V2G(EVを電力資源に)とは|仕組みとV2H・V1Gの違いをわかりやすく解説

2026.06.21
国内規制

電気自動車(EV)は「走るためのもの」——その常識が、いま変わりつつあります。EVに積まれた大きな電池を、走っていない時間に電力源として使う。その代表的な考え方が、V2G(Vehicle to Grid)です。

本記事では、V2Gとは何かを、できるだけかみ砕いて解説します。よく似たV2HやV1Gとの違い、双方向充電の仕組み、気になる電池への影響、そして日本と海外の動きまでを順に見ていきましょう。前提として、束ね役のVPPや需要側のDRについてはVPP(仮想発電所)とは、デマンドレスポンス(DR)とはもあわせてご覧ください。

≡この記事の目次

V2G(EVを電力資源に)とは

まず、V2Gをひとことで整理します。「EVを走る蓄電池として、電力系統に活かす」という発想から入りましょう。

V2Gをひとことで言うと

V2G(Vehicle to Grid)とは、EVにためた電気を、必要なときに電力系統(グリッド)へ送り返して活用する仕組みです。文字どおり「車から系統へ」電気を流す技術を指します。

これまで、EVは電気を「もらうだけ」の存在でした。V2Gでは、その流れが双方向です。電気が余っている時間に充電し、足りない時間に系統へ放電する。こうしてEVが、電力の需給調整に一役買えるようになるわけです。停電や電力逼迫といった「もしも」のときに、頼れる電源にもなり得ます。

EVは「走る蓄電池」になる

V2Gを理解する鍵は、「EVは大きな電池でもある」という視点です。一般的なEVの電池容量は、家庭用の据え置き蓄電池の数倍にもなります。

しかも、多くの車は1日の大半を駐車場で過ごします。動いていない間、その大きな電池はただ眠っているだけです。この「眠っている電池」を電力源として活かそう、というのがV2Gの根っこにある発想です。EVは、移動手段であると同時に、「走る蓄電池」にもなる。そう捉えると、V2Gの狙いが見えてきます。

V1G・V2H・V2Gの違い

EVと電気のやりとりには、いくつかの段階があります。よく似た用語を、給電する相手で整理しておきましょう。

V1G・V2H・V2Gの違い

電気を「どこへ」送るかで分かれる

V1G

系統 → EV(充電のみ)

充電するタイミングを賢く調整するだけ。放電はしない。負担が小さく導入しやすい。

V2H

EV ⇔ 家

EVから家へ給電。停電時のバックアップにもなる(出力の目安6〜10kW)。

V2G

EV ⇔ 電力系統

EVから系統へ給電。系統の安定に貢献し、報酬を得られる場合も。

これらをまとめてV2X(Vehicle to Everything)と呼びます。日本ではまずV2Hが先行。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

V1G=賢く「充電」するだけ

まず押さえたいのが「V1G」です。これは、EVへの充電そのものは変わらず、充電する「タイミング」を賢く調整する仕組みを指します。

たとえば、電気が安い夜間や、太陽光が余る昼間に充電を寄せる。逆に、需要がピークの時間は充電を控える。放電はしないため、電池への負担も小さく、導入のハードルは比較的低めです。電気を戻しはしないものの、需要を動かすという意味で、立派な調整の手段といえます。

V2H・V2G=家や系統へ「放電」する

一歩進んで、EVから電気を「放電」するのが、V2HとV2Gです。違いは、電気を送る相手です。

V2H(Vehicle to Home)は、EVから「家」へ電気を送ります。停電時には、家じゅうの電気をしばらくまかなえる頼もしい備えです。一方、V2G(Vehicle to Grid)は、EVから「電力系統」へ電気を戻します。こちらは社会全体の需給調整に貢献し、報酬を得られる場合もある仕組みです。これらを総称して、V2X(Vehicle to Everything)と呼びます。

なぜ注目されるのか(VPP・DRとの関係)

V2Gが注目される理由は、これまで見てきたVPPやDRと深くつながっています。仕組みと役割の両面から見ていきましょう。

双方向充電とVPP・DRのつながり

充放電を行き来させ、束ねて活かす

電力系統・家
双方向
充電器
EVの電池

ためる:AC → DC に変換して充電

戻す:DC → AC に変換して給電

充放電を安全に管理する制御システムが、V2Gの頭脳です。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

双方向充電の仕組み

V2Gを支えるのが、「双方向充電」の技術です。ふつうの充電器は、系統の交流(AC)をEV向けの直流(DC)に変換して電池にためるだけの一方通行でした。

双方向充電器は、この変換を行き来させられます。ためるときはACをDCに、戻すときはDCをACに変換し、系統や家へ送り出すわけです。これを安全に行うには、電気の流れを賢く管理する制御システムが欠かせません。電池の状態を見ながら、いつ・どれだけ充放電するかを判断する頭脳が、V2Gの裏側で働いています。

VPP・DRの「動く蓄電池」として

V2Gが真価を発揮するのは、VPPやDRと組み合わさったときです。駐車中の何台ものEVを、アグリゲーターがまとめて束ねる。すると、あちこちのEVが「動く蓄電池」の集合体です。

電気が余れば一斉に充電し、足りなければ一斉に放電する。これは、VPPが目指す需給調整そのものです。EVが普及するほど、束ねられる電池の総量も膨らみます。据え置きの蓄電池に加えて、街じゅうのEVが調整力になる——V2Gは、モビリティとエネルギーをつなぐ接点だといえます。仕組みの全体像はVPP(仮想発電所)とはもご参照ください。

