グリーンクレーム規制とは|環境表示のルールとEU・日本の動向を解説

2026.07.11
サステナビリティ開示

「環境にやさしい」「カーボンニュートラル」「エコ」――こうした環境をうたう言葉を、根拠なく使うことが、世界的に「規制の対象」になりつつあります。大手会計事務所も企業向けに法的アップデートを提供するなど、環境表示のルールへの関心は急速に高まっています。グリーンクレーム規制とは、企業が発する環境に関する主張(グリーンクレーム)を、科学的な裏付けと検証で規律する法的な枠組みのことです。本記事では、EU・英国・米国、そして日本の環境表示規制の動向と、企業に求められる対応を、公的機関の情報をもとに整理します。既存のグリーンウォッシュとはが「現象」を扱うのに対し、本記事は「規制の枠組み」に焦点を当てます。

この記事の目次

グリーンクレーム規制とは(おさらい)

まず、グリーンクレームとは何か、なぜ世界で規制が強まっているのかを整理しましょう。

根拠なき環境主張が規制の対象に

グリーンクレーム=環境上の便益の主張
(環境にやさしい/カーボンニュートラル/エコ/サステナブル)
欧州委員会の2020年調査=環境主張の53.3%が曖昧・誤解を招く・根拠不十分/約40%が実証されていない
消費者保護・公正競争のため、主張には「裏付け(実証)と検証」を求める規制が世界で強まる

グリーンウォッシュという「問題」への、規制側の対応がグリーンクレーム規制。

出典:欧州委員会の公開情報をもとにgreenote作成

環境主張=グリーンクレームと規制の背景

グリーンクレームとは、企業が製品・サービスに付す「環境にやさしい」「カーボンニュートラル」「エコ」「サステナブル」といった、環境上の便益に関する任意の主張のことです。こうした主張のうち、根拠が乏しかったり曖昧だったりするものは、グリーンウォッシュとして問題視されます。

なぜなら、根拠のない環境アピールは、消費者の合理的な選択を妨げ、まじめに環境対応する企業との公正な競争を歪めるからです。欧州委員会が2020年に150件の環境主張を分析した調査では、53.3%が曖昧・誤解を招く・根拠不十分な情報を含み、約40%が実証されていないと結論づけられました。この「主張はあるが裏付けがない」状態が、規制強化の出発点になっています。

「主張する側が裏付ける」実証の考え方

世界の環境表示規制に共通するのが、「主張する側が、その主張を科学的な根拠で裏付ける(実証する、substantiation)」という考え方です。「環境にやさしい」と言うなら、何がどう環境に良いのか、その根拠を示す責任は主張した企業側にある、という発想です。

さらに、その裏付けを独立した第三者が検証することを求める動きも強まっています。曖昧な言葉で消費者に良い印象だけを与えるのではなく、根拠と範囲を明確にすることが求められる――これが規制の底流にある考え方です。以下、主要な国・地域の規制を見ていきましょう。

EUの環境表示規制――2つの動き

環境表示規制を最も強力に進めているのがEUです。ただし、2つの規制は状況が大きく異なります。

EUの2つの規制は状況が異なる

消費者エンパワーメント指令
(2024/825)

成立済み・2026年9月27日適用

漠然とした環境主張の禁止

オフセット依存のカーボンニュートラル表示の禁止

未認証の持続可能性ラベルの禁止

グリーンクレーム指令案

2026年時点で流動的

2023年3月提案。環境主張の事前実証+第三者検証を要求

2025年6月に欧州委員会が撤回意向を表明→最終協議中止

正式撤回はされず保留(pending)=可決も撤回も流動的

成立済みの消費者エンパワーメント指令は予定どおり2026年9月適用

出典:EUR-Lex・欧州委員会・法律事務所解説をもとにgreenote作成

成立済みの消費者エンパワーメント指令(2026年9月適用)

EUでまず押さえるべきは、すでに成立している消費者エンパワーメント指令(Directive (EU) 2024/825)です。EUR-Lexの指令全文によれば、2024年2月28日に採択され、加盟国の国内法化期限は2026年3月27日、適用開始は2026年9月27日です。

この指令は、優れた環境性能の裏付けなしに「環境にやさしい」などの漠然とした環境主張を使うことの禁止カーボンオフセットの購入を根拠にした「カーボンニュートラル」表示の禁止、公的または要件を満たす認証制度に基づかない持続可能性ラベルの禁止などを定めます。オフセット頼みのカーボンニュートラル表示が明確に禁じられる点は、実務上のインパクトが大きい変更です。

流動的なグリーンクレーム指令案

一方、もう一つのグリーンクレーム指令案は、状況が大きく異なります。2023年3月22日に欧州委員会が提案したもので、明示的な環境主張について、上市前の科学的な実証と独立した第三者による検証を求める、より踏み込んだ内容でした。

