greenoteではこれまで、ISO14024(第三者認証エコラベル)、ISO14025(EPD)、ISO14026(フットプリント表示)と、環境ラベル・環境表示の個別規格をひととおり扱ってきました。これらすべての土台となる「親規格」が、今回取り上げるISO14020です。
この規格は2022年12月の第3版で大きく姿を変えました。タイトルから「ラベル(labels)」の文字が消えて「製品に関する環境声明とプログラム」となり、内容も「一般原則」から「原則と一般要求事項」へ——つまり、守るべき要求を課す規格に変わったのです。日本のJIS Q 14020が1999年版のままである一方、環境省の環境ラベルデータベースはすでにタイプI・II・IIIを「旧タイプ」と表記しています。本記事では、親規格ISO14020の役割と2022年改訂の意味、そして企業の環境訴求の実務での使いどころを、ISO公式情報と環境省の公開情報にもとづいて整理します。
※本記事の規格・制度情報は2026年9月時点でISO公式サイト・環境省が公表している情報にもとづきます。最新の状況は各公式情報をご確認ください。
この記事の目次
ISO14020とは|環境声明ファミリーの「親規格」
ISO14020は、製品に関する環境声明(environmental statements)と環境声明プログラムの全体に適用される、原則と一般要求事項を定める国際規格です。現行版はISO14020:2022(第3版・2022年12月発行・24ページ・CHF135)で、前の版であるISO14020:2000は廃止(Withdrawn)となっています。策定しているのは、環境ラベルと宣言を担当するISO/TC207/SC3——ISO14024やISO14025と同じ分科委員会です。
対象は製品の環境声明とそのプログラムすべて
ISO公式の要約によれば、この規格はあらゆる種類の製品関連の環境声明と環境声明プログラムに適用されます。ここでいう環境声明には、自己宣言による環境主張、エコラベル、EPD(環境製品宣言)、フットプリントの伝達の4つが含まれると明記されています。「エコマークのような認証ラベル」も「CO2排出量○kgという数値表示」も「再生材使用という自社の主張」も、この規格から見ればすべて「環境声明」の仲間であり、共通の土台の上に立つ——というのがISO14020の視点です。
単独ではなくファミリーで使う前提の規格
ISO公式の要約は、この規格がISO14020ファミリーの他の規格と組み合わせて使うことを意図していると明記しています。個別規格(ISO14021・14024・14025・14026)には、それぞれの適用範囲に固有の用語・原則・要求事項が追加されている、という注記つきです。つまり構造としては、共通ルールを親のISO14020が定め、声明の種類ごとの詳細ルールを子の各規格が定める、という二階建てです。ISO14063とはで見た「組織のコミュニケーション全体はSC4、個別の表示手段はSC3」という整理と合わせると、環境情報の発信に関わる規格の見取り図が完成します。
2022年改訂|「ラベルの一般原則」から「声明の要求事項」へ
2022年12月の第3版は、この規格の性格を2つの点で大きく変えました。
第一に、対象の呼び方が「環境ラベル及び宣言」から「環境声明」へ変わりました。英文タイトルは、旧版の「Environmental labels and declarations」から「Environmental statements and programmes for products」(直訳:製品に関する環境声明とプログラム)になっています。ラベルという物理的な表示物のイメージを離れ、広告・ウェブサイト・報告書など、あらゆる形の環境の主張を包む言葉になったと読めます。
第二に、「一般原則(General principles)」だった副題が「原則と一般要求事項(Principles and general requirements)」に変わりました。理念を述べるだけの文書から、満たすべき要求を課す文書への転換です。グリーンウォッシュへの規律が世界的に強まり、グリーンクレーム規制のように根拠のない環境訴求を法規制する動きが進むなか、環境声明の共通土台となる規格が「原則+要求事項」に格上げされた流れは、時代の要請と整合的です。なお、ISO公式ページによれば、この2022年版に対する追補(Amendment 1)が現在開発中で、ファミリーの整備は今も続いています。
4つの環境声明と担当規格——「タイプ」は旧称に
