ISO14063とは|環境コミュニケーションの国際規格

2026.09.24
環境情報

ここまでgreenoteでは、ISO14026とは(フットプリント表示)、ISO14025とは(EPD)、ISO14024とは(エコラベル)と、環境情報の「伝達」に関わる個別の国際規格を取り上げてきました。実はこれらすべてを一段上から束ねる規格が存在します。ISO14063——組織の環境コミュニケーション全般を対象にした国際規格です。

ISO自身が、公式カタログの中でこの規格とISO14020・14021・14024・14025・14026との関係を明記しています。本記事では、ISO14063が何を定める規格なのか、これまで扱った各規格とどう関係するのか、そして日本の環境コミュニケーションに関する制度が置かれている現状を、ISO公式情報と環境省の公開情報にもとづいて整理します。

※本記事の制度情報は2026年9月時点でISO公式サイト・環境省が公表した情報にもとづきます。最新の状況は各公式情報をご確認ください。

この記事の目次

ISO14063とは|環境コミュニケーション全般を扱う規格

ISO14063は、組織の内部・外部への環境コミュニケーションに関する一般原則・方針・戦略・活動についてのガイドラインを示す国際規格です。ISO公式の要約によれば、規模・業種・所在地・組織構造・活動内容を問わず、あらゆる組織に適用でき、環境マネジメントシステム(ISO14001)を導入しているかどうかも問いません。現行版はISO14063:2020(第2版・32ページ・CHF159)で、初版のISO14063:2006は廃止(Withdrawn)となっています。2025年の最終レビューでも、現行版のまま維持することが確認されました。

内部・外部への環境コミュニケーションの原則を定める

この規格が扱う「環境コミュニケーション」は、環境報告よりも広い概念です。単に情報を一方向に開示するだけでなく、利害関係者との対話を通じて、環境問題の防止や解決に結びつける取り組みまでを含みます。ISO14063は、他のISO14000ファミリー規格と組み合わせて使うことも、単独で使うこともできる、実務に汎用的なガイドラインという位置づけです。

策定はISO/TC207/SC4――ラベル規格(SC3)とは別委員会

ISO14063を策定しているのはISO/TC207/SC4です。これまで扱ってきたISO14021・ISO14024・ISO14025・ISO14026は、いずれも環境ラベルと宣言を担当するSC3が策定していました。つまり、「何を、どう表示するか」という個別の手段はSC3が、「組織としてどうコミュニケーションを設計するか」という全体像はSC4が担当する、という役割分担になっています。

「内部」と「外部」——規格が扱う2つのコミュニケーション

ISO14063の適用範囲でまず押さえたいのが、対象を「内部・外部」と並べて書いている点です。環境コミュニケーションというと、報告書やウェブサイトでの対外発信を思い浮かべがちですが、この規格は組織の中に向けた共有・対話も、同じ枠組みの中で扱います。それぞれの典型的な場面を整理すると、次のようになります。

内部コミュニケーション 外部コミュニケーション
主な相手 従業員・経営層・グループ会社 顧客・投資家・地域住民・行政・NGO
主な目的 方針・目標の浸透、現場の情報の吸い上げ 信頼の獲得、対話を通じた課題の防止・解決
手段の例 社内報・研修・イントラネット・経営会議への報告 環境報告書・統合報告書・ラベル表示・説明会
出典:ISO14063:2020の枠組みをもとに一般的な例をgreenote整理

外部向けの発信は、第三者保証の制度化に見られるように、開示ルールとして整備が進んでいます。一方、内部向けのコミュニケーションは各社の裁量に委ねられたままになりがちです。ただ、対外的に約束した環境目標は、社内で共有され、現場の行動に翻訳されて初めて実行されます。外への発信と中への浸透を同じ設計図の上で扱うのが、この規格の視点だといえます。

ISO自身が示す環境ラベル規格との関係

ISO14063の規格ページには、「ISO14020・ISO14021・ISO14024・ISO14025・ISO14026は、製品ラベルや宣言に関する具体的な環境コミュニケーションの手段とガイダンスを提供する」という一文が明記されています。これまでgreenoteで個別に取り上げてきた規格が、ISO自身の整理でも一つの体系としてつながっていることが確認できます。