ところが、この指令案は2025年に政治的に混乱しました。過剰規制や中小企業への負担が問題視され、2025年6月に欧州委員会が撤回の意向を表明し、最終協議(トリローグ)が中止されました。ただし、注意が必要なのは、2026年時点でも官報での正式な撤回はされておらず、保留(pending)扱いのままという点です。可決されるか撤回されるかは確定しておらず、状況は流動的です。重要なのは、この混乱の影響を受けず、成立済みの消費者エンパワーメント指令は予定どおり適用されるということです。指令案の行方にかかわらず、EU向けの環境表示のルールは厳格化に向かっています。

英国・米国の環境表示規制

EU以外の主要国も、環境表示を規律する枠組みを整えています。

英国と米国の環境表示規制

英国=CMA グリーンクレーム・コード(2021年)

6原則(真実で正確・曖昧でない・重要情報を省略しない・比較は公正・ライフサイクル全体を考慮・主張は実証されている)

2025年4月から裁判を経ず最大で全世界売上高の10%の制裁金が可能(DMCC法)

米国=FTC グリーンガイド

環境マーケティング主張の指針(現行は2012年版)

2022年から改定手続き中だが、2026年時点で改定版は保留。既存ガイドでの執行は継続

各国が環境広告を規律。執行も強化される方向

出典:英国政府(CMA)・米国FTCの公開情報をもとにgreenote作成

英国では、競争・市場庁(CMA)が2021年に「グリーンクレーム・コード」を公表しています。真実かつ正確であること、曖昧でないこと、重要情報を省略しないこと、比較は公正であること、製品のライフサイクル全体を考慮すること、主張が実証されていること、という6つの原則から成ります。さらに2024年成立の法律により、2025年4月からCMAは裁判を経ずに直接、最大で全世界売上高の10%の制裁金を科せるようになり、執行力が大幅に強化されました。

米国では、連邦取引委員会(FTC)が環境マーケティング主張の指針「グリーンガイド(Green Guides)」を運用しています(現行は2012年版)。2022年から改定手続きが進められていますが、2026年時点で改定版は保留の状態です。ただし、既存ガイドの下での執行は継続しており、リサイクル可能・生分解性・カーボンニュートラルといった表示が引き続き注視されています。

日本の規制――景品表示法(優良誤認)

日本には環境表示専用の法律はありませんが、景品表示法が実質的な規律の役割を担っています。

日本は景品表示法で規律

優良誤認表示(景表法 第5条第1号)実際より著しく優良・競合より著しく優良と誤認させる表示を禁止。環境表示も対象になりうる
不実証広告規制(第7条第2項)=消費者庁が根拠資料の提出を要求 → 期間内に十分な資料を出せなければ優良誤認とみなす(主張する側が実証責任を負う)
2022年12月:生分解性(自然に還る等)の表示で事業者10社に措置命令 → うち2社に課徴金納付命令

環境表示専用の法律はないが、景表法が実質的に規律する

出典:消費者庁の公開情報をもとにgreenote作成

優良誤認表示と不実証広告規制

日本には環境表示を直接対象とする独立した法律はなく、景品表示法(景表法)の「優良誤認表示」(第5条第1号)の枠組みで規律されます。消費者庁の説明によれば、実際のものより著しく優良、または競合より著しく優良と誤認させる表示が禁じられ、環境配慮を強調する表示もこの対象になりえます。

ここで重要なのが「不実証広告規制」(第7条第2項)です。消費者庁は、事業者に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、期間内に十分な資料を提出できなければ、その表示は優良誤認表示とみなされます。つまり、日本でも主張する側が実証責任を負う構造であり、EU等の実証(substantiation)の考え方と通じています。

生分解性表示をめぐる措置命令の例

実際の執行例もあります。消費者庁は2022年12月23日、ごみ袋やレジ袋、カトラリーなどの販売事業者10社に対し、「自然環境中で微生物により分解され自然に還る」といった生分解性の表示について、提出された資料が根拠を欠くとして景表法上の措置命令を行いました。うち2社には、その後、課徴金納付命令も出ています。

これは、日本における環境表示(グリーンウォッシュ)の取締りの代表例として知られています。「自然に還る」といった一見わかりやすい環境アピールも、科学的な裏付けがなければ違法と判断されうるということです。環境表示は、日本でもすでに規制の対象になっている点を、企業は認識しておく必要があります。

