中国がEV生産の約75%|IEAが示すEV貿易・バッテリー・自動運転の最前線

2026.06.15
気候変動

EVの競争は、新しい段階に入りました。かつての主役は「どの車が売れるか」でした。けれどもIEA(国際エネルギー機関)の最新レポートを読むと、いま競われているのは、生産・貿易・バッテリー・技術という、もっと深い領域だと分かります。そして、その多くで中国が先頭を走る構図です。

本記事は、IEA「Global EV Outlook 2026」解説シリーズの第4弾です。EVをめぐる貿易の拡大、バッテリーのサプライチェーン、そして自動運転や急速充電といった技術革新を、レポートの数値に沿って整理します。市場全体の動きは第1弾のGlobal EV Outlook 2026の要点、商用車のEV化は第3弾の電動トラックは2025年に倍増もあわせてご覧ください。

目次

EV産業の主役は、貿易・電池・技術へ(2025年)

EVの競争は、もはや「どれだけ売れるか」だけではありません。生産・貿易・電池・技術へと、主戦場が広がる局面です。まずは2025年の全体像を押さえましょう。

生産・輸出・電池・技術で中国が先行

2025年のEV産業を一言で表すなら、中国の存在感の高まりです。世界のEV生産の約75%を担ったのが中国です。バッテリーのセル生産でも、中国のシェアは80%を超えています。さらに自動運転や急速充電といった技術でも、中国は世界の先頭集団の一角です。

つまり、EVの競争は「完成車をどう売るか」から、「生産・貿易・電池・技術をどう押さえるか」へと移りつつあるのです。この変化は、各国の産業政策や経済安全保障にも直結します。

なぜいま「貿易・電池・技術」なのか

理由は、EVが成熟期に入ったからです。市場が拡大し、価格競争が激しくなれば、勝負を決めるのはコストと供給網、そして技術力です。安く大量に作れる体制と、電池をはじめとする部材の確保、そしてソフトウェアや充電の革新。これらが、次の覇権を左右します。

乗用車の普及そのものは、すでに長期トレンドとして定着済みです。だからこそ視点は、その先の「産業構造」へと向かいます。順に見ていきましょう。

EV貿易の拡大と中国の存在感

EVは、国境を越えて取引される商品になりました。その流れの中心にいるのが中国です。

EV生産・貿易における中国の存在感(2025年)

世界最大の生産拠点であり、最大の輸出国へ

世界のEV生産台数

約2200万台

乗用車。前年比25%超の増加

中国の生産シェア

約75%

世界で作るEVの4台に3台

中国のEV輸出

250万台超

倍増して過去最高に

中国は2024年に世界最大の自動車輸出国に。2025年は車の輸出の35%超がEVでした(24年は20%)。

出典:IEA, Global EV Outlook 2026(CC BY 4.0)をもとにgreenote作成

世界生産は約2200万台、中国が約75%

数字が、その勢いを物語ります。IEAによると、2025年に世界で約2200万台の電気自動車(乗用車)が生産されました。前年から25%を超える増加です。そして、その約75%を中国が占めました。中国は、名実ともに世界最大のEV生産拠点です。

注目すべきは、この集中度です。世界で作られるEVの4台に3台が、中国製という計算です。長年かけて築いた部材・電池・組み立ての一体的な供給網が、その背景にあります。

中国のEV輸出が倍増・250万台超

国内市場では、激しい競争が続きます。各社の利益率は圧迫され、メーカーは海外に活路を求めました。その結果が、輸出の急増です。2025年、中国のEV輸出は倍増し、過去最高の250万台超に達しました。

中国は2024年に、EUを抜いて世界最大の自動車輸出国になりました。2025年には、車の輸出の35%超がEVに。2024年の20%から、大きく伸びています。EVが、中国の輸出を牽引する存在になったのです。

新興国市場を中国ブランドが席巻

その輸出は、新興国を中心に広がっています。欧州・米国以外の国々では、EV販売の55%が中国からの輸入です。わずか5年前は5%未満だったことを思えば、急激な変化です。

とくに東南アジアでは、2025年に売れたEVの半分以上が中国ブランド。世界で生産されたEVの約4分の1が、国境を越えて取引された計算です。EVの貿易は、世界の自動車産業の地図を塗り替えつつあります。

バッテリーのサプライチェーン

EVの心臓部はバッテリーです。その生産は、特定の国に大きく偏っています。

バッテリー供給は特定国に集中(2025年)

EVの心臓部を、一部の国が握る

中国のセル生産シェア

80%超

活物質ではさらに高いシェア

セル供給の集中

中韓日

この3か国の企業がほぼ独占

電池関連の特許

約半分

エネルギー分野の特許に占める割合

表明政策では、中国が2035年まで最大の電池・材料の生産国の見通し。価格はナトリウムイオン電池に追い風です。

出典:IEA, Global EV Outlook 2026(CC BY 4.0)をもとにgreenote作成

中国がセル生産の80%超

バッテリーの偏りは、生産以上に際立っています。IEAによると、2025年に中国はバッテリーセル生産の80%超を占めました。電池の活物質にいたっては、さらに高いシェアです。

EVの価値の多くは、バッテリーが生み出します。その心臓部を一国が握る構図は、産業の競争力にも、経済安全保障にも、大きな意味を持ちます。脱炭素を支える基盤が、特定地域に集中しているのです。

中韓日に集中する電池供給

視野を広げても、構図は変わりません。世界で使われる電池セルは、ほぼすべてが中国・韓国・日本に本社を置く企業から供給されています。この3か国に、EVの心臓部の供給が集中しているわけです。

なかでも中国企業の伸びは顕著です。欧州連合では、中国企業のシェアが2023年からほぼ倍増。表明政策に基づけば、中国は2035年まで、最大の電池・電池材料の生産国であり続ける見通しです。

