リコーのESG経営を分析|日本初のRE100参加と環境経営の先進性

2026.06.20
サステナビリティ開示

ESG経営、とりわけ脱炭素の文脈で「先行者」として名前が挙がるのがリコーグループです。日本企業として初めてRE100に参加し、近年は環境目標を10年前倒しするなど、その動きは一貫して野心的でした。なぜリコーは環境経営のパイオニアと呼ばれるのでしょうか。

本記事では、公開情報をもとに、リコーのRE100参加、SBTに基づく環境目標、バリューチェーン全体での脱炭素、そして発信力までを、実務担当者の視点で読み解きます。

リコーグループ サステナビリティ(公式サイト) 公式サステナビリティサイト サステナビリティ | リコーグループ リコーグループは環境・社会・経済を通じた社会課題の解決と持続可能な社会を目指しています。 jp.ricoh.com

目次

リコーグループとESG経営

リコーは、複写機・プリンターで知られるメーカーから、デジタルサービスの企業へと姿を変えてきました。その変化のなかでも一貫していたのが、環境経営への強いこだわりです。

環境経営の草分けとしての歴史

リコーの環境への取り組みは、近年始まったものではありません。1990年代から環境会計を導入するなど、早くから「環境と経営の両立」を掲げてきた草分け的な存在です。

この歴史の長さが、同社のESGに深みを与えています。流行に乗って始めたのではなく、数十年かけて環境を経営の軸に育ててきた。だからこそ、目標設定や情報開示にも一貫性があります。環境経営のパイオニアという評価は、こうした積み重ねに支えられているのです。

デジタルサービス企業への転換とESG

近年のリコーは、オフィス機器の会社から「デジタルサービスの会社」への転換を進めてきました。事業が変わっても、環境を軸に据える姿勢は揺らいでいません。

むしろ、デジタル化は脱炭素と相性がよい領域です。働き方の効率化や、紙・移動の削減を通じて、顧客の環境負荷低減にも貢献できます。事業の進化とESGを矛盾させず、両輪で進める——この設計に、リコーらしさが表れます。

日本企業として初めてのRE100参加

リコーのESGを象徴する出来事が、RE100への参加です。日本企業として「初」という事実に、同社の先進性が凝縮されています。

数字で見るリコーの環境経営

先進性を示す4つのファクト

日本企業初
RE100参加

2017年4月。事業の使用電力を100%再エネへ

SBT
1.5℃認定

スコープ1・2・3で取得

2040年
スコープ1・2実質ゼロ

2024年改定で10年前倒し・電力100%再エネ

2050年
排出ゼロ

バリューチェーン全体(スコープ3含む)

公開情報をもとにgreenote編集部が整理。投資を勧めるものではありません。

出典:リコーグループの公開情報をもとにgreenote作成

2017年・日本初参加の意義

リコーは2017年4月、日本企業として初めて国際イニシアティブ「RE100」に参加しました(リコー 脱炭素社会の実現)。RE100は、事業で使う電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことをめざす企業連合です。RE100の詳細はRE100とはもあわせてご覧ください。

「日本初」という事実は、単なる名誉ではありません。前例のないなかで先陣を切ることには、相応の覚悟が要ります。その一歩が、後に続く日本企業のRE100参加の流れを生み出した立役者です。業界全体を動かす旗振り役を担った点に、大きな意義があります。

事業の使用電力を100%再エネへ

RE100への参加は、明確な行動目標を伴います。リコーは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーへ転換する方針を掲げました。

宣言にとどめず、再エネ電力の調達や自家発電などを通じて、着実に比率を高めてきた実績があります。目標を掲げて終わりにせず、達成への道筋を実行に移す。この実装力こそ、リコーのESGの信頼性を支える要素です。

環境目標とSBT|10年前倒しの野心

リコーは、科学的根拠に基づく目標を掲げるだけでなく、近年それをさらに強化した企業です。目標体系の進化を整理します。

SBT1.5℃認定(スコープ1・2・3)

リコーの2030年目標は、地球の気温上昇を1.5℃未満に抑える水準と整合する「SBT1.5℃」認定を取得済みです。対象は、自社の直接排出(スコープ1)、購入エネルギーの間接排出(スコープ2)、そしてサプライチェーン全体の排出(スコープ3)に及びます。SBTの仕組みはSBT(Science Based Targets)とはで解説しています。

スコープ3まで含めて1.5℃水準の認定を得るのは、容易ではありません。自社の努力だけでなく、取引先まで巻き込む必要があるからです。ここに、リコーの目標の本気度がうかがえます。

2024年改定で2040年目標を新設

さらにリコーは、2024年に環境目標を改定しました。新たに「2040年目標」を設け、スコープ1・2の温室効果ガス実質排出ゼロと、使用電力の100%再生可能エネルギー化を、従来の2050年から2040年へと10年前倒ししています(リコー 環境目標)。