企業に求められる対応

規制の方向性は世界共通です。企業が環境表示で気をつけるべき実務ポイントを整理します。

環境表示で企業が守るべき5つのポイント

1
曖昧語の単独使用を避ける=「エコ」「グリーン」「サステナブル」を範囲や根拠なしに使わない
2
主張の範囲を特定する=製品全体か一部か・どの環境側面(CO2/水/廃棄物)か
3
ライフサイクルで裏付ける=可能な限りLCAで原料調達から廃棄まで評価
4
第三者検証・認証ラベルは公的または適合制度に基づくものを使う
5
カーボンニュートラル表示はオフセット依存に注意=削減の実態と算定範囲を明示

日本の不実証広告規制に備え、主張の根拠資料を事前に用意・保管する

出典:EU・英国・日本の各規制に共通する要求をもとにgreenote作成

各国の規制に共通する要求から、企業が環境表示で守るべきポイントは整理できます。第一に、「エコ」「グリーン」「サステナブル」といった曖昧語を、範囲や根拠を示さずに単独で使わないこと。第二に、主張の範囲を特定すること――製品全体の話か一部か、CO2・水・廃棄物などどの環境側面の話かを明示します。

第三に、可能な限りライフサイクル全体(原料調達から廃棄まで)で裏付けること。第四に、第三者検証を受け、持続可能性ラベルは公的または適合認証に基づくものだけを使うこと。第五に、カーボンニュートラル表示はオフセット依存に注意し、実際の削減の実態と算定範囲を明示することです。そして、日本の不実証広告規制に備え、主張の合理的な根拠資料を事前に用意・保管しておくことが、実務上の要になります。

グリーンクレーム規制をどう捉えるか

グリーンクレーム規制は、根拠の乏しい環境アピール(グリーンウォッシュ)を防ぐため、環境主張に裏付けと検証を求める世界的な流れです。EUでは、成立済みの消費者エンパワーメント指令が2026年9月から適用され、オフセット依存のカーボンニュートラル表示などが禁じられます。より踏み込んだグリーンクレーム指令案は2026年時点で流動的ですが、規制強化の方向性は変わりません。英国のCMAコードや米国のFTCグリーンガイド、そして日本の景品表示法(優良誤認・不実証広告規制)と、各国が環境表示を規律しています。

企業にとっての要点は、環境表示はもはや「イメージ戦略」ではなく「実証を伴う法的責任」の領域に入ったということです。「環境にやさしい」と言うなら、その根拠を科学的に示し、範囲を明確にし、第三者の検証に耐えられるようにしておく――。まじめに脱炭素・環境対応に取り組む企業にとって、グリーンクレーム規制はむしろ、正当な努力が正しく評価される環境を整えるものだといえます。

なお本記事は、欧州委員会・EUR-Lex・英国CMA・米国FTC・消費者庁などの公開情報および法律事務所の解説をもとに整理したものです。特にEUグリーンクレーム指令案の状況は流動的で、今後変わりえます。各規制の詳細や最新状況は一次情報をご確認ください。本記事は特定の法的助言を提供するものではありません。

よくある質問(FAQ)

Q. グリーンクレーム規制とグリーンウォッシュはどう違うのですか?

A. グリーンウォッシュは「実態を伴わない・根拠の乏しい環境アピール」という現象・問題を指す言葉です。一方グリーンクレーム規制は、そうした問題を防ぐために、環境に関する主張(グリーンクレーム)を法的なルールで規律する枠組みを指します。近年は、企業が「環境にやさしい」などと主張する際に、科学的な裏付け(実証)と第三者の検証を求める方向で規制が世界的に強まっています。つまり、グリーンウォッシュという「問題」に対する「規制側の対応」がグリーンクレーム規制だと整理できます。

Q. EUのグリーンクレーム指令は結局どうなったのですか?

A. 2026年時点では状況が流動的です。2023年3月に欧州委員会が提案したグリーンクレーム指令案は、環境主張の事前の実証と第三者検証を求める内容でしたが、2025年に入り政治的に混乱し、同年6月に欧州委員会が撤回の意向を表明して最終協議が中止されました。ただし官報での正式な撤回はされておらず、保留(pending)扱いのままで、可決されるか撤回されるかは確定していません。一方、姉妹規制にあたる消費者エンパワーメント指令(2024/825)はすでに成立しており、こちらは予定どおり2026年9月27日から適用されます。

Q. 日本ではどんな法律で環境表示が規制されますか?

A. 日本には環境表示を直接対象とする独立した法律はなく、景品表示法(景表法)の「優良誤認表示」の枠組みで規律されます。実際より著しく優良と誤認させる表示が禁じられ、環境配慮を強調する表示もこの対象になりえます。特に「不実証広告規制」により、消費者庁は事業者に主張の合理的な根拠資料の提出を求めることができ、十分な資料を出せなければ優良誤認表示とみなされます。実際に2022年には、生分解性をうたった表示について事業者10社に措置命令が出た例があります。企業は主張の根拠を事前に用意しておくことが重要です。

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出典・参考(一次情報)

最終更新日:2026年7月11日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

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