ISO14020が土台となる4つの環境声明と、それぞれの詳細を定める個別規格を整理すると、次のようになります。
| 環境声明 | 特徴 | 担当規格(旧称) |
|---|---|---|
| 自己宣言による環境主張 | 事業者が自らの責任で主張。第三者の判断は入らない | ISO14021(旧タイプII) |
| エコラベル | 第三者機関が基準を策定・審査してマーク使用を認可 | ISO14024(旧タイプI) |
| EPD(環境製品宣言) | 環境負荷の定量データを表示。合否の判断はしない | ISO14025(旧タイプIII) |
| フットプリントの伝達 | CO2や水などのフットプリント情報の表示・伝達 | ISO14026 |
注目したいのが「タイプI・II・III」という呼び方の扱いです。環境ラベルの世界では長らくこの3類型が通り名でしたが、環境省の「環境ラベル等データベース」は現在、これらを「旧タイプI」「旧タイプII」「旧タイプIII」と表記しています。ISO14020:2022がフットプリント伝達を加えた4つの「環境声明」で整理し直したことと合わせて、タイプ番号で呼ぶ時代から、声明の種類名で呼ぶ時代へ移りつつあることがうかがえます。古い資料を読むときは「タイプII=自己宣言」のような対応を知っておく必要がありますが、これから作る社内資料では、声明の種類名で書くほうが将来まで通用します。
「声明」と「プログラム」|なぜ運営制度まで規律するのか
2022年版のタイトルに新しく入った「プログラム」という言葉は、この規格の射程を理解する鍵です。ISO公式の要約は、環境声明は環境声明プログラムから生まれる(result from)と説明しています。エコラベルのマークそのものの背後には、基準を作り、審査し、認可する運営の仕組み——プログラム——があり、EPDの数値の背後には、算定ルールを定めて登録・公開する制度があります。
つまり、個々のラベルや数値の信頼性は、それを生み出すプログラムの信頼性で決まるということです。表示だけを取り繕っても、背後の仕組みがずさんなら声明は信頼できません。ISO14020が声明そのものだけでなくプログラムまで対象に含めているのは、この因果関係を正面から規律するためだと理解できます。消費者や調達担当者が「このラベルは信じられるのか」を判断するときも、マークの見た目ではなく、誰がどんな仕組みで運営しているプログラムなのかに目を向けるのが、規格の設計に沿った見方です。
日本の現状|JIS Q 14020は1999年版のまま
国内規格に目を移すと、JIS Q 14020は「環境ラベル及び宣言-一般原則」という1999年版のままで、2022年のISO大改訂に対応した改正は2026年9月時点で確認できません。ISO14020:2000のさらに前の版をベースにした四半世紀前の内容であり、「ラベルから声明へ」「原則から要求事項へ」という現行ISOの転換は、JISだけを読んでいると見えないことになります。
この構図は、ISO14025(JISは2008年版)やISO14063(JISは初版ベース)、ISO14066(JISは2012年版)でも繰り返し見てきた、ISOの実務が先行し、JISが遅れて追うパターンの中でも最も差が開いた例です。一方で、環境省の環境ラベル等データベースは前述のとおり「旧タイプ」表記へ更新されており、行政の情報発信のほうがJISより先に新しい整理を採り入れているのが現在地です。環境表示の実務やガイドライン対応を考える際は、JISではなくISO原文(と消費者庁・環境省の最新ガイド)を起点にするのが安全です。
企業の実務での使いどころ
親規格という性格上、ISO14020を単体で「取得」するような使い方はしません。それでも、環境訴求に関わる実務では、この規格の視点がそのまま使えます。3つに整理します。
自社の環境訴求が「どの声明か」をまず特定する
「環境にやさしい」と伝えたいとき、最初に決めるべきは表現の工夫ではなく、4つの環境声明のどれとして出すかです。自社の責任で主張するのか(自己宣言)、第三者認証のマークを取るのか(エコラベル)、定量データを開示するのか(EPD・フットプリント)。どれを選ぶかで、従うべき個別規格も、必要な根拠の水準も、準備のコストも変わります。上の表を入口に、該当する個別規格の記事(ISO14024・ISO14025・ISO14026)へ進むのが近道です。
乗る「プログラム」の信頼性を見る
