コンビニや飲食チェーンのように、本部が仕組みを提供し、加盟店が各地で店舗を運営する——。このフランチャイズ店舗の運営に伴う排出を計上するのが、Scope3の最後のカテゴリ、カテゴリ14「フランチャイズ」です。フランチャイズの本部(フランチャイザー)だけが対象になる、少し特殊な位置づけのカテゴリになる。本記事では、カテゴリ14の考え方と計算を、環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォームやGHGプロトコルの一次情報をもとに、実務目線で解説します。
≡この記事の目次
- 1Scope3カテゴリ14(フランチャイズ)とは
- ►フランチャイズ店舗の運営に伴う排出
- ►フランチャイザー(本部)だけが対象
- 2本部と加盟店の関係――誰が計上するのか
- ►本部が加盟店のScope1・2を計上
- ►加盟店は自社のScope1・2(役割の裏返し)
- 3計算の考え方――フランチャイズ固有法と平均データ法
- ►基本の2つの方法
- ►店舗数・床面積からの推計
- 4データはどこから取るのか
- ►加盟店からのエネルギーデータ
- ►店舗数・床面積と排出原単位
- 5「関連なし」の判断と整理
- ►フランチャイズ事業がなければ対象外
- ►リース資産(カテゴリ8・13)との違い
- 6CDP回答・開示での実務ポイント
- ►関連性の判断と算定方法の記載
- ►実務で多い方法と現実的な進め方
- 7カテゴリ14の算定をどう進めるか
- 8出典・参考(一次情報)
Scope3カテゴリ14(フランチャイズ)とは
まず、カテゴリ14が何を対象とするのかを整理します。「フランチャイズ店舗の運営」という視点から入りましょう。
フランチャイズ店舗の運営に伴う排出
カテゴリ14は、報告する企業が本部となるフランチャイズの加盟店(フランチャイジー)が、店舗を運営することに伴う排出を対象にする。加盟店が店舗で使う電力や燃料——照明、空調、調理、冷蔵など——から出るCO2を、ブランドと仕組みを提供している本部側のサプライチェーン排出として計上する。これがカテゴリ14です。
対象になるのは、加盟店の店舗運営に伴うScope1(直接排出)とScope2(エネルギー起源の間接排出)のうち、本部自身のScope1・2に含まれない分です。Scope3とはの15カテゴリの最後を占め、フランチャイズという事業形態を持つ企業に固有の、下流カテゴリだといえます。
フランチャイザー(本部)だけが対象
カテゴリ14で最初に押さえたいのが、このカテゴリを報告するのは、フランチャイズの本部(フランチャイザー)だけという点です。コンビニ、飲食チェーン、小売、サービス業など、加盟店にブランドや運営の仕組みを提供して展開する事業を持つ企業が該当します。
裏を返せば、フランチャイズ事業を持たない企業には、カテゴリ14は発生しません。実際、開示データを見ても、フランチャイズを展開しない多くの企業が、カテゴリ14を「関連なし」と判断しています。だから、まず自社がフランチャイズの本部かどうかを見極めることが、このカテゴリの出発点になる。
本部と加盟店の関係――誰が計上するのか
カテゴリ14でいちばん大切なのが、本部と加盟店の役割分担です。ここで計上する主体が決まります。
本部が加盟店の排出を計上する
フランチャイズ本部(フランチャイザー)
自社が広げたFC網の排出として計上。
カテゴリ14加盟店(フランチャイジー)
自らの店舗運営の排出として計上。
自社のScope1・2同じ店舗の排出でも、本部から見ればカテゴリ14、加盟店から見れば自社のScope1・2。二重計上にならないよう役割が分かれている。
出典:GHGプロトコル・環境省の公開情報をもとにgreenote作成
本部が加盟店のScope1・2を計上
カテゴリ14の核心は、本部が、加盟店のScope1・2を、自社のScope3として引き受けるという考え方です。加盟店の店舗で使われるエネルギーに伴う排出は、加盟店から見れば「自社の直接的な排出(Scope1・2)」ですが、本部から見れば、自社が広げたフランチャイズ網の排出にあたる。これを、本部はカテゴリ14として計上する。
ここで対象になるのは、あくまで本部自身のScope1・2に含まれない分です。本部が直営する店舗の排出は、本部のScope1・2に入るため、カテゴリ14ではありません。「本部が運営する分(直営)はScope1・2、加盟店が運営する分はカテゴリ14」——この線引きが、算定の前提になる。
