新しい発電所への投資を、国が長期の収入で後押しする入札制度があります。まず押さえたいのは、長期脱炭素電源オークションが、脱炭素電源とLNG専焼火力への新規投資を、原則20年の容量収入で支える入札制度だという点です。容量市場とは別の制度として、2023年度に始まりました。
本記事では、仕組みと対象電源、第3回までの結果、第4回の変更点を整理します。根拠は、資源エネルギー庁とOCCTO(電力広域的運営推進機関)の資料です。電気料金の背景を知りたい方は、電気料金の推移もあわせてご覧ください。
※本記事は公表情報(2026年11月時点)に基づく解説です。数値や条件は、募集要綱の確定などで変わる場合があります。特定の事業への投資を推奨するものではありません。
この記事の目次
- 1長期脱炭素電源オークションとは|新しい電源への投資を後押しする入札制度
- 制度の目的と背景
- 仕組み|20年の容量収入と収益の還付
- 応札できる人と対象外の電源
- 2対象になる電源と2つの区分
- 3第1回〜第3回の結果
- 3回の推移
- 第3回の電源別の内訳
- 4第4回で決まった主な変更点
- 募集量と募集上限
- 資本コストと上限価格
- 制度適用期間・LNG専焼・バイオマス・蓄電池
- 5具体的な影響|費用は誰が負担し、誰に何が起きるのか
- 費用負担の流れ
- 発電事業者への影響|収入の変動と義務
- 電気を使う企業への影響
- 6課題|応札の偏り、コスト上昇、供給網
- 募集量と落札のずれ
- コスト上昇と金利
- 電源ごとの課題
- 制度の持続性
- 7実務で押さえたい点
- 8まとめ
- 9よくある質問(FAQ)
長期脱炭素電源オークションとは|新しい電源への投資を後押しする入札制度
長期脱炭素電源オークションは、脱炭素電源への新規投資を対象にした入札です。落札した電源は、固定費水準の容量収入を長期にわたって受け取れます。
制度の目的と背景
資源エネルギー庁の資料によると、目的は電力の安定供給に万全を期すことと、計画的に脱炭素化を進めることです。背景には、既存電源の退出と新規投資の停滞があります。供給力が落ち、需給のひっ迫や卸市場価格の高騰が起きたことが挙げられています。
こうした状況を受け、脱炭素電源への新規投資を促す入札として、2023年度から始まりました。国の長期計画との関係は、第7次エネルギー基本計画の記事で確認できます。
仕組み|20年の容量収入と収益の還付
落札電源は、固定費水準の容量収入を原則20年間得られます。ただし、収入がそのまま事業者の手元に残るわけではありません。卸市場や非化石市場などで得た収益の約9割は、還付する仕組みです。
資料は、この関係を「本制度での収入=落札価格-還付する収益」と整理しています。電源は市場でも稼げますが、その多くは還付に回ります。投資の回収を、長期で見通しやすくする設計です。
容量収入として受け取る
市場収益の約9割
原則20年間
応札できる人と対象外の電源
OCCTOの説明会資料によると、参加できるのは、電源を自ら維持・運用しようとする国内法人です。落札後に発電事業者の届出をすれば足ります。電気を使う側の企業が、需要家として応札する制度ではありません。
対象外の電源もあります。FIT・FIP制度が適用される電源、すでに容量オークションで落札された電源、ほぼ自家消費される電源などです。応札には設備容量の下限があり、太陽光・風力・火力は10万kW以上、蓄電池は3万kW以上が例として示されています。
対象になる電源と2つの区分
制度は、対象を大きく2つに分けています。脱炭素電源を計画的に増やす区分と、供給力を急いで確保する区分です。
| 区分 | 対象 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 脱炭素電源の投資支援 | 新設・リプレースなどの大規模投資。既設の火力を脱炭素電源に改修する投資(CCS付火力への改修が例) | 水素・アンモニア混焼は2050年までの脱炭素化が条件。電源種ごとに運転開始の期限を設定 |
| 緊急の電源投資支援 | LNG火力の新設・リプレース | 2050年までの脱炭素化が条件。落札から8年以内の運転開始(第3回まで) |