エコラベルやEPDを取る場合、実際に申請するのは個別の運営制度——プログラム——です。前述のとおり、声明の信頼性はプログラムの信頼性で決まるため、制度選びがそのまま訴求の説得力を左右します。運営主体は誰か、基準はライフサイクルを考慮して作られているか、審査はどう行われるか。取引先や消費者から「そのマークは何なのか」と問われたときに、プログラムの仕組みごと説明できる制度を選んでおくと、環境訴求が問い合わせに耐えるものになります。
型に当てはまらない表示こそ原則に立ち返る
実務で悩ましいのは、広告のキャッチコピーやウェブサイトの文言のような、どの個別規格の型にもきれいに収まらない環境の主張です。ISO14020の対象が「あらゆる種類の製品関連の環境声明」とされていることは、ここで効いてきます。型がない表示にも、共通の原則——根拠があること、誤解を招かないこと——は適用される、という考え方です。グリーンウォッシュの指摘は、往々にしてこうした「型の外」の表現から生まれます。迷ったら親規格の原則に立ち返る、という習慣が、いちばん実務的なISO14020の使い方かもしれません。
まとめ
ISO14020は、自己宣言・エコラベル・EPD・フットプリント伝達という4つの環境声明と、その運営プログラムすべてに適用される原則と一般要求事項を定める「親規格」です。2022年の第3版で「環境ラベル及び宣言の一般原則」から「製品環境声明とプログラムの原則・要求事項」へと性格を変え、現在は追補も開発中です。日本ではJIS Q 14020が1999年版のままISOと大きく開く一方、環境省のデータベースはタイプI・II・IIIを「旧タイプ」と表記する新しい整理に移っています。個別のラベル・表示の実務でも、迷ったときに立ち返る共通の土台として、この親規格の視点を押さえておく価値があります。
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出典・参考資料(一次情報)
リンク先は2026年9月時点で確認した各機関の公開情報です。最新は各公式情報をご確認ください。
ISO公式:
ISO14020:2022規格ページ
環境省:
環境ラベル等データベース「ISOの環境ラベルに関する規格」
よくある質問(FAQ)
Q. ISO14020とISO14021・14024・14025・14026はどう違いますか?
A. ISO14020は、すべての製品関連の環境声明と環境声明プログラムに共通する原則と一般要求事項を定める親規格です。ISO14021(自己宣言)、ISO14024(エコラベル)、ISO14025(EPD)、ISO14026(フットプリント伝達)は、声明の種類ごとの詳細を定める個別規格で、ISO公式もファミリーで組み合わせて使うことを意図した規格だと明記しています。
Q. 2022年の改訂で何が変わりましたか?
A. 大きく2点です。第一に、タイトルが「環境ラベル及び宣言」から「製品に関する環境声明とプログラム」に変わり、対象がラベルに限らないあらゆる環境の主張と、その運営制度(プログラム)に広がりました。第二に、副題が「一般原則」から「原則と一般要求事項」に変わり、理念を示す文書から要求を課す文書になりました。前の版のISO14020:2000は廃止されています。また、2022年版への追補(Amendment 1)が現在開発中です。
Q. 「タイプI・タイプII・タイプIII」という呼び方はもう使われないのですか?
A. 過去の資料を読むうえでは今も必要な知識ですが、新しい整理では使われなくなりつつあります。環境省の環境ラベル等データベースは、現在これらを「旧タイプI(エコラベル)」「旧タイプII(自己宣言環境主張)」「旧タイプIII(環境製品宣言)」と表記しています。これから作る資料では、タイプ番号ではなく声明の種類名で書くほうが将来まで通用します。
Q. JIS Q 14020は最新のISOに対応していますか?
A. いいえ。JIS Q 14020は「環境ラベル及び宣言-一般原則」という1999年版のままで、2022年のISO改訂に対応した改正は2026年9月時点で確認できません。「ラベルから声明へ」「原則から要求事項へ」という現行ISOの転換はJISには反映されていないため、実務ではISO原文を起点にするのが安全です。
Q. ISO14020の認証は取得できますか?
A. ISO14001のような認証制度の対象ではありません。ISO14020は環境声明とプログラムの共通土台となる原則・要求事項を定める規格で、実務では、個別のエコラベル制度やEPDプログラムへの申請・登録という形で、ファミリーの個別規格とともに機能します。