MUFG(三菱UFJ)のESG経営を分析|投融資ポートフォリオのネットゼロ

2026.07.19
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

金融国内

脱炭素を動かすのは、技術だけではありません。お金の流れもまた、社会を大きく動かします。どの事業にお金が向かうかで、脱炭素は加速も減速もするからです。その「お金の流れ」の中心にいるのが、銀行です。日本最大級の金融グループ、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)を例に、金融機関ならではのESG経営を見ていきましょう。本記事では、投融資ポートフォリオのネットゼロという主戦場を軸に、化石燃料融資の論点まで、公式情報をもとに中立に分析します。

この記事の目次

01

MUFGのESG経営とは|お金の流れで脱炭素を動かす

まず、MUFGがどんなグループで、金融機関のESGがなぜ特別なのかを整理しましょう。

排出の大部分は、貸した先

自社の排出オフィスや店舗のCO2。事業会社の工場に比べると多くない
投融資先の排出お金を貸した先の企業が事業で出すCO2。金融機関の排出の大部分を占める

お金の流れを通じて、社会全体の脱炭素に影響を与えられる立場。

出典:MUFGの公表情報をもとにgreenote作成

日本最大級の金融グループ

MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)は、三菱UFJ銀行などを傘下に持つ、日本最大級の総合金融グループです。銀行や信託、証券などを幅広く手がけ、国内外の数えきれないほどの企業や個人に、お金を貸したり、投資したりしている。

私たちの経済は、お金がまわることで動いている。その血液ともいえるお金を送り出す、大きなポンプの役割を担うのが、MUFGのような巨大金融グループです。だからこそ、そのお金をどこへ流すかは、社会のあり方を左右します。ここに、金融機関のESGが持つ、特別な意味がある。

銀行のESGは「投融資」が主役

一般的な企業のESGでは、工場やオフィスから出るCO2をどう減らすかが問われます。しかし、銀行は少し違います。銀行自身のオフィスや店舗から出るCO2は、製造業の工場などに比べれば、多くありません。

では、銀行にとっての最大の課題は何か。それが、お金を貸した先(投融資先)から出る排出です。銀行がお金を貸した企業は、その資金で事業を行い、CO2を排出します。この投融資先の排出を、投融資排出(ファイナンスド・エミッション)と呼びます。そして、これこそが金融機関の排出の大部分を占めるのです。銀行のESGは、自社ではなく、投融資という「本業」が主役になる。この考え方は、関連記事のScope3カテゴリ15(投資)もあわせてご覧ください。

02

カーボンニュートラル宣言|自社は2030年、投融資は2050年

MUFGの脱炭素目標は、自社と投融資先の2階建てになっています。

2階建てで、ネットゼロへ

自社の事業活動オフィスや店舗などの排出を、2030年にネットゼロ
投融資ポートフォリオお金を貸した先を含めた排出を、2050年にネットゼロ

邦銀として初めてカーボンニュートラルを宣言。自社排出は2024年度に2020年比で約50%削減

出典:MUFGの公表情報をもとにgreenote作成

MUFGは、邦銀として初めてカーボンニュートラル宣言を行った金融グループです。その目標は、大きく2階建てになっています。1階部分が、自社の事業活動です。オフィスや店舗などから出る排出を、2030年にネットゼロにする目標を掲げています。公表情報によれば、この自社排出は、2024年度に2020年比で約50%削減したとされ、全拠点の再生可能エネルギー化などを進めている。

2階部分が、より大きく、より難しい目標です。投融資ポートフォリオ、つまりお金を貸した先を含めた排出を、2050年にネットゼロにするという内容になります。自社だけでなく、投融資先まで含めて排出をゼロへ向かわせる。金融機関ならではの、踏み込んだ目標です。カーボンニュートラルの考え方は、関連記事のカーボンニュートラルとはもあわせてご覧ください。

03

投融資ポートフォリオのネットゼロ|最大の主戦場

金融機関の排出の大部分を占める、投融資排出への取り組みを見ていきます。

貸した先の、脱炭素を促す

投融資ポートフォリオのネットゼロ(2050年)
排出量の計測貸した先の排出を業種ごとに把握する
セクター別の中間目標電力や石油ガスなど排出の多い業種で2030年目標を設定
対話(エンゲージメント)取引先企業の脱炭素の取り組みを後押しする