脱炭素電源には、太陽光、風力、蓄電池、水力、地熱、原子力、水素・アンモニアやバイオマスなどの火力が含まれます。洋上風力やバイオマス発電も対象です。
第1回〜第3回の結果
3回の入札では、脱炭素電源とLNG専焼火力の両方で、かなりの容量が落札されました。第3回の落札は、2つの区分の合計で729.9万kWです。
3回の推移
| 回(実施) | 区分 | 募集量 | 落札容量 |
|---|---|---|---|
| 第1回(2024年1月) | 脱炭素電源 | 400万kW | 401万kW |
| LNG火力 | 600万kW | 575.6万kW | |
| 第2回(2025年1月) | 脱炭素電源 | 500万kW | 503万kW |
| LNG火力 | 224万kW | 131.5万kW | |
| 第3回(2026年1月) | 脱炭素電源 | 500万kW | 426.1万kW |
| LNG火力 | — | 303.8万kW |
第3回では、脱炭素電源の応札が610.6万kWで、落札は426.1万kWでした。募集量の500万kWには、73.9万kW届いていません。LNG火力は、7件で475万kWの応札があり、4件・303.8万kWが落札されています。第3回の結果は、2026年5月に公表されました。
第3回の電源別の内訳
第3回の脱炭素電源は、電源によって落札の状況が分かれました。水素・アンモニアの脱炭素火力、既設原発の安全対策投資、新設の原発とバイオマスは、応札した分がすべて落札されています。
| 電源種 | 応札(万kW) | 落札(万kW) |
|---|---|---|
| 脱炭素火力(水素・アンモニア) | 51.7 | 51.7 |
| リチウムイオン蓄電池 | 152.5 | 55.1 |
| 揚水のリプレース等 | 63.2 | 26.8 |
| リチウムイオン以外の蓄電池 | 120.6 | 70 |
| 揚水の新設 | 18.6 | 18.6 |
| 既設原発の安全対策投資 | 55.8 | 55.8 |
| 原発・バイオマス(新設) | 148.2 | 148.2 |
資料の内訳では、新設の原発は138.1万kW、バイオマスは10.1万kWです。リチウムイオン蓄電池は、応札152.5万kWに対して、落札は55.1万kWにとどまりました。
第4回で決まった主な変更点
第4回の入札は、2027年1月に予定されています。資源エネルギー庁の2026年5月の資料に「来年1月」とあり、日付はそこから読み取れます。具体の日程は、OCCTOが確定次第、案内する扱いです。
募集量と募集上限
募集量は、脱炭素電源が500万kW、LNG専焼火力が600万kWです。電源ごとに募集上限が置かれ、上限を超える追加の落札はしません。
| 区分 | 募集上限 |
|---|---|
| 脱炭素火力 | 50万kW |
| 既設原発の安全対策投資 | 150万kW |
| 洋上風力 | 50万kW |
| リチウムイオン蓄電池 | 40万kW |
| リチウムイオン以外の蓄電池 | 40万kW |
| 揚水の新設・リプレース等とLDES | 40万kW |
資本コストと上限価格
入札価格の前提となる資本コストは、ベースが5%から5.5%に引き上げられました。電源別では4.5〜6.5%です。第5回以降は、毎年の金利を反映して設定します。
上限価格も見直されました。LNG専焼は、従来の5.5万円/kW/年から、LNG基地の整備がある場合は最大9.2万円/kW/年になります。一般水力、揚水(新設)、原子力は、諸元のコストの1.5倍から2倍になりました。バイオマスは、10万円/kW/年で据え置きです。
制度適用期間・LNG専焼・バイオマス・蓄電池
制度の適用期間は、基本が20年です。上限は従来の40年から、一般水力、揚水(新設)、原子力、LNG専焼、LDESで30年に短縮されます。太陽光、風力、地熱、バイオマスの再エネは、20年に限られます。
LNG専焼は、当初は3年限定の想定でしたが、当面は募集を続けます。供給力の提供開始期限は、第3回までの8年から11年(環境アセスが済んでいる場合などは7年)に変わりました。
バイオマスは、一般木質などを第4回も支援対象とします。蓄電池では、経済安全保障推進法の認定を受けたメーカーのリチウムイオン蓄電池が、優先して約定されます。水素・アンモニアは、低炭素のものに限られる方針です。要件の詳細は、募集要綱での確認が必要です。
