日産自動車のESG経営を分析|EVパイオニアとe-POWER

2026.07.20
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

自動車国内

いまでこそ、電気自動車は街でよく見かける存在になりました。しかし、EVがまだ「未来のクルマ」だった2010年に、それを一般の人が買えるクルマとして世に送り出した会社があります。日産自動車です。世界初の量産EV「リーフ」を生んだEVのパイオニア。その日産は、脱炭素の時代に、どんなESG経営を描いているのでしょうか。本記事では、日産自動車のESG経営を、EVパイオニアの歩みとe-POWERを軸に、公式情報をもとに中立に分析していきます。

この記事の目次

01

日産自動車のESG経営とは|EVのパイオニア

まず、日産がどんな会社で、なぜEVの分野で注目されるのかを整理しましょう。

EVを、みんなのものに

日産自動車=日本を代表する自動車メーカー EVの先駆者
原点2010年に世界初の量産EV「リーフ」を発売
目標2050年カーボンニュートラル 電動化を戦略の中核に

EVを一部の愛好家のものから、誰もが選べる選択肢へ。

出典:日産自動車の公表情報をもとにgreenote作成

世界初の量産EV「リーフ」

日産自動車は、日本を代表する自動車メーカーのひとつです。数ある強みのなかでも、とりわけ知られるのが、EV(電気自動車)の先駆者としての歩みになります。その象徴が、2010年に発売した「リーフ(LEAF)」です。これは、世界初の量産型EVでした。

それまで、EVは少量生産の高価な特別なクルマでした。リーフは、その常識を変えます。大量に生産し、一般の人が手の届く価格で世に送り出したのです。これにより、EVは一部の愛好家のものから、誰もが選べる選択肢へと変わりました。EV普及の歴史を語るうえで、リーフは欠かせない一台だといえます。電動化の考え方は、関連記事の電化とはもあわせてご覧ください。

2050年カーボンニュートラル

EVで先んじた日産は、脱炭素の目標も明確に掲げています。2050年のカーボンニュートラルです。事業活動だけでなく、クルマの一生(ライフサイクル)全体で、CO2排出を実質ゼロにすることをめざします。

その通過点として、具体的な数値目標も示しています。公表情報によれば、2030年までに、新車を使うときのCO2排出量を、2018年比でグローバルに32.5%削減する計画です。日本・米国・欧州・中国の主要4地域では、50%の削減をめざします。EVの先駆者らしく、電動化を軸に、着実に排出を減らしていく構えです。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

02

Nissan Ambition 2030|電動化を中核に

日産の脱炭素を引っぱる、長期ビジョンです。

電動化を、戦略の中心に

Nissan Ambition 2030=電動化を中核とする長期ビジョン
約2兆円今後5年間の投資
27車種2030年度までにEV19車種を含む電動車
55%以上電動車の販売比率

リーフで市場を切り拓いた日産が、次の10年で歩みを加速する。

出典:日産自動車の公表情報をもとにgreenote作成

日産の脱炭素を引っぱるのが、2021年に発表した長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」です。その名のとおり、電動化を戦略の中核に据えています。掲げる数字は、意欲的です。

公表情報によれば、今後5年間で約2兆円を投資し、2030年度までに、EV19車種を含む27車種の電動車を投入する計画です。さらに、販売する車のうち電動車が占める割合を、55%以上に高めることをめざします。EVを一台つくるだけでなく、電動車をラインアップの主役にしていく。リーフで市場を切り拓いた日産が、次の10年でその歩みを一気に加速させようとしているのです。

03

独自の技術|e-POWERと全固体電池

日産ならではの、二つの技術に注目します。

日産ならではの、二つの技術

e-POWERエンジンは発電に専念し、モーターで走る。充電なしでEVのような走り。次世代は熱効率50%
全固体電池より安全で高性能な次世代電池。コスト競争力のあるEVをめざす