セクターを広げて、計測と目標設定を進める。

出典:MUFGの公表情報をもとにgreenote作成

投融資排出が最大の課題であるなら、そこにどう向き合うかが問われます。MUFGは、投融資ポートフォリオのネットゼロに向けて、いくつかの手順を踏んでいる。まず、貸した先の排出量を、業種ごとに計測します。次に、電力や石油・ガスなど、排出の多いセクターについて、2030年の中間目標を設定します。2050年という遠いゴールだけでなく、途中の一里塚を業種別に置くわけです。

そして、忘れてはならないのが、取引先企業との対話(エンゲージメント)です。銀行は、ただ融資を引き上げるのではなく、取引先が脱炭素へ移行するのを後押しする役割も担います。計測し、目標を定め、対話で促す。この地道な積み重ねによって、投融資先全体の排出を減らそうとしている。なお、こうしたセクターの対象範囲は、年々広げられている。投融資先の排出という考え方の詳細は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

04

サステナブルファイナンス|2030年度100兆円

脱炭素を後押しする、お金の出し手としての役割です。

お金で、脱炭素を後押しする

累計100兆円2030年度までのサステナブルファイナンス目標(うち環境分野に50兆円)
再生可能エネルギーの開発を支える融資
企業の脱炭素への移行を支えるファイナンス

環境や社会の課題解決に役立つ事業へ、お金を供給する

出典:MUFGの公表情報をもとにgreenote作成

投融資排出を減らすことは、いわば「守り」の取り組みです。一方で、MUFGには「攻め」の役割もあります。それが、サステナブルファイナンスです。これは、環境や社会の課題解決に役立つ事業へ、お金を供給する金融になります。再生可能エネルギーの開発や、企業の脱炭素への移行などを、融資や投資で支えます。

その目標は、大きなものです。MUFGは、2030年度までに累計100兆円(うち環境分野に50兆円)のサステナブルファイナンスを実行すると掲げています。脱炭素には、莫大な資金が必要です。その資金を供給する出し手として、社会全体の移行を後押しする。ここに、金融機関だからこそ果たせる役割がある。サステナブルファイナンスの全体像は、関連記事のサステナブルファイナンスとはもあわせてご覧ください。

05

化石燃料融資をめぐる論点|批判と対応の両面

銀行の脱炭素には、避けて通れない難しい論点があります。

単純な善悪では、割り切れない

批判の声石炭火力や石油ガスの開発への融資を続けることに、環境団体などから批判がある
対応の考え方急に融資を止めればエネルギー供給や地域経済が混乱する。脱炭素へ移行する企業を支えるトランジション・ファイナンスの立場

批判と対応の両面があり、評価が定まっていない難しい領域

出典:MUFGの公表情報および公開報道をもとにgreenote作成

金融機関の脱炭素を語るうえで、避けて通れない論点があります。それが、化石燃料に関連する事業への融資です。石炭火力発電や、石油・ガスの開発。こうした事業への融資を続けることに対しては、環境団体などから批判の声があがってきました。MUFGを含む大手銀行は、しばしばこうした指摘の対象になります。

一方で、話はそう単純ではありません。もし銀行が、化石燃料への融資を急にすべて止めたら、どうなるでしょうか。エネルギーの供給が滞り、地域の経済や雇用が混乱するおそれもあります。そこで銀行は、脱炭素へ向かおうとする企業の移行を支える、トランジション・ファイナンスという立場をとることが多くなっている。ただ切り捨てるのではなく、移行に伴走する、という考え方です。この論点には、批判と対応の両面があり、どちらが正しいと簡単には決められません。評価が定まっていない、難しい領域だといえます。移行を支える金融は、関連記事のトランジション・ファイナンスとはもあわせてご覧ください。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではなく、その是非を断定するものでもありません。

06

まとめ|MUFGのESG経営から学べること

MUFGの歩みは、金融という切り口から見た脱炭素の姿を、私たちに教えてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

MUFGに学ぶ、3つのこと

本業の影響に責任自社より大きい投融資先の排出に向き合う
守りと攻め投融資排出の削減と、サステナブルファイナンスの両輪
単純な善悪ではない化石燃料融資のように、社会への影響とのバランスが問われる