具体的な影響|費用は誰が負担し、誰に何が起きるのか
この制度は発電側への投資支援ですが、費用は電気を売る側が分担します。OCCTOの資料にもとづき、お金の流れと関係者への影響を整理します。
費用負担の流れ
小売電気事業者、一般送配電事業者、配電事業者は、「容量拠出金」をOCCTOに支払います。OCCTOは、これを原資に、落札した発電事業者へ容量確保契約金額を支払います。拠出金の総額は、エリアごとの需要比率で各エリアに配分されます。小売電気事業者の負担は、エリアの拠出金総額から、送配電事業者の負担分を引いた残りです。
請求は、負担総額を12等分して毎月行われます。発電事業者から還付された収益は、翌年度に1回、小売電気事業者などへ還元されます。契約金額を超える分と経済的ペナルティは、小売電気事業者に還元される扱いです。
需要家への配慮として、上限価格が20万円/kW/年を超える脱炭素火力と洋上風力は、募集上限を50万kWに抑えています。ただし、費用の総額や1kWhあたりの試算、電気料金への具体的な影響額は、今回確認した資料に示されていません。本記事でも、金額の試算は示しません。
発電事業者への影響|収入の変動と義務
落札した事業者の収入は、落札価格から、他市場の収益の還付分を引いた額です。還付割合は状況により95%、90%、85%の3段階で、他市場の収益がマイナスの場合は、翌年度以降の収益から差し引かれます。物価や金利の変動分を補正するため、契約金額が変わる可能性もあります。
落札後は、供給力の提供開始時期、供給力の維持、脱炭素化のロードマップなどを守る義務があります。達成できなければ、経済的なペナルティが科されます。供給力の提供開始期限は、2026年度の例で、蓄電池が4年、長期エネルギー貯蔵システムが7年、LNG専焼火力が11年(アセス済みなら7年)です。市場からの退出が認められるのは、脱炭素火力が落札後8か月以内に、事業者以外の事由で関連事業が中止された場合など、限られたケースです。
電気を使う企業への影響
需要家が直接費用を払う仕組みではありません。ただ、拠出金を負担するのは小売電気事業者のため、料金への影響は、小売の契約や料金設計を通じて現れる可能性があります。調達の前提となる電気料金の動きは、電気料金の推移の記事でも整理しています。
課題|応札の偏り、コスト上昇、供給網
3回の入札を経て、課題も見えてきました。資料が挙げている点を整理します。なお、資料は、応札が募集量を下回った理由を個別には分析していません。
募集量と落札のずれ
| 区分 | 結果 |
|---|---|
| 脱炭素電源(第3回) | 募集量500万kWに対し、落札は約426万kW |
| 既設原発の安全対策投資(第3回) | 募集上限150万kWに対し、落札は約55万kW |
| 蓄電池・揚水・LDES | 第1回は166.9万kW、第2回は173.1万kWで、上限を超過。第3回は上限を80万kWに下げたが、ルール適用で170万kW |
電源によって、足りない分野と、集まりすぎる分野に分かれています。蓄電池などは応札が多く、募集上限を調整する場面が続きました。
コスト上昇と金利
第4回の見直しの背景には、コストの上昇があります。2025年度の日銀の貸出約定平均金利は1.51%まで上がり、資本コストのベースを5%から5.5%へ引き上げました。建設資材の価格が、建設工事費デフレーターを上回って上昇しているとの指摘もあり、一般水力、揚水(新設)、原子力の上限価格は、諸元のコストの1.5〜2倍になりました。
発電事業者からは、建設費の見積もりがデフレーター以上に上がっているという声が出ています。物価上昇を上限価格に反映しなければ、応札が難しくなるおそれがあります。一方で、審議会では、足元の金利がさらに上がっているため、今回の引き上げで足りるのかという懸念や、より直近の金利を使うべきだという意見も出ました。
電源ごとの課題
| 電源 | 課題 |
|---|---|
| LNG専焼 | 第3回の上限価格にはLNG基地のコストが含まれず、新規地点の建設が難しいとの懸念があった。ガスタービンの世界的な需要増で製造・建設が長期化し、提供開始期限は11年に延びた |