加盟店は自社のScope1・2(役割の裏返し)
一方、加盟店(フランチャイジー)の側では、話が裏返しになります。加盟店にとって、自分の店舗の運営で出る排出は、自社の事業からの直接的な排出=Scope1・2です。だから、加盟店は、この店舗運営の排出をカテゴリ14としては報告しません(自社のScope1・2として計上します)。
つまり、同じ店舗の同じ排出でも、本部から見ればカテゴリ14、加盟店から見れば自社のScope1・2、と見え方が変わる。この役割分担があるおかげで、フランチャイズ全体で見たときに、排出が二重に数えられないよう整理されているわけです。カテゴリ14を考えるときは、まず「自分は本部か、加盟店か」を確認することが欠かせません。
計算の考え方――フランチャイズ固有法と平均データ法
カテゴリ14の計算の基本を整理します。加盟店のエネルギー使用を、集計するか推計するかです。
集めるか、推計するか
フランチャイズ固有法(精度が高い)
各加盟店の実際のエネルギー使用量(電力・燃料)を集めて、排出量を積み上げる。
平均データ法(簡便)
店舗の数や床面積に、1店舗あたり・単位面積あたりの平均的な排出原単位を掛けて推計する。
実データを集められる加盟店は固有法、集めにくい部分は店舗数・床面積で推計。使い分けるのが実務的。
出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
基本の2つの方法
カテゴリ14の主な算定方法は、2つです。第一がフランチャイズ固有法。各加盟店の実際のエネルギー使用量(電力・燃料)のデータを集めて、排出量を積み上げる方法で、精度が高い。加盟店から実績データの提供を受けられる場合に使えます。第二が平均データ法で、店舗の数や床面積などに、1店舗あたり・単位面積あたりの平均的な排出原単位を掛けて推計する簡便な方法です。
CDPに開示された算定方法を見ると、カテゴリ14では平均データ法とフランチャイズ固有法が中心に使われています。多数の加盟店から一律に実データを集めるのは負担が大きいため、実データが得られる範囲は固有法、それ以外は店舗数・床面積で推計、という組み合わせが現実的になる。
店舗数・床面積からの推計
実データを集めにくい場合に効いてくるのが、店舗数や床面積を使った推計です。「加盟店が全国に何店舗あり、平均的な店舗はどれくらいの床面積か」が分かれば、1店舗あたり、あるいは床面積あたりの平均的なエネルギー消費・排出原単位を掛けて、全体の排出を見積もれます。
本部は、加盟店の店舗数や標準的な店舗規模を把握していることが多く、この推計は比較的とらえやすい。まずは店舗数・床面積ベースで全体像をつかみ、主要な加盟店から実データを集めて精度を高めていく——。この段階的な進め方が、多数の店舗を持つフランチャイズでは実務的になります。
データはどこから取るのか
加盟店のエネルギーデータをどう把握するか。活動量データと排出係数の入手先を整理します。
使うデータはどこから
加盟店からのエネルギーデータ
各加盟店の電力・燃料の使用量。本部が加盟店に協力を求めて収集する。実データが得られればフランチャイズ固有法に使える。
店舗数・床面積と排出原単位(公的)
加盟店の店舗数や床面積と、1店舗あたり・単位面積あたりの排出原単位。環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームの排出原単位データベースなど。
実データは加盟店から、原単位は公的な根拠。得にくい部分は店舗数・床面積で推計し、前提を記録する。
出典:環境省・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
加盟店からのエネルギーデータ
フランチャイズ固有法で使う、加盟店の実際のエネルギー使用量は、本部が加盟店に協力を求めて収集する。各加盟店の電力・燃料の使用量を報告してもらえれば、精度の高い積み上げが可能になる。もっとも、加盟店は独立した事業者であることが多く、全店から一律にデータを集めるのは、協力体制づくりを含めて手間がかかるのが実情です。
