明確な決断四輪で2040年にEV・FCEV100%を打ち出す
不確実性もふまえる電動化の速度は、市場や政策にも左右される

出典:Hondaの公表情報をもとにgreenote作成

ホンダのESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • 四輪・二輪・パワープロダクツを手がけるモビリティの総合メーカー
  • 環境方針「Triple Action to ZERO」=カーボンニュートラル・クリーンエネルギー・資源循環の3本柱
  • 2050年に、企業活動と全製品でカーボンニュートラル(CO2ゼロ・カーボンフリーエネルギー100%・持続可能材料100%)
  • 四輪は2040年にEV・FCEV販売比率100%。電動化への集中を明確に(トヨタの全方位とは対照的)
  • リソースサーキュレーションでバッテリーなどの資源循環にも取り組む

ホンダから学べるのは、気候・エネルギー・資源を関連づけて進める総合的な視点と、明確な方針を打ち出す決断力です。四輪の2040年EV・FCEV100%は、その象徴といえます。ただし、電動化の速度は、市場の需要や各国の政策にも左右されます。目標の明確さと、外部環境の不確実性。その両方をふまえて見ることが、企業のESGを冷静に理解するうえで欠かせません。トヨタとの対比が示すように、脱炭素への道は、一つだけではないのです。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではなく、戦略の優劣を断定するものでもありません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. ホンダ(Honda)とはどんな企業ですか?

ホンダ(本田技研工業)は、日本を代表するモビリティの総合メーカーです。自動車(四輪)だけでなく、オートバイ(二輪)で世界最大級のシェアを持ち、汎用エンジンや発電機などのパワープロダクツ、さらには航空機まで幅広く手がけています。人や物が「移動する」ことにかかわる幅広い製品を持つため、その脱炭素は、社会全体のモビリティの脱炭素に直結します。

Q. Triple Action to ZEROとは何ですか?

Triple Action to ZERO(トリプルアクション・トゥ・ゼロ)は、ホンダの環境方針です。「環境負荷ゼロ」の社会をめざし、3つの取り組みを一体で進めます。1つ目はカーボンニュートラル(CO2排出ゼロ)、2つ目はクリーンエネルギー(使うエネルギーをカーボンフリーに)、3つ目はリソースサーキュレーション(資源を循環させる)です。この3つを関連づけ、相乗効果をねらう点が特徴です。

Q. ホンダのカーボンニュートラル目標はどうなっていますか?

ホンダは、2050年に、自社の企業活動だけでなく、販売するすべての製品を含めて、カーボンニュートラルを実現する目標を掲げています。自動車の走行時だけでなく、製造や部品の調達まで含めた広い範囲を対象にしている点が特徴です。2050年に向けて、CO2排出ゼロ、カーボンフリーエネルギーの利用率100%、持続可能な材料の利用率100%といった目標を掲げています。

Q. ホンダの2040年EV・FCEV100%とはどういう目標ですか?

ホンダは、四輪車(自動車)の事業において、2040年に、グローバルで新車販売のすべてをEV(電気自動車)とFCEV(燃料電池車)にする目標を掲げています。つまり、2040年以降は、エンジンだけで走る新車を世界で売らない方針です。ガソリン車やハイブリッド車から、電動車への全面的な移行を明確に打ち出している点が、ホンダの電動化戦略の特徴です。

Q. ホンダとトヨタの脱炭素戦略はどう違うのですか?

両社とも2050年カーボンニュートラルをめざす点は共通です。違いは、そこへの道筋にあります。ホンダは、四輪で2040年にEV・FCEV100%という、電動化への集中を明確にしています。一方トヨタは、EVだけでなくハイブリッドや水素なども地域に応じて使い分ける「マルチパスウェイ(全方位)」を掲げています。これはアプローチの違いであり、どちらが優れているかを一概に決められるものではありません。将来のエネルギー事情によって評価も変わりえます。

Q. ホンダのESG経営から学べることは何ですか?

大きく2つあります。1つ目は、環境方針を「気候・エネルギー・資源」の3つの関連づけ(Triple Action to ZERO)でとらえ、相乗効果をねらう総合的な視点です。2つ目は、四輪の2040年EV・FCEV100%のように、明確な方針を打ち出す決断力です。ただし、電動化の速度は市場や政策の動向にも左右されます。目標の明確さと、外部環境の不確実性の両方をふまえて見ることが大切です。なお本記事は特定の投資を推奨するものではありません。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月19日

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