| 水素・アンモニア、CCS付火力 | 試運転時の高額な燃料費や可変費を、容量市場で回収しにくい。他の燃料需要の確保も必要で、事業を実施できない場合に備えた退出の特例がある |
| バイオマス | 一般木質などがFIT・FIPの対象外になる中、大規模なバイオマスがオークションにも参加できないのは問題だという意見が業界や委員から出ている |
| 蓄電池 | 特定国メーカーのセルを使う案件が大半で、供給網の途絶リスクが高い。経済安全保障推進法の認定メーカーを優先して約定する方針 |
| 長期エネルギー貯蔵(LDES) | 火力と同等の建設期間が必要とわかり、提供開始期限が4年から7年に延びた |
制度の持続性
支援が長くなるほど、資本コストが総額に占める割合は高まります。そこで第4回では、制度適用期間の上限を40年から30年に短縮しました。LNG専焼の還付の方法(実績ベースか固定化か)も、国の審議会で検討が続いています。供給力不足のリスクがある中で、脱炭素と供給力の確保をどう両立させるかが、引き続き問われています。
実務で押さえたい点
この制度は発電側への投資支援なので、電気の買い手が直接かかわる場面は多くありません。それでも、供給力と電源構成を左右する制度として、調達の前提になります。
確認したい点は3つあります。1つ目は、制度の数値は確定前の目安を含むことです。OCCTOの説明会資料も、募集要綱や約款と異なる場合は、募集要綱が優先すると明記しています。
2つ目は、再エネの契約や証書との関係です。電源の脱炭素化が進めば、非化石価値の取引や、系統の運用にも影響が及びます。系統の基本は、電力系統とはで確認できます。
3つ目は、最新の発表を追う窓口です。資源エネルギー庁の電力安定供給ワーキンググループの資料と、OCCTOの募集要綱が、一次情報になります。
まとめ
要点は次のとおりです。
- 長期脱炭素電源オークションは、脱炭素電源とLNG専焼火力への新規投資を、原則20年の容量収入で支える入札制度です。
- 収入は「落札価格-還付する収益」で、市場収益の約9割は還付されます。
- 第3回(2026年1月実施)は、2つの区分の合計で729.9万kWが落札されました。
- 第4回は2027年1月の予定で、資本コスト、上限価格、制度適用期間などが見直されています。
制度は見直しが続いています。数値は、募集要綱と資源エネルギー庁の最新資料で確かめてください。
greenoteでは、ESG・サステナビリティをわかりやすく発信しています。ご相談はお気軽にどうぞ。
出典・参考資料(一次情報)
リンク先は2026年11月時点で確認した各機関の公開情報です。最新は各公式情報をご確認ください。
資源エネルギー庁:長期脱炭素電源オークションについて(2026年5月13日)/同(2026年6月23日)/第4回募集に向けて(2026年8月)
OCCTO:長期脱炭素電源オークションの概要について(応札年度:2026年度、2026年7月)
よくある質問(FAQ)
Q. 電気を使う企業も、この入札に参加できますか。
A. 参加できるのは、電源を自ら維持・運用しようとする国内法人です。需要家として応札する制度ではありません。電気の買い手にとっては、供給力や電源構成に影響する制度として確認する対象になります。
Q. 容量市場とは何が違いますか。
A. 本制度は、脱炭素電源とLNG専焼火力への新規投資を対象に、原則20年の容量収入を与える入札です。すでに容量オークションで落札された電源は、本制度の対象外とされています。容量市場の仕組みは、容量市場とはで解説しています。
Q. 次の入札はいつですか。
A. 第4回は2027年1月に予定されています。具体の日程や募集要綱は、OCCTOが案内します。結果は、応札年度の翌年度に公表される扱いです。
Q. この制度は電気料金に影響しますか。
A. 費用は、小売電気事業者や送配電事業者が容量拠出金として負担します。そのため、料金への影響は小売の契約や料金設計を通じて現れる可能性があります。ただし、費用の総額や1kWhあたりの試算は、確認した資料に示されていません。
発電部門は、2033年度から排出枠の有償オークションが段階的に入る計画です。制度の全体像はGX-ETS(排出量取引制度)の実務ガイドで確認できます。