出典:MUFGの公表情報をもとにgreenote作成

MUFGのESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • 日本最大級の金融グループ。ESGの主役は自社ではなく、投融資先の排出(投融資排出)
  • 邦銀初のカーボンニュートラル宣言。自社は2030年、投融資ポートフォリオは2050年にネットゼロ
  • 自社排出は2024年度に2020年比で約50%削減。投融資は計測・セクター別中間目標・対話で促す
  • 「攻め」として、2030年度までに累計100兆円のサステナブルファイナンスを掲げる
  • 化石燃料融資には批判と対応の両面があり、トランジション・ファイナンスの立場をとる

MUFGから学べるのは、事業の本質を通じた影響に責任を持つという視点です。銀行にとっての脱炭素は、自社の省エネではなく、お金の流れをどう変えるかにあります。だからこそ、投融資先の排出という最大の課題に向き合っている。同時に、化石燃料融資の論点が示すように、脱炭素は単純な善悪では割り切れません。社会への影響を考えながら、バランスを取る難しさがあります。金融という切り口は、脱炭素を立体的に理解する助けになる。なお本記事は、特定の投資を推奨するものではありません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)とはどんな企業ですか?

MUFGは、三菱UFJ銀行などを傘下に持つ、日本最大級の総合金融グループです。銀行・信託・証券などを幅広く手がけ、国内外の多くの企業や個人にお金を貸したり、投資したりしています。金融機関のESGでは、自社のオフィスから出るCO2よりも、お金を貸した先(投融資先)から出る排出のほうがはるかに大きいという特徴があり、そこへの取り組みが重要になります。

Q. なぜ金融機関のESGは「投融資」が主役なのですか?

銀行自身のオフィスや店舗から出るCO2は、事業会社の工場などに比べると多くありません。しかし、銀行がお金を貸したり投資したりした先の企業は、事業活動でCO2を排出します。この「投融資先の排出」を投融資排出(ファイナンスド・エミッション)と呼び、金融機関の排出の大部分を占めます。つまり、銀行はお金の流れを通じて、社会全体の脱炭素に大きな影響を与えられる立場にあるのです。

Q. MUFGのカーボンニュートラル目標はどうなっていますか?

MUFGは、邦銀として初めてカーボンニュートラル宣言を行いました。目標は2階建てです。1つ目は、自社の事業活動(オフィスや店舗など)から出る排出を、2030年にネットゼロにすること。2つ目は、投融資ポートフォリオ、つまりお金を貸した先を含めた排出を、2050年にネットゼロにすることです。公表情報によれば、自社排出は2024年度に2020年比で約50%削減しています。

Q. サステナブルファイナンスとは何ですか?MUFGの目標は?

サステナブルファイナンスとは、環境や社会の課題解決に役立つ事業へ、お金を供給する金融のことです。再生可能エネルギーの開発や、企業の脱炭素への移行などを、融資や投資で支えます。MUFGは、2030年度までに累計100兆円(うち環境分野に50兆円)のサステナブルファイナンスを実行する目標を掲げています。お金の出し手として、社会全体の脱炭素を後押しする役割です。

Q. 銀行の脱炭素にはどんな論点がありますか?

最大の論点が、化石燃料に関連する事業への融資です。石炭火力や石油・ガスの開発に融資を続けることには、環境団体などから批判があります。一方で、急に融資を止めれば、エネルギー供給や地域経済が混乱するおそれもあります。そこで銀行は、脱炭素へ向かう企業の移行を支える「トランジション・ファイナンス」という立場をとることが多いです。批判と対応の両面があり、評価が定まっていない難しい領域です。

Q. MUFGのESG経営から学べることは何ですか?

大きく2つあります。1つ目は、自社の排出だけでなく、事業の本質(お金の流れ)を通じた影響に責任を持とうとしている点です。投融資排出という最大の課題に、正面から向き合っています。2つ目は、脱炭素が単純な善悪では割り切れないという現実です。化石燃料融資の扱いのように、社会への影響を考えながらバランスを取る難しさがあります。金融の視点は、脱炭素を立体的に理解する助けになります。なお本記事は特定の投資を推奨するものではありません。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月19日

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