健康経営とは|優良法人認定・ホワイト500と進め方をわかりやすく解説

2026.06.14
ESG開示

かつて、従業員の健康は「自己管理の問題」とされてきました。しかし、人材の確保が年々難しくなるいま、その発想は通用しなくなっています。社員が健康で生き生きと働けること自体が、企業の競争力を左右する。そんな時代の経営手法が、健康経営です。

健康経営とは、従業員などの健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する取り組みを指します。健康を「コスト」ではなく、将来の収益を生む「投資」と位置づける点が特徴です。

本記事では、健康経営の意味と注目される背景から、経済産業省の健康経営優良法人認定制度やホワイト500、人的資本経営との関係、進め方のステップ、そして健康投資の開示までを、最新情報をふまえてわかりやすく解説します。

健康経営の好循環

健康はコストではなく、企業価値を生む投資

1

健康への投資

健康診断・労働環境の改善・メンタルヘルス対策などに経営として投資する。

2

従業員の健康増進と活力向上

心身が健康になり、いきいきと働ける状態が生まれる。

3

生産性の向上・離職率の低下

パフォーマンスが高まり、人材が定着しやすくなる。

4

業績と企業価値の向上

組織の活力が、業績や企業価値の向上につながる。

4から1へ。高まった企業価値が次の健康投資を支え、好循環が回り続けます。

出典:経済産業省の健康経営に関する資料をもとに作成

目次

健康経営とは|従業員の健康を経営的視点で捉える

まずは、健康経営という言葉の意味と、なぜそれがいま注目されるのかを押さえましょう。背景を理解すると、取り組みの意義が見えてきます。

健康経営とは

健康経営は、従業員の健康管理を、単なる福利厚生ではなく、経営戦略の一部として位置づける考え方です。従業員が健康であることは、組織の活力や生産性の土台になります。その土台に経営として投資する。それが健康経営の本質です。

ポイントは、健康を「投資」と捉える視点にあります。健康増進にかける費用を、将来の生産性や企業価値を生む先行投資とみなす。コスト削減の対象ではなく、価値創造の源泉と考えるのです。なお「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標として知られています。

なぜ注目されるのか|人的資本と労働力人口の減少

健康経営が広がる背景にあるのは、構造的な事情です。最大の要因が、少子高齢化による労働力人口の減少です。人材の確保が難しくなるなか、いまいる従業員に、長く健康に活躍してもらう必要性が高まっています。

もう一つの追い風が、人的資本経営の広がりです。人材を「資本」と捉え、その価値を高める経営が重視されるようになりました。健康は、人的資本の価値を支える基盤です。だからこそ、健康への投資が経営課題として注目を集めています。人的資本経営の全体像は、関連記事の人的資本経営とは|人材版伊藤レポートと実践のポイントもあわせてご覧ください。

健康経営がもたらす効果

健康経営には、具体的な効果が期待できます。まず、生産性の向上です。心身ともに健康な従業員は、高いパフォーマンスを発揮しやすくなるのです。体調不良による生産性の低下を防ぐ効果も見込めます。

加えて、離職率の低下や、採用力の強化も期待できます。従業員を大切にする企業は、人材から選ばれ、定着してもらいやすくなるのです。さらに、企業イメージの向上や、取引先からの信頼にもつながります。健康への投資は、多面的な果実をもたらします。

経済産業省の顕彰制度

健康経営は、国も後押ししています。経済産業省を中心とした認定・選定制度を整理しましょう。

経済産業省の健康経営の顕彰制度

優れた取り組みを「見える化」して後押し

健康経営銘柄

経済産業省と東京証券取引所が共同で、上場企業から選定(2015年開始)

健康経営優良法人認定制度(健康経営優良法人2025)

大規模法人部門

約3,400法人を認定

上位500法人=ホワイト500

中小規模法人部門

約19,796法人を認定

上位500法人=ブライト500 501〜1500位=ネクストブライト1000

いずれも経済産業省が推進し、毎年認定・選定されます(直近は健康経営優良法人2026)。

出典:経済産業省・日本健康会議「健康経営優良法人2025」認定結果ほか

健康経営優良法人認定制度

国の制度の中核が、健康経営優良法人認定制度です。経済産業省と日本健康会議が、健康経営に優れた取り組みを行う法人を顕彰します。認定を受ければ、優良な企業であることを社内外にアピールできます。

