ダイナミックプライシングとは|電気料金が時間で変わる仕組みと再エネ時代の意味をわかりやすく解説

2026.06.27
国内規制

スーパーの惣菜が、夕方になると値引きされる——。あの「安いうちに買おう」という行動を、電気にも持ち込もうとする仕組み。それが、電気の値段を時間によって変えるダイナミックプライシングです。

本記事では、ダイナミックプライシングとは何かを、できるだけかみ砕いて解説します。なぜ再エネ時代に広がるのか、時間帯別・ピーク課金・市場連動型という主な3つの型、私たちの電気代への影響、そして広げる土台と課題までを順に見ていきましょう。需要を動かすデマンドレスポンス(DR)とはや、価格が決まる場である電力市場とはとあわせて読むと、仕組みの背景が見えてきます。

この記事の目次

ダイナミックプライシングとは

まず、ダイナミックプライシングをひとことで整理します。「電気の値段が、時間によって変わる」という発想から入りましょう。

ダイナミックプライシングをひとことで言うと

ダイナミックプライシング(動的料金)とは、電気の需給の状況に応じて、料金の単価が時間とともに変わる価格設定のことです。電気が余りやすく安いときは単価が下がり、足りなくて高いときは単価が上がります。

ねらいは、価格を通じて、電気を使うタイミングを動かしてもらうことなのです。安いときに使えば得、高いときは控えると損をしない。この自然な動機づけによって、需要を需給の状況に合わせていく。それが、ダイナミックプライシングの基本的な考え方です。

これまでの固定料金との違い

従来の電気料金は、いつ使っても単価が同じ、という固定的なものが主流でした。昼でも夜でも、電気が余っていても足りなくても、1キロワットアワーあたりの値段は変わりません。

この固定料金には、わかりやすいという長所。一方で、「いま電気が余っているのか、足りないのか」が値段に表れないという弱点を抱えています。使う側には、需給に合わせて行動を変える動機が生まれにくいのです。ダイナミックプライシングは、この弱点を補い、電気の「いまの価値」を値段に映そうとする試みだといえます。

なぜ広がるのか――再エネ時代の必然

電気の値段を動かす仕組みが注目される背景には、再生可能エネルギーの拡大という大きな流れがあります。

電気の値段を、いまの需給に合わせる

固定料金とダイナミックプライシングのちがい

固定料金

いつ使っても単価は同じ。需給の状況が値段に表れない

ダイナミックプライシング

再エネが余る昼は安く、需要が集中する夕方は高い。値段が時間で変わる。

安い時間に使えば得。価格が需要を動かします

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

価格というシグナルで需要を動かす

再エネが増えると、電気の値段は時間によって大きく動くようになります。太陽光がたっぷり発電する晴れた昼は電気が余って安く、日が落ちて需要が集中する夕方は高くなる、といった具合です。

この価格の動きを「シグナル(合図)」として使い、需要を動かすのが、ダイナミックプライシングの核心です。「安いから、いま洗濯機を回そう」「高い時間は、エアコンを少し控えよう」。一人ひとりの小さな判断が積み重なれば、社会全体で需要のピークが和らぎます。これは、需要を価格で動かすデマンドレスポンス(DR)とはを、料金メニューのかたちで実現する仕組みでもあるわけです。

余る再エネを、安い時間に使ってもらう

再エネ時代の大きな課題が、電気の「余り」です。晴れた昼に太陽光が発電しすぎると、行き場のない電気は出力制御(カーテイルメント)とはで止められ、むだになってしまいます。

ダイナミックプライシングは、この余りを「安さ」で需要家に知らせ、使ってもらう役割を果たします。電気が余る時間の単価を下げれば、EVの充電や給湯を、自然とその時間へ寄せてもらえます。発電を止める前に、需要側で吸収する。価格を通じて再エネの余りを活かすこの発想は、再エネを主力にするうえで欠かせない発想の一つ。