価格の変動と次世代電池

価格の動きにも、目が離せません。電池パックの価格は、長期的に低下してきました。一方で、原料のリチウム価格は2026年初に前年比2倍超へと上昇しました。ただし、2022年のピーク比では約7割も安い水準です。

こうした価格変動は、新しい技術にも追い風となります。リチウムを使わないナトリウムイオン電池への関心が、その一例です。電池関連の特許は、いまやエネルギー分野の特許の約半分を占めます。技術競争は、ますます激しくなりそうです。

技術革新とAIが変えるクルマ

EVは、技術革新の最前線でもあります。ソフトウェアと充電、そして自動運転の進化を見ていきます。

EVを起点に進む技術革新(2025年)

自動運転・超急速充電・V2Gが実用段階に

自動運転タクシー

20都市超

商用運行。すべてEV(主に中国・米国)

超急速充電

1000V

初の対応車が登場。10分未満の充電も

V2G(系統への送電)

2025年

個人向け商用サービスが初登場

電池関連の特許はエネルギー分野の約半分。AIとソフトウェアが、新たな競争軸になりつつあります。

出典:IEA, Global EV Outlook 2026(CC BY 4.0)をもとにgreenote作成

ソフトウェア定義車(SDV)へ

クルマの中身も、急速に変わっています。いま主要メーカーが力を入れるのが、ソフトウェアを遠隔で更新できる「ソフトウェア定義車(SDV)」です。スマートフォンのように、機能をあとから追加・改善できるクルマだと考えると分かりやすいでしょう。

このSDVで最も先行しているのが、BEV(バッテリー式EV)です。センサーの低価格化、高性能な半導体、そしてAIの活用が、その進化を支えています。クルマの価値は、ハードからソフトへと比重を移しつつあります。

自動運転タクシーが20都市超で商用化

自動運転も、実用の段階に入りました。運転手のいない自動運転タクシーは、いまや20都市を超える都市で商用運行中です。その舞台は、主に中国と米国です。そして、それらの車両はすべてEVです。

EVと自動運転は、相性のよい組み合わせです。電動の制御はソフトウェアと馴染みやすく、AIによる判断とも統合しやすい。一方で、より多くの半導体が必要になり、集中したサプライチェーンへの依存や、サイバーセキュリティの管理が新たな課題です。

1000V・10分未満充電とV2G

充電技術も、世代交代が進んでいます。新しいパワー半導体材料や電池技術によって、より高電圧で速い充電が可能になりました。2025年には、初の1000ボルト車が登場。10分未満で充電できるという発表も、2026年に入って続いています。

さらに注目されるのが、V2G(Vehicle-to-Grid)です。EVに蓄えた電力を、電力系統に送り返す仕組みを指します。個人向けの商用サービスは2025年に初めて登場しました。ただし対応車種はまだ少なく、規制や標準の整備はこれからです。EVを「動く蓄電池」として活かす未来は、緒に就いたばかりだといえます。

日本企業・サプライチェーンへの示唆

この構造変化は、企業にとって何を意味するのでしょうか。示唆を整理します。

集中するサプライチェーンのリスク

第一の示唆は、供給網の集中というリスクです。生産も電池も、特定の国に大きく偏っています。効率の面では合理的でも、地政学的な緊張や通商政策の変化が起きれば、供給が滞る恐れがあります。半導体への依存が高まれば、その懸念はいっそう強まります。

企業に求められるのは、供給網の地図を正しく把握することです。どこに、どれだけ依存しているのか。代替の選択肢はあるのか。こうした点検が、事業の継続性を左右します。

電池・技術で勝ち筋を探す

第二に、日本企業の勝ち筋です。完成車の価格競争では、中国が先行しています。とはいえ、勝負の領域は一つではありません。電池の素材や製造技術、次世代電池、充電インフラ、そしてソフトウェアやAI。これらには、まだ強みを発揮できる余地があります。

重要なのは、競争の軸が広がっているという認識です。クルマ単体ではなく、それを支える技術と部材。そこにこそ、活路を見いだす視点が求められます。脱炭素の全体像は脱炭素・カーボンニュートラルとは?完全ガイドもあわせてご覧ください。

経済安全保障と通商の視点

第三に、経済安全保障と通商の視点です。EVは、もはや一つの製品ではなく、産業そのものの競争です。生産・貿易・電池・技術のどこを押さえるかが、国の競争力を左右する分岐点です。各国が産業政策や貿易ルールを動かす背景には、こうした事情があります。

企業にとっても、政策や通商の動向は無視できません。市場の数字だけでなく、その背後にある産業構造の変化を読むこと。それが、長期の戦略を立てるうえで欠かせません。

まとめ|EV競争は貿易・電池・技術へ

Global EV Outlook 2026は、EVの競争が「クルマ」から、貿易・バッテリー・技術へと広がっていることを、具体的な数字で示しました。最後に、要点を振り返りましょう。

  • 2025年に世界で約2200万台のEVが生産され(前年比25%超増)、中国が約75%を占めた
  • 中国のEV輸出は倍増・250万台超。中国は2024年に世界最大の自動車輸出国に
  • バッテリーセル生産は中国が80%超。供給は中国・韓国・日本に集中
  • 自動運転タクシー(すべてEV)が20都市超で商用運行。1000V・10分未満充電やV2Gも登場

EVをめぐる競争は、完成車の販売台数だけでは測れない段階に入りました。生産・貿易・電池・技術という、産業の土台をめぐる競争です。この構造変化を直視し、自社の強みをどこで生かすか。その問いに向き合うことが、いま求められています。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

参考(出典):IEA「Global EV Outlook 2026」(IEA, CC BY 4.0)

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

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ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

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