そこで実務では、主要な加盟店や、データの得やすい直営に近い店舗から実データを集め、残りは推計で補う、という進め方がとられます。加盟店との日常のやり取りやシステムを通じて、少しずつデータ収集の仕組みを整えていくことが、精度向上の鍵になる。
店舗数・床面積と排出原単位
推計に使う、店舗数・床面積は、本部が持つ加盟店の情報から把握できます。これに掛ける1店舗あたり・単位面積あたりの排出原単位は、公的なデータベースなどから得る。日本では、環境省がグリーン・バリューチェーンプラットフォームで公開する排出原単位データベースなどが参照先になります。
ここでも、どの原単位を、いつの版で使い、どんな前提(平均的な店舗像など)を置いたかを記録することが欠かせません。方法論はGHGプロトコルのScope 3 Standardに沿って進めます。実データは加盟店から、原単位は公的な根拠、と使い分けるのが基本です。
「関連なし」の判断と整理
カテゴリ14は、フランチャイズ事業がなければ発生しません。関連性の判断と、似たカテゴリとの整理をします。
まず、自社はフランチャイズ本部か
本部ではない(FC事業がない)
加盟店という存在がない。
→ 関連なし。理由を説明する
本部である
加盟店の運営の排出を算定する。
→ カテゴリ14として算定
含めるにせよ除くにせよ、判断の根拠を説明できることが大切。
出典:GHGプロトコル・環境省の公開情報をもとにgreenote作成
フランチャイズ事業がなければ対象外
カテゴリ14の関連性の判断は、シンプルです。自社がフランチャイズの本部(フランチャイザー)かどうか——。これに尽きます。フランチャイズ事業を展開していないなら、加盟店という存在がないため、カテゴリ14は「関連なし」になる。この場合は、その理由(フランチャイズ事業を行っていないため)を説明すれば十分です。
GHGプロトコルも、関連性の低いカテゴリは、理由を明示したうえで除外してよいとしています。実際、多くの企業がカテゴリ14を関連なしとしている。無理に何かを算定しようとするより、まず自社の事業形態を確認することが先決になります。
リース資産(カテゴリ8・13)との違い
カテゴリ14は、他社が運営する拠点の排出を扱う点で、カテゴリ8・13(リース資産)と似ています。見分ける鍵は、契約の種類です。フランチャイズ契約にもとづく加盟店の運営ならカテゴリ14、賃貸借(リース)契約にもとづく資産ならカテゴリ8・13、と整理する。
たとえば、本部が加盟店にブランドと運営ノウハウを提供する関係はフランチャイズ=カテゴリ14。建物や設備を貸し借りする関係はリース=カテゴリ8・13です。どちらも、Scope1・2との二重計上を避けるという考え方は共通しています。契約の性質を確認して、正しいカテゴリに振り分けることが大切になる。
CDP回答・開示での実務ポイント
算定結果を、CDPなどでどう開示するか。カテゴリ14の押さえどころを整理します。
カテゴリ14の開示で押さえること
関連性を判断する
自社がフランチャイズ本部かどうかから、関連ありか関連なしかを判断し理由を説明する
算定方法を選ぶ
フランチャイズ固有法・平均データ法などから、使った方法を選択する
活動量と前提を記載する
加盟店のエネルギー使用量や店舗数・床面積などの活動量と、使った排出原単位の出典・版、置いた前提を記す
関連なしと判断する場合も、理由を説明できることが信頼性につながる。
出典:CDP・GHGプロトコルの公開情報をもとにgreenote作成
関連性の判断と算定方法の記載
カテゴリ14をCDPとはなどで開示する際、まず問われるのが関連性の判断です。自社がフランチャイズの本部かどうかを踏まえ、関連ありか関連なしかを判断し、関連なしならその理由(フランチャイズ事業を行っていないため、など)を説明する。関連ありなら、評価ステータス・排出量・算定方法(フランチャイズ固有法・平均データ法など)を記します。
活動量(加盟店のエネルギー使用量や店舗数・床面積)と、使った排出原単位の出典・版、置いた前提も記載します。フランチャイズは、店舗数や店舗像の想定が入るため、どんな前提で算定したかを説明できるようにしておくと、開示の信頼性が高まる。
実務で多い方法と現実的な進め方
CDPに開示された状況を見ると、カテゴリ14は「関連なし」として理由を説明する企業が最も多いカテゴリの一つです。フランチャイズ事業を持つ企業自体が限られるためです。算定している企業では、平均データ法とフランチャイズ固有法が使われています。