主な種類――TOU・CPP・RTP

ダイナミックプライシングには、いくつかの型がある。動き方の「ゆるやか/激しい」で、代表的な3つを見ていきましょう。

動き方で選ぶ、3つの型

ダイナミックプライシングの代表的な類型

変動:ゆるやか → 激しい

TOU

時間帯別

昼夜などあらかじめ決めた時間帯ごとに単価を変える。変動はゆるやかで分かりやすい。

CPP

ピーク課金

需給が特に厳しい一部の時間だけ単価を大きく上げる。ふだんは通常料金。

RTP

市場連動型

卸電力市場の価格に連動し、単価がほぼリアルタイムで変わる。最も動的。

いずれもスマートメーターが土台になります。

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

時間帯別(TOU)とピーク課金(CPP)

もっともなじみ深いのが、時間帯別料金(TOU)です。これは、昼と夜などであらかじめ単価を決めておく方式で、オール電化の「夜間割引」が、その代表。変動がゆるやかで、計画を立てやすいのが長所です。

もう一段進んだのが、ピーク課金(CPP)です。これは、需給が特にきびしくなる一部の時間帯だけ、単価を大きく引き上げる仕組みです。ふだんは通常の料金で、「ここぞ」という逼迫時にだけ高い価格を示し、その時間の使用を強く控えてもらう。メリハリの効いた型だといえます。

市場連動型(RTP・リアルタイム)

もっとも動的なのが、市場連動型(RTP)です。これは、卸電力市場(JEPX)の価格などに連動して、電気の単価がほぼリアルタイムで変わるプランを指します。

市場価格をそのまま反映するため、安いときはとことん安くなる一方、高いときはぐんと跳ね上がります。市場の動きにうまく合わせて使えば、大きく得をできる可能性があります。この市場価格は、電力量と調整力をまとめて決める同時市場とはのような市場改革とも、深くつながっていくテーマです。なお、これら3つの型は、いずれも需要家ごとの使用量を細かく計るスマートメーターがあってはじめて成り立ちます。

私たちの電気代と暮らしへの影響

ダイナミックプライシングは、私たちの電気代に直結します。うまく付き合えば得になり、油断すると損にもなります。

賢く付き合えば得、油断すると損

ダイナミックプライシングのメリットと注意点

メリット

安い時間に使えば電気代を下げられる

余る再エネを活かせる

社会全体のピークと設備コストを抑える

脱炭素に貢献できる

注意点

市場連動型は高騰時に電気代が急上昇するリスク

こまめに時間を気にする手間

価格を先読みしにくい難しさ

2021〜2022年の市場高騰では、市場連動プランの請求額が大きく増えた例も

出典:資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

賢く使えば電気代は下げられる

ダイナミックプライシングの魅力は、行動しだいで電気代を下げられる点。単価が安い時間に、食洗機やEVの充電、給湯をまとめれば、同じ使用量でも支払いを抑えられます。

これは、家計にうれしいだけではありません。みんなが安い(=電気が余っている)時間に使えば、再エネのむだが減り、社会全体のコストも下がります。節約という個人の得が、脱炭素という社会の得につながる——。ここに、ダイナミックプライシングの面白さがあるのです。手間をかけずに済むよう、機器が自動で安い時間を狙う仕組みも広がってきました。

高騰リスクと向き合う――2021〜2022年の教訓

一方で、忘れてはならない注意点があるのも事実。とくに市場連動型(RTP)には、市場価格が急騰すると、電気代も跳ね上がるというリスク。

実際、2021年1月や2022年に日本の卸電力市場の価格が高騰した際には、市場連動型プランの利用者の請求額が大きく増えた事例が報じられました。安さを狙って契約したはずが、想定外の高額になる——。こうしたことが起こりうるのです。ダイナミックプライシング、とりわけ市場連動型を選ぶときは、安さの裏にある変動リスクをきちんと理解しておくことが欠かせません。

広げる土台と課題

ダイナミックプライシングを社会に広げるには、土台となる仕組みが要ります。同時に、課題も見えています。

スマートメーターと自動制御という土台

ダイナミックプライシングを支える土台が、スマートメーターです。これは、電気の使用量を30分など細かい単位で計り、通信で送れる電子式のメーターを指します。時間ごとの使用量がわからなければ、時間で変わる料金は計算できません。日本では、このスマートメーターの設置が各地で進んできました。