規格 対象 委員会
ISO14063 環境コミュニケーション全般(傘) SC4
ISO14021 自己宣言による環境主張 SC3
ISO14024 第三者認証エコラベル SC3
ISO14025 EPD(環境製品宣言) SC3
ISO14026 フットプリント情報の表示 SC3
出典:ISO公式サイト各規格ページをもとにgreenote作成

この表の見方を補足すると、ISO14020は環境ラベル・宣言全体の基本原則を定める規格で、ISO14021(自己宣言)・ISO14024(第三者認証ラベル)・ISO14025(EPD)・ISO14026(フットプリント表示)は、その原則の下でそれぞれの表示方式を定める個別規格です。ISO14063は、これらの「製品にどう表示するか」という道具立てのさらに外側で、組織としてのコミュニケーション全体をどう設計するかを扱います。製品の表示は整っているのに、組織としての発信はちぐはぐ——という状態を防ぐのが、この傘の役割です。

日本の環境コミュニケーション制度は足踏み状態

ISO14063が定期的にレビューされ、現行版が2025年に維持確認されたのに対し、日本国内の環境コミュニケーションに関する制度は、更新が止まっている領域が目立ちます。

環境コミュニケーション大賞は令和2年度で休止

環境省と一般財団法人地球・人間環境フォーラムが共催していた「環境コミュニケーション大賞」は、CSR報告書・統合報告書・環境経営レポートなど、あらゆる媒体での優れた環境報告を表彰する制度でした。環境省の公式ページによれば、令和2年度(第24回)の開催をもって休止しています。応募していた企業に向けては、環境報告部門は「ESGファイナンス・アワード・ジャパン【環境サステナブル企業部門】」、環境経営レポート部門は「エコアクション21 オブザイヤー」への応募が案内されており、機能自体は後継の制度に引き継がれた形です。

環境報告ガイドラインは2018年版のまま

環境省が提供する「環境報告ガイドライン」も、最新版は2018年版です。環境省の公式ページで確認できる改定検討会の開催記録も、平成30年(2018年)の「環境報告ガイドライン2018年版 解説書等作成に向けた検討会」が最後で、2026年9月時点で新たな改定検討会の開催は確認できていません。国内のJIS規格ではJIS Q14063がISO14063:2006(初版)をもとに制定されていますが、こちらも2020年のISO改訂に追随した改正は見当たりません。ISO14025とは・ISO14024とはで見たJIS側の遅れと同じ構図が、環境コミュニケーションの領域でも起きています。

では、いま実務で何を使えばよいのか。環境報告ガイドライン2018年版は、更新が止まっているとはいえ現行の公式ガイドラインとして引き続き参照できます。同時に押さえておきたいのは、環境情報の開示の重心が、任意の環境報告書から、有価証券報告書などの制度開示へと移りつつあることです。任意報告の表彰制度が役目を終えて後継のESG系アワードに引き継がれた経緯は、その象徴と読むこともできます。環境コミュニケーションの設計を考える際は、任意媒体と制度開示の両方を視野に入れる必要が出てきています。

なぜ知っておくべきか|グリーンウォッシュ防止の枠組みとして

グリーンウォッシュとはやグリーンクレーム規制で扱ったように、根拠の薄い環境訴求は世界的に規律の対象になりつつあります。ISO14063は、個別のラベル・宣言のルールとは別に、組織が環境情報を発信する際の土台となる考え方を示すものです。SC3系の個別規格(ISO14021・14024・14025・14026)を使う場面でも、その発信全体がISO14063の原則——利害関係者との対話を通じて課題の解決に結びつけるという考え方——に沿っているかを意識することが、結果的にグリーンウォッシュのリスクを避ける一助になります。

もう一つの実利は、発信の「一貫性」を保ちやすくなることです。製品にはエコラベル、報告書には削減実績、採用サイトには環境への姿勢——と発信の場面が増えるほど、媒体ごとに言っていることが食い違うリスクも増えます。個別の手段ごとのルール(SC3の各規格)だけでなく、組織としての方針・戦略という一段上のレイヤー(ISO14063)を持っておくと、どの媒体の発信も同じ幹から出ている状態を保ちやすくなります。根拠の説明を求められたときに、発信ごとにバラバラの答えをしないで済むことは、グリーンウォッシュ批判への最も実際的な備えです。