現実的な進め方は、まず自社がフランチャイズ本部かを見極めることです。本部でなければ、理由を説明して関連なしとすれば十分。本部であれば、店舗数・床面積で全体像をつかみ、主要な加盟店から実データを集めて精度を高めるのが定石になります。カテゴリ14は、多数の独立した加盟店が相手のため、データ収集の仕組みづくりそのものが、算定の質を左右する取り組みになるわけです。
カテゴリ14の算定をどう進めるか
Scope3カテゴリ14(フランチャイズ)は、フランチャイズの本部(フランチャイザー)が、加盟店の店舗運営に伴う排出(Scope1・2)を計上するカテゴリです。報告するのは本部側だけで、加盟店は自社のScope1・2として計上するため、二重計上にならないよう役割が分かれています。計算は、加盟店の実データを積み上げるフランチャイズ固有法か、店舗数・床面積から推計する平均データ法が中心です。
大切なのは、まず自社がフランチャイズ本部かを見極め、本部でなければ理由を説明して関連なしとすること。本部なら、店舗数・床面積で全体像をつかみ、加盟店からのデータ収集の仕組みを整えていく。Scope3の全体像はScope3とは、似た構造のリース資産はカテゴリ8・13もあわせてご覧ください。ESGの全体像はESG完全ガイドもどうぞ。
これで、Scope3の15カテゴリすべての算定の考え方が出そろいました。カテゴリ14は、フランチャイズという事業形態を持つ企業に固有の、自社が広げたネットワークの排出まで見渡すカテゴリでもある。なお本記事は、環境省・GHGプロトコルなどの公開情報をもとに算定の考え方を整理したものであり、特定のツールや製品を推奨するものではありません。係数や制度は変わりうるため、算定時は最新の一次情報をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. Scope3カテゴリ14は、どんな企業が算定するのですか?
A. フランチャイズの本部(フランチャイザー)が算定します。コンビニ・飲食チェーン・小売など、加盟店にブランドや仕組みを提供して展開する事業を持つ企業です。カテゴリ14は、加盟店の店舗運営に伴う排出(Scope1・2)のうち、本部自身のScope1・2に含まれない分を対象にします。加盟店側は、自らの店舗運営の排出を自社のScope1・2として計上するため、このカテゴリは報告しません。フランチャイズ事業を持たない企業は、カテゴリ14を『関連なし』と判断することが多くなります。
Q. カテゴリ14はどうやって計算しますか?
A. 主な方法はフランチャイズ固有法と平均データ法です。フランチャイズ固有法は、各加盟店の実際のエネルギー使用量(電力・燃料)を集めて積み上げる方法で、精度が高くなります。平均データ法は、店舗の数や床面積に、1店舗あたり・単位面積あたりの平均的な排出原単位を掛けて推計する簡便な方法です。実データを集められる加盟店は固有法で、集めにくい部分は店舗数・床面積から推計する、と使い分けるのが実務的です。
Q. カテゴリ14とカテゴリ8・13(リース資産)は何が違いますか?
A. どちらも他社が運営する拠点の排出を扱う点は似ていますが、関係性が違います。カテゴリ14は『フランチャイズ契約』にもとづく加盟店の運営が対象で、本部が加盟店のScope1・2を計上します。カテゴリ8・13は『賃貸借(リース)契約』にもとづく資産が対象です。自社がフランチャイズ本部なら14、資産を借りる・貸すなら8・13、と契約の種類で見分けます。いずれもScope1・2との二重計上を避ける整理が大切です。本記事は特定のツールや製品を推奨するものではありません。
出典・参考(一次情報)
- 環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(サプライチェーン排出量の算定・排出原単位データベース)」
- 環境省「サプライチェーン排出量の算定方法」
- GHG Protocol「Corporate Value Chain (Scope 3) Standard」
最終更新日:2026年7月4日
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
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