さらに効果を高めるのが、自動制御です。HEMS(家庭のエネルギー管理システム)やスマート家電、EVの充電タイマーが、安い時間を狙って自動で動いてくれれば、私たちは価格を気にし続けなくて済みます。人が我慢するのではなく、機器が賢く立ち回る。そんな世界が、技術の進歩とともに近づいています。

公平性とわかりやすさという課題

便利な仕組みである一方、課題も残ります。一つが、公平性です。日中に在宅して電気を使う家庭や、生活時間を動かしにくい人にとっては、必ずしも有利に働きません。価格変動への対応力の差が、負担の差につながりかねないのです。

もう一つが、わかりやすさです。料金が刻々と変わると、いくら払うのかが読みにくい。複雑さに不安を感じて、利用をためらう人も少なくありません。だからこそ、選びやすい料金メニューの設計や、高騰時の上限を設けるといった消費者保護の工夫が、普及のカギを握る。

ダイナミックプライシングの課題と対応

課題

公平性。日中に在宅して電気を使う家庭や、生活時間を動かしにくい人には有利に働きにくい。

対応・ポイント

スマートメーター+HEMS等の自動制御で、我慢せず機器が安い時間に賢く動くようにする。

課題

わかりやすさ。料金が刻々と変わり、支払額が読みにくく利用をためらう人も。

対応・ポイント

選びやすい料金メニューの設計や、高騰時の上限など消費者保護の工夫。

スマートメーターと自動制御の普及が土台。消費者保護の工夫が普及のカギを握ります。

ダイナミックプライシングをどう捉えるか

ダイナミックプライシングは、電気の「いまの価値」を値段に映し、価格を通じて需要を動かす仕組みです。安い時間に使えば、家計も助かり、再エネのむだも減る。需要側が電力システムを支える一員になる、その入り口に位置する考え方だといえます。

大切なのは、ダイナミックプライシングを「電気代が変わって面倒なもの」ではなく、「賢く使えば得をし、脱炭素にも貢献できる新しい選び方」として捉えることでしょう。需要を動かすDR、設備を束ねるVPP、価格を最適に決める市場改革。これらと組み合わさることで、変動する再エネを、社会全体で無理なく受け止められます。電力システム全体の地図は電力システムまるわかりガイドもご覧ください。

電気を「いつ使うか」を、私たち自身が選ぶ時代へ。ダイナミックプライシングは、その選択を価格で後押しする、身近な脱炭素の一歩だといえます。なお本記事は、特定の料金プランや事業・金融商品への加入・投資を推奨するものではなく、仕組みと考え方を中立に整理したものです。

よくある質問(FAQ)

Q. ダイナミックプライシングだと、電気代は上がるのですか、下がるのですか?

A. 使い方しだいです。電気の単価が安い時間帯に家事や充電を寄せれば、電気代を下げられる可能性があります。逆に、高い時間帯に多く使えば割高になります。とくに市場連動型(RTP)は、卸電力市場が高騰する局面で料金が大きく上がるリスクがあるため、仕組みを理解したうえで選ぶことが大切です。本記事は特定のプランの損得を保証するものではありません。

Q. オール電化の「夜間割引」とは違うのですか?

A. 夜間が安い時間帯別料金(TOU)も、広い意味ではダイナミックプライシングの一種です。あらかじめ時間帯ごとに単価が決まっているTOUは、変動がゆるやかなタイプといえます。より動的なのが、卸電力市場の価格に連動して単価がこまめに変わる市場連動型(RTP)です。同じ『時間で変わる料金』でも、変動のしかたに幅があります。

Q. ダイナミックプライシングを使うには、何が必要ですか?

A. 使用量を時間ごとに計れるスマートメーターと、対応した料金プランへの契約が基本です。スマートメーターは各地で設置が進んでいます。加えて、HEMS(家庭のエネルギー管理システム)やスマート家電、EVの充電タイマーなど、安い時間に自動で使うよう調整できる仕組みがあると、手間なくメリットを引き出しやすくなります。

最終更新日:2026年6月27日

この記事の著者

greenote編集部

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