一つの正解に絞らず、自社ならではの解を追う。

出典:日産自動車の公表情報をもとにgreenote作成

日産の電動化には、独自の技術という個性があります。まず注目したいのが、e-POWER(イーパワー)です。クルマにエンジンを積んでいますが、そのエンジンは発電に専念します。走るのは、あくまで電気モーターです。ガソリンで発電し、その電気でモーターを回すため、充電なしで、EVのような滑らかな走りを楽しめます。次世代のe-POWER向けには、世界最高レベルの熱効率50%を実現する発電専用エンジンの技術も開発されました。

もうひとつが、全固体電池です。いまのEVに使われるリチウムイオン電池より、安全性やエネルギー密度で優れると期待される、次世代の電池になります。日産は、この全固体電池で、よりコスト競争力のあるEVを実現しようとしています。EV一本に絞るのでも、その道を避けるのでもなく、e-POWERと全固体電池という自社ならではの解を追う。ここに、日産らしさが表れています。

04

バッテリーの二次利用|使い終えた後まで

EVの脱炭素は、走っている間だけの話ではありません。

使い終えても、まだ使える

EVで使用クルマの動力として使う
▶
役目を終えるEVとしての性能は低下
▶
二次利用蓄電池として再活用。太陽光の電気をためる・施設や街灯の電源に

資源を無駄なく使い切るバッテリーエコシステム。

出典:日産自動車の公表情報をもとにgreenote作成

EVの脱炭素は、クルマが走っている間だけの話ではありません。日産は、使い終えたバッテリーの二次利用にも取り組んでいます。EVで役目を終えたバッテリーも、実は蓄電池としてなら、まだ十分に使えます。そこで、そのまま捨てるのではなく、もう一度活用するのです。

たとえば、太陽光でつくった電気をためたり、施設や街灯の電源に使ったりできます。EVそのものを電力源として活用するV2G(EVを電力資源に)や、最終的に資源を回収するバッテリーリサイクルとも、深くつながる発想です。こうしたバッテリーエコシステムにより、日産は資源を無駄なく使い切ることをめざしています。つくって、使って、終わり、ではない。使い終えた後まで見すえる。この視点も、EVの脱炭素には欠かせません。

05

トヨタ・ホンダ・テスラとの対比|EVパイオニアの立ち位置

自動車メーカー各社と並べると、日産の個性が見えてきます。

同じ脱炭素でも、道はさまざま

日産EVパイオニア。リーフで市場を開拓。e-POWERと全固体電池
トヨタマルチパスウェイ。EV・水素・ハイブリッドなど複数の道
ホンダ電動化集中。2040年にEV・FCEV100%
テスラEVネイティブ。最初からEV専門

出発点や得意技が異なり、単純な優劣はつけられない。

出典:各社の公表情報をもとにgreenote作成

自動車メーカー各社と並べると、日産の立ち位置がよく見えてきます。日産は、リーフで市場を切り拓いたEVパイオニアであり、e-POWERと全固体電池という独自技術を持ちます。これに対し、トヨタはEV・水素・ハイブリッドなど複数の道を追うマルチパスウェイ、ホンダは2040年にEV・FCEV100%をめざす電動化集中、そしてテスラは最初からEV専門のEVネイティブです。

四者四様の戦略です。早くからEVを世に問うた日産、選択肢を広く残すトヨタ、電動化に舵を切るホンダ、EV一本で走るテスラ。出発点も、得意技も異なるため、単純な優劣はつけられません。将来のエネルギー事情や技術の進歩しだいで、どの戦略が有利かは変わりえます。大切なのは、各社の個性の違いを理解することです。複数の会社を並べて見ることで、自動車業界の脱炭素が立体的に見えてきます。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではありません。

06

まとめ|日産自動車のESG経営から学べること

日産の歩みは、新しい技術で市場を切り拓く先駆者の姿を、私たちに見せてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