この制度は、企業規模に応じて、大規模法人部門と中小規模法人部門の2つに分かれています。最新の健康経営優良法人2025では、大規模法人部門で約3,400法人、中小規模法人部門で約19,796法人が認定されました。認定数は年々増えており、制度の定着がうかがえます。

ホワイト500・ブライト500・ネクストブライト1000

認定法人の中でも、特に優れた上位法人には、特別な称号が与えられます。大規模法人部門の上位500法人に冠されるのが、ホワイト500です。健康経営のトップランナーを示す称号として広く知られています。

中小規模法人部門にも、同様の称号があります。上位500法人にはブライト500、その下の501〜1500位の法人にはネクストブライト1000が付与されます。これらの称号は、企業のブランド価値を高め、採用や取引でも強みです。

健康経営銘柄

もう一つの重要な制度が、健康経営銘柄です。これは、経済産業省と東京証券取引所が共同で、上場企業の中から健康経営に特に優れた企業を選定するものです。2015年に始まりました。

ねらいは、投資家への発信にあります。従業員の健康を重視する魅力的な企業を、投資先の候補として広く紹介します。健康経営が、株式市場や投資判断の観点からも評価される対象になっていることを示す制度といえます。

健康経営と関連するテーマ

健康経営は、人的資本やウェルビーイングと深くつながります。関連する考え方を整理しましょう。

人的資本経営との関係

健康経営は、人的資本経営と表裏一体の関係にあるといえます。人的資本経営が、人材の価値を最大限に引き出す経営だとすれば、健康経営はその大前提を整える取り組みです。心身の健康なくして、人材の価値発揮はありえません。

人的資本の情報開示が進むなか、従業員の健康に関する指標も、重要な開示項目になりつつあります。健康経営は、人的資本経営を足元から支える基盤として、その重要性を増しています。

ウェルビーイングとプレゼンティーズム

近年、健康経営はウェルビーイングという、より広い概念へと発展しています。ウェルビーイングとは、身体だけでなく、心や社会的なつながりも含めた、良好な状態を指します。単に病気でないことを超えた、いきいきと働ける状態が目指されています。

ここで鍵となるのが、プレゼンティーズムという考え方です。これは、出勤はしているものの、心身の不調で本来の力を発揮できていない状態を指します。欠勤(アブセンティーズム)よりも、見えにくく損失が大きいとされます。この見えない損失を減らすことが、健康経営の重要な目標です。

メンタルヘルスと両立支援

具体的な領域として、メンタルヘルス対策の比重が高まっています。ストレスチェックの実施や、相談しやすい体制づくり、職場環境の改善などが求められます。心の健康は、健康経営の中でもとりわけ重要なテーマです。

あわせて、治療と仕事、育児・介護と仕事などの両立支援も欠かせません。さまざまな事情を抱える従業員が、無理なく働き続けられる環境を整える。多様な人材の活躍を支える点で、健康経営はDE&Iとも響き合います。DE&Iの考え方は、関連記事のDE&Iとは|ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンと開示もあわせてご覧ください。

健康経営の進め方

健康経営は、思いつきの施策では成果につながりません。基本的な進め方のステップを押さえましょう。

健康経営の進め方

トップの方針から、効果検証まで

1

トップのコミットメントと方針

経営トップが健康経営を重要方針として掲げ、社内外に発信する(健康経営宣言など)。

2

体制づくりと健康課題の把握

推進体制を整え、健康診断やストレスチェックのデータから自社の課題を見極める。

3

施策の実行

運動促進・食生活支援・長時間労働の是正・メンタルヘルス対策など、課題に応じて実行する。

4

効果検証と改善

指標で効果を測り、次の改善につなげる。実行して終わりにしない。

2〜4を繰り返す PDCA で、健康経営を成果へとつなげます。

出典:経済産業省の健康経営に関する資料をもとに作成

経営トップのコミットメントと方針

すべての出発点は、経営トップのコミットメントです。健康経営を、経営の重要方針として明確に掲げ、社内外に発信します。トップが本気であることが伝わってはじめて、組織は動き始めます。