発信を設計する3つの実務ポイント

ISO14063はガイドライン規格なので、「これをやれば適合」というチェックリストがあるわけではありません。ただ、規格が示す考え方から、実務に持ち帰れるポイントを3つに整理できます。

手段より先に「目的と相手」を決める

環境コミュニケーションの検討は、「報告書を作る」「ラベルを取る」という手段から入ってしまいがちです。ISO14063が一般原則・方針・戦略・活動という順でガイドラインを示しているのは、この順序に意味があるからです。誰に、何を伝え、その結果として何が変わってほしいのか——ここを先に固めてから手段を選ぶと、「作ったが誰にも読まれない報告書」のような空振りを避けやすくなります。

伝える手段はSC3の規格群から選べる

伝える内容と相手が決まれば、手段には既製の規格群が使えます。自社の主張として環境性能を謳うならISO14021(自己宣言)、第三者のお墨付きを見せたいならISO14024(エコラベル)、定量データを開示するならISO14025(EPD)、CO2などのフットプリントを表示するならISO14026——という具合に、SC3の規格群が「手段のカタログ」として機能します。ISO14063自身がこれらを「具体的な手段」と位置づけているため、全体設計はISO14063で、個別の表示はSC3規格で、という使い分けがそのまま成り立ちます。

一方向の発信で終わらせない

本文で見たとおり、この規格が扱う環境コミュニケーションは、情報を出して終わりではなく、利害関係者との対話を通じて環境問題の防止や解決に結びつけるところまでを含みます。実務に置き換えると、問い合わせや苦情、地域からの声を受け取り、担当部署に届け、対応を発信者側に返す——という「往復の経路」まで設計しておくことです。発信した内容への質問に根拠をもって答えられる体制は、前の章で見たグリーンウォッシュ対策とも直結します。

まとめ

ISO14063は、組織の環境コミュニケーション全般を扱う国際規格で、ISO自身がISO14020・14021・14024・14025・14026を「具体的な手段」と位置づける、いわば上位の枠組みです。策定はSC4(SC3とは別委員会)で、2025年に現行版の維持が確認されています。一方、日本国内では環境コミュニケーション大賞の休止、環境報告ガイドラインの2018年版止まりなど、制度面の更新が滞っている領域が見られます。個別のラベル規格を扱う際も、この上位の枠組みを意識しておくと、発信全体の一貫性を保ちやすくなります。

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出典・参考資料(一次情報)

リンク先は2026年9月時点で確認した各機関の公開情報です。最新は各公式情報をご確認ください。

ISO公式:
ISO14063:2020規格ページ

環境省:
環境コミュニケーション大賞/
環境情報開示(環境報告ガイドライン、TCFD)

よくある質問(FAQ)

Q. ISO14063とISO14026・ISO14025はどう違いますか?

A. ISO14063は組織の環境コミュニケーション全般を扱う上位のガイドラインで、策定はISO/TC207/SC4です。ISO14026(フットプリント情報の表示)やISO14025(EPD)は、その具体的な手段を定める規格で、いずれもSC3が策定しています。ISO14063自身が、ISO14020・14021・14024・14025・14026を「製品ラベルや宣言に関する具体的な環境コミュニケーションの手段」と位置づけています。

Q. 「環境コミュニケーション大賞」はまだ応募できますか?

A. できません。環境省と地球・人間環境フォーラムが共催していたこの表彰制度は、令和2年度(第24回)の開催をもって休止しています。環境報告部門は「ESGファイナンス・アワード・ジャパン【環境サステナブル企業部門】」、環境経営レポート部門は「エコアクション21 オブザイヤー」への応募が、環境省の公式ページで案内されています。

Q. 環境報告ガイドラインの最新版はいつのものですか?

A. 環境省が公開している「環境報告ガイドライン」の最新版は2018年版です。2026年9月時点で、これを更新する新たな改定検討会の開催は確認できていません。

Q. ISO14063の認証は取得できますか?

A. いいえ。ISO14063は要求事項を定める規格ではなく、ガイドライン(指針)を示す規格です。ISO14001のように適合を第三者が審査して認証する仕組みの対象ではなく、自社の環境コミュニケーションを設計する際の参考として使う位置づけになります。

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