目標を「強化する方向」で見直す企業は、決して多くありません。状況の変化を踏まえ、より高い目標へと自らを追い込む。この前倒しの判断は、リコーの環境経営に対する姿勢を端的に示すものでした。

バリューチェーン全体での脱炭素

リコーの脱炭素は、自社の工場やオフィスだけにとどまりません。サプライチェーンと製品の両面から、排出の削減を追求する姿勢です。

スコープ3への対応

リコーは、2050年にバリューチェーン全体(スコープ3を含む)のGHG排出ゼロをめざす方針です。自社の排出だけを減らしても、サプライチェーン全体で見れば不十分だからです。

製造業の排出は、原材料の調達や部品の製造、製品の使用段階など、自社の外に多く存在します。そこまで視野に入れて削減を進めるには、取引先との協働が欠かせません。スコープ3の考え方はScope3とはもあわせてご覧ください。

製品・事業を通じた貢献

もう一つの軸が、製品・事業を通じた貢献です。リコーは、省エネ性能の高い機器や、顧客の業務効率化を支えるデジタルサービスを通じて、顧客側の環境負荷低減にも寄与しようとしています。

自社の排出を減らすだけでなく、製品やサービスが社会全体の脱炭素に貢献する。この「攻めの脱炭素」の視点は、本業とESGを結びつける好例だといえるでしょう。脱炭素の全体像はカーボンニュートラルとはもあわせてご覧ください。

リコーのESGが示す先進性と発信

リコーは、目標の高さだけでなく、業界の旗振り役としても評価されてきました。その発信力も、ESGの一部です。

リコーの脱炭素ロードマップ

2030 → 2040 → 2050

2030年

SBT1.5℃認定

スコープ1・2・3で1.5℃水準と整合した削減目標

2040年

スコープ1・2 実質ゼロ

使用電力100%再エネ化(2050年から10年前倒し)

2050年

バリューチェーン排出ゼロ

スコープ3を含む全体でGHG排出ゼロ

2024年の改定で、目標を強化する方向に前倒しした点が際立ちます。

出典:リコーグループの公開情報をもとにgreenote作成

気候変動イニシアティブでの旗振り

リコーは、日本の気候変動イニシアティブ(JCI)などに参加し、企業の立場から脱炭素を求める声を上げてきた一社です。自社の取り組みにとどまらず、政策や業界全体に働きかける姿勢が特徴です。

一社だけが頑張っても、社会全体の脱炭素は進みません。だからこそ、仲間を増やし、ルールづくりに関与する。RE100の「日本初」と同様、リコーには業界をリードしようという一貫した意志が見て取れます。

統合報告での開示

リコーは、財務情報と非財務情報(ESG)を結びつけた統合報告を通じて、価値創造のストーリーを発信する姿勢です。目標の進捗や実績を継続的に開示し、投資家やステークホルダーとの対話に活かす姿勢です。統合報告の考え方は統合報告書とはもあわせてご覧ください。

透明性の高い開示は、先進的な目標に説得力を与えます。掲げるだけでなく、進捗を語り続ける。この積み重ねが、リコーのESGへの信頼を厚くしてきたのです。

実務担当者がベンチマークすべきポイント

リコーの事例は、ESGにおける「先行者」の動き方を示しています。最後に、自社の実務に活かせる視点を整理します。

リコーに学ぶ3つのポイント

環境経営のパイオニアから実務へ

1

先行者として旗を立てる

日本初のRE100参加のように、前例がなくても先陣を切り、業界全体の流れをつくる。

2

科学的目標を掲げ、強化し続ける

SBT1.5℃認定を取得し、状況に応じて前倒し・強化する(2024年に10年前倒し)。

3

バリューチェーン全体で考える

自社だけでなくスコープ3まで視野に入れ、製品・事業を通じても貢献する。

いずれも業種を問わず応用できる学びです。

出典:リコーグループの公開情報をもとにgreenote作成

第一に、先行者として旗を立てる動き方です。日本初のRE100参加のように、前例がなくても先陣を切る姿勢は、企業の評価とブランドを高めます。第二に、科学的根拠に基づく目標を掲げ、状況に応じて強化し続けることです。リコーが2024年に目標を10年前倒ししたように、一度決めて終わりにしない姿勢が信頼を生みます。

第三に、バリューチェーン全体で脱炭素を考えることです。スコープ3まで視野に入れ、製品・事業を通じても貢献する発想は、これからの製造業に欠かせません。これらはいずれも、業種を問わず応用できる学びです。他社のESG経営は、富士フイルムのESG経営を分析積水化学のESG経営を分析もあわせてご覧ください。自社のベンチマークの参考になれば幸いです。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

関連記事