日産に学ぶ、3つのこと

先駆けて世に問うリーフで量産EV市場を切り拓いたパイオニア精神
自社の解を追うe-POWERと全固体電池という独自技術
使い切るバッテリーの二次利用で資源を無駄なく

出典:日産自動車の公表情報をもとにgreenote作成

日産自動車のESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • EVのパイオニア=2010年に世界初の量産EV「リーフ」を発売し、EVを身近な選択肢に変えた
  • 2050年カーボンニュートラル(2030年に新車利用時のCO2を2018年比でグローバル32.5%削減)
  • Nissan Ambition 2030=5年で約2兆円投資、2030年度に電動車27車種、電動化率55%以上
  • 独自技術=e-POWER(エンジンは発電、モーターで走る)と全固体電池
  • バッテリーの二次利用で資源を使い切る。トヨタ・ホンダ・テスラとは異なる独自の道

日産から学べるのは、新しい技術を早くから世に問い、市場そのものを切り拓くという先駆者の姿勢です。リーフがなければ、いまのEV時代の入り口は、もっと遅れていたかもしれません。しかも日産は、一つの正解に固執せず、e-POWERやバッテリーの二次利用といった、自社ならではの多様な解を追い続けています。もちろん、電動化の速度は市場や政策にも左右され、計画どおりに進むとはかぎりません。理想と現実の両面を見つめることが、企業のESGを深く理解する助けになります。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. 日産自動車とはどんな会社ですか?

日産自動車は、日本を代表する自動車メーカーのひとつです。とりわけEV(電気自動車)の分野では、先駆者として知られます。2010年に、世界初の量産EV「リーフ」を発売し、EVを一般の人が買える身近なクルマにした立役者です。近年は、電動化を戦略の中核に据え、2050年のカーボンニュートラルをめざしています。

Q. 「リーフ」はなぜ画期的だったのですか?

日産リーフは、2010年に発売された、世界初の量産型の電気自動車です。それまでEVは、少量生産の高価な特別なクルマでした。リーフは、それを大量に生産し、一般の人が買える価格帯で世に送り出しました。これにより、EVは一部の愛好家のものから、誰もが選べる選択肢へと変わりました。EV普及の歴史を語るうえで、欠かせない一台です。

Q. Nissan Ambition 2030とは何ですか?

Nissan Ambition 2030は、日産が2021年に発表した長期ビジョンです。電動化を戦略の中核に据えています。公表情報によれば、今後5年間で約2兆円を投資し、2030年度までに19車種のEVを含む27車種の電動車を投入する計画です。あわせて、販売する車のうち電動車の割合(モデルミックス)を55%以上に高めることをめざしています。

Q. e-POWERとは何ですか?

e-POWER(イーパワー)は、日産独自の電動化技術です。エンジンを積んでいますが、そのエンジンは発電に専念し、クルマを動かすのは電気モーターです。ガソリンで発電し、その電気でモーターを回して走るため、EVのような滑らかな走りを、充電なしで楽しめます。次世代のe-POWER向けには、世界最高レベルの熱効率50%を実現する発電専用エンジンの技術も開発されています。

Q. 使い終えたEVのバッテリーはどうなりますか?

日産は、使い終えたEVのバッテリーを、そのまま捨てるのではなく、二次利用する取り組みを進めています。EVで役目を終えたバッテリーも、蓄電池としてなら、まだ十分に使えます。太陽光でつくった電気をためたり、街灯や施設の電源に活用したりできます。こうした「バッテリーエコシステム」により、資源を無駄なく使い切ることをめざしています。

Q. 日産のESG経営から学べることは何ですか?

大きく2つあります。1つ目は、リーフのように、新しい技術を早くから世に問い、市場そのものを切り拓く先駆者としての姿勢です。2つ目は、e-POWERやバッテリーの二次利用のように、一つの正解に固執せず、自社ならではの多様な解を追う発想です。トヨタやホンダ、テスラとは異なる道を歩む点も興味深いところです。なお本記事は特定の投資を推奨するものではありません。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月20日

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