電池は傷まないのか/普及の壁

EVオーナーが最も気にするのが、電池への影響でしょう。劣化の実際と、普及に向けた課題を率直に押さえます。

V2Gのメリットと課題

有望さと、乗り越えるべき壁

メリット

EVの大きな電池を電力源に活かせる

停電時の備えになる

VPP・DRの調整力になる

報酬を得られる場合がある

課題・壁

電池劣化への不安(賢い管理で影響は小さいとの研究が多い)

双方向充電器のコスト

通信規格やサイバーセキュリティ

対応する車種・台数がまだ限られる

電池劣化は「賢い管理が前提」。高度な制御ソフトがあってこそメリットが活きます。

出典:研究・各種公開情報をもとにgreenote作成

電池劣化の実際

「頻繁に充放電したら、電池がすぐ傷むのでは」——もっともな心配です。ただ、研究の多くは「賢く管理すれば影響は小さい」という見方を示しています。

電池は、満充電や空に近い状態での負荷が大きくなりがちです。逆にいえば、充電率を中間(おおむね60〜80%)に保ち、急激な負荷を避けて使えば、通常のゆっくりした充電と同程度に抑えられるとされます。10年で数%程度の劣化にとどまるとの保守的な試算や、使い方しだいでむしろ寿命を延ばしうるとのモデルもあるほどです。鍵は、電池の健全性を守るように制御できるかどうかです。

規格・コスト・台数という壁

とはいえ、普及への壁も小さくありません。まず、双方向充電器は通常の充電器より高価で、初期費用がかさみます。

加えて、EVと充電器、系統をつなぐ通信規格の標準化や、サイバーセキュリティの確保も課題です。さらに、V2Gに対応する車種や設置台数が、まだ限られています。技術として有望でも、コストが下がり、対応車が増え、ルールが整わなければ、一気には広がりません。「動く蓄電池」が本領を発揮するには、もう少し時間がかかりそうです。

日本と海外の現在地

V2Gの広がり方は、国によって違います。日本と海外、それぞれの現在地を整理します。

日本=V2Hが先行・補助金とCHAdeMO

日本では、系統向けのV2Gより先に、家庭向けのV2Hが普及してきました。停電時の備えという分かりやすい価値が、後押ししています。国も導入を支援しており、2025年度の補助金では、個人宅のV2H充放電設備に対し、機器代と工事費を含めて上限65万円程度が示されました(次世代自動車振興センター)。

技術面で日本が強いのが、急速充電の規格「CHAdeMO」です。CHAdeMOはV2H規格を発行し、EVと家をつなぐ双方向充電を実用化してきました(CHAdeMO協議会)。リーフやサクラ、アウトランダーPHEVといった国産車にV2H対応が多い一方、海外メーカー車には非対応の場合もある点に注意が必要です。まずは家庭での実績を積み、系統向けのV2Gへ広げていく——それが日本の道筋といえそうです。

海外=英国などの動き

海外でも、V2Gの制度づくりが動いています。たとえば英国は、日産の車に対してAC方式のV2Gの系統接続認証を発行し、一定の出力を超える新しい商用の充電設備に、V2G対応を求める動きを見せました。

家庭の電池やEVを束ねる文化が根づいた国ほど、こうした制度が進みやすい傾向です。VPPの回でも触れたとおり、電源構成や市場の事情によって、広がり方は国ごとに異なります。日本は家庭のV2Hから、海外は制度先行で——アプローチは違っても、EVを電力資源として活かす方向性そのものは同じだといえるでしょう。

V2Gをどう捉えるか

V2Gは、EVを「走る蓄電池」として電力系統に活かす仕組みです。これまで眠っていた車載電池が、再生可能エネルギーの調整役として動き出す。そう考えると、EVの価値は「移動」だけにとどまりません。

もちろん、電池への影響やコスト、規格といった壁は残っています。けれども、賢い制御で電池を守りながら使う技術は着実に進み、日本では家庭向けのV2Hから裾野が広がってきました。VPPやDRと組み合わされば、街じゅうのEVが、電力システムを支える一員になり得ます。

大切なのは、V2Gを「特別な誰かの技術」ではなく、「EVと電気の新しい付き合い方」として捉えることでしょう。車を停めている時間が、社会の電気を支える時間にもなる。その視点を持てば、モビリティとエネルギーの未来が、ひとつながりに見えてくるはずです。

なお本記事は、特定の車種・サービスへの加入や購入を推奨するものではなく、仕組みと動向を中立に整理したものです。関連するテーマはVPP(仮想発電所)とは、デマンドレスポンス(DR)とはもあわせてご覧ください。

最終更新日:2026年6月21日

この記事の著者

greenote編集部

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よくある質問(FAQ)

Q. V1G・V2H・V2Gはどう違いますか?

A. V1Gは充電のタイミングを制御するだけ(EVから電気は出しません)、V2HはEVから家庭へ電気を戻すこと、V2GはEVから電力系統へ電気を戻すことを指します。難易度と必要な機器・制度もこの順に上がります。

Q. EVの電池は傷まないのですか?

A. 充放電の回数が増えれば劣化は進みます。ただし制御次第で影響を抑えられるため、実際の設計では放電の深さや頻度に上限を設けます。「電池の劣化コストを誰が負担するか」が普及の経済性を左右する論点になっています。

Q. VPPやデマンドレスポンスとの関係は?

A. V2GはVPP(仮想発電所)を構成する分散型リソースの一つ、という関係です。アグリゲーターがEVを含む複数のリソースをまとめて制御し、需給調整市場などで価値を出します。V2G単独ではなく、束ねる仕組みとセットで成立する技術です。

Q. 普及の壁は何ですか?

A. 双方向充電器のコスト、対応車種の少なさ、そして制度です。系統へ電気を戻すには連系の要件や計量のルールが必要で、これらが整うまでは実証段階が続きます。先に普及するのはV1G(充電時間の制御)だと見られています。

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