方針は、言葉にして共有することが大切です。健康経営宣言などの形で明文化し、なぜ取り組むのかを示します。担当部署任せにせず、経営課題として位置づける。この姿勢こそが、健康経営の土台です。

体制づくりと健康課題の把握

次に、推進する体制を整えます。健康経営を担当する部署や担当者を定め、産業医や保健スタッフとも連携します。人事・労務と健康管理が一体となって動く仕組みが理想です。

体制ができたら、自社の健康課題を把握します。健康診断やストレスチェック、勤怠などのデータを分析し、どこに課題があるかを見極めます。思い込みではなく、データにもとづいて現状をつかむ。これが、効果的な施策の前提になります。

施策の実行と効果検証

課題が見えたら、施策を実行します。運動の促進、食生活の改善支援、長時間労働の是正、メンタルヘルス対策など、課題に応じた打ち手を講じます。ここで大切なのは、課題と施策がかみ合っていることです。

そして、実行して終わりにしないことが肝心です。施策の効果を指標で検証し、次の改善につなげるPDCAを回します。健康診断の数値や、従業員のエンゲージメントの変化などで効果を測ります。地道な改善の積み重ねが、健康経営を成果へと導きます。

健康投資の開示と情報発信

健康経営は、取り組むだけでなく、伝えることも重要です。開示と発信のポイントを整理しましょう。

健康投資管理会計ガイドライン

健康経営の課題の一つが、効果の見えにくさです。そこで経済産業省は、健康投資管理会計ガイドラインを策定しました。健康への投資と、その効果を可視化し、社内外に伝えるための枠組みです。

このガイドラインは、何にどれだけ投資し、どんな効果が得られたのかを、体系的に整理する手助けになります。健康経営を、感覚ではなく、管理可能な経営活動として捉える。可視化は、取り組みを継続し、説明する力を与えてくれます。

投資家・人材への発信

可視化した取り組みは、外部への発信に活かせます。とりわけ重要なのが、投資家と求職者という2つの相手です。投資家は、健康経営を企業の持続性やリスク管理の観点から評価します。

求職者にとっても、健康経営は企業選びの大切な判断材料です。従業員を大切にする姿勢は、採用市場で強い訴求力を持ちます。健康経営優良法人の認定や、自社の取り組みを積極的に発信することが、人材の獲得につながります。

人的資本開示との接続

健康に関する情報は、人的資本開示の一部としても位置づけられます。有価証券報告書などで人的資本の開示が求められるなか、従業員の健康に関する指標も、その対象に含まれていきます。

健康経営の取り組みと成果を、人的資本開示の枠組みの中で一貫して伝える。そうすることで、断片的な情報ではなく、企業の人材戦略の一部として理解されます。サステナビリティ情報の開示の全体像は、関連記事の有価証券報告書のサステナビリティ開示とは|記載内容と義務化もあわせてご覧ください。

まとめ|健康を企業価値につなげる

健康経営は、従業員の健康を経営の視点で捉え、企業価値の向上につなげる取り組みです。最後に、要点を振り返りましょう。

  • 健康経営とは、従業員の健康管理を経営的視点で捉え、健康を「コスト」ではなく「投資」として戦略的に実践する取り組みである
  • 背景には労働力人口の減少と人的資本経営の広がりがあり、生産性向上・離職率低下・採用力強化などの効果が期待される
  • 経済産業省は健康経営優良法人認定制度(大規模のホワイト500、中小のブライト500・ネクストブライト1000)や健康経営銘柄で後押しする
  • ウェルビーイングやプレゼンティーズム、メンタルヘルス、両立支援など、関連テーマは広がっている
  • 進め方は、トップのコミットメント→体制と課題把握→施策とPDCA。健康投資管理会計ガイドラインなども活かし、開示と発信につなげることが重要である

健康経営は、従業員を大切にすることと、企業の競争力を高めることが両立する取り組みです。健康への投資を、活力ある組織と持続的な成長へとつなげる。その積み重ねが、人と企業の双方にとって価値を生みます。ESG・サステナビリティの全体像はESGとは|意味・E/S/G・情報開示・投資まで完全ガイドもあわせてご覧ください。greenoteでは、ESG・サステナビリティ開示の実務情報を、これからもお届けしていきます。